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渡した物予想

「はぁ……。やっとお母さんが居なくなったけど、ああ言うのを嵐みたいな人って言うのかな。」


 母さんが離れた事で、二つに割れていた人混みが戻るのを見ながらクレアが呟く。


「正しい意味は知らないが多分そうじゃないか?」


「アレスちゃんだけじゃなく、私達三人にも被害がきましたもんね。あれを嵐と例えても間違いでは無いでしょ。」


「それで勝敗はどうしますか?取った時点ではアレ…スちゃんが多かったのですが、現在は景品を全て返したので結果的に私達の勝ちになってるのですが。」


 クレアの言葉に疲れた顔で同意していると、ラーシェが呼び間違えそうになりながらも勝敗について聞いてくる。


「いやいや、確かに景品は全て返したけど、その前に取った量を見せただろ。それを考えれば俺の勝ちで良いんじゃないか?」


「まぁ、そう言いますよね。」


 俺が勝利を主張するのに予想が着いていたラーシェは、やっぱりという顔でため息を吐くように言う。


「物を見せられた私としては認めるしかないと思いますが、二人もそれで良いですか?」


「お姉ちゃんには金魚の恩があるから、私は良いよ。」


「今の私はクレアちゃんのチームですからね。クレアちゃんが良いなら、それに従います。」


 ラーシェが聞くと、二人は嫌な顔をせずに快く俺の勝利を受け入れた。


 よし、二人のお陰で勝利数は一対一。ここから連勝してクレアの本を廃刊にしてやる。


 反対しなかったクレアとシアンに感謝をしつつ、これからの勝負に意気込んでいるとシアンが「そういば……。」と、顎付近に指を当て何かを思い出す仕草をする。


「先程、ヴィクトリア様が居る時に「前に渡した物を返してもらうから注意しなさい。」とか言ってましたが、アレス様は何を貰ったのですか?」


「あ、あぁ、アレか。あれは、その……何と言ったら良いか。」


「そんなに言いにくい物を貰ったの?」


「この場で言いにくい物となると候補が多すぎてまだ分かりませんが、ヴィクトリア様が絡みでアレス様が慌てる物となれば予想が着きますね。」


「いや、ちょっと待てラーシェ!」


 知っているとは思わないが、もし当たっていたらマズいと思い急ぎラーシェの口を塞ごうとしたが、それを華麗に躱すと俺の背後に周り胸を揉みしだく。


「ひゃあっ!?」


「う~ん、この揉み心地……。シアンには劣りますが、中々の物をお持ちで。」


「何してるのラーシェ!すぐに離れなさい!」


「ああ……。もっと堪能したかったのに。」


 急な不意打ちに、振りほどくという選択が出来なかった俺に代わってシアンがラーシェを引き離すと、残念そうな声をラーシェが上げる。


「アレク様は男なんだから、堪能しなくて良いの!自分の胸を揉んでなさい!」


「自分の方は毎夜シアンを想って揉んでるから、間に合ってるよ。それよりシアン、今はアレク様でなくアレス様でしょ?その辺を間違えたら駄目じゃない。」


「うるさい、この変態!」


「お姉ちゃん大丈夫?胸以外に触られなかった?」


「他は触られなかったけど、今のでラーシェが少し苦手になったかも。」


「あー……うん。お兄ちゃんは男で、先生のセクハラは初めてだもんね。仕方ないよ。」


 そう言って屈んだ俺の頭を撫でるクレア。


 傍から見れば、十三の少女が幼女に撫でられるという微笑ましく映る絵面だが、その実態はセクハラされた兄が妹に慰められるという何とも情けない事実。


 結局シアンの怒りが治まるまで、俺はクレアに撫でられていた。


「もう大丈夫、お姉ちゃん?」


「あぁ、クレアのお陰で精神的にだいぶ回復したよ。ありがとう。」


「えへへ、どういたしまして。」


 お礼を言いながらお返しに頭を撫でると、クレアが嬉しそうな顔を見せる。


「クレアの嬉しそうな顔を見てると、心が洗われますね。このまま見ていたいですよ。」


「……それには激しく同意だけど、クレアちゃんに手を出したら本気で怒るから覚えときなさい。」


「流石にそれくらい分かってるよ。ちゃんと相手を選んで手を出してるから安心しなさい。」


 ラーシェの言葉にシアンは無言で見るだけだったが、その目は「本当に大丈夫か?」と疑念を宿していた。


「さてさて、収束するのに思ったより時間が掛かりましたので、歩きながら私の予想でも話しますか。」


「歩くのは良いが誰のせいだ、誰の。」


「間違いなく先生が原因だよね。」


 時間が経った事で移動を提案するラーシェだったが、その元凶に言われて俺とクレアは呆れた視線を向ける。


「私が悪かったので、そんな目を向けないでください。……ではまず第一予想、それはヴィクトリア様の秘蔵本ですね。」


「…………はい?」


「秘蔵本?」


「話の内容は想像が着くけど、ネタになるかもしれないからメモしとこ。」


 そう言ってクレアは影からメモ帳を取り出しているが、俺とシアンは似たような顔でポカンとしていた。


「よく考えてみてください。ヴィクトリア様と言えば、恋愛の為なら手段を選ばない変態の極致イントア様の母親ですよ。」


「確かにそうだが、いくら変態の姉さんでもラーシェには言われたくないだろ。」


「私に変態行為を散々しておいて、どの口がほざくと言いたいですね。」


 今までラーシェにやられた事を思い出したのか、シアンの出す声が低く不機嫌になったのが分かる


「その究極変態イントア様を育て上げたヴィクトリア様が持つ本となれば、一生のオカズになる物間違いなし。ズバリっ!アレス様が貰った物はその本ですね?」


「いや、全然違うから。」


 どこぞの探偵みたいにビシッと指をさすラーシェだったが、あまりの迷推理ぶりに茶番に乗らず即否定をした。


「あれ、違いましたか?」


「思いっ切りな。」


 そもそも友達の貸し借りじゃないんだから、親にエロ本を貰うわけ無いだろ。


「そうは言いますけど、ヴィクトリア様ならもしかしたら?と思いますよ。」


「ないない。絶対に無い。」


「むしろ、ヴィクトリア様の場合は没収する側でしょ。何でそんな発想になるのやら……。」


 ラーシェの予測に俺は手を振って否定をし、シアンはあんまりな発想に呆れている。


「まぁこういうのは、最初で当たっても面白くないですからね。次の推理をしてみましょうか。」


「それは良いけど、対戦用の屋台も探せよ。そっちがメインなんだからな。」


「分かってますよ。ちゃんと推理をしながら探してます。」


「あれを推理と言うのも烏滸がましいけど、それなら次の推理を外したら何か奢ってもらいましょうか。そうすればラーシェも本気で考える筈だからね。」


「その言い方だと、私が本気で考えてないみたいだけど……まぁ当てれば良いだけ。もし当てたら、私の望みをシアンが叶えてよ。」


「当てたらね。」


 急遽決まった別の賭け。

 シアンの言葉でやる気を出すラーシェだったが、結果は推して知るべし。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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