感想は灰になりました
「……つまり昨日のアレクとシアン、二人の行動が気になったクレアは部屋でお楽しみをしてたと勘繰りアレクを問いただすけど、実際はクレアが思っているような行動はしておらず更に許可証の存在を忘れて問いただしたせいで怒ったアレクが追いかけたと。」
「はい……。」
「それで、魔法を使いながら追いかけていると逃げた先でレシア一行と合流したけど、レシアが離れた後で魔物退治には冒険者が来ないと判明して、その理由がアレクにあると知ったリマル達が襲い掛かった。」
「それで間違いないです。はい……。」
「そして、相手が戦闘初心者のうえに自分が悪いからと迎撃しかしなかったが、容赦の無いリマル達の攻撃で我慢の限界になって、アレクが反撃に移った結果この惨状、と。」
「はい、少しやり過ぎました。」
「はぁ……。」
この場に居た全員が正座をさせられ、俺達三人で事の成り行きを話すとクレア、リマル、俺と順番に顔を見ながら確認して、間違いがないと分かると母さんは深いため息を吐いた。
そして、頭痛でもするのか米神を揉み解すと呆れた顔を向けてくる。
「話を聞いても意味が分からないのだけど、どうして追い掛けるだけでこんな事になるのよ……。」
「それはまあ、説明した通りとしか言いようがないけど。」
「それくらい分かってるわよ!私が言いたいのは、魔法を使うにしても加減が出来ないのかと聞きたいのよ!見なさい、この惨状!」
そう言って、母さんは森だった場所を指さす。
「ここら一帯、木はへし折れて地面は穴だらけ!幸い火事は起こってないようだけど、これを直すのにまたお金が掛かるじゃないの!」
「お金って……。」
詰まりまた借金が増えるのか。自業自得の部分もあるが、俺の借金はどこまで増えるんだよ。これ以上増えたら、一山当てない限り返せる自信がないんだけど……。
また借金が増える事に頭が痛くなり始めていると、母さんはクレアを見る。
「そもそもクレアは、どうしてアレクとシアンの営みを聞きたがるのかしら?クレアなら他の物、例えば……料理に興味を持つと思うのだけど。」
「うーん……。私は食べるのが好きであって、作るのにはそんなに興味がないんだよね。それにお兄ちゃんとシアンお姉ちゃんに話を聞こうとしたのは、体験談を聞いてよりリアリティを追求するためだよ。」
「リアリティ?」
「そうリアリティ。ちょっと待ってね。……はい、どうぞ。」
そう言ってクレアは影に手を入れると二冊の本を取り出し俺と母さんに渡した。
渡された本は表紙は黒くてタイトルは書かれておらず、表には綺麗に咲いた赤い薔薇が裏には何枚か花弁の散った赤い薔薇がそれぞれ一輪づつ描かれている。
俺が開かずに本を見ているとリマルが近づき一緒に手元の本を見始め、母さんは表と裏に描かれた薔薇が気になるのか表紙を見て何かを考えている。
「タイトルが無いけど、この薔薇がタイトル代わりか?」
「多分な。それにタイトルどころか作者名も書いてないけど、誰が書いたんだよこの本。」
「作者も気になるけど、何処で買ったのかも気になるんだが。」
「見た目の感想はいいから、取りあえず読んでみて。本は見た目じゃなくて、中身が大事なんだからさ。」
リマルと見た目について話しているとクレアに読むように薦められる。
「まあ、それもそうか。取りあえず読んでみよう。」
「お嬢の言う通り、本は見た目じゃなくて中身が大事だ。書かれている内容を見て判断しないと駄目だな。」
クレアに言われ、俺は真ん中より手前辺りの母さんは真ん中辺りのページを適当に開く。
そして、本に書かれていたのは……。
――――――
「シアン!」
「え、アレ……んっ!?」
シアンの挑発に我慢が出来ず、キスをしながらベッドに押し倒すアレク。
そのキスは普段の優しく触れ合うようなものでは無く、舌を絡め合う大人のキス。
「ん……んんっ。ぷはっ……ま、待って、んんぅ……!?」
手を出すように自分から挑発したとはいえ本当に押し倒すとは思わず、シアンが静止の声をあげようとするも、その口はアレクのキスによって塞がれてしまう。
ならば力尽くでと思うシアンだが、それも体勢が悪く腕も抑えられているため振り解く事も出来ない。
主と言っても所詮は子供。ここは年上として、お姉さんがリードしてあげようと思っていたが、結果はこの様。
貪られ、蹂躙される口腔。
肌と肌が触れ合い、火照り始める身体。
子供とは思えないキスで身体が感じ始め、止めようとしていたシアンはやがて抵抗をやめて受け入れるようになる。
「……はぁ、……はぁ。シアン……。」
キスを始めて、どのくらい経っただろうか。一先ず満足したアレクはシアンから口を離す。
息切れをしながらも、満足気なアレク。しかしキスを受け入れてから何度も絶頂したシアンのせいで、ふかふかのベッドもいろんな体液を吸って今はビショビショ。とても続きを――。
――――――
まだ本番前というべき場面だったが、少し読んだ俺は静かに本を閉じる。隣を見れば一緒に読んでいたリマルが同情の視線を向けていた。
解ってくれるか友よ。
今の心境を察してくれた友に感謝をしながらリマルの逆側、クレアの方を向く。
クレアはどんな感想が貰えるのかと楽しみにしているらしく、わくわくした様子で見ているが俺はクレアを無視して母さんの許し無しに立ち上がると、空に向けて本を投げる。
そして……。
「「一尺玉」」
空に向けて投げられた本に俺は何の躊躇いもなく一尺玉を使い、本は空高くで灰となった。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみください。




