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第20話 カロリーの魔女

 今回は野生のモンスターや遭難したマンドラゴラに遭遇するようなこともなく、群馬ダークのドンレミ農場までやってきました。

 群馬ダークにアポイントは取っていませんが、ログハウス風の建物の中に、マンドラゴラが店番をする野菜の販売所があります。


「こんにちは」


 ゴゲー。


 背脂所長に頼まれたチミチャンガの材料としてタマネギなどの野菜を買い入れていると、マンドラゴラから連絡が行ったのか、群馬ダークが顔を見せました。


「お、ほんとに来とる。いらっしゃい。どうしたん?」

「ちょっと作りたいものがありまして」


 背脂所長に渡されたチミチャンガのレシピを見せて相談してみると、具に使うトマトやタマネギ、大豆などを用立ててもらえました。

 大豆などはドンレミ農場では栽培していないのですが、提携している農場との間で作物を融通し合って販売所で売っているようです。交通の便が良いとはいえない立地ですが、バザールとも連動しているそうで、ピコピコという決済音が時折鳴って、販売所の野菜が消えていっています。


「こういう施設も群馬さんがご自分で?」


 建築家アーキテクトのレアクラス保持者だとは聞いていますが。


「建物のほうだけ。販売システムとかは貴富さんに頼んでやってもらったけど。どこかに家建てるんやったら手伝おか?」

「まだ考えてはいませんけれど、機会があれば是非」


 今のところは初期ホームエリアの小部屋とレンタルキッチンで一通りの用事が済んでしまっています。

 ホームエリアを拡張、グレードアップする資金も貯まってきていますが、具体的な拡張計画が思いつかなかったので、部屋の面積を少し増やしてそれきりです。

 シロバニアファミリー置場が増えただけの状態となります。


「群馬さんは、ずっとこの農場で生活しているんですか?」

「うん、ホームエリアこっちに移して暮らしとる。初期エリアも悪くないけど昼夜の区別もわからんのがね」


 ホームエリアの小部屋は通常空間から切り離された場所にあり、清潔で安全ですが、外界の光は入ってきません。もう少し日の当たる場所で暮らしたいというのは自然な感覚でしょう。


「よかったらウチ寄ってかへん? せっかく寄ってもらってこのまま帰すのもあれやし」


 そんな誘いを受け、群馬ダークの自宅を訪問した私は、ハウスキーピング担当のマンドラゴラが行き交う群馬ダーク邸を案内してもらい、最終的には群馬ダーク邸の台所に立っていました。

 チミチャンガのレシピを見ていたら食べたくなったので練習がてら作ってみて欲しい、とのリクエストでした。

 一言でチミチャンガと言っても、かなりのバリエーションがあるようなので、この機会に色々試して見ることにしました。

 鶏肉(ワイルドチキン)と大豆、タマネギをチリソースで煮たチリコンカンや、マチャカと呼ばれる干し肉を使ったタコスミート。トマトとハーブでつけ込んだ豚肉をソテーしたアドバード、チリパウダーを入れて炊き上げたタコス風ライスなどを個別に、あるいは組み合わせてチーズなどを加え、小麦粉から焼いたトルティーヤに包みます。

 あとは油で揚げて仕上げるのですが、揚げる前の段階でもブリトーとして問題なく食べることができます。


 ピリピリメー!  (ピリリと辛くて旨い)

 シャキシャキメー!(付け合わせのレタスとサワークリームがよく合う)

 モチモチメー!  (焼きたてのトルティーヤもいい歯ごたえだ)


「ウマメー」


 ゴゲー!

  ゴゴゲー!

 ゴーゲー!


「揚げる前に全員でつまみ食いをしないでください」


「ウマメー」はバロメッツでなく群馬ダークの声です。

 練習用ですし、狙われていることもわかっていましたから量の余裕はありますが。


「私はこれで満足かもしれん」


 ここからフライにするとなると相当なカロリーになりそうです。群馬ダークが相手ならブリトーで止めておいても良さそうですが、今回のオーダーはあくまでも背脂所長からのものです。

 当初の予定通りにフライヤーに入れ、こんがりと揚げて行きます。

 出来上がったものを食品鑑定で見てみると、


 背徳的なチミチャンガ

 レアリティ:レア

 品質:最高

 食事効果:バイタル2段階回復

      メンタル1段階回復

      バイタル自動回復(中・6時間)


 幻惑のチミチャンガ

 レアリティ:レア

 品質:最高

 食事効果:メンタル2段階回復

      状態異常成功率向上(大・1時間)


 といった結果でした。


 ジュル (これはまた罪深い品だ)

 ジュルル(地獄のような熱気)

 ジュルリ(見るからにクリスピー)


「またあかんものを作って……うわぁ、やっぱりまた全部レア料理やん……」


 鑑定結果のウィンドウを見やった群馬ダークが小さな溜め息をつきました。

 熱操作スキルで粗熱を取り、切り分けた一片を口に運びます。

 いくつかバリエーションを用意してありますが、一品目はいわゆるタコスミートをチーズ、トマトと一緒にトルティーヤで巻いて揚げたものです。

 歯触りは良好、濃厚な旨味と熱さがお腹と頭に染み渡るような食べ物でした。

 美味しいですが、やっぱり油が多いのでレタスを添えたほうが良さそうです。


「どうぞ」


 大皿に移したチミチャンガを食卓の上に持っていきます。

 早速それを口に運んだバロメッツ達が、


 パリパリメー!(揚げたトルティーヤの罪深くも濃密なる食感!)

 トロトロメー!(とろけるチーズの旨味と歯触りの素晴らしさ!)

 ピリピリメー!(スパイスが具材の味を絶妙に引き立てる!)


  いつもの寸評を始めました。


 ウマウマメー!(エクセレンツ! まさに絶品!)

 ゴクゴクメー!(メキシコ風レモネードの酸味とマッチする!)

 モグモグメー!(手が止まらぬとはまさにこのこと!)


 ゴゲゴゲゲー!

 ゴゲゴゲー!

 ゴゲゲーッ!


 マンドラゴラ達の言葉はわかりませんが、雰囲気を見る限り好評のようです。

 群馬ダークについては、


「んにゃー」

「んにゃーと言われましても」

「美味しすぎてまた頭から宇宙ネコ生えた」

「またと言われましても」


 ゴゲニャー。


「そちらもですか」


 この様子だと完食は難しくなさそうですが、カロリーの数字が大変なことになりそうなので、近くで働いているマンドラゴラ達にも切り分けて配ることにしました。

 想像以上のマンドラゴラの行列が出来てしまい、追加でソーセージとチーズ、チリソースを使った簡易チミチャンガを量産することになりましたが。

 最後にチョコレートとバナナ、カスタードを使ったデザート用チミチャンガを揚げはじめると、群馬ダークに「カロリーの魔女」という称号をもらってしまいました。

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― 新着の感想 ―
カロリーの魔女とかいう全ての女性の敵 悔しいでもやめられない…!(パクパク ホントに悪いのは人の欲望やね
食べなければ大丈夫! 食べなければカロリーを気にする必要は無い! 不可能なんですけどね ソルさんがお菓子の家の魔女だったなら、ヘンゼルとグレーテルの兄妹は食べられると理解していても、お菓子を食べ続け…
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