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射的の成果

「やっと見つけた。戻ったぞ。」


 魔法射的が終わり、別れた場所に居なかった三人を索敵魔法を使って見つけ出した俺は、アレスの姿のまま合流した。


 勝手に移動しやがって。俺が索敵魔法を持ってたから良かったものの、持ってなかったらどうする気だ?


「その場合は流石に移動しないよ。探す手段も無いのに離れるなんて、お兄ちゃんが可哀そうでしょ?」


「探す手段があっても、離れる時点で可哀そうなんだよ!」


 しかも黙って離れるとか、もしかして三人から嫌われてるのか?


「それは無いから安心して。私はお兄ちゃんが大好きだよ。」


「クレアちゃんに同じく、私もアレク様が大好きですよ。」


「そして二人に同じとは言えませんが、私もアレク様が好きですよ。」


「お前たち……。」


 俺の心配を即否定するクレア、シアン、ラーシェ。


 その言葉に嘘偽りを感じられず、本気で好きだと分かり感動するのだけど……。


「言葉を隠さず、今の言葉をもう一度言ってくれるか?」


「隠さずに正しく言うなら、それは無いから安心して。お兄ちゃんは優しくて血が美味しいから、私は大好きだよ。かな?」


「一部不穏な言葉のせいで、せっかくの感動が台無しなんだけど!?」


「だけど、お兄ちゃんの血が美味しいのは事実だよ?」


「確かに言ってたけど!」


 そういう事じゃない!という意味を込めながら、クレアに向けて叫んでしまう。


「次に私ですが――。」


 そして俺とクレアの会話が終わったと判断したシアンが話し始める。


「――正しく言うと、学も無く平民の出である私に優しく接してくれた上に、婚約者にも選んでくれたアレク様が大好きです。という意味を隠していました。」


「へ、へー……。そうだったんだ。」


 クレアの事もあってボケを警戒していた俺は、まさか本当の感謝を伝えられるとは思わず、恥ずかしさから上手く返事を返せなかった。


「では最後に話すのは私ですね。」


 本音を聞いた俺と本音を話したシアン。お互いに恥ずかしさから顔を直視する事が出来ずに赤面していると、空気を壊すかのようにラーシェがわざとらしく大きな声で話し出す。


「あ、あぁ。ラーシェが最後だったな、頼む。」


「えっと……。ラーシェの本音、楽しみにしてるからね。」


「もしかして二人共、私の事を忘れてました?」


 俺達の反応を見て、ラーシェがジト目になって聞いてくる。


「いやいや、そんな事は無いぞ。存分に俺への秘めたる思いを話してくれ。」


「そして見事、アレク様に振られて玉砕してください。」


「なぜ私がアレク様に告白する前提になってるんですかねぇ?それも失敗する前提で。」


 ラーシェの呆れた言い方に、目が笑っていないニッコリとした笑顔をシアンが向ける。


「あら?確かラーシェは、私が気絶している時にアレク様に告白して振られてたわよね。」


「えっ!?いや、その、なん……。」


 予想もしないシアンの発言に、ラーシェの舌は上手く回らず言葉にならない。そして激しく動揺しているラーシェと違い、隣ではワクワクした様子を隠さず黙ってクレアが話を聞いている。


「なんでと言われても、私が気絶してる間に何があったのか、アレク様から聞き出したから全部知ってるのよね。」


「ちょっとアレク様!?」


 俺の名が出された事により、ラーシェが勢いよく俺の方を向く。


「こっち見るなよ!元はと言えば、俺を襲おうとしたラーシェが悪いんだからな!?」


「だからって何でシアンに話すんですか!?アレク様は、何かあったら親に告げ口をする子供ですか!?」


「子供だけど!?」


 そして話した理由を言うなら、シアンがあの手この手で聞き出そうとしたからだよ、こんちくしょうがっ!シアンの奴、あんな色仕掛けを何処で覚えたんだ。


 思い起こすはベットでキスをした日、あの日に見た、聞いた、感じた、人には言えないシアンとの秘密のやり取り。一線を越えることは無かったが、殆どシアンが主導権を握っていた男としては情けない一日。


 その日の事を思い出しながらラーシェと言い争っていると、背後からシアンがラーシェの両肩を掴んだ。


「はい、そこまで。私がアレク様から無理に聞き出したんだから、文句があるなら私に言いなさい。」


「あ、いや、うぐっ……。」


 シアンに言われて口を開こうとしたラーシェだったが、相手がシアンだからか結局何も言わず閉口してしまう。


 ラーシェが何も言わないと分かったシアンは、ラーシェの頭を撫でながら視線を俺の方に向ける。


「それでアレク様、ラーシェの話は移動しながらでも聞けるので、先に射的の結果を教えてもらえませんか?このまま本音を聞いていたら、また脱線して花見を楽しむ時間が減りそうな気がするんです。」


 時計を確認すれば時刻は既に十一時を過ぎている。シアンの言う通り、話を聞いて脱線するのが目に見えた俺は収納に入れた景品を見せる事にした。


「そうだな。ラーシェの話は後で聞けば良いし先に見せるか。「収納」」


 そう言って収納を開けば、こんもりとした小さい山ができる程の景品がシアン達の前に積み上げられる。


「どうだ?ちょっと頑張ってみたが、俺が本気を出せばこんなもんよ。」


 取った景品を前に自慢げに言うが、三人からは反応が返ってこない。


 おかしいな?俺の予想では、驚くなり悔しがるなりの反応を見せると思ったんだけど。


 思った反応が得られず不思議に思っていると、シアンが錆び付いたブリキ人形のように、ぎこちない動きでこちらを見る。


「あ、あの、アレク様?これは、どうやって取ったんですか?」


「うん?どうって、花火魔法の爆風を利用して倒してたけど。」


「なら取った時の店主の反応は?」


「えー、店主の反応……。」


 どんなだっけ?確か……。


「頬を引くつかせながら、若干涙目に――。」


「ラーシェ!」


「了解!」


 話しの途中にも関わらずシアンがラーシェの名前を呼ぶと、二人で上半身、下半身に別れて俺を持ち上げた。


「おい、いきなり何をするんだ!?」


 シアン達の行動に驚きの声を上げるが、それを無視して二人は急ぎ足で動き出す。


「私達からしたら、何をしてる、と言いたいですよ!」


「なに目立つ事をしてるんですか!?このままじゃヴィクトリア様にエンカウントしますよ!?」


「エンカウントって……。」


 その言い方じゃあ、母さんがその辺の敵キャラみたいなんだけど。あれはどう考えてもボスキャラだろ?


「そんな事を考えている場合ですか!早く取った物を返さないと、私達が――。」


「氷漬けになるわね。」


 シアンの言いたい事を代弁するかのように聞こえた声は、俺達の体を凍らせながら耳に届いた。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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