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カゴット、アウト

 クレアにとんでもない物を売ろうとしていたカゴットに金たらいを落とすとその場にしばらく蹲り、クレアはカゴットを心配している。


「カゴットさん、大丈夫!?」


「クレア、そんな奴心配する必要ないぞ。」


「ちょっとお兄ちゃん!カゴットさんに何してるの!?」


「何してるって、たらいを落としただけだが?」


「だけって、そんな事したら危ないでしょ。」


「金たらいなんだから大丈夫だ。しばらく放っておけば復活するよ。」


 それに危ないって、本当は大岩を落としてやりたかったのに我慢して金たらいにしたのだから褒めてほしいくらいだ。


「それでも痛がってるんだから謝らないと駄目でしょ?」


「いや、謝るならこいつの方だろ。何クレアに精力剤や媚薬を売ろうとしてんだよ。というより、姉さんにそんな物渡そうとするな。使われる人の事も考えろよ。」


 そもそも今の姉さんに精力剤や媚薬って必要か?色毒があれば要らないような気がするんだけど。カゴットはまだ痛いらしく、頭を押さえながら立ち上がり。


「さっきも言ったけど、欲しがってる物を渡して喜んでもらおうと思ったんだよ。」


「喜ばせるにしても少しは考えろや。」


「それにクレアさんに売ったのはいずれ必要かと思ってさ。ねぇ、アレクさん?」


「大きなお世話だ!馬鹿野郎!」


 カゴットのニヤつき顔がムカついて、俺はもう一度その頭に金たらいを落としてやった。


「痛ーーっ!~~~っ!?」


「ちょっとお兄ちゃん!」


 クレアが何か言ってるが知るか!余計な事を言ったカゴットが悪い。


「それよりクレアもなんで精力剤や媚薬を買おうとしてんだよ。必要ないだろ?」


「必要だよ!」


 必要無いと思い言ってみたら、力強い否定を受けた。まさか、こんなに力強く否定されるとは思わなかったんだが、そんなにこれが欲しいのか?クレアにはまだ早いと思うが。


「そ、そうか。何に必要なんだよ?」


「内緒。」


「そこは教えろよ!」


「やーだー。言ったら、絶対に怒るもん。」


 こいつ、怒る使い方をする気だったのか。はぁ……、会った頃のクレアはこんな事考える子じゃなかったのになんでこんな子になったのやら。


「それにお兄ちゃん、覚えてる?」


「……何を。」


「昨日、朝ご飯を食べに行く時にお兄ちゃん「今度何でもお願いを聞くから」とか言ってたじゃん。」


「確かに昨日言ったけど……。」


 だからって、これは駄目だろ。なんでもとは言ったが限界はあるぞ。


「ちゃんとお金は自分で払うから駄目?」


「駄目だな。使い方を教えれば考えるけど。」


「う~…。あ~……。」


 おお、かなり葛藤してますなぁ。どんな使い方を考えてるのやら。


「よし。」


 クレアを見ていたら話すかどうか決めたらしく、こちらを向くと。


「おっ。どうするか、決まったのか?」


「うん。私の答えはこれだよ……「加重」」


「へ?…へぶっ!」


 油断していたせいで思いっ切り重力魔法に掛かってしまった。というよりも。


「おいクレア!どういつもりだ!?」


 使い方を話すでも話さないでもなく、まさかの魔法かよ!?


「ごめんね、お兄ちゃん。私気付いたの。」


「……何に。」


「こういうのは、やったもん勝ちだって。」


「なんで気付くの!?気付かなくていいよ!」


「おお、見事にアレクさんと似てきたな。」


 また復活したカゴットに似てると言われたが、これは嬉しくないんだけど。


「あっ、カゴットさん。精力剤と媚薬を売ってくださいな、はい。」


「お買い上げありがとうございます。」


「おいこら、カゴット!何、売ってんだよ!」


「そう言われても祭りで売ってる物だから、勝負に勝つために売らないと負けるだろ?」


「そりゃあ、そうだけど。…じゃなくて、お前祭りで何売ってんの!?」


 違法の薬ではないけど、流石に精力剤や媚薬を売るのはアウトだろ。そんな俺の疑問にカゴットは自信満々の顔をすると。


「アレクさん知らないの?バレなきゃ何も問題無い!」


「問題あるわ、ボケ!」


 こいつ、魔法を貰った時に似たような事を言ってたが、まさか祭りでそれをするか!?って、カゴット後ろ!

 屋台の前で俺たちが騒いで目立っていたからだろう。笑っているカゴットの頭を後ろから鷲掴みにし、冷めた声で。


「なら、バレたカゴット君はアウトね。」


「はっはっ……え?」


 カゴットがその声を聞くと油の切れた機械みたいに動きが悪くなりながら、後ろに立っていた人物を見る。


「は、はは。どうもヴィクトリア様。どうされましたか?」


「…………。」


 母さんはカゴットの質問に答えず、ニッコリと笑うだけ。それに対しカゴットは助けが無いか、目をあちこちに向けるが、皆関わりたくないらしく目を逸らす。俺の方にも助けを求める目を向けるが、知らない振り知らない振り。

 そんな誰も助けてくれない状況にカゴットが泣きそうになっていると。


「……カゴット君。」


「はい!」


「何を売ってたのかしら?」


「あ、あれです。超消スプ――。」


「何を売ってたのかしら?」


「はい!精力剤と媚薬です!」


 一回目は誤魔化そうとしたが、当然無理な訳であって。足元を少し凍らされると素直に白状した。


「あなた、勝負のルールは覚えてるよね?」


「だ、だけどルール違反じゃ…ひぃ!」


 弁明しようとしたカゴットだったが、その言葉は聞かれる事なく胸まで一気に凍った。


「確かにルール違反ではないけれど、子供がそんな物を売るのは倫理的にアウトでしょ。という事でカゴット君。」


「……はい。」


 続く言葉が予想出来るのか、カゴットの返事には力がない。


「お祭り対決、失格。」


「そんなぁー!」


 予想通り、母さんから失格を言い渡されたカゴットの叫びは祭りの喧騒にかき消された。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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