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自己紹介

 往来で騒ぐ姉さんを注意していた兄さんだったが、二人の驚く声に反応してこちらを向いた。


「人の顔を見て驚くのはって、お前らも一緒だったのか。仲良しなのは良いが、こんな所で何してんだ?サボリか?」


「そんな訳ないでしょ!今日は休みです!」


「それも二週間ぶりの休みですよ!」


 兄さんの言葉に怒ってるような声で答える二人。そんな二人に、兄さんはキョトンとした顔を見せ。


「…………そうだっけ?」


「「おい、責任者!」」


 惚けた反応に上司というのも忘れて、二人は兄さんに詰め寄っていた。


 休みを忘れる兄さんも酷いけど……そうか、二週間ぶりの休みか。それはた――。


「まだまだ甘いですね。」


 考えを読んだシアンが姉さんと一緒に来て否定する。


「私は借金を背負って以来、お休みは二ヶ月に一回になったんですよ。二週間なんて、まだまだ序の口です。」


「えっと……身体は大丈夫ですか?もし体調が優れないのなら遠慮せずに言ってください。効きそうな、お薬を渡します。」


「ありがとうございます、イントア様。その時はお願いしますね。」


 普段はシアンに優しさを見せることが少ない姉さんだが、あまりにも少ない休みに同情してシアンの体調を気遣っている。


「……そう言えば休みだったな。すっかり忘れてた。」


 そして惚けではなく本気で二人の休みを忘れていた兄さんは、やっと思い出したように呟いた。


「責任者なんですから忘れないでくださいよ。大事なことですよ。」


「そう言われても、休みなんて回復魔法で足りてたからな。全然、気にしてなかったわ。」


 兄さんの発言に男の人が顔を手で覆って「この人は本当に……。」と漏らし、その男の肩を女の人が慰めるように叩いていた。


 前に休まない話を聞いたけど、あれって冗談じゃなくて本当だったんだな。


 嫌な事実を知ってしまったが、兄さんは職員の反応を気にせずに最初の質問をする。


「サボリじゃないのは分かったけど、お前たちはこんな所で何をやってんだ?」


「何をしてるって、私達はメイドさんを連れたこの子が迷子と思って声を掛けただけですよ。」


「そういう所長こそ何をしてるんです。確か来てくれそうな被験者に心当たりがあるとか言って、少し前に出かけてませんでしたか?」


「今、その被験者と帰って来たんだよ。ほら、こいつらだ。」


 そう言って兄さんは、俺と姉さんを指さした。


「妹のイントア様じゃないですか!?それにこんな小さな子まで連れて来て、何を考えてるんですか!?」


「……なぁ僕?あの人に何を言われたか知らないが、被験者になるのは考え直した方がいいぞ。被験者というのは、危ない事をするんだからな。」


 女性は被験者を知って驚き、男の人は俺に目線を合わせて被験者になるのを止め始めた。


「心配してくれるのは嬉しいですけど、こっちも色々と事情があってやめられないんですよね。」


「何か事情があるなら仕方ないが、だからってなぁ……。」


「というより、二人は開発部の人だったんですね?」


 まだ納得してなさそいな男の人だったが、話題を変えるために先程から思っていた疑問を聞いてみた。


「ああ、俺とシャースは開発部――。」


「シャース?」


 話しの途中だったが、初めて聞く名前に反応してしまう。


「あ、すまん。そこそこ話していたのに名前がまだだったな。シャースというのは一緒にいた女の人で、俺はトライルという名だ。ちなみに君を連れて来たのが、開発部の所長でルーベルな。」


 親切に名前を教えてくれるトライルさんだったが、シャースさんはともかく所長の方はよく知ってます。

 とりあえず向こうが名乗ってくれたのだ。話を聞くよりも先に俺も名乗るか。


 名乗ってくれたトライルさんに名前を教えようとすると、色々と言われていた兄さんがちょうど我慢の限界だったらしく、シャースさんに負けない声量で言い返す。


「さっきから好き放題言いやがって、うるせぇな!こいつは俺の弟で、納得してるから問題ないんだよ!」


「……は?」


「弟?」


 兄さんの言葉に、シャースさんは理解が追い付かない反応をトライルさんは先程の俺と似た反応を見せた。


 二人に視線を向けられながら、俺は自己紹介をする。


「まだ名乗ってませんでしたが、自分は開発部所長の弟でアレク=ナルスタックと言います。いつも兄がお世話になっています。」


「そういえばイントア様を紹介する時、姉と言ってたな。そうか、所長の弟さんだったのか。」


 先程の紹介を思い出したトライルさんは、なるほど、と頷きながら納得した。


「ええ、人が集まらなかった兄さんに頼み込まれて、高いバイト料を払ってくれる代わりに受け入れたんですよね。」


「それで色々と事情があると言ったのか。そりゃあ断れん訳だ。」


「でも心配してくれたのは嬉しかったですよ。ありがとうございます。」


「そのくらい気にするな。子供が危ない事に関わろうとしたら、止めるのが大人というものだから。」


 当たり前のように答えるトライルさんを見て、久しぶりにちゃんとした大人を見たな、と思いながら先程から気になっている事を聞いてみた。


「ところでシャースさんが俯いてるけど、大丈夫なの?」


「シャースが?」


 不思議そうにトライルさんが振り向くと、そこには身体を兄さんではなく俺の方に向けているシャースさんが顔を俯かせて立っていた。耳を澄ませば、小さすぎて聞き取れはしないが何かブツブツと言ってるようだ。


 そんな普通とは言えないシャースさん。俺やシアン、姉さんは大丈夫かと心配したが、トライルさんは「あ、やべ。」と何かを思い出したのと同時、シャースさんが怒りの表情で顔を上げたと思えば急に俺に襲い掛かってきた。


 いや、何で!?

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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