母さんの友達でシムの母親
俺の周りにいる女の人で、クレアだけがまともだと分かってしまった事に目を逸らして別の事を聞く事にした。
「ところで兄さん。さっき護衛のついでに帰ってきたって言ってたけど護衛をするような人が何でうちにに来てるの?」
「まあ。その質問に答えるのもいいけど直接見た方が早いな。もうすぐ夕飯だし食堂行くぞ。」
そう言って兄さんは発動した魔法を解除して、皆を連れて食堂に向かった。食堂に向かっている間、兄さんはザットさんに怒られていたけど。
食堂に着き中に入ると上座に父さんと母さんが向かい合って座り。母さんの隣にはシムにそっくりな女性が座っていて、母さんと話している。
知らぬ女性と何席か飛ばして座っているのがシムでその正面にはカゴットが座っている。カゴットの隣には普段なら仕事をしている筈のシアンもクレアと席を一つ飛ばして座っていた。多分その間が俺の座る席なんだろう。
「他の人は座っていてくれ。イントア、アレク付いて来い。」
そう言って兄さんに連れられ俺は女性の元に連れてこられた。
「母さん連れて来たよ。」
「流石ルーベルね。イントアと違って連れて来るのが早いわ。」
多分俺が氷漬けから解放された時、連れて来いと言われて一時間も待たされた事を言ってるんだろうな。姉さんの方を見ると覚えているらしく目を逸らした。
「もうヴィーちゃん。そんな事を言ったらイントアちゃんが可哀そうでしょ。」
「そう言えるのは、貴方が呼ぶように頼んで一時間以上待たされた事がないから分からないのよ。」
「そう言われたら確かにそうねぇ。ヴィーちゃんと遊ぶ時もいつも私が待たせる側だったな~。」
「そして私が場所を聞いて貴方を向かいに行くと。」
「懐かしいわねぇ。ねぇ、覚えてる?学園に――。」
何かこの二人俺たちを無視してまた話すのに夢中になってるんだけど…。兄さんの方を見ればまたかと呆れた顔をしてる。
こちらに気付いた兄さんに呆れてないでどうにかしてよ、と見ると「えー。」と嫌そうな顔をしたが、ため息を吐くと二人に話しかけた。
「あの話すのもいいけど先にアレクの紹介をしていいかな?」
「あら?ごめんなさい。ネフィーと話すとつい止まらなくなってしまうわ。」
「一緒だぁ。私も楽しくて止まらなくなるよぉ。お揃いだ~。」
「そうね。お揃いで嬉しいわ。」
「終わりそうにないから勝手にやるぞ。」
また話に夢中になりそうな二人に割って入り強引に紹介する事にしたらしい。
「イントアは知っているからいいけど、アレクは初めて会うな。この人は母さんの友達でシムの母親のネフィーさんだ。で、こっちは末っ子の。」
「初めまして、ネフィーさん。私はアレク=ナルスタックと言います。」
「真面目そうな子ねぇ。」
「「ぶっ!」」
俺の挨拶を聞いてネフィーさんが真面目そうと言ったら、それを聞いたカゴットとシムは噴き出して肩を震わせている。……こいつら後で覚えとけよ。
「初めまして。私はネフィー=グラシアです。貴方の母親とは昔からの友達よぉ。暫くはこっちでのんびりとする予定だからよろしくね~。」
…何かこの人の声を聞くと気が抜けて眠くなりそうなんだけど。
俺に軽く挨拶をしたネフィーさんは姉さんの方を見て。
「そうだ、イントアちゃん。貴方、家に急いで帰りたいのは分かるけどぉ。学園の門を壊したらいけませんよ~。」
「……イントア?」
ネフィーさんの話を聞いて母さんは笑顔で姉さんを見た。そしてこれはかなり怒っていると俺は知っている。姉さんもそれは同じで名を呼ばれると顔を背けた。
それよりも俺はネフィーさんの言葉で少し気になる部分があるんだが。
「学園?」
「ついでに教えとくがこの人は、王都にある北の魔術学校の校長をしてるんだ。因みに旦那は南の校長な。」
「へー。結構凄い人なんだね。」
「そんな事ないですよぉ。私なんてシムのお兄ちゃんが学校の経営を全部覚えるまでの繋なんだから~。」
「兄さんはそんな凄い人をどうして護衛してきたの?」
「ああ?それは俺が里帰りするってこの人が聞いて。」
「最近ヴィーちゃんに会ってないなぁ、と思って今は春休みで丁度いいから里帰りするルーベルちゃんに護衛を頼んじゃいました。ついでにイントアちゃんが壊した門の請求もあってねぇ。あっ、学園の方は安心して。私が帰るまではお兄ちゃんがどこまで覚えたかのテストも兼ねて臨時校長をしてるからぁ。何かあっても旦那がフォローしてくれるって言うし安心よね~。」
「母さんに会うより門の請求の方が大事だろ!」
うん。それは兄さんの言う通りと思う。だけど、それを聞いた母さんは兄さんの頭に拳大の氷を作り頭に落とした。頭に氷を落とされて痛いらしく兄さんは蹲っている。
さすがの兄さんもあれは痛いか。俺は何回かやられた事があるからその痛みはよく分かるぞ。
まあ、兄さんの事は置いといて、今は。
「門を壊したって言ってるけど、どうやって壊したの姉さん?」
「…まあ、いいじゃないですか。そんな事よりもこれ以上お話をして皆さんを待たせては失礼です。その話はまた後で……。」
「「「…………。」」」
逃げたなと俺らは思ったが確かにこれ以上他の人を待たせるのも失礼だし、ここは姉さんの話に乗っておくか。
絶対後で聞いてやろ。
「そうだね。では、ネフィーさん。失礼します。」
「また後でねぇ、アレクちゃん。」
「失礼します。」
「……イントアはあとで私の部屋に来なさい。」
母さんから離れられると安心していた姉さんだったが、離れる直前母さんに低い声でそう言われて泣きそうな顔になっていた。
いつも余裕そうな姉さんでも流石に母さんの説教は嫌か。まあ、気持ちは分かるけど。自業自得だ。
そうして自分たちの席に座っていった。
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