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練習の被害と説得の仕方

 俺、カゴット、シムの三人で誰が最初に無詠唱を使えるか競争をして三週間ほど経った。


 俺は今魔法の練習をするためにナルスタック領の西にある草原にシアンと一緒に来ていた。

 ナルスタック領は北に銀山、南には海、西に草原が広がり、東は森があって、今一緒にいるシアンは俺と行動する事が多かったため、二週間前に俺のお世話係に任命された。


「今日こそは成功させてやる。」


「頑張ってください。アレク様。」


 魔力を流し、今まで何度も打ってきた魔法を思い出し、頭の中で今から使う魔法を形作る。頭に詠唱が浮かんでいるが唱えず、魔法名を口にする。


「ロケット花火」


 魔法名を言うと手から真っすぐ飛んで行き、爆発音が聞こえた。


「で、で、出来たあっ!」


「おめでとうございます、アレク様!」


 無詠唱での発動が出来て、俺は空に向かって叫び。シアンは俺の成功にすごく喜んでくれているのか、泣いていた。


「ありがとうシアン。まさか泣くほど喜んでくれるとは嬉しいよ。」


「泣くほど喜ぶなんて、当たり前じゃないですか。次無詠唱の練習で屋敷の物を壊したら、私のお給料から引かれる所だったんですから。魔法の練習を明るい間は外でやるので問題は無いのですが、夜になると屋敷で練習して、毎回部屋を壊したり、屋敷の人を怖がらせたりしたじゃないですか。」


「シアンにすごく迷惑を掛けて、すみませんでした。」


 俺はその話を聞いて土下座をした。確かに屋敷で練習をした時、花火魔法で屋根を焦がしたり、屋敷中の窓ガラスを割ってしまったり。

 幻影魔法でヴィクトリア母さんに悪夢を掛けたら、屋敷全体を氷漬けにされたりした。その時は罰として、下半身を氷漬けにされて動けなくされた。解放された時、次にやったら全身を氷漬けにすると言ってたけど冗談、だよね?

 屋敷の人たちには花火魔法は基本魔法の火から派生したことにした。実際屋敷にある魔法の教本で、俺は基本の火と風を覚えているので、変に思われる事無く納得された。


 因みに幻影魔法はシュページ父さんが頼んだからやってみたが、後でバレて父さんは三日間氷漬けにされ、俺はその日の夕食が氷漬けで出された。


「いえ。無詠唱が使えるようになったんですから、もう大丈夫です。頭を上げてください。」


「そうか。ごめんな、迷惑掛けて。」


 俺は土下座をやめて立ち上がった。まあ使用人が仕えてる人に土下座をさせてる所を他の人に見られると変な噂が立ちそうだからな。


「取りあえず他の魔法でも無詠唱が出来るかやってみるか。」


「ここなら大丈夫だと思いますが、使う時は周りに気を付けてくださいね。」


「大丈夫だって。近くに街道があるけど見晴らしがよくて、遠くから誰か来ても気づくんだしさ。」


「確かにそう言われてみれば大丈夫ですね。」


「じゃあ最初は「二号玉」」


「二号玉」はヒュ~と音を立てながら空に上り、ドーンと音を立て破裂した。


「おお。見たシアン、成功した。」


「勿論見ましたとも、おめでとうございます。これなら大丈夫そうですね。」


「そうだね。せっかく花火魔法で無詠唱が出来るようになったからこれを試してみよっと。」


 調子に乗った俺は花火魔法で新しく覚えた魔法名を試してみることにした。


「ちょっと待――。きゃあっ!」


「「七号玉」…え?うわっ!」


 ヒュ~……ドーーン!


「「あっ……。」」


 何か言おうとしたシアンが、俺を巻き込みながらこけてしまい。そのせいで魔法名を言って発動寸前だった七号玉が空ではなく草原に向かって発射。

 七号玉が草原で破裂して大きな穴が出来てしまった。穴の大きさは、大体直径二百メートルくらいか?草原だから放置しようにもちょうど穴が出来た場所が街道で通行の妨げになっている。


「どうしようこれ。」


「どうするんですか。」


「バレたら間違いなく怒られるよね?」


「怒られますね。逃げて知らない振りをしようにも、草原に行くと伝えてしまいましたから直ぐに私達に疑いがきます。」


「今更だけど、シアンはどんな魔法が使えるの?」


「私の魔法は成長魔法と言って、植物の成長を操る魔法だからこの状況を解決出来ません。あと使える魔法は樹木魔法と言って、こちらは木を操る魔法ですがここには木が無いですね。」


「あーっ!どうすればいいんだ!」


 それを聞いて俺は頭を抱えた。


 穴を直そうにも直せそうな魔法は二人とも持ってないし、逃げようにも逃げれない。俺が使える魔法で直せそうなものは何かないか。

 そう思って、自分の持っている魔法を改めて見る。穴の中を毒魔法で満たして池を作る?そんな事をしたら俺が毒池に沈められるから却下。

 転移魔法で土を持ってこようにも、周りは草原だから目立ってバレてしまう。何とか直すか誤魔化すかしないと……。誤魔化す、か。それでいこう。


 一つ案が浮かんだので実行しようと思ったが、これをするにはシアンを説得しないといけないな。


「シアン、ちょっといいか。」


「はい。何か直す良い方法でも思いついたんですか?」


「今日俺らは草原で、魔法の練習はしていたけど穴は見ていない、そうだな?」


 何か良い案が浮かんだのかと期待したシアンだが、俺がそう言うと途端に呆れた顔をした。


「……いえ。見ていないと言ってもバレますよ。」


「俺に話を合わせてくれれば大丈夫。上手く誤魔化せるから。」


「誤魔化すと言ってもどうやって?それにシュページ様やヴィクトリア様にバレたりしたら。」


「大丈夫だから安心しろ。穴のことを聞かれても、知りませんと言えばいいから。」


「しかし――。」


 いくら言っても心配するシアンに俺は、別の方向から説得する事にした。


「それにいいの?俺が怒られるのはいつものことだけど、シアンは給料が引かれるんだよね?街道整備でいくら給料が引かれるかな?何年働けば給料は元に戻るのかな?」


「私は草原にいましたが穴なんか見ていません。」


「それでいいんだよ。」


 俺の誠実な説得にシアンは納得してくれた。こういう時はやっぱり、その人の普段の行いと誠実さが大事だな。

 シアンも納得してくれたから、俺は魔法を発動しようとする。


「あのぉ、アレク様。穴を見なかった事にするのは分かりましたが、どうやって誤魔化す気ですか?」


「まあ見てて。これも最近使えるようになった魔法名だけど……。」


 それを聞いてシアンは心配そうな顔をしたけど、最近覚えたとは言えこの魔法は何回か使ったことがあるので効果は分かっている。


「では。「幻影実態」」


 俺が穴に向かって魔法名を言うと、穴は塞がり元の街道に戻ったように見える。


「確かに幻影魔法なら誤魔化せますが…。」


「言いたいことは分かるけど、取りあえず魔法を掛けた場所を触ってみて。」


 幻影魔法なら誤魔化せるがそれでもバレるのでは、と思ったシアンに先ほど幻影実態を掛けた場所を触らせた。恐る恐る、その場所を触ったシアンは驚いた顔をして俺を見た。


「アレク様!幻影魔法なのに触れます!普通なら消えてしまうはずなのに全然消えません。」


「ふっふっふ。幻影実態はその名の通り、幻影が実態をもって一時的に触れるようになる魔法なんだ。だからこの通り「幻影実態」」


 俺がもう一度使うと、前に書斎で見たシアンの青いパンツが出てきた。


「きゃあああっ!何を出してるんですか!」


「いや、この魔法の凄さを見せようと思ってね。誤魔化すだけじゃなく頑張ればこの通り、肌触りやゴムの伸び縮みまで再現可能な所を――。」


「だからって、何で私のパンツなんですか!パンツを伸ばすのをやめてください!何でそんな事をするんですか!」


「……つい?」


「ついで、私のパンツを出して遊ばないでください!」


 誤魔化せると喜んでいたシアンを見て、俺が他の物を出せる所を見せようと思い、シアンのパンツを出して触っていたら怒りだした。


「ごめんごめん。でもこれなら誤魔化せるだろ?」


「まあそうですけど。この魔法はどれくらい効力が続くんですか?」


「使う人の魔力量によるけど。今、俺が入れた魔力量だと……三日から五日くらいかな。」


「それなら大丈夫そうですね。」


「ただ強い攻撃を受けると消えてしまうし、人も出せるけど攻撃出来ないんだよね。まあなんとか誤魔化せたし、シムとカゴットのとこに寄って帰るか。」


「はい。周りに人はいなかったですが、大きな音がしているので誰か来る前に離れましょう。」


 そうして俺らはシムとカゴットに無詠唱の事を伝え。三日後、町で合流する約束をして屋敷に帰った。

次回もお楽しみください。

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