ルール説明
「じゃあ教えるけど、私の考えた遊びは鬼ごっこよ。」
母さんの考えた遊びは意外と普通だったが、絶対名前通りに受け取ってはいけない。俺らは嫌な予感がして逃げ出そうと暴れた。
「あらあら。二人ともそんなに暴れてどうしたの?」
「どうしたも、こうしたもあるか!そんな危険な遊び、俺は嫌だ!」
「大丈夫よ。あなた達がした追いかけっこよりは安全だから。」
名前からして不穏なのに姉さんの追いかけっこより安全とは思えないんですが。
「すみませんが私は人と会う約束があるのを忘れていたので、その遊びはまたの――。」
「そちらには他の人を寄越して、イントアは急用が出来て来られませんと説明するから大丈夫よ。相手に説明するため何処で待ち合わせをしてるのか教えてくれないかしら?」
姉さんも予定を理由に逃げ出そうとしたが、当然嘘とバレていて逃がしてもらえない。
「すみません。どうやら私の勘違いでした。人と会う予定はありませんでしたね。」
「うっかりさんね。ちゃんと予定を確認しないと駄目よ。」
「……はい。」
無駄と分かっていながら俺らは逃げ出そうとしたが逃げれず。俺たちが疲れて動かなくなるのを見て、遊びの続きを説明した。
「大人しくなったから説明するわね。」
「正直名前からして嫌なんだけど。」
「私もそう思いますね。生きていられたらいいのですが。」
「何か言った?」
「「いえ何でもないです!説明をお願いします!」」
俺らが小声で話したら頭に置かれている手に力を込められながら聞かれたけど、そんな事をされたら何もない、としか言えないよ。
「次は私が聞く前にうっかり魔法を使ってしまうかもしれないから気を付けるのよ?」
「「はい!」」
「うん。いい返事。では説明をするけど、ルールは簡単で私たちが鬼であなた達は逃げるの。二人が捕まったらあなた達の負けで、捕まえたら私たちの勝ち。範囲はそうね……この森にしましょうか。森から出たらその時点で負け、上空は認めるわ。勿論私達も森から出たら負けね。制限時間は長すぎても逃げきれないだろうから二時間にしましょう。何か質問はあるかしら?」
質問……質問か。取りあえず説明を聞いて思った事は。
「思ったより普通だね?」
「正直、魔物から逃げる鬼ごっこと思ってました。」
「失礼ね。そんな酷い事はしないわよ。それよりもルールはこれでいいかしら?」
「聞いてる限りでは問題ないな。」
「ですね。」
「なら二人はやるということでいいわね。言い忘れてたけど負けたら罰ゲームがあるから。」
鬼ごっこするだけで特に問題はないな、とか思ったら決めてから言うか。言い忘れてたとか言ったが絶対わざとだろ。
「それ、参加を決めてから言うのは卑怯だろ!」
「わざと忘れてたでしょ!」
「そんな事しないわよ。で、罰ゲームだけどあなた達。私が記憶魔法を使えるのは知ってるよね?」
だからこんなに怖がってるんですけどね。俺と姉さんはその言葉に頷いた。
「町の人が多い場所でその魔法を使って、二人の恥ずかしい記憶を皆に見せるから。」
「ふざけるな!そんな事をされたら町に行けなくなるわ!」
「冗談じゃありませんよ!町には学園の同級生も祭りを見るために来てるんですから!もし恥ずかしい記憶を同級生に見られたりしたら、私は……。」
「ああ。確かに町には生徒を何人か見かけたわね~。」
母さんは俺らの反応が予想通りなのか笑っている。こうなったら母さんを止めれそうなネフィーさんに頼むしかない。
そう思ってネフィーさんに頼もうとしたら、その前に母さんが。
「可哀そうと思って止めなくてもいいからね。それよりネフィーも一緒に遊びましょ?」
「は~い。最近はヴィーちゃんとこういった体を動かす遊びをしてないからいいね~。」
くそ、先手を打たれた。ならば兄さんならどうだ。そう思って兄さんに期待した目を向けるも申し訳なさそうな顔をして。
「期待してるとこ済まんが、俺には二人を止める自信はないわ。すまん。」
「すまん、じゃないよ!兄さんなら力づくでも止めれるでしょ!?」
「出来るか、出来ないかだと出来るけど。……それをやったら俺が町を歩けなくなるんだ。」
つまり力づくで止めたら町もしくは王都で兄さんの恥ずかしい記憶を見せる、と。
「普通、親が子供を脅すか!?」
「脅すだなんて人聞きの悪い言い方しないで。これは話合ってお互いが納得した事だから。」
本当か、と思い兄さんを見ると母さんを見ながらため息を吐いて。
「俺が魔力切れで動けなくなった時、恥ずかしい記憶を保存されてしまって「これを他の人に見せられたくなかったら――。」みたいな感じの話し合いだったけどな。」
「脅しで合ってるじゃん!」
「動けないのを良いことに脅しのネタを奪うとは酷いですね。」
「だから脅しでは無いと言ってるでしょ。あんまりしつこいと罰ゲーム関係なしに今から恥ずかしい記憶を町の人に見せるわよ。」
「「すみませんでした。」」
脅しを聞いて、即謝罪した。
「それで良いのよ。私は脅していないのだから。」
母さんは俺らの謝罪を見て満足気にしているが、今は体に抱き着いているネフィーさんが母さんを見ながら。
「懐かしいなぁ。ヴィーちゃんったら学生の時もこうやって先輩や先生を謝らせてたよね~。」
聞いて大丈夫か分からない内容を聞かされ、母さんを見ると涼しい顔をしており。
「ああ。そんな事もあったわね。あれは私の大事なものに手を出そうとしたから謝らせたのよ。勿論、二度と手を出そうと思わないくらいしっかり叱ってね。」
「そんな人が多くていつも叱ってたから、学園では仲の良い友達が私ぐらいしかいなかったもんね~。」
「あなたが友達だったらそれで良いのよ。」
そう言って愛おしそうにネフィーさんの頭を撫でる母さん。
それを見て俺と姉さんは何となく察して兄さんの方を見ると、黙っておくよう口の前に指を立てて首を横に振っていた。多分、分かっても口に出すなとかそんな意味だろう。
ここで母さんに話かけると遊ぶ間もなく氷漬けにされそうなので、俺達は二人を邪魔しないように黙って見ておく事にした。
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