廃坑で追いかけっこ
山賊組二人がゆっくりと待つことを選んでいる間、部屋を出た俺たちはというと。
「いいやぁあ!お願い許して!」
「許す訳ないでしょ!「色毒」「麻痺毒」」
廃坑で姉さん達と追いかけっこをしていた。ドワンは体力の限界で脱落しているけど。
「おいアレク!お前の姉ちゃん、俺らを殺しに来てねぇか!?」
「姉さんが俺を殺すことは無いと思うけど、お前の方はどうか知らん!」
「冷たいな、おい!男のロマンについて熱く語った仲じゃないか!助けてくれよ!?」
「そのロマンが原因だけどな!たかが胸程度でなんでこんなに怒るんだよ!?」
大体、家出の話から何で胸の話になったけ?その経緯が思いだせないんだけど。
「お兄ちゃん。捕まるのも時間の問題だから、大人しく捕まっちゃいなよ。」
「無理!クレアに捕まるだけならいいけど、クレアの前に鬼がいるから無理!」
クレアも追いかけているが、俺が姉さんに捕まったら酷い目に遭うと分かっているから、魔法を使わず追いかけるだけなのが救いだな。
「誰が鬼ですか!怪我をしないように加減をしていましたが少しきついお仕置きをしますね。「神経毒」「溶解毒」」
「危なっ!」
姉さんが撃ってきた毒を避けると、神経毒は他の毒と同じく土に浸み込んだが溶解毒の方はシュ~、という音を立てて溶けていた。
それを見た三人は顔を青ざめさせる。
「ちょっとお姉ちゃん!お兄ちゃんを殺す気!?」
真っ先にクレアが復活し姉さんに抗議した。それに対し姉さんは笑顔で否定する。
「まさか。私が可愛いアレクを殺すなんて事する筈ないでしょ。これは足に当てて動けなくなった所を捕まえるためなのですから。」
「それでもやりすぎだよ!お兄ちゃんが歩けなくなったらどうするの!?」
「それなら大丈夫です。歩けなくなったら、私が責任を持って面倒を見ますから。」
姉さんはあんな事を言ってるけど俺の中では全然大丈夫じゃないよ!姉さんに面倒を見られるなんて、何されるか分かったもんじゃない!
同じく、今の話を聞いていたリマルも姉さんのヤバさがこの追いかけっこで理解したらしく。
「なぁアレク。姉ちゃんはあんな事を言ってるけど、あれって優しく面倒を見るじゃ済まないよな?」
「リマルも姉さんの事が分かってきたな。容赦なく毒を撃ってくる人なのに怪我をしたら優しく面倒を見てくれると思う?」
「思わないな。」
「だろ。」
「それより姉ちゃんの毒魔法をお前の魔法で撃ち落とせないのか?」
「姉さん一人なら使うけどクレアを巻き込むから無理。そういうお前はどうなんだ?」
「俺の魔法は足止めの類だから撃ち落とすのは無理だ。」
「それならクレアだけでも足止めしてくれ。」
「それなら何とか出来るな。」
「よし頼んだ。但しクレアに怪我をさせず、泣かせるような事はせず、危険の無いように足止めを頼むぞ。」
「注文が多いな、おい!この状況でそれは無茶じゃないか!?」
「別に姉さんなら多少の足止めは粉砕するけど、クレアはか弱い?んだぞ!優しくして当然だろ!」
「か弱いに疑問を持ってる時点で、か弱くねぇよ!」
「ああ、もう!妹を心配して何が悪い!とにかく足止めを頼む!」
「なるべく怪我はさせない様にするから文句を言うなよ。」
そう言うとリマルは走りながら後ろを向き、手を地面に向けると。
「「スライム液」」
魔法を使うと前を向き普通に走り始め、後ろの方からはここに来るまでの間に何回も聞いたカチッ、の音が聞こえた。それと同時にクレアの悲鳴が聞こえたので振り向いたら。
「やだっ!何これ!?服が溶けてる!?」
服が溶け、肌が露出してしまった部分を見えない様に泣きながら腕で隠しているクレアが座り込んでいた。
クレアの悲鳴を聞いて、無事に罠に掛かった事が分かったリマルは嬉しそうに。
「どうだ!俺の罠魔法、スライム液。この液に触れて溶かせぬ服は無い!」
「溶かせぬ服は無い!じゃねぇよ!おい変態!クレアに何してくれてんの!?」
「変態じゃないわ!俺は普通の性癖だよ!」
「知るかそんな事!それよりクレアにあんな辱めを与えてどうしてくれるんだよ!?」
「お前が言ったんだろ!怪我をさせずに足止めしろと!」
「だからって女の服を溶かすって普通考えるか!?お前も服を溶かされてみろ!ついでに溶かした俺の服を返せ!」
「嫌に決まってるだろ!それより姉ちゃんの方をどうにかしてくれ、何か俺の方に毒が集中してるんだけど!?」
そう言われると確かに。先程までは俺の方によく毒が飛んできたが、クレアの服が溶かされた辺りからリマルの方に飛ぶ割合が高くなった。そしてリマルの叫びを聞いた姉さんは女の敵を見る目をして。
「集中するのは当たり前でしょ。クレアちゃんの服を溶かして駄目にしたのだから、あなたを溶かさないとつり合いが取れないでしょ?「溶解毒」」
「お前の姉ちゃん物騒過ぎるだろ!どんな教育を受けたらあんなのになるんだよ!」
「俺が知るか!一つ言えることは母さんの教育が悪いとしか言えないな!「ロケット花火」」
叫びながら飛んできた毒を撃ち落とすためにロケット花火を撃ったが、全部溶かされてしまい撃ち落とせない。
「嘘だろ!?ありかよそれ!」
「さぁ。撃ち落とす事が出来ないのだから二人とも大人しく捕まりなさい。その眼鏡は骨も残さず溶かすけど、アレクは好きな部位を溶かしてあげますからね。」
「「溶かすのは決定かよ!」」
この姉、昔よりも怖いんだけど!誰か助けに来てくれませんかねぇ!?
「おいリマル。ここじゃ逃げれないから、一旦外に出るぞ。」
「そして誰でもいいから助けを呼ぶと?あの姉ちゃんを止めれる人がいるのか?」
「何人かはいるな。」
「ならその人たち任すか……。出口はこっちだ!」
「よし決まったな。…無駄だと思うけど「幻像」」
外に出て運良く兄さんたちに会えれば姉さんを止められる。そう思って出口に行くまでの時間稼ぎで姉さんに幻像で俺の姿を見せたが躊躇なく毒で溶かされた。
「そんな偽物を出して騙せるとでも思ってるのかしら?幻ごとき、私が弟を間違う筈ないでしょ。」
分かっていたけど容赦ねぇな、この姉。幻とはいえ弟だぞ、少しは躊躇ってくれてもいいのに。
「それで駄目なら。「一号玉」」
クレアを巻き込む事も無くなり、当たっても被害が最小限になり、天井も崩れないと思う一号玉を放った。
「甘いですね。「溶解毒」」
一号玉を撃ってきた事に姉さんは一瞬驚くも溶解毒で一号玉も溶かされてしまった。
「その毒ちょっと強すぎませんかね!?」
「いいでしょ、この毒。何個かお気に入りの毒があるけど、この毒も気に入ってるのよ。私の嫌いな物とかを全部溶かしてくれるから。」
「嫌いな物を溶かすって、姉さんは弟が嫌いかよ!?」
「まさか。ただアレクが歩けなくなったら、私に都合がいいなぁと思ってるだけよ。」
「俺は良くねぇよ!おいリマル!出口はまだか?それか足止めを頼む!」
「出口はもう少しだけど、足止めかぁ。効かないと思うけど「土壁」」
リマルは罠魔法を使わず別の魔法を使った。その魔法で俺達と姉さんの間に地面が盛上がり分厚い壁が出来た。壁を見るにどうやら溶解毒でも分厚すぎて溶かす事は出来なかったらしい。
「これで時間を稼げる筈だ。急ぐぞ。」
「あぁ。また来たら壁を頼む。」
姉さんが追えない間に出口まで急いで行こうとしたが、走り出そうとした俺の後ろから。
「逃がしませんよ。「麻痺毒」「睡眠毒」」
「予想通りだな、おい!」
「ちっ。やっぱり駄目か。」
壁を壊せないと分かると、影渡りで壁を越えてきたな。俺に飛んできた毒は後ろから来ると予想していたので、何とか躱すことが出来てそのまま走り始めた。
「なんでここに姉ちゃんがいるんだ!?壁は溶けてないんだから、壁の向こうに居るはずだろ!?」
「影渡りで俺の影に移動したんだよ!姉さん、影魔法も得意だから!」
「とんでもねぇ、姉ちゃんだな!でもおかしいだろ!」
「何が?」
「影渡りは確かに他の影に移動できるけど、あれは移る対象の位置を把握してないと移動できない筈だ!何で壁に挟まれてる状態で位置が分かるんだよ!?」
へー。影渡りはそういう移動条件だったんだ。兄さんが転移より使いにくいと言ったがそういう理由か。しかし普通の人なら使いにくい影渡りだけど、姉さんは見えてなくても移動が出来るよな。
「姉さんは索敵魔法も使えるから、それを使って俺の位置が分かったんだよ!」
「それって逃げる事が出来るのか!?無理だと思うんだけど!」
「だから止めれる人に会いに行くんだろ!それか魔力を使わせて魔力切れを狙うんだ!」
「それしか無いか。おい!前を見ろ!」
そう言われ前を見ると、外に出るための穴が見えた。
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