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裸の付き合い

 皆で風呂に入ると決まって、それぞれ部屋で着替えを取りに戻って脱衣所で脱いでいる時。


「よく遊んだりするけど、三人で一緒に風呂に入るって初めてじゃないか?」


 俺は服を脱いでいると、ふとそんな事を思った。


「…言われてみればそうだな。」


「まあ、皆で誰かの家に泊まる事がなかったからね。」


 二人も少し考えて、入ってないと気が付いたらしい。


「泊まる事は無くても、町に行けば銭湯があるだろ。」


「あったけ?」


「あれ?アレクさん知らなかったの?俺の家の近くに銭湯があるけど。」


「私も初めて知ったな。」


「まあ近くと言っても、細道に入らないと行けない場所にあるから仕方ないか。」


「へー。そんな所にあるんだ。」


 あの辺りはよく行くけど、細道に入る事はなかったから知らなかったんだな。


 銭湯の話をしてたら脱ぎ終わり、俺は風呂の扉を開けた。


「おー。広い!でかい!」


「これは……私の家より広くていいね。」


 俺と兄さんは見慣れているが、カゴットとシムは広い風呂は初めてだったらしくテンションが上がっている。


「はっはっは。我が家自慢の風呂だ。楽しめ!」


 兄さんも二人の反応に嬉しそうだ。

 俺は見たことがないけど、昔の家の風呂はもっと狭かったらしいが、兄さんが改装して広くしたと聞いた事がある。


 我が家の風呂は天井は繋がっているが、間に壁があって男女で別れており、奥に行けば露天風呂もある。


「おーい。アレクさん、シムさん。早く体洗って浸かろう。」


「ちょっと待てよ。風呂で急ぐと危ないよ。」


 カゴットは早く広い風呂に浸かりたくて早歩きで洗い場に向かってる。シムはそんなカゴットを注意しながらも、早く浸かりたいのか同じく早歩きになっている。

 どうでもいいけど後ろ姿のシムを見ると女子が男風呂に入ってるように見えるな。…あいつは男だけど。

 あんなに楽しそうな姿のシムは珍しいと思いながらも兄さんと一緒に洗い場まで向かった。


 洗い場に着くと俺らは並びながら座って洗い始めた。

 座り順は右から兄さん、俺、シム、カゴットとなっている。


 俺らが髪を洗い体を洗うとなった時、兄さんが。


「なあ?折角皆で入ったんだし背中を流さねえか?」


「いいですね。俺も家で親父の背中流したりしてるんですよ。」


「私もやってみたいですね。人に洗われることはあっても洗うことはないので。」


 兄さんの思い付きにカゴットとシムはどうやら乗り気らしい。


「俺もいいよ。兄さんの背中を流すのは久しぶりだしさ。」


「よし。なら最初は右の相手の背中から流すか。アレク頼む。」


 そう言って兄さんは背中を向けた。

 俺はシムに背中を向けて。


「はいよ。それじゃシム、俺の背中を頼む。」


「分かったよ。カゴットはお願いだから力加減してね。」


「安心しろ。背中を流すのは慣れてるんだから。」


 シムはカゴットに背中を向けて、皆で背中を流し始めた。


 俺が兄さんの背中を流したのは、去年の夏に帰省した時で久しぶりに流すけど。


「何か兄さんの背中洗って思ったけど。去年より大きくない?」


「そうか?自分じゃ分からないが、また少し大きくなったか?」


「多分そうじゃないかな。身長とか自分じゃあ分かりにくいんだし。それより力加減はどうかな?」


「それは分かるな。気づいたら俺もでかくなった、って思う時があるしさ。力はもう少し入れていいぞ。」


「俺も兄さんみたいに大きくなりたいよ。…このくらいでいいかな。」


「大きくなりたいなら、よく食べて、よく寝ろ。そのくらいで丁度いいぞ。」


 そんな風に俺は兄さんと話しながら背中を流していた。流している時、後ろからシムとカゴットの会話が聞こえたけど。


「ちょっと、カゴット!痛い!痛いから!」


「えー。またかよ。シムさん少し弱すぎでしょ。」


「カゴットが激しすぎて痛いんだよ。もう少し優しくお願い。」


「優しくお願いって、これ以上優しくしたらくすぐったいだろ?」


「それはカゴットが普段から激し過ぎるからそう思うのであって、普通の人は優しいよ。」


「これでも優しいけど、まぁやってみるよ。」


 俺は後ろの会話を聞いて、洗ってくれるのがカゴットじゃなくシムで良かったと思った。けど、二人の会話を見ずに聞いていると背中を洗ってると思えないのは気のせいか?

 ちなみにシムの力加減は丁度よくて特にいう事がなかった。


 暫くしたら入れ替わり左側の相手を洗うのだけど、その時に見たシムの背中は雪のように白かった肌が、カゴットが洗った場所だけ赤くなっていた。そしてカゴットの背中を洗うのにたわしを持ったシムの顔は忘れようと思う。

 皆で洗い始めた時カゴットの声が広い浴場に響いた。



「ああ……。いい湯だぁ……。」


「兄さん、そんな声出したらおっさんみたいだよ。」


 見た目は若いのに湯に浸かった時に出た声は中年のおっさんが出すそれだ。


「うるせぇ。子供のお前は分からねえだろうが、お前も湯に浸かるとこんな声が出るんだよ。」


「うっそだ~。」


「本当に出るんだよ。年齢関係なく男は皆、心におっさんが居るからな。」


「言ってる意味が分からないんだけど。」


 まあ、前の世界でどのくらい生きていたか知らないけど、今の年齢と合わせると間違ってはないか。


「くそ。湯が染みて痛いんだけど。」


「それはこっちが言いたいよ。私が弱めにって、言ってるのに弱めず力いっぱい洗って…。」


「だからって、たわしで洗うか普通!?」


「カゴットの皮膚にはそれくらいじゃないと洗えないと思っただけだよ。」


「ふざけるな馬鹿!俺の皮膚は石じゃないぞ。」


「私の皮膚だってそうだよ!カゴットの皮膚より繊細なんだからね!」


「お前らうるせぇぞ。静かに入れ。」


 二人は背中の事で言い争っていたが兄さんが言うと渋々引いた。


 静かになり四人でゆっくりしていると兄さんが何か思い出したのか、こちらに聞いてきた。


「あっ、そうそう。お前ら今使える魔法って何だ?」


「魔法?俺は前と変わらないけど。」


「俺は薬魔法と合成魔法ですね。」


「私は支援魔法と回復魔法です。」


「アレクはいいとして二人とも、もう二つも覚えたのか、早いなぁ。」


 そう言って兄さんは、うんうんと頷いている。


「で?何で急に聞いてきたの?」


「何、久しぶりに弟に会ったんだから、少しは魔法の事を教えてやろうと思ってな。序にその友達も。」


「おお!ありがとうございます。」


「ルーベル様に教えて貰えるなんて光栄です。」


 俺は手紙で聞こうと思えば聞けるけど、直接教えてくれるのは嬉しい。けれど教えて貰えると分かった途端の二人の反応が凄いんだけど。……何この反応。


「教えてくれるのが嬉しいのは分かるけど、お前ら喜び過ぎじゃね?」


 そんな俺の疑問に二人は俺に詰め寄った。


「そりゃ喜ぶよ!世界一の魔法使いって言われてるルーベル様に教えてもらえるんだよ!」


「むしろアレクの反応の方がおかしいよ!」


「へー。兄さんって世界一の魔法使いって言われてるんだ。」


「「知らなかったの!?」」


 知らなかった事に驚かれたけど聞いたことが無いからなぁ。大体俺の中での兄さんと言えば。

 開発や実験が好きでそのせいで周りを巻き込んだりするし、いたずら好きだったり思い付きで行動する人で、周りに女の人が多いってくらいしか知らないんだけど。


「そもそも弟が知らないことを何で、お前らが知ってんだよ。」


「それはこの国で有名な人だからだよ。逆に知らない人の方が珍しいよ。」


「聞いた話だけどやった事と言えば、隣国との戦争を終結させたとか、魔法が北と南の魔術学校の全生徒どころか教師の誰も敵わない強さと聞いたな。」


「あとはドラゴンの群れを全滅させたとか反逆をしよう企てた人達を事前に捕らえたって聞いたな。」


「思ったより凄い事をしてるんだ。」


「よせよ。昔の話さ。」


 そう言いながら兄さんは照れていた。


「ちなみにそれって何歳の頃?」


「確か……十二、三ぐらいじゃなかったか?」


 兄さんが今、十九歳だから六、七年前か。俺が生まれる少し前だな。


「まあ、俺の昔話なんてたいして面白くないし魔法の話をするぞ。」


「はーい。」


「「お願いします。」」

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