最初に行くのは
「さて、記念すべき初カジノだけど最初は何で遊ぶか。」
来た時と変わらず、大勢の子供で賑わうカジノ場。コインの入ったカップを手に俺は、何から始めようかと辺りを見回す。
「いろんな種類の賭け事があるけど、チンチロはあるかな。」
俺と同じように辺りを見回しているクレアがおかしな事を言い出す。
「なんで最初にやろうとする賭け事がチンチロなんだよ。」
「だって漫画でチンチロをやってるシーンがあったから、私もやってみたいと思ってさ。」
「あー、あの主人公が地下に行く漫画か。」
漫画という言葉を聞いて、この間クレアが読んでいた本を思い出す。
「面白そうだよね、チンチロ。私も賽子を振って、大勝を狙うよ。」
「大勝を狙うのはいいけど、ここは現実なんだから漫画みたいに勝てると思うなよ。」
「そんなの言われなくても分かってるよ。」
一応の忠告をすると、クレアが可愛らしく頬を膨らませて言う。
いくら妄想の多いクレアでも、流石に現実と漫画の区別がついてるか。まぁ何かあったらシューリンガンが止めてただろうけど、これなら二人にしても安心――。
「だから勝てるように賽子を作ってもらったんだよ。……ほら。」
ほらと言ってクレアが影から取り出したのは、四と五と六しか書かれていない三つの賽子だった。
「思いっ切りイカサマじゃねえか!少しでも現実と漫画の区別がついてると思った、俺の信用を返せ!」
漫画に登場したイカサマ用の賽子を出したクレアに俺はツッコみ、シューリンガンは苦笑いを浮かべていた。
「あの、せっかく賽子を自作までしたのに申し訳ないのですが、このカジノにはチンチロはないですよ。」
「あ、そうなんだ……。ならこの賽子は使えないね。」
チンチロがないと知ったクレアは残念そうな声を出すと賽子を影に戻した。
「それで?他にイカサマ道具を作ってないよな?」
クレアが賽子を戻し終えると、俺は眉間に皺を寄せながら問い詰める。
「他は作ってないから持ってないよ。」
「本当か?」
「うん、そもそも作ったのは先生だからね。私は作れないよ。」
「ラーシェが製作者かよ。」
「そういえば、賽子を作ってもらったと言ってましたね。」
あの馬鹿、また教育に悪い物を作りやがって。冗談抜きで空に打ち上げ……いや、シアンに頼んで大嫌いって言ってもらう方が効果的か。
シューリンガンが先程の会話を思い出す横で、俺はラーシェのお仕置きについて考えていた。
「それにしてもチンチロ目的だったのに出鼻を挫かれたな。何をやろう……。」
「悩むようならポーカーやルーレットはどうですか?定番だからこそ、面白いと思いますよ。」
何を選ぼうかと悩むクレアにシューリンガンが候補を上げる。
「ポーカーやルーレットか……。せっかくシューリンガンちゃんがオススメしてくれたんだから、そっちに行こうかな。お兄ちゃんはどうするの?」
「俺もクレアたちと同じのにするか。このままだと選びきれずに終わりそうだしな。」
「やってる賭け事の種類が多いもんね。」
俺が付いて行く理由を話すと、周りを見回したクレアが納得してくれる。
「これでも大人に比べれば少ないのですが、その話は時間のある時にしましょうか。」
「もう二時だしな。その話は帰る時にでも聞かせてくれ。」
「はい、車の中でお話ししましょう。それでは二人とも、また案内しますから私に付いて来てください。」
「あぁ、頼む。」
「お願いね、シューリンガンちゃん。」
俺達が返事を返すと、シューリンガンは案内をする為に先頭を歩き始めた。
カジノを楽しむ大勢の人を一回もぶつかる事もなく上手に避けて進むシューリンガン。それに俺達は人に邪魔されながらも付いて行くと、とあるブースでようやく足を止める。
「二人とも着きましたよ。最初はここにしましょう。」
そう言ってシューリンガンが連れて来たのは、カジノの定番の一つルーレットだった。
「最初はルーレットか。定番なだけあって、やっぱり人が多いな。」
「だけどこんなに人が多いと、私たちが座れないよ。」
大勢の子供がルーレット台を囲むように座っているのを見たクレアが、時間を気にしているのか心配そうに言う。
「そこはご安心ください。ルーレットやポーカーといった定番は、複数の場を用意しているので座れない事はありませんよ。」
「そうだったんだ。それなら順番を待たなくてよさそうだね。」
シューリンガンの話を聞いて、クレアが安心した顔を見せた。
「はい、別の台は隣にあるので、そちらに……。」
隣の台も大勢の子供に囲まれているのを見て、シューリンガンが言葉を止めた。
「どうするんだ?隣も埋まってるぞ。」
「……行こうと思いましたが、どうやら今日は特に盛況のようですね。すみませんが、ここから少し離れている別の台に行きましょう。」
「まだあるのか。」
「複数用意してるとか言ってたけど、ルーレットだけで何台置いてるんだろ。」
用意されたルーレット台の数が気になりながらも、再び移動を始めたシューリンガンの後を俺達は付いて行った。
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