姉さんの魔法と火事の原因
いろいろと脱線があったが、クレアが姉さんの魔法を知っているので今から教えてもらう。
「最初は毒魔法。お姉ちゃん、毒魔法が好きでよく使うって言ってた。倒すだけじゃなく、無傷で捕まえる時に便利だからだって。」
「そ、そうなんだ…。」
「……無傷で捕まえる。」
それを聞いて俺とカゴットは遠い目をした。
姉さんが俺に毒魔法を仕掛けたのは、あの一回だけじゃなくあの後も仕掛けてきたんだよな。まあ兄さんに助けてもらって以来、姉さんの食べ物に警戒してたお陰で引っかからなかったけど。
ちなみにカゴットとシムは何回か引っかかっていた。
「無傷で捕まえると言うけど、あの子何を捕まえてるのかしら?」
母さんは分からず首を傾げているけれど、姉さんの中では捕まえるに魔物だけじゃなく俺も入ってるよね。俺の考えてることが分かるのか、カゴットが俺の肩に手を置き、うんうん、と頷いていた。
いいよな!お前は狙われてないんだから!
俺達の反応がいまいち分からず、クレアが不思議そうにしてたが気にする事をやめて、次を話した。
「次はお兄ちゃんと同じ索敵魔法。」
「ま、まじか。」
「アレクさん……。」
「あら。あの子ったら便利そうな魔法を覚えてるわね。」
俺はその魔法を聞いて膝から崩れ落ちた。まさかの索敵魔法。何でよりによって姉さんがそんな魔法を覚えるんだ!カゴットは俺の気持ちを察して、手を合わせていた。
おいやめろ。確かに気持ちはそうだけど手を合わせるな。
「あの、お兄ちゃん大丈夫?」
「……うん。…大丈夫だよ。」
クレアに心配をかけないように大丈夫と答えたけど、ごめん。気持ち的には全然大丈夫じゃないわ。
「聞いた話だけど、お姉ちゃんはこの魔法を覚えて一度も解除したことないらしいよ。」
「へ~、そうなんだ。」
クレアさん何故それを言うのかな?それは聞きたくなかったよ。
「さっきから様子が変よ?同い年とは言えアレクはお兄ちゃんになるんだから、妹に心配させてどうするの?魔法を聞いただけで大袈裟ね。」
母さん。あなたは知らないからそんな事が言えるんですよ。カゴットを見てみなよ。索敵魔法が何に使われてるか分かってるから、手を合わせるのはやめたが憐れんだ目でこちらを見てるよ。
「えーと…。次を言って大丈夫?」
「…うん。俺の事は気にせず次を言って。」
俺は立ち上がり、クレアは戸惑いながらも三つ目を話した。。
「三つ目は私と同じ影魔法。お姉ちゃんが使えるから、いろんな使い方を教えてくれたよ。」
「へー。クレアと同じ魔法を持ってたんだ。」
良かった。てっきり転移魔法とか言われると思ったんだけど違って良かった。あと一個残ってるけど今は考えない。
「クレアさん。影魔法はどんな事ができるの?」
「影魔法はこうやって影を操ったりできるよ。「影縛り」」
クレアが影縛りを使うとクレアの影から縄のような物が出てきて、目の前に立っているカゴットを縛った。
「ふふん。こんな事も出来るんだよ。」
「おー。影魔法はこんな事が出来るんだ。……でもさぁ。」
「あらあら。」
俺が褒めて、クレアは胸を張って自慢げにしている。確かにカゴットは影の縄で縛られてるんだけど、その縛り方が。
「アレクさん!見てないで助けて!クレアさん!見せるために縛るのは分かるけど、何この縛り方!?」
「逆海老縛り。お姉ちゃんに教えてもらった。」
「アレクさーん!あんたの姉!純粋なクレアさんにろくでもない事教えてるんですけど!このままじゃ第二のイントアさんに成るよ!?」
姉さん、あんた純粋なクレアになんてものを教えてるんだ。後で問い詰めてやるが、やめさせる事が先だな。
「あのクレア?」
「お兄ちゃん。どう?凄い?」
カゴットを下ろさせようと話し掛けたらクレアはもっと褒めて欲しそうな顔で聞いてきた。
「うん。すごいよ。でもカゴットが痛そうだしそろそろ――。」
「えいっ。」
「…えっ?」
「ぎゃーーっ!」
褒めたせいかもっと凄いのを見せようとして、俺が全部言う前にクレアは縛っているカゴットを小屋の天井から吊るした。
「クレアさん!?何をするんですか!?早く下ろしてください!」
「こうしたらお兄ちゃんがもっと褒めてくれるかなと思って。」
「アレクさん!何でもいいから下ろさせてください!」
……はっ。いけない、いけない。クレアがこんな事をするとは思わず固まってしまった。というより母さんは黙って何してるんだ?
静かで忘れていたが母さんを思い出しそちらを見たら。
パシャッ、パシャパシャッ。ジーーー。
前に兄さんが作った魔道カメラで写真を撮り、録画をしていた。あれじゃ手伝わせるのは無理だな。そう思い俺はカゴットを下すようにクレアを説得する事にした。
五分くらい説得して、クレアは渋々ながらにカゴットを下してくれた。下す時、母さんから舌打ちが聞こえた気がしたが、気のせいだと思いたい。
影魔法を解かれて今カゴットは息を整えていた。
「…はぁ、…はぁ。……アレクさん。」
「はい。」
「妹の教育、真面目に頼みますよ。あんたの姉みたいに――」
カゴットは姉に対して何か言おうとしたが、それは遮られてしまう。
「みたいに。…何ですか?」
「……。」
「あー。お姉ちゃんだ。」
「姉さん。……いつからそこに?」
声を出すまで気付かず。いつの間にか姉さんはカゴットの後ろにいた。これ四つ目は本当に転移魔法じゃないよな?索敵魔法だけじゃなく転移魔法まで持たれたら生活が脅かされるんだけど。
心の中で違う事を祈っていると姉さんはクレアを見て。
「クレアちゃん。今どんなお話をしてたのかな?」
姉さんはどんな話をしていたのか気になってるけど、頼むクレア。黙っていてくれ。
俺は黙ってますようにと願うが、そんな願いが通じる筈もなくクレアは喋ってしまう。
「今?今はお兄ちゃんがお姉ちゃんの魔法を知りたいって言うから、そのお話をしてたよ。」
「そうなの。ふーん。」
クレアの答えを聞いて頭を撫でながら、姉さんは俺を見てきた。
「何?」
「いやぁ。苦手なんて言ってたけど、アレクはお姉ちゃんの事が好きなんだなぁ、と思ってね。」
この姉とんでもない勘違いしてるんですけど。
「いや好きじゃないけど。」
「照れなくていいわよ。アレクになら私に関すること全部教えるんだから。それはもう朝から晩まで、おはようからおやすみまで、ベットから――」
「結構です!」
「もう、そんな恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「クレアもお姉ちゃんのこと、もっと知りたい。」
「そう?ならクレアちゃんは私が――。」
「任せねえよ!」
姉さんがクレアの先生みたいになりそうだったが、クレアを姉さんに任せるなんてそんな恐ろしいこと任せてたまるか。
俺と姉さんの言い合いを黙って聞いていた母さんだったが、終わりそうにないと思ったのか突然、パンっ!、と手を叩いて黙らせた。
俺らはそれに驚き黙ってしまい、母さんの方を見た。
「長くなりそうだから、その話は明日ね?」
「「はい。」」
一見優しく言ってるけど分かる。あれは想到イライラしていると。これ以上怒らせたらマズいと思い、四人は母さんの方を向いた。
「さて、クレアの事は紹介したから次は……アレク。」
「何?」
「あなた歩いて帰ってきたらしいけど、車はどうしたの?」
母さんに呼ばれ、次は何の話かと思ったら車の話か。なんか怒ってる様に感じるけど、多分俺らが車を乗り捨てて帰ってきたと思ってるのかな?事情を説明すれば納得してくれるだろうし、ちゃんと話すか。
そう思った俺は森から帰る時に魔物に襲われ、どうやって倒したかの話をした。
話すに連れて部屋の温度が下がっている気がするけど、気のせいか?
「そう。……やっぱりあなたが原因だったのね。」
話終えると母さんが何か言ったが、声が小さすぎて聞こえなかった。
「車の事は分かりました。請求はシム君に送っておきましょう。それよりも今日寝る場所ですけど。」
そう言って立ち上がると微笑みながら母さんは俺らに近づいてくる。近づいてきて気づいたが、母さんが近くに来るほど寒くなってきた。俺だけじゃなく三人も気づいたらしく、カゴットの方を見るとあいつもこちらを見ていた。
理由は分からないが母さんは怒っているらしく、俺らは頷くと何が起きても逃げ出せるように足を引いた。姉さんとクレアも逃げようとしている。
「あら。まだ話があるのに逃げようとするなんて失礼ね。……逃がさないわよ「封印・氷」」
微笑みながら近づいてきた母さんの雰囲気が変わったのと同時に小屋から逃げようと全員扉に走ったが、あちらの魔法の方が早く小屋の中は氷で覆われ扉を開ける事が出来なかった。
「やばっ!これじゃ出れない。」
「どうするアレクさん!」
こうなったらカゴットを見捨てることになるけど転移魔法で逃げるか。そう思い転移魔法を使うのと同時に母さんが。
「転移魔法で逃げようとしてるけど無駄よ。封印魔法で転移できなくなっているんだから。」
「「転移」……あれ?」
母さんの言う通り転移を使ったが発動することなく、俺は小屋の中にまだ居る。
「マジかよ!詰んだーっ!」
「それよりアレクさん!今俺を見捨てて自分だけ逃げようとしたな!」
「お前だって転移の薬を飲んでたじゃねえか!見てないとでも思ったのか!?」
どうやら俺らはお互いを見捨てて逃げようとしてたらしい。俺たちは扉の前で言い争いをしていたがそのせいで。
「行動も同じだなんて仲がいいわね。」
「「あっ。」」
目の前に母さんが立っていた。気づくのが遅れたせいか俺とカゴットは足を凍らされ動けなくされていた。
「……アレク。最初の質問の屋敷が燃えている原因を教えるわね。」
え?今その話をするの?こんなことをしてまで話す必要ある?
急に話始めた母さんに困惑してカゴットの方を見るとあちらも困惑した顔でこちらを見ていた。
「屋敷が燃えていたのは。…あなたのせいよ、アレク。」
……はい?何で屋敷が燃えてるのが俺のせいになるの?訳が分からなくて首を傾げるも母さんは続けた。
「正確には車に乗っていた、アレク、シアン、カゴット君、シム君のせいね。」
「あの、母さん?意味が分からないんだけど?俺らが帰ってきた時には燃えていたから俺らのせいではないんじゃないかな?」
「いいえ。あなた達のせいよ。」
俺らが燃やすのは無理だから違うのではないかと聞いてみるもやっぱり俺らのせいだった。訳が分からないと思っているとカゴットが小さく手を上げて。
「あの、結局何が原因で屋敷が燃えてるのですか。」
カゴットのした今の質問で足だけを凍らせていた氷が胸まで上がってきた。
何で!?カゴットは普通に質問しただけだろ!?余計に凍らされて混乱している俺たちを無視して母さんは答えた。
「あなた達が魔物を倒す時に飛ばした車が屋敷に落ちて爆発したのよ。それが火事の原因ね。」
「「……えっ?」」
その言葉を聞いて、さっきまで混乱していた頭は一気に冷えた。そして氷は首まで凍った。
「この間、ようやく増築が終わって完成した屋敷をあなた達が車を落として燃やしたのよ。壊れたヶ所を直す度にアレクが魔法の練習で壊して、延期になっていた増築が終わった屋敷をね。」
謝ろうと口を開こうとするも、その前に口を凍らされ何も言えなくなった。そんな俺たちを特に気にすることもなく母さんは続けて話す。
「危険だったから魔物を倒すのは分かるけど、屋敷を燃やした罰を与えます。」
そう言うとにっこりと笑って。
「二日間氷漬けの刑に処す。」
その言葉を最後に俺の目の前は暗くなった
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