青い布
誤字、脱字があるかもしれませんがお楽しみください。
シュページ父さんの日記を見つけたが上の方にあるので、そちらはシアンに任せて俺はしゃがんで下にある本を見ていく。置かれてる本はどれも興味を惹かれんなぁ。なんて思いながら本棚に置いてある本を見ていくと。
「…?なんだこの本?本の奥に置いてある。」
置いてある本の奥に隠れるように一冊の本が置かれてあった。気になった俺は見てみようと手を伸ばしてみるけど。
「……届かん。あと…もう少し……なん、だけど。仕方ない、おーいシア、ン……あ。」
気になった本を取ろうと思って手を伸ばしたけど、奥にあって届かないので上で、日記を回収しているシアンに頼もうと上を向き呼ぼうとしたが。……上を向いたせいでスカートの中にある青い布が見えた。
「どうしましたか?日記ならもう少しで取り終わりますよ。」
「ああ、ありがとう。……いやそうじゃなくて。その…見えてるから。」
「?何が見えてるのですか?」
「……青い布だな…。」
本当なら紳士らしく目をそらすべきなんだろうけど、俺は目をそらすことが出来なかった。これでは紳士失格だ。
「青い布?……書斎にそんな物は見当たりませんが、何処にありますか?」
俺の言葉にシアンは辺りを見回すが、そんな事をしても見えないよ。
「そのような物は何処にもありませんが。」
「だろうね。シアンは見えないけど、俺はよく見えるよ。」
「……アレク様はよく見える?……っ!」
俺の目線を辿った先が自分のスカートに向いて、ようやく気付いたらしい。顔が恥ずかしさで真っ赤になってスカートを抑え…って。
「痛っ!痛い!降ってくる。本が、痛い。」
シアンが本を持っていたけど、スカートの中を見られないように抑えてしまったせいで本が降ってきた。
「あああ!アレク様すみま、きゃあっ!」
「ちょ、シア……ぐえっ。」
「すみま、って本が!きゃああああっ!」
「嘘だろ!今度は本の山がたお――」
本を落として俺に当たったので慌てて謝ろうとしたシアンだが、慌てたせいで踏み台から足を滑らし、俺の上に降ってきて潰された。さらにシアンが落ちた衝撃で本の山がバランスを崩して倒れ、起き上がろうとした俺に降り注ぐ。俺の見た記憶はそこまでだった。
「…本が……青い布が…降ってき……はっ!」
起きた俺は辺りを見回すとそこが自分の部屋だと気づく。
なんで俺は自分の部屋のベッドで寝てるんだ?何があったけ?……たしかシアンと二人で書斎に行って…シュページ父さんの日記を見つけて……。何があったか思い出しているとドアがノックされ誰か入ってきた。
「アレク様失礼します。」
「あれ?シアンどうしたの?」
入ってきたのはシアンだった。俺が起きているのを見ると扉を閉めるのを忘れ、こちらに急いで来ると質問し始めた。
「……っ!アレク様!無事でよかったです。どこか痛みはありませんか?お腹は空いてませんか?何をしていたか覚えていますか?」
「落ち着け。そんな一気に早口で質問されても答えられないよ。」
「あ…。すみません…私。」
「気にしなくていい。で、何があったんだっけ?」
「アレク様と私は本の山が崩れた時落ちてきた本が頭に当たって、そのまま倒れ床にも頭を強く打ったせいでアレク様が気絶しまして。」
ああ、そうだ。俺がパンツを見たせいで驚いたシアンがバランスを崩して落ちてきて、その衝撃で本の山が崩れてきたんだったな。
「あの後崩れる音で書斎に皆さんが来て救出してもらい、アレク様は部屋へ運び、他の人達はさっきまで書斎の本を片付けていました。ただ量が多いので続きはまた後日になりましたが。」
「そうなんだ。お疲れ様シアン大変だったね。シアンはどこか怪我とかしてない?」
「ありがとうございます、アレク様。私はどこも怪我をしてないので大丈夫です。」
嬉しそうにシアンはお礼を言ったが、直ぐに顔を赤らめてもじもじし始めた。こちらをちらちらと見て何か言いたそうにしている。
「どうしたのそんなに、もじもじなんかして?なにか言いたそうにしているけど、何か言いにくい事?」
疑問に思って聞いてみると、もじもじするのはやめたが顔はまだ赤いままだ。
「…あの…アレク様。……その手に持っている物を返してもらえると嬉しいのですが。」
恥ずかしがっていたシアンだが、意を決して伝えたその言葉に俺は自分の手を見た。手の中にあったのは青い布で。広げるとそれはシアンのスカートの中にあったはずの青色のパンツだった。
「…?何で俺がシアンのパンツを持ってるの?」
「その言いにくいのですが……本の山が崩れてもみくちゃにされた時、アレク様が偶然私の下着に指が引っかかってしまったらしくて……。そのまま脱がされてしまいました。」
「なにその偶然?俺が寝ている間にシアンがパンツを握らせてきたって理由の方がまだ信じられるけど。」
「私はそんな事はしません!それに下着を回収しようとしてもアレク様が握りしめて離さなかったんですよ!」
俺がシアンが握らせたと言ったら顔を真っ赤にして抗議してきた。
「え?なら今パンツを履いてない状態で仕事をしてるの!?大丈夫誰にもバレてない!?」
「履いています!たしかに替えの下着は持ってきていませんが、ヴィクトリア様から新しい下着を頂きました。」
「なんだ。ノーパンで仕事をして、いつ他の人にバレてしまうかドキドキすることに興奮を覚えたと思ったのに。」
「私はそんな変態じゃありません!アレク様は私をどんな人だと思っているのですか!?」
やばい。つい楽しくてからかい過ぎてしまった。少しからかい過ぎてシアンが完全に泣きそうになってる。
「ごめんごめん。ちょっとした冗談だって。シアンの反応が可愛くてつい、からかい過ぎたよ。」
「…本当にパンツを履いてますからね。ノーパンで仕事することが楽しいと思う変態じゃありませんから。」
拗ねたシアンをなんとか宥めて俺は話題を変えた。
「そういえば書斎で見つけた日記はどうなったの?」
「すみません。私も分からないのですが、たぶん崩れた本の中に埋もれているかと。」
持っていた日記の場所を聞けばやっぱり埋まってしまったらしい。
しかし俺は父さんの日記を読む事を諦めない。あんな面白そうな物を読まないなんて勿体無い。そんな事を考えているとお腹が鳴った。
「……なんかお腹が空いたな。」
「もう夜ですから。」
そう言われ、窓の外を見てみると日は沈み暗くなっていた。俺はどのくらい寝ていたんだ?
「あれ?書斎にいた時はまだ午前だったよね?」
「はい。ただ打ちどころが悪かったのか、なかなか目を覚まさなかったんですよ。」
「はあ…。せっかくの誕生日なのについてないな。一日の半分を寝て過ごしたってことじゃんか。」
「すみません、私のせいで。」
「シアンのせいじゃないから気にするな。それよりもお腹も空いたし食堂に行こうか。…と、その前にパンツ返しとくね。」
「よかった、ようやく戻ってきました。」
パンツを返すと安心したような顔で受け取り、俺はシアンを連れて食堂に行くためリビングの扉を開く。扉を開くと直ぐ近くで人が集まっていた。
「あなた……この本は何ですか?」
「えっと…その本は……。」
シュページ父さんが正座でヴィクトリア母さんに叱られており、その周りにいるメイド達は冷たい視線を父さんに向けている。その目は女の敵を見るような眼だ。どういう状況?と思い母さんがこの本と、父さんの目の前に突き出している本のタイトルを見て納得した。
「「妻にばれず上手に浮気する方法」」
……やっぱりあの書斎にある本燃やした方がいいだろ。というよりシュページ父さん浮気してたのか。シアンもタイトルを見て雇い主であるシュページ父さんに冷たい視線を向けている。ちなみに他の男衆は巻き込まれたくないのか、この部屋を避けて行き来している。
扉の前で立って見ているとシュページ父さんがこちらに気づいて助けを求める目で見てきた。…この状況を見た瞬間、回れ右して部屋に帰ればよかった。今更気づいても時すでに遅し、助けを求める父さんの視線に気づいたのか、ヴィクトリア母さんと周りのメイドもこちらを見てきた。
「あらアレク。もう動いて大丈夫なの?」
「うん。どこも痛くないから大丈夫だよ。それでお腹が空いて来たんだけど…。」
「そう。これは気にしなくていいから食事をしたら今日は寝なさい。大丈夫とは言っても頭を打っているんだから。」
「そうするよ。明日は教会に行くしね。」
俺が助けずここを去ろうとするとシュページ父さんが絶望した顔をした。ごめん、父さん。そんな目で見られても助けることは無理。頼むから夫婦喧嘩に息子を巻き込まんでくれ。
俺はヴィクトリア母さんの冷たい声とシュページ父さんの弁明を背にシアンを連れて食堂に行き、食事をして部屋へと戻って行った。
次回もお楽しみください。