訓練開始
「それで、なんで姉さんは銃について知ってたんだ?」
薬について言いたい事が残ってはいたが、それ以上は話が脱線すると思った俺は、改めて銃の知識について聞いてみた。
「私が銃について知っていたのは、学園で習ったからですよ。魔法を使う時の注意点として、今年の最初の授業で習いました。」
「まさかの学園かよ。」
「てっきりルーベル様か教団情報で知ったと思いましたが、これは予想外でしたね。」
情報の出所が思っていたのと違い、俺達は意外そうな声を上げる。
「お兄様はこういう物騒な話をあまり好まないですし、教団は健全な団体ですからね。そういう知識は授業で習うか自分で調べるくらいしか、知る方法はないですよ。」
「知る方法はともかく、教団が健全な団体?」
「不健全の言い間違いではないですか?」
「誰が不健全な教団ですか。私の教団は地域貢献型の親しみやすい教団ですからね。」
「と言われても、親しみやすい教団って聞くと余計に怪しく聞こえるよな。」
「優しさに付け込んで、怪しい壺やお札を売ってきそうですもんね。」
「そんな物、私が売る筈ないでしょ。私の所で売っているのは、とても気持ちよくなる薬です。」
「いや、事実だけど言い方よ。」
「その言い方だと、危ない薬を売っているように聞こえますよ。」
誤解を生みそうな言い方をする姉さんにツッコんでいると、先程怒声を上げた男の声が聞こえてきた。
「お前らは今から、俺達の指示に従ってもらう。大人しく言うことを聞けば酷い目には遭わないから、黙って指示に従えよ。いいな?」
確認する言葉の後に響く一発の銃声。強盗達の周りで倒れている警備員のようになりたくない人達は、その言葉に恐怖から揃って何度も頷いていた。
「よし、なら男は手を後ろに回して、大人しく俺の仲間に縛られろ。少しでも妙な気を起こしたら……こうだからな。」
俺達に指示を出していた男は、言葉の終わりに受付けの人に銃を向けたかと思えば、躊躇いなく発砲する。
その突然の行動に周りからは小さくない悲鳴が上がり、撃たれた男性は銃弾で壁に開いた穴を見ていた。
「見えてないと思って助けを呼ぼうとしたみたいだが、残念だったな。そのカウンター下にあるボタンから手を離そうか。」
未だ銃を向けている男の言葉に壁を見ていた男性は、何故分かった。と言いたげに驚いた顔を向ける。
しかし男性の疑問に男は気付いていないのか、それとも無視しているのか、狙いを壁から男性に変えて話を続ける。
「俺が十数えるまでに離さなかったら、分かってるよな?はい、い――。」
「離しましたから、撃たないでください!」
カウントダウンが始まってすぐ、一を数えるよりも先に男性は両手を上げてボタンから手を離した。
「ちっ、もう手を離しやがった。ギリギリまで耐えようという根性はないのか?」
「そんな根性はまったくないです!」
つまらなそうに聞いた男に、男性は声を裏返しながら答えた。
「まぁ、手を離したならいいか。それと……その棚裏に隠れて助けを呼ぼうとしてる奴、机の下に隠れて助けを呼ぼうとしてる奴、魔法で姿を消して助けを呼ぼうとしてる奴、俺が五秒数える内に姿を現さないと、頭に風穴が開いて脳みそをぶち撒けるぞ。はい、い――。」
「「「姿を見せました!」」」
これぞ天丼芸。男が数え始めようとすると、隠れていた人達が棚裏や机の下、部屋の中央から両手を上げて現れた。
「ったく、一秒も隠れられないなら無駄な抵抗はするな。一回、見せしめに誰か撃ってやろうか。」
本気で言ってるのか、少し苛立った様子で銃口を受付けの人達に向ける。
それによって受付けからは悲鳴が上がり「お前、盾になれ!」や「先輩、もし無事に生きていられたら、あなたにお話があります。」といった声が聞こえてきた。
「くくく、これぞ人間の本質。窮地に陥った時こそ、そいつの本性が見れるというもの。自分が助かる為に他人を盾にしようとは、馬鹿な奴よ。」
「たぶん訓練というのに気付いてないでしょうね。中には告白しようとしてる人もいるけど、あれは……うん、頑張れとしか言いようがないわ。」
声は聞こえないが、男の仲間は騒ぐ受付けを見ながら何かを話していた。
そして銃を向けている男はと言えば、騒いでいる声が耳障りになってきたのだろう。壁や天井に銃を撃って受付けの人達を黙らせると、俺達の方を向いた。
「余計な事に時間を使ったが、改めて指示を言うからよく聞け。男共は両手を後ろに回し、そこの……おい、ウワバミ、ペッタン。」
「どうした?」
「誰がペッタンよ。国一番の問題児。」
男に呼ばれた二人は返事を返すが、ペッタンと呼ばれた方は少し苛立った様子で返していた。
しかし男はそんなペッタンの反応も気にせず説明を続ける。
「今、返事をした奴の所に行って縛られろ。声から女と分かるだろうが、お前達よりも強いから妙な考えと興奮はするなよ。」
「先生、こんな状況で興奮する人なんていないと思います。」
余計な一言が混ざった説明を聞いていると、人質を逃さないように出入り口を塞いでいる仲間の一人が挙手しながら聞いていた。
「誰が先生だ、数字。俺の事はリーダーと呼べと言っただろ。」
「ならリーダー、こんな状況で興奮する人なんていないと思いますよ。」
「その考えは甘いぞ、数字。」
呼び方を注意された事で改めてリーダーに質問をする数字だったが、それに答えたのはウワバミと呼ばれていた女性だった。
「興奮しないのは普通の人であって、縛る相手が変態の可能性もあるからな。一概に興奮する人なんていないとは言い切れないのだ。」
「なるほど、変態の可能性もあるのか……。」
ウワバミの説明で納得した様子を見せる数字。それを見たウワバミは、後ろに手を回した男達に視線を向ける。
「という事で、縛られて喜ぶ奴は私の前に並べ。今ならお前達、変態共の希望する縛り方をしてやろう。」
そう言って収納から赤い縄を取り出して見せると、十数人の男がウワバミの前に並び始めた。
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