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教会に行って魔法を貰おう

  朝、目が覚めた俺は食堂に行くためリビングに行くとそこにあったのは朝日を浴びてキラキラと反射している、土下座の体勢で氷漬けにされたシュページ父さんだった。

…そういえば昨日、皆が俺の部屋に来た時にシュページ父さんが見当たらなかったが、氷漬けにされてたんだ。


 この家ではよくシュページ父さんが何かやらかすとヴィクトリア母さんに氷漬けにされることが多いが、まあいつもの事だから、周りの使用人達も特に気にせず仕事をしているな。俺も今日は教会に行くことだし、シュページ父さんには悪いけど俺にはどうする事も出来ないからもう少し氷漬けになっててね。


 食堂に行くとヴィクトリア母さんが椅子に座り紅茶を飲んでいた。


「おはよう、ヴィクトリア母さん。」


「おはよう、アレク。体は大丈夫そうね。今日は教会に行くんでしょ?」


 挨拶をすると返してくれたヴィクトリア母さんは俺の姿を見て大丈夫と判断したのか今日の予定を聞いてきた。


「うん、昨日言った通り今日は教会に行くよ。ところでシュページ父さんはいつ解放するの?」


「そうね……昼まであのままにしとこうと思ってるけど。あれに何か用事でもあるの?」


 うわあ、シュページ父さんをあれ呼ばわりしてる所を見るにまだ怒りは収まってないな。挨拶をした時は普通だったのに俺が父さんの話題を出したら笑顔だが黒いオーラが出てきた。別の話題に変えないと俺にも被害がきそうだ。


「特に用事はないけどあんな場所で凍らせてたら邪魔になるんじゃないかな、と。」


「ああ、それは大丈夫。この後あれを邪魔にならないように倉庫に移動させるから。」


「それなら人の邪魔にならないね。俺が出る時誰が就いてくるの?」


 ごめん、シュページ父さん。一応助けれるか言ってみたが俺には無理だったよ。助けるのが無理だと分かったら自分に被害がくる前に話題を変えるのみ。


「そうねえ。昨日は原因不明の爆発があったせいで、屋敷の点検して使用人は大忙しなのよね。アレクの部屋以外の被害のあった場所も把握しないといけないけど、知っている中で一番被害が酷いのが屋根ね。」


 すみませんでした、使用人の皆さん。俺が魔法をうっかり部屋に放ったせいで仕事が増えてしまって。俺は心の中で使用人の皆さんに土下座した。


「お金はルーベルのおかげで困ってないからいいけど、問題は生活に支障が出てるのよね。」


 我が家はルーベル兄さんが前の世界にあった物をこの世界で色々と開発して売っているからお金には困っていない。

 国によって多少変わるがこの国の貨幣はこうなっている。


 鉄貨百枚=銅貨一枚


 銅貨百枚=銀貨一枚


 銀貨百枚=金貨一枚


 金貨百枚=白金貨一枚


「屋根の被害が酷いならいっそのこと屋敷を増築しない?子爵なのに屋敷が小さいんだしさ。来客があった時小さい屋敷だと舐められるし、使用人も増えて寮の部屋を増やす要望があってちょうどいいかと思うんだけど。」


 ナルスタック家の屋敷は現在、家族が住む三階建ての本館と使用人の住む小さな寮が建っている。


「そうねぇ。あれが当主になって舐められてるのは今更だけど…。わかったわ増築をしましょう。」


 あれぇ?普通こういうのはシュページ父さんに話をしてからじゃないの?なんでヴィクトリア母さんが決定するの?そんな考えが顔に出たのかヴィクトリア母さんは笑って。


「ああ。シュページに話を通す必要はないわ。書類の仕事は確かにシュページがやっているけど、最終決定は私がしているもの。」


「……シュページ父さんって当主だよね?実はヴィクトリア母さんが当主とかないよね?」


「書類上はシュページが当主ね。私はあれを裏で支えてるだけよ。」


 つまり裏の当主は母さんで父さんはお飾り当主、と。こういう話を聞くたびに思うけどシュページ父さんはヴィクトリア母さんとよく結婚できたな。この家の最大の謎じゃないかな?


「話がずれたけど教会に就いて行く人は私から一人か二人、手の空いてそうな人に頼むから気にしなくて大丈夫よ。」


 二人がどうやって結婚したか考えていると就いて行く人は探してくれるらしいから、そちらは任せて俺は朝飯を食べて行くための準備を始めた。一瞬手の空いてそうな人で一人思い浮かんだが違うよな。

 準備を終えて玄関に行くと先程思い浮かび、昨日見たメイドがいた。


「本当にシアンかよ。」


「はい?どうかしましたか?」


 そういえばルーベル兄さんが言っていたが、こういうのをフラグって言うんだったけ?


「いや何でもない。今日もよろしく。」


「ええ。お任せください。」


 俺はシアンを連れて町にある教会に向かった。道中は何事もなく無事に教会に着くと子供がたくさん集まっているが、そこに知っている奴が二人いた。

 一人は濃い茶色の短髪で細目のカゴット=イシュー。もう一人は腰まである艶やかな黒髪で長髪のシム=グラシア。二人はこちらに気づくと近づいてきた。


「やあ、アレクさん五歳おめでとう。これでやっと魔法を使えるね。」


「アレク、五歳おめでとう。昨日屋敷の方で大きな音が鳴っていたけど何かあったの?」


「ありがとう二人とも。昨日は曇っていたから雷でもなったんじゃないか?」


 二人は五歳になったのを祝ってくれたが、シムは昨日の音が気になったのか聞いてきたので雷のせいにして誤魔化した。


「二人は初めてだよね。こっちは最近雇ったメイドでシアンだ。で、シアンこっちがカゴット=イシュー。この町にあるイシュー商会の息子で次男。もう一人がシム=グラシア。…一応平民かな?」


「よろしくシアンさん。紹介されましたカゴット=イシューです。何か欲しい物があれば是非うちへ。」


「初めましてカゴットさん。お世話係のシアンです。欲しい物があったら寄らせていただきます。」


「一応とは酷いなアレク僕は平民だよ。初めましてシアンさん。シム=グラシアです。」


「初めましてシムさん。とても可愛いらしいですね。」


「ぶはっ!」


 俺は三人が挨拶をしているのを聞いているとシアンがシムを可愛いと褒めるのを聞いて噴き出した。


「?どうされましたか、アレク様?」


「…シアン。女に見えるけどシムは男だよ。」


「また冗談ですか?こんなにも線が細く、肌も白くて髪も綺麗で…声も女性ですよ?」


 シアンのその発言を聞いてカゴットは笑いを堪え、シムは少し落ち込んでいた。


「あの、シアンさん。私は本当に男なんですが…。そんなに女に見えますか?」


「……本当に男?」


「…はい。」


「勘違いをして、大変申し訳ございませんでした!」


「あっはっはっは!はっはっは!」


 シアンが慌てて謝りだすとカゴットは我慢の限界か爆笑しだした。まあ俺も我慢の限界で笑ってるけど。シムは落ち込み、シアンはひたすら謝り、俺とカゴットは爆笑。これでは話もできないので俺達は落ち着くのを待った。


「はっはっは。いやー笑った笑った。シムさんは毎回、初対面の人に女と勘違いされるな。」


「確かに去年なんか男に五回ぐらい告白されてたしな。」


「いやいや、アレクさん。告白は十回で五回は誘拐されそうになった回数だよ。」


「そうだっけ?いろんな被害にあってるから、どれがどれか分からなくなってた。」


「二人ともその話はもういいよ!だいたいアレクは人のことを笑えないでしょ!」


 その言葉を聞いて俺らは黙った。そうなんだよな。シムの誘拐やストーカーの被害は全部別人だけど俺の場合同一犯、それも身内だからなぁ。

 三人はイントア姉さんを思い浮かべてため息を吐いた。新人のシアンだけは会ったことないのでいまいち分かってないけど。


「……ごめん。別の話をしよ。」


「「賛成。」」


 そうして別の話をしている間に教会の準備が完了して俺達は中に入った。中に入ると正面にはステンドグラスがあり、その下にルーベル兄さんの隣にいた神様に似た像があった。シアンは後ろで待ってもらい、喋りながら座って待っていると人が出てきた。


「皆様初めまして。魔法研究教会所属のジバイと申します。今日、我らが神であるニーシャ様から魔法を与えられ使えることに私は喜ばしく思います。是非皆様には魔法をたくさん使ってもらい、知らない魔法が発現すれば我が魔法研究教会へお越しください。我ら魔法研究教会は日々魔法の――。」


 ああ。このジバイって人は研究者タイプか。ジバイが魔法の素晴らしさを語っている間、俺は死んだ目で聞き流していた。隣を見ればカゴットとシムも同じ死んだ目をしている。

 俺が知っている魔法についての知識は、現在知られている魔法の種類は豊富で有名な魔法から聞いたこともなく一人しか使える人がいない魔法まで様々だ。その原因は大本の魔法から派生魔法が生まれ、更に派生魔法から派生魔法が生まれると繰り返していき未だに増え続けている。そのせいで正確な魔法の数を知っている人は多分いない。


 四十分ぐらい経っただろうか、ようやくジバイの話は終わり祈りが開始された。というよりもこのままでは話が終わりそうになく、いつまで経っても始まらないので他の神父らがジバイを止めたのだ。止められたジバイは喋り足りないのか若干不服そうにしていたが。


「…長い話にお付き合いいただきありがとうございました。では順番にニーシャ様の前へ行き、膝を折り祈りを捧げてください。」


 皆一列で順番に並び祈りを捧げている様子を俺は並びながら見ているが、ある者は欲しい魔法が貰えたのか喜び、またある者は貰えなかったのか落ち込んでいた。俺は誕生日プレゼントでルーベル兄さんに四つ魔法を貰っているから何でもいいんだけどな。何て思っていると俺の番が来た。


「では次の方祈りをニーシャ様へ。」


 ジバイに言われ俺は祈りを捧げたら頭に声が聞こえた。


「(ようやく弟か。我は待ちくたびれたぞ。)」


「(っ!!)


 声に驚いて顔を上げたが誰もおらずジバイに心配された。


「どうされましたか。どこか具合でも悪いのですか?もしそうなら教会内に医務室があります――。」


「いえ、大丈夫です。自分の気のせいでした。」


「そうでしたか。もし具合が悪くなったら申してください。医務室へ案内しますから。」


「ありがとうございます。何でもないので祈りを再開しますね。」


 そう言って俺は再び祈りを捧げた。するとまた声が頭に聞こえた。


「(やれやれ。何をそんなに驚いておる。まさか、私の美しき声を忘れたわけではあるまいな。)」


「(いえ、突然声が聞こえて驚いてしまって。)」


「(まあ良い。夢の中で言ったことを覚えているか?)」


「(?…ああ、プレゼントを渡す話ですか?)」


「(そうそれじゃ。お主に渡すなら魔法を渡そうと思ったのはいいが、何を渡そうか悩んでようやく渡す魔法を決めた。)」


「(そんなに悩んでいただき、ありがとうございます。で、どのような魔法を貰えるのでしょう。)」


「(うむ。お主にはこの魔法。と決めたんだがその前に。)」


「(?)」


「(お主は少し喋り方が固い。もう少し楽に喋れ。)」


「(しかしそれは。)」


「(よいよい。許す。部下でいずれ我が夫にする相手の弟なのだから、もう少し砕けて喋っていいんだぞ。私の事もニーシャお姉さま、と呼んでもよい。)」


 ルーベル兄さんんっ!!あなた部下どころか旦那として狙われてるじゃないですか!いったい何をしたらそんな事になるの!?


「(はっはっは。で、喋ってくれるか?)」


「(はあ、わかりました。お姉さまはともかく、普通に喋ることにしますよ。)」


「(うんうん。それでよい。ではお主に渡す魔法だが名を幻影魔法と言う)」


「(幻影魔法?)」


「(ああ。幻影魔法は相手に幻を見せる魔法だ。それと前の特典だが収納魔法に入れておいた。)」


「(はあ。)」


「(長くなったなプレゼントは渡したし通信を終わる。この魔法で面白い騒ぎを起こしてくれる事を楽しみにしておる。では、さらばじゃ。)」


 そう言ってニーシャ様の声は聞こえなくなり次の人に順番を変わった。


今回も全て読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみください。

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