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第110話 ぼくがかんがえたさいきょうの

 アクアへーラーのヘイトは、基本的に私に向いているようです。

 誘導するには好都合ですが。下手をするとバーネットやダバイン貴富たちも巻き込まれてしまいますので、リスク分散の為にアークシャークに乗り移り移動を開始します。

 追ってくるのは例の海蛇魚雷に加え、ナイフのようなヒレを備え、高速遊泳するイワシ型モンスター、カミソリサーディン。

 サイズは普通のイワシ大ですが、素早くて大量、海蛇魚雷とサメ軍団の間をすり抜けて追いかけてきます。

 遊泳速度そのものはアークシャークのほうが上なのですが、さらに前方には体長十メートルはあろうオウムガイの群れが現れました。

 直接攻撃をしてくることはありませんでしたが、オウムガイたちは少し厄介な特殊能力を持っているようです。


 メェ (レディ!)

 メエェ(方向感覚を狂わされている!)

 メメェ(バミューダ・ノーチラスだ)


 バーネットから状況をモニターしているバロメッツたちが警告を投げてきます。海難事故の多発する魔の海域からやってきたという設定の海洋モンスターで、冒険者に幻覚を見せたり、方向感覚を奪ったりする能力を持っているようです。

 気づかない内に方向感覚と平衡感覚を狂わされ、アクアヘーラーやカミソリサーディンの方角に逆戻りしかけていました。

 カルキノクラストをTモードで使い、バミューダ・ノーチラスを薙ぎ払おうとしましたが、それもまた幻覚の産物のようです。大鋏は海を断ち割っただけでした。


 メェ (一旦水上に!)

 メエェ(水上までは幻惑効果も及ばない!)

 メエェ(レディまで幻惑してのけるとは厄介な)


 一応状態異常対策の食事効果はつけているのですが、光や磁場、音波などに干渉するタイプの幻覚なので、こちらの耐性の有無はあまり関係がないそうです。

 水面から飛び出し、空中へと逃れると、今度は長く尖った口に、トビウオのような羽根を備えたフライング・ダーツフィッシュの群と、テッポウウオ型モンスターのアクアアーチャーの群れ、そしてステュムパーロスの鳥たちが群がってきました。


 シャァァァァーックッ!


 大きく吼えたアークシャークは空中で大きく体を動かし、私を真上に跳ね飛ばしました。

 そこに群がるステュムパーロスの鳥たちを蹴散らしたのは、やはり背脂研究所の仕事を無視してやってきたらしいグレーターグリフォンでした。

 私の身柄を空中で確保、背中の上に移したグレーターグリフォンは一気に高度をあげて行きます。


 グリィィィィィィーーーッ!

 シャアアアァァァーーーック!


 グレーターグリフォンと共鳴するように声をあげて水中に戻っていくアークシャークをめがけてフライング・ダーツフィッシュの群れが一斉に襲いかかり、ハリセンボンのように滅多刺しにしようとしますが――。


 シャークッ!


 アークシャークの鮫肌は鋭い槍のようなフライング・ダーツフィッシュの前顎を通さず、逆に粉砕してしまいました。

 そのまま水中に向かったアークシャークは水中を縦横に泳ぎ回り、カミソリサーディン、バミューダ・ノーチラスなどの海洋系モンスターたちを薙ぎ払いにかかります。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/圧倒的ではないか我がサメは

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/コムギエル様気にしなきゃ普通に対応できるんかい

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/レイドモンスターはダテじゃない


 さらに高度をあげるグレーターグリフォン。ステュムパーロスの鳥たちが追おうとして来ますが、スピードも上昇能力もグレーターグリフォンのほうが上のようです。追従することはできませんでした。

 グレーターグリフォンの飛行能力に対応できる武器を持っているのはアクアヘーラーのみのようです。

 例の王笏からの熱線攻撃に加え、水面下の潜水艦部分から巨大な犬の首のようなものを生やし、その口から対空機関砲のような銃撃を開始します。

 

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/唐突なスキュラ要素

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/ヘラとスキュラあんまり関係ないと思うんじゃが

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/こまけぇことはいいんだよ


 グレーターグリフォンは優れた運動性を見せつけてアクアヘーラーの砲撃をかいくぐって行きますが、お台場に向けてまっすぐ飛んでいくのは難しいようです。

 アイテムボックスからイベント用水鉄砲アルフォンス……をダバイン貴富が無法改造した玩具、オーバーボルト・マークⅡを引っ張りだしました。

 バーネット級の魔石エンジンからの電力供給を前提にしていた初期型に対し、魔石利用の給電ユニットを使うことで携行性を高めた、やはり一発使い捨ての《ロマン砲》となります。計算上の威力は初期型よりやや劣るそうですが、牽制射撃には十分でしょう。

 マガジンの代わりに精製水のボトルを接続、トグルスイッチをひねってシステムを起動。

 光の灯った小型液晶ディスプレイにメッセージが表示されました。

 

 ――シリンダー注水完了

 ――射撃可能


 水上で構えられたアクアヘーラーの王笏を照準し、セーフティ解除。

 私の動きを理解してくれたグレーターグリフォンが羽ばたきと呼吸を止め、滑空状態となって振動を消してくれました。

 トリガーを引き絞ります。


 チュバン!


 水鉄砲にはあるまじき炸裂音とともに放たれた水の弾丸が加速、膨張して水の槍となりながら伸び、王錫から放たれた熱線と空中で激突します。

 起こったのは、閃光と大爆発。

 直径にして百メートル規模の光球が生じて衝撃波と津波を巻き起こし、ステュムパーロスの鳥たちをなぎ倒し、アクアヘーラーの巨体を転覆させました。


 Ꮚ・ω・Ꮚメー/水鉄砲でなんであんな爆発が

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/なんだその「ぼくがかんがえたさいきょうのみずでっぽう」は

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/撃った後煙と火花吹いてて草

 Ꮚ・ω・Ꮚメー/水がどうこうというより魔力が反応して爆発した感じじゃろか


 爆発は想定外でしたが、一応これで対空砲火はストップさせられました。攻撃を再開される前に反転し、お台場方面へと飛行します。

 移動をしている間にも拠点の構築、強化、拡大は続いているようです。

 分厚い珊瑚の壁が幾重にも張り巡らされ、海上の巨大迷宮のようになったクレタ風ラビリンスの前方には、さらに海堡と呼ばれる砲撃用の人工島がいくつも敷設され、冒険者たち、そしてマンドラゴラたちが展開していました。


 ゴゲー!


「水中から来るぞ! 総員防御姿勢!」


 海堡上に陣地を築いたオフライン弁慶たちがソナー役のマンドラゴラの警告を受けて防御姿勢をとり、飛び出してくるフライング・ダーツフィッシュの突撃を盾や防御魔法で受け止めます。

 さらに押し寄せてくる海蛇魚雷たちが次々と海堡に体当たりをして爆発。海堡そのものの破壊にかかります。

 これに対抗するのは、オフライン弁慶たちと一緒に海堡上に展開していた数十本のマンドラゴラたちでした。


 ゴゲゴゲゴゲゴゲゴゲゴゲゴゲゴゲ……。


 喉を慣らすように小さく声をあげ、マドレーヌをかじったマンドラゴラたちは天地を揺るがすような大音声を空と海にたたきつけます。


 ゴーッ!

 ゴォーーッ!

 ゲーッ!

 ゲェーーッ!

 ニャアアアアアアアアアアーーーーッ!


 解き放たれた膨大なエネルギーが衝撃波となって海中の魚型モンスターを昏倒させ、海蛇魚雷に至っては起爆、自爆へ追い込んで行きます。

 空中のステュムパーロスの鳥たちも、平衡感覚を失ったのか、おかしな方向に散らばっていきます。

 味方のはずのサメやグリフォンも少し巻き込まれて水面に浮いてしまっているのはやむをえない犠牲でしょうか。

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― 新着の感想 ―
水(を電気分解して水素と酸素の爆発力で聖餅弾を撃ち出す魔改造)鉄砲、とかなんですかね? パンかパイを焼成しつつ撃ち出すのだ!
さすがマンドラゴラ 地面から引き抜いた時の悲鳴で人が死ぬというその叫びが、ソルさんのスイーツで更に強化されたのね 気絶してるだけなら問題なし さあ露払いは終わった いよいよ決戦の時だ
呼ばずとも来るレイドモンスター 餌付けってすごいんだな 一発で壊れてこその美しさ 後がないからこそいい
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