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ここから助かる方法

「今日は何もないと思ったのに!平和に過ごせると思ったのに!なんで毎回こうなるんだ!?」


「そんなの俺が知るか!口を動かす暇があるなら、足を動かせ!」


「動かしてるよ!」


 姉さんの号令で一斉に撃たれた女性陣の魔法を転移で回避して、廊下を全力で走りながら叫ぶ俺と兄さん。

 その背後から、俺達を追いかける足音が聞こえてきた。


「二人とも待ちなさい!誰がか弱いとは正反対で、繊細とは無縁の人ですか!その考えを改めるまで、今日という今日は絶対に許しませんからね!「麻痺毒」」


「その身に女性の何たるかを嫌と言うほど教えてあげますから、覚悟してください!「枝突」」


「今なら優しく捕まえてあげるから、大人しく捕まった方がお得だよ!「小影」「過重」」


「妹であるクレアちゃんもこう言ってますし、お二人なら何が最良の選択か判断できますよね?」


 俺達の背中に向けて飛んでくる、怒りの声といろんな魔法。偶にスーちゃんの脚や糸が襲ってくるのを魔法同様に避けながら、俺は足を止めずに兄さんに話し掛けた。


「ちょっと兄さん、この状況をどうにか打開できる何かいい案はないの!?このままじゃ、捕まるのも時間の問題だよ!」


「そんな事、お前に言われなくても分かってる!ただなぁ……。」


 そう言って言葉を止めた兄さんは、後ろをチラリと見た。


「他の奴はそんなに問題ないんだが、加減してるとはいえシューリンガンの魔法を受けたのは痛かったな。出来れば一番回避したい魔法だったよ。」


「まぁ、自分も含めて運を操れるからね。で、具体的な効果は?」


「あいつの使った魔法は閉運と言って、相手の運を下げる魔法だ。だから逃げる時の転移で位置がズレたり、今みたいに魔法を避けるのがギリギリになってるんだ。」


「あぁ、だから兄さんにしては珍しく転移を失敗してたんだね。」


 死角から襲ってきた脚をギリギリで避けた兄さんの説明を聞いて、俺は床ではなく宙に転移したことに納得した。


「ほんと、運を操るとか反則過ぎだろ。何を考えてこんな魔法を作ったのか、製作者に小一時間ほど問い詰めてやりたいよ。」


「なら、ちょうど銀行内にいるから聞きに行く?」


「馬鹿を言うな。ただでさえ騎士団と開発部でドンパチやってるのに、後ろのバーサーカー共をそんな所に連れて行ったら絶対に面倒くさい事になるだろ。今はイントア達を振り切るのが先だ。」


「誰がバーサーカーですか!例えるにしても、もっと別の言い方がありますよね!?」


「そんなに自分だけを狙ってほしいなら、初めから言ってください!」


 俺の軽い冗談に答えた兄さんの声が聞こえたらしく、怒った姉さんとシアンの声が聞こえたかと思えば皆の魔法が兄さんの方に集中し始めた。


「おい、なんで俺だけ集中して狙ってんだよ!?一人狙いなんて、いじめの始まりだろ!?弱い者いじめ、反対!」


 飛んでくる大量の魔法を時には躱し、時には魔法で相殺しながら兄さんが叫ぶ。


「お兄様のどこが弱いのですか!いじめは弱い相手に行うものであって、お兄様はこの中で一番強いでしょ!」


「私たちの魔法の特訓だと思って、大人しく魔法の的になってよ!」


「誰がなるかっ!!」


 可愛い妹二人の頼みを兄さんが全力で断ると、前を向いたまま俺に助けを求めてくる。


「頼むアレク、本気で助けてくれ!お前なら三人は止められる筈だ!」


「いや、無理だから!俺が言って止まるなら、とうの昔に止めてるからね!?だいたい、三人もどうやって止めるんだよ!?」


「そんなのお前が今夜シアンとイントアを抱く約束をしたり、クレアに血を飲ます約束でもしたら止まるんじゃないのか!?シューリンガンは誠心誠意に謝れば許してくれるとして、シロとスーはイントアが言えば止まるだろ!」


「ふざけるな、クソ兄貴!遠回しな言い方で弟に生贄を頼むんじゃねえ!」


「だけどこれが一番、助かる確率は高いだろ!?」


「そうだけど!そんなに助けてほしいなら、神頼みでもしろよ!?一日抱かれる約束でもすれば、あの飲んだくれなら助けてくれるだろ!?」


「それこそ、ふざけるな!そんな約束をしたら、一日どころか一週間くらい監禁されるわ!」


 この状況から助かる為に、どちらが生贄になるのかで言い争う俺と兄さん。

 後ろのバーサーカー共を巻く為に廊下だけでなく階の移動もしながら争っていると、兄さんが舌打ちをして「ちょっと待て。」と言って、収納から見たことのない小さな板を取り出す。


「それは?」


「これは携帯電話と言って、持ち運び用の電話だ。まだ開発途中で商品化はまだ先だが、今回の訓練で軽いテストをしようと思ってな。開発部と騎士団の何人かに渡してあるんだ。」


「へー、乗り物だけじゃなくて、そんな物も作ってんだ。商品化したら便利そうだね。」


「まぁな。ただ便利になるのは間違いないんだが、その分いろいろと面倒事も増えるんだけど、っと……画面に通話相手の表示は出てこないか。城に帰ったら、何が原因か調べ直さないとな。」


 話しながら携帯電話を見た兄さんが、光っている画面を見て呟いた。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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