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第111話 Ꮚ・ω・Ꮚメー/おそろしいことじゃのう

 マンドラゴラたちのゴゴゲゲニャーでかなり混乱し、散らばりはしましたが、ステュムパーロスの鳥たちはまだ万単位で残っています。

 海堡に陣取ったオフライン弁慶たち、巨大化したラビリンスの壁の上や側面に展開した薬師院連合。さらに、お祭り騒ぎに乗り遅れまいと押し寄せた冒険者たちが遠距離攻撃を仕掛けたり、あるいは船やゴンドラ、飛行機を出したり、網や銛を打ったりして、空と水中からのモンスターたちを迎え撃って行きます。

 再び移動を開始したアクアヘーラーに対しては横須賀海上冒険団とNJMなどの海上戦能力の高い冒険者団が群がって、その動きを抑制して行きます。


 メェ (レディは一度引っ込んだほうがいい)

 メエェ(他の連中にも見せ場と遊び場を残しておこう)

 メメェ(それができる冒険者というものだ)


 とのことですのでラビリンスに入り、その中央部の作業塔で陣地拡大を進める群馬ダークと合流します。

 少し遅れてバーネットもやってきます。そのまま架け渡されたスロープを渡って壁の上へ出ると、対空砲台として弾幕を展開します。

 水中にはアークシャークとアクアケルベロスが陣取っていますので、アクアヘーラーが直接乗り込んで来ない限り、攻撃の心配はないでしょう。

 しばらくはおとなしくしておいた方が良いとのことですが、完全にじっとしていられるような状況でもありません。

 前線に手を出す代わりに、後方で動いてみることにします。

 手持ちのベーコンエピをグレーターグリフォンに食べさせてからバーネットに合流、アイテムボックスを確認すると、神代孔雀の肉が一万近くストックされていました。とりあえず半分を最低価格でバザールに流してから、群馬ダークから手の空いたマンドラゴラを借りて加工を開始します。


 ゴゲー

 ゴゲゴゲー!

 ゴゲゲゲゲー!


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/なにか作り始めた?

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/いったいなにをやらかすつもりなのか


 そんな視聴コメントは一旦スルーして、

 神代孔雀の肉を一口大に切り分け、大きな寸胴鍋の中で神代牛のヨーグルト、カレー粉、塩、コショウと一緒に漬け込んでいきます。

 とりあえずは寸胴鍋十セットぶん。熟成用アイテムボックスを使って一時間分なじませて、約六千人前の孔雀肉を下ごしらえします。

 

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/多い……

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/なんだその量は

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/一体何をやらかすつもりなんだよ


 ゴゲー

 ゴゲゴゲー

 メー

 メメー


「爆神・パッケージング!」


 引き続きマンドラゴラとバロメッツたち、爆神暴鬼たちの手を借りて一人前ずつに分け、バザールへの出品準備を進めてゆきます。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/本当になんだこれ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/なにをするつもりなんだ


「爆神・オンセール!」


 最初の千人前を出品したところでレゾナンスシステムを起動し、本格的な調理配信を開始します。


「こんにちは、ソル・ハドソンです」


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/コニチワ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/妙なタイミングでの唐突な調理配信

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/今日の食材は

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/ステュムなんとかか

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/食えるんかこれ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/食材枠でバカみたいにバザールに出てる

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/供給多すぎてダブついてる

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/出現数大杉なんよ


「今日はこれから、ステュムパーロスの鳥を使ったバターチキン、じゃなくてピーコックカレーを作ろうと思います。素材は今いっぱい出回っていますので、よければ一緒に作ってみてください。孔雀肉から作ると時間がかかるので下ごしらえをしたものもご用意しています」


 先ほど出品した加工済みの神代孔雀肉のリンクを示します。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/そういうことか

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/よくわからんが秒でポチった

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/ひでぇ勢いで在庫がとろける


「食材は、神代孔雀のもも肉、バター、生クリーム、ヨーグルト、カレー粉、塩コショウ、にんにく、しょうが、トマト、砂糖。ごはんやナンなどはお好みでご用意ください」


 画面に食材リンクが自動的に表示されていきます。この映像処理はバーネットが対空迎撃と並行して進めてくれています。


「一から作る場合は一口大に切った神代孔雀の肉を一人前で百グラム、ヨーグルト、カレー粉、塩、コショウに漬け込んで一時間置きます。今回は漬け込み済みのものをご用意していたのですが……もう完売してしまったようですね。後ほどアーカイブなどを見ながら調理をしていただければと思います」


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/無念

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/料理せんのに買ったやつおるやろ絶対


 チャット欄にやや怨嗟の声が出てしまいました。

 にんにく、しょうがを用意し、フライパンを火にかけます。


「フライパンにバターを溶かして、すりおろしたにんにくとしょうがを入れて炒めます。香りが出たら今度はカレー粉を加えて混ぜながら炒めていきます」


 Ꮚ・ω・Ꮚメー(この時点で聴覚刺激がやべぇ……)

 Ꮚ・ω・Ꮚメー(くそ、オレも作るぞ!)

 Ꮚ・ω・Ꮚメー(これ以上黙って見ていられるか!)


「次はトマトを入れて中火にし、煮立ったら、神代孔雀の肉とヨーグルトを加え、フタをして十分ほど煮てください」


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/ふむふむ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/うおおなんでお料理しとるんじゃオレはぁ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/蟹座イベはなんでもありとはいえお料理をさせられようとは

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/なおフライパンが品薄になっている模様


 スキルでの時短はせず、十分が過ぎたところでほぼ完成。フタを取るとレアを示す白い光が放たれました。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/うお、光った!

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/オレのは光らない……

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/たぶん下ごしらえ済みのやつじゃないと無理なんだろ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/いちおうアンコモンまでは行ったかな


「最後にバターを加えたらできあがりですが、お好みで塩を足してもらっても大丈夫です」


 そう言いながらバターを足すと、白い光がエピックの金色に変わりました。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/あたりまえのようにエピックカレーが爆誕

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/エピックとはいかんが我が食卓にもレアカレー様がご降臨召された

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/まじかすげぇ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/普通に買った食材でもアンコモンまでは狙える模様

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/バカにしたもんじゃねぇんだな神代孔雀

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/食材としては普通に上等なんよ


 試食係は今回もバロメッツたちとマンドラゴラです。

 カメラの死角で焼き上げたナンを積み上げたバロメッツたちが、いつものように食レポを始めます。


 メェ (ギリシャの歴史は黄金、白銀、青銅、英雄、鉄の五つに分けられると言う)

 メエェ(そして今ここに新たな時代が幕を開けた!)

 メメェ(大いなるカレーの時代が!)


 ギリシャの人に怒られそうなことを言い出してしまいました。


 ゴゲニャー!

 ゴゴゲニャー!


 マンドラゴラたちも興奮の声をあげています。

 それを皮切りに『#ステュムパーロスの鳥』『#美味い』という言葉がトレンド上位にあがりました。さらにステュムパーロスの鳥の調理画像が大量にアップロードされ、触発された料理系の冒険者たちもまたそれぞれにステュムパーロスの鳥に腕を振るい始めました。

 その結果、神代孔雀の肉の人気が爆発的に上昇を始め、ここまで静観していた冒険者たちがお台場に押し寄せて――ステュムパーロスの鳥の大乱獲が始まりました。

 料理配信によって食肉需要が上がって参戦者が増えれば、という目論見でしたので、計算通りではありますが、想定以上の大騒ぎに発展してしまいました。

 出現当初は十万羽存在したステュムパーロスの鳥は一日で半数以下となって逃げ散り、イベント期間中にその全てが東京からその姿を消していったそうです。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/ステュムパーロスの鳥はバズで滅んだ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/小麦の魔女にバズり殺されたのじゃ

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/おそろしいことじゃのう


 そんなコメントが、妙に記憶に残っています。

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― 新着の感想 ―
この配信の裏でカレーを食べることもできず、一人で残る五千人前をパッケージングする爆神 さすがにそこまで鬼ではないですよね?
全然引っ込んでない件 裏方という名の横殴り(カレーうまそう)
人間の食欲の前には神代の鳥たちも狩られる弱者でしかないのだ
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