皆が貰った魔法
ニーシャ様と会話して魔法をもらった俺は、先に終えて列から離れていたカゴットとシムと合流した。
「やあ。思ったより長かったけど、どうしたんだいアレクさん?」
「ちゃんとアレクも魔法を貰えたんだよね?」
「…別に祈っても中々貰えなかったから、貰えるまで祈っていただけだ。」
カゴットはからかう感じでシムは心配そうに聞いてきたので誤魔化した。そもそも「ニーシャ様と直接会話をして魔法を貰いました。」とか、言っても信じてもらえるはずないしな。それどころか病院に放り込まれるかもしれんな。
「そうか。貰った魔法を聞いても?」
「隠すことじゃないからいいけど…。俺が貰ったのは幻影魔法だな。そういうお前らはどんな魔法を貰ったんだ?」
「俺は薬魔法を貰ったよ。薬は仕入れが大変だから、これで商売の役に立つ。」
「私は支援魔法だったね。」
カゴットは薬魔法でシムは支援魔法か。
支援魔法は強化魔法より能力の上昇は劣るが、自分だけしか能力を上昇出来ない強化魔法と違って、自分と相手の能力を高める魔法だな。
薬魔法は初めて聞いたけど新しい魔法か?
「なあカゴット、薬魔法なんて聞いたことがないんだがどんな魔法だ?」
「俺も初めて聞いたから教会の人に聞いてみたら、材料を組み合わせて薬を作る魔法って聞いたな。」
「それ材料次第で、普通じゃ作れない薬も出来るんじゃないか?」
「よく気づいたな!流石アレクさん、その通り!この魔法で普通じゃ作れない薬を作り出し、ばんばん稼いでやる。」
「ははは。……そうか変な薬を作って逮捕されんようにな。」
「大丈夫。犯罪をしても、ばれなきゃ逮捕されんよ。」
ダメだこいつ思考が犯罪者の方に寄っていやがる。
「でもそういう事を言ってる人って逮捕されやすいよね?」
「確かに。始めは稼げても少しのミスで逮捕までいく人みたいだな。」
「ぐっ…。それはまあ、そうだけど。」
「お願いだから、友達が逮捕されるなんて嫌だからな。」
「まあ。変な薬の噂が領地内で出たら、真っ先にお前を捕まえて自警団に連れて行ってやるよ。」
「酷い!そこは見逃すとか無いの!?」
「あいにく犯罪の片棒を担ぐ気はないんでな。」
「私もごめんけどないかな。」
カゴットは俺らが助けてくれないと分かり、おとなしく商売するように考え始めた。俺も友達を牢屋に入れたくないし、考えを改めてくれて助かった。
そんな風に三人で雑談をして待っていると全員終わったのかジバイが終了を告げた。
「本日はお疲れさまでした。今回は既存の魔法しかありませんでしたが、魔法を使い続ければ別の魔法を覚えられるので、その時はぜひ我らが――。」
また話が長くなった。好きなのは分かるがこんな長い話は一回で十分だ。隣を見ると二人とも「またか」みたいな顔をしていた。その後ジバイの話は三十分経ってからようやく終わり俺らは教会を出た。
「やっと終わった。ジバイめ話が長すぎる。」
「そうだね。祈りよりジバイの話の方が長かったよ。」
「私も後ろで聞いていましたが、あんなに喋るとは思いませんでした。」
「俺は、自分の好きなことを他の人にも好きになってもらおうとするジバイさんの気持ち、少し分かるけどな。ただ興味ない人からすると苦痛なだけなんだけど。」
「「「本当それ(です)。」」」
カゴットの言葉に俺たちは凄く頷いた。
「お前ら家に帰って魔法を試すんだろ?」
教会であった事を四人で喋りながら帰る途中、分かれ道が近づいてきた時二人に聞いてみた。
「もちろん。しっかり把握しておかないと商売の役に立たないからね。」
「私もいざという時のために練習しようかなと思っているよ。出来たら次遊ぶ時までには詠唱せずに発動できたらいいな。」
「まあ。使いまくってたら無詠唱はすぐできるだろ。」
「それなら三人で競争しないか?最初に出来た人に出来てない二人が何か奢るということでどう?」
カゴットはシムの話を聞いて競争を持ち掛けてきた。もちろん俺は賛成だがシムはどうだろう、と思いそちらを見るとシムもやる気だった。
「よし、二人とも賛成っぽいな。正直シムさんが乗ってくれるのは意外だったけど。」
「競争した方が早く出来そうだからね。」
「俺が勝ったら二人に何を奢らそうかな。」
「アレクさん頼むから俺らのお小遣いで買える範囲で頼むよ。」
何を買わせようか考えているとカゴットが釘をさしてきた。
「いくら何でもそこまでしない。せいぜい一か月分のお小遣いが飛んでいくだけだ。」
「十分高いよ!」
「私もそれはきついかな。」
「仕方ない。なら一人あたり銀貨二十枚でどうかな?」
「まあそれくらいなら。」
「うん。私もそれなら大丈夫だね。」
「じゃあ決まりだな。それじゃあ俺はこっちだから。」
「ではアレクさん、さよなら。」
「ああ。気を付けて帰りなよ。練習で家の人に怒られないようにね。」
「そんな馬鹿なことしないよ!」
ルールが決まった時、ちょうど分かれ道に来たのでそのまま二人と別れる。二人と別れシアンと歩いていると先程の話についてシアンが聞いてきた。
「アレク様。魔法の練習は今回貰った魔法だけですか?」
「いや。他の魔法も一緒に練習するけど。それがどうかした?」
「いえ、幻影魔法の練習だけでも問題が起こりそうなのに、他の魔法も一緒に練習なんかしたら屋敷にまた被害が出るのではと思いまして。」
「シアンは心配性だな。大丈夫だって。威力の低いやつで練習するから問題なんか起こらないよ。」
「そうですか。」
俺が大丈夫と言ってもシアンはまだ不安そうな顔をして、納得できてなさそうだ。まあ一度屋敷を破壊したせいなんだけどね。しかし毎回魔法を使うたびに被害が出てたらろくに練習もできないから、あんな事はそうそう起こらないはずだ。
そんな風にシアンに魔法の練習をする時の話をしていたら屋敷についた。
「ただいま、ヴィクトリア母さん。」
「おかえりなさい。アレク。」
家に帰るとちょうど玄関でヴィクトリア母さんと出会った。
「今日魔法を貰ったんでしょ。どんな魔法を貰ったの?」
「幻影魔法を貰ったよ。」
「ふーん。幻影魔法、ね。……ちょうどいいわ。」
俺が幻影魔法を貰ったと答えるとヴィクトリア母さんが何か呟いて、俺の肩に手を置いてきた。内緒にして逃げればよかった、と思ったがもう遅い。
「幻影魔法のちょうどいい練習があるのだけど……やってみる?」
母よ聞いてる風を装って実際はその魔法でちょっと手伝えって目で言ってるよ。断ったらどんな目にあうか分からないから答えは「はい」一択しかないよね。
「やってみます。」
「……何を考えているか想像がつくから言っておくけど、断っても何もしないわよ。」
どうやら俺が考えていた事はヴィクトリア母さんにばれていたらしい。シアンとは玄関で別れ母さんの後ろをついて行くと到着した所はシュページ父さんの執務室の前だった。
「ここまで来れば何をすればいいか想像できるけど、一応聞くね。俺は何をすればいいの?」
「あなたはここでシュページに向けて魔法を掛けて欲しいの。あの人、お昼に解放したら土下座しながら「浮気は本当にしていないし、そんな事をすればお前から酷い目に遭う」って泣いて言うのよ。大袈裟ねぇ。私がそんな酷い事をするはずないのに……。ねぇアレク?」
「……自分が思ってる事と他人が思ってる……そうですね。母さんは優しいから酷い事する訳ないよね。」
「ふふふ。アレクは良い子ね。」
そう言って頭を撫でてるけど、俺が否定しようとしたら殺気を感じたのですが気のせいですかね?
しかし、泣きながら土下座。シュページ父さん相当ヴィクトリア母さんのこと怖がってるな。まあ怒らせると一日氷漬けにさせられるもんな。俺だって怖いわ。
「で、ここからが本題。シュページが本当に浮気しないかあなたの幻影魔法で試してみようと思ったの。」
「ちなみに浮気をしたらどうするの?」
「フフフ。アレクは暫くの間シュページを見なくても寂しくないわよね?」
「はい!私はヴィクトリア母さんが居れば大丈夫です!」
「いい返事。」
ダメだ、ヴィクトリア母さん本気でしばらくの間シュページ父さんをどこか人目のつかない場所に隠す気だ。頼むから間違った選択をしないでよ、父さん。
「じゃあお願いね。」
「いいけど。初めて使うから失敗しても怒らないでよ。」
「ええ。そこは約束するわ。まあ、これはあなたの魔法の練習のついでだから。じゃあお願いね。」
ヴィクトリア母さんに怒らない約束をしてから、俺は扉を少し開ける。取りあえず幻を見せればいいんだよね。俺は詠唱を唱え魔法を発動する。
「相手の絶望と恐怖を呼び覚ませ「虎馬」」
「待ちなさい!その魔法は――。」
ガシャーン!
ヴィクトリア母さんが珍しく慌てて何か言おうとしたが、その言葉は仕事部屋から聞こえた大きな音で遮られた。大きな音がしたが中で何が起こったんだ?そう思って中を見ると……。
「ごめんなさい。ごめんなさい。どうか許してください。氷漬けは勘弁してください。体の一部を氷漬けにするのも勘弁してください。意識のある氷漬けで湖の底に沈めるのは本気でやめてください。」
中を見ると火の玉が浮いていてシュページ父さんが火の玉に土下座をし早口で謝罪している。というよりこの謝ってる相手、どう考えてもヴィクトリア母さんだよね。そう思って母さんの方を見るとうっとりとした表情で見ていた。……今更だけどイントア姉さんがおかしいのはヴィクトリア母さんがおかしいからじゃないかな?
俺は魔法を解除したがシュページ父さんはまだ泣きながら土下座をしてるし、ヴィクトリア母さんはそれをうっとりと見ているしで、どうしようもないので俺は勝手に部屋に戻った。
あの後ヴィクトリア母さんが部屋に来て、またシュページ父さんに掛けてと頼まれたが丁重にお断りした。
次回は日が少し進みます。




