走る者と下りる者
「ところで会話が終わりそうにないのですが、爆弾はどうするのですかね?]
一向に話が爆弾に戻らない俺達の会話を聞いて、疑問に思ったシューリンガンがクレアに聞いた。
「あの様子だと忘れてるんじゃない?だって誰も爆弾を見てないよ。」
「本当ですね。皆さん会話に夢中で誰も爆弾を見ていません。話す時に相手を見るのは大変良いことなのですが、今は状況が状況ですからね。残り時間も心配なので私から話を戻した方が良いでしょうか?」
「うーん……シューリンガンちゃんが戻したいって言うなら止めないけど、話を戻さず二人で逃げるって選択肢もあるよ?」
「それは流石に……そんな事をすれば、ルーベル様を始め皆さんから絶対に恨まれますよね?」
まさかここで見捨てるという案が出るとは思わなかったシューリンガンは、クレアの返答に少し引きながら聞き返す。
「大丈夫だよ。逃げてるのを知った時は何か言ってるかもしれないけど、なんだかんだでお兄ちゃんたちなら許してくれるよ。……まぁ、シロさんの方は分からないけどね。」
「お優しい方ばかりと思い安心していたのに、最後の一言で一気に不安になったのですが。」
シューリンガンの言葉を聞いて、目を逸らしながらクレアが誤魔化すように笑う。
「ははは……だけどあの会話に混ざると、シューリンガンちゃんも確実に爆弾の押し付け合いに参加させられるよ?」
「それは……少し否定できませんね。と言っても、ルーベル様もアレクさんもお優しいので、本当に私たちが危なかったら助けてくれる気がします。」
「そして大惨事な事になるんだよね。なんで毎回あんな事になるのか、不思議だよね。」
クレアの言葉を聞いて今までの大惨事を思い出したのか、手で口を隠したシューリンガンが楽しそうに小さく笑う。
「はい、本当に不思議です。あれはもう、運がないというレベルを超えている気がしますよ。」
「つまり運命みたいなものか。それで、どうするの?」
「そうですね。クレアちゃんの私の安全を考えている提案も嬉しかったのですが、ここで私の取るべき行動は決まっています。……あの、皆さん。別のお話で盛り上がっていますが、時間は大丈夫ですか?」
クレアにお礼を言いながら、改めて聞かれた行動に答えず俺達に声を掛けるシューリンガン。その声で当初の目的を思い出した俺達は全員、あ、という顔をしながら爆弾のタイマーを確認してみれば、そこには3:26ともう少しで三分を切りそうなタイムが表示されていた。
あまりにも時間が進んでいて、無言で刻一刻と減っていく時間を見てしまう俺達。
そんな中、真っ先に動いたのは兄さんだった。
「後は任せた!」
「あっ、おい!」
「ズルいですよ!」
「一人で逃げないでください!」
「とか言いながら、お前らも逃げるな!」
この場から走り出した兄さんを皮切りに、後に続くように走り出すシアンと姉さん。その背中に向けて叫んだ俺は、いつの間にか持たされていた爆弾を強く握りながら走り始めた。
――――――
「行っちゃったね。」
爆弾を持って走り去るアレク。その背中を見ながら、クレアはポツリと呟いた。
「はい、余程焦っていたのでしょう。誰か一人くらいは私たちに話を振ると思っていましたが、誰もこちらを気にせず行ってしまいました。」
「まぁ結果はどうあれ、助かったという事で良いのかな?」
「そうなりますね。今更私たちを思い出して戻って来るとも思えないですし、一階に移動しましょうか。」
「うん、私はそれで良いけど……シロさんはどうするの?」
窺うようなクレアの視線の先、そこにはイントアのお付きであり従魔でもあるシロが立っていた。
「主の命により、私もお二人の護衛として付いて行きます。道中の安全については全てお任せください。」
「道中の安全と言われても、廊下が長いだけで一階はすぐなんだけどね。」
「私たちに構わず、イントアさんの方に行っても大丈夫ですよ?」
「お気遣い感謝します。しかし主の命は絶対、主の身に危険が迫らない限りは命令の方を優先します。」
気を利かせてシューリンガンが離れるのを許すも、シロはキッパリとした口調でそれを断った。
「意思は固そうだね。」
「はい、これ以上の言葉を重ねるのは、イントアさんの命令を遂行しようとするシロさんに失礼というもの。ではシロさん、私たちを一階に案内してください。」
「御意。道中に何があるか分かりませんので、私の後に付いて来てください。」
短い返事を返して注意事項を伝えると、シロはアレク達とは反対の方に歩き出し、クレアとシューリンガンもその後を付いて行くように歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみください。




