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三本の薬草

 物敵索敵でマップを確認すれば流石は森の奥と言うべきか、赤い点や黄色い点が前に来た時よりも多く映っている。

 現在俺たちは表示された内の一つ、近くの黄色い点が固まっている場所を目指して歩いていた。


「それにしても暇だね。森の奥って言うから、もっと魔物が出ると思ったんだけど。」


 草木多い茂り日も射さぬ箇所もある森の中、遠くから魔物の声や戦闘音が聞えてくるが代わり映えのしない景色に飽きたのか、クレアが退屈そうに言う。


「安全第一、そういうルートを選んでるからな。」


「えー、安全に配慮してくれるのは嬉しいけど暇すぎだよ。少しは戦わない?」


「そう言われてもなぁ……。」


 さっきの戦いで然程苦労せずに蜂を倒したからクレアは知らないが、俺とシアンは巨大ゴキに追いかけれた事があるから、あまり戦いたく無いんだよな。


 少し後ろを歩くシアンを見れば、戦いたくないという気持ちは同じらしく頷いているのが見える。


「もう、二人とも消極的だなぁ。ネフィーさんはどう思いますか?」


 俺だけでなくシアンも乗り気でないと分かったクレアは、歩き始めてから話に入らず黙って付いて来ているネフィーさんに聞いてみた。


「そうね~。早くお金を稼ぐならクレアちゃんの言う通り、魔物と戦った方が稼ぎは良いわよ~。」


「だよなぁ。」


「分かってましたけどね。」


「分かってたのに避けてたんだ。」


 稼ぎが良いと聞いて俺とシアンは、当然だよな、という反応をしてクレアにジト目を向けられてしまう。


「だけどアレクちゃんの方針、安全第一もそこそこには稼げてぇ、物によっては魔物と戦うよりも稼げるわよ~。」


「そっちでも儲かるんだ。」


「それは知りませんでした。」


「それ、ほんと!?どんなのが稼げるの!?」


 稼げると聞いたクレアの興味は戦う事から採取へとチェンジ、目を輝かせながらネフィーさんに聞いている。


「ふふっ、ちゃんと教えてあげるから、そんなに慌てないで~。「見真似・記憶具現化」」


 そんなクレアの反応が面白かったらしくネフィーさんは軽く笑うと魔法名を唱え、その手には数本の植物が現れる。


「これが、この森で採れるお高い薬草ね~。」


 そう言って見せられた薬草は三本だった。


 その内の一本を手に取るとネフィーさんは順番に説明を始める。


「まずは葉の表が黒と黄色、裏が赤と白の混ざったような色をしているギザギザの葉が特徴の薬草。これは万元草と言ってぇ、摂取すると全盛期の身体を取り戻して寿命が延びる効果があるわね~。」


「おお、見た目の割に凄いな。」


 流石お高い薬草、俺の知ってる薬草と効果が違い過ぎる。


「身体が若返るのは凄いですね。」


「売るのが勿体無く感じるよ。」


 クレアとシアンもあまりの効果に驚き、食い入るように見ている。


「ただこの万元草、魔物や野生の動物も狙ってるうえに繁殖条件が難しいのか、中々見つからないのよねぇ。売れば城の一つや二つ簡単に買える値段になるけど、確か前に見つけた万元草が六十年前だったかしらぁ?」


「「「六十年前!?」」」


 前に見つけた年数に驚いてしまい、万元草から顔を上げて三人でネフィーさんの顔を見てしまう。


「だから、これを見つけるのは期待せずに次に行きましょ~。」


 そう言うと魔法で作られた万元草を消しさり、新たに一本の薬草を見せてくる。


「次はこれぇ、アレクちゃん達にオススメの薬草よ~。」


 次に見せられた薬草は茎は金色で先に真珠のような物が付いており、葉は銀色、根は一本一本別の色をしたクリスタルの薬草だった。


「なんか薬草と言うより、趣味の悪い金持ちが作らせた草に見えるんですけど。」


「これが本当に薬草ですか?」


「そうよぉ、変わってるでしょ。」


「変わり過ぎてる、が正しい気がするけど。」


 普通の薬草と比べてあまりに変わっているせいか、俺だけでなくクレアやシアンも本当に存在しているのか疑ってる様子だった。


「疑う気持ちは分かるけどぉ、これは本当に存在して効果を聞いたら絶対に欲しがるわよ~。」


「はぁ……、この薬草がそんなに凄いんですか?」


「もう凄いの何のってぇ、これを求めて人生を賭ける人も居るくらいよ~。」


「人生を賭ける!?」


「こんな薬草一つに!?」


 人生を賭けると聞いて俺も驚いたが、クレアとシアンは声に出して驚いてしまう。


 先程まで存在を疑っていた薬草に驚くのが面白かったらしく、声に出さず少し笑うとネフィーさんは説明をしてくれる。


「これは永金草と言って、摂取した人は生涯お金に困る事無く商売をすると絶対に成功する薬草ね~。」


「おお、まさしく今の俺たちにピッタリの薬草!」


「人生を賭けるのも頷けますね!」


「それでそれで、その薬草は何処に生えてますか!?」


 借金返済どころか、生涯お金に困らないと聞いて興味を持った俺たち借金三人組。初めて見た時の評価を忘れて、俺たちは永金草の話に食いついた。


「皆の反応が良いとは思ったけど、思った以上の反応だね~。」


「そりゃもう、大量の借金を一度に返せそうな可能性を持つ薬草ですよ!」


「そして今後の生活には困らない薬草ですよ!」


「こんな凄い薬草!見逃す私たちじゃないですよ!」


「「「という事で、永金草の自生地を教えてください!」」」


 借金返済、不労所得、左団扇を夢見て重なる声。俺たちはネフィーさんに詰め寄り永金草について早く話すようにお願いした。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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