喧嘩販売
いつから俺の部屋はSMプレイをする為の部屋になったんだよ。せめて改装するなら家主には一言言えよな。こんなのを見せて子供の教育に悪いだろ。
胸中文句を並べながら死んだ目をして部屋に入ると、人が入ってきた事に気付いて騒ぎ出したラーシェの下へと行く。
おお、これは絶景だ。下から見ると縄で縛られているせいで胸が強調されて大きさが良く分かるな。前に見た時も思ったがシアンより大きくないものの、ラーシェもそこそこに……って、胸を観賞してる場合じゃない。早く助けてやるか。
「おいラーシェ、助けるから暴れるなよ。「幻影実態」「溶解毒」」
一言声を掛けると落下地点に幻影実態で作り出した分厚いマットを敷き、溶解毒で縄を溶かす。
「う゛う゛ん!う゛っ!?」
「あ……。」
毒は縄に当たりすぐに溶けたのでラーシェは落ちたが、衝撃を吸収する為に反発力を強くしたせいでラーシェが撥ねて床に放り出され、頭を強く打ってしまった。
あー、もう少し反発力を弱くすれば良かったな。そうすれば撥ねずに済んだのに。
悪い事をしたなと思いながら、打った痛みで転げているラーシェに近づくと体を縛っている縄は固くて無理だったので、目隠しと猿ぐつわを外してやる。
目隠しと猿ぐつわを外すとラーシェは涙目で上目遣いをしながら見てくる。
「ううう……。助けてくれた事は感謝しますが、酷いですよアレク様。」
「すまんなラーシェ、ちょっと加減を間違えてしまったんだ。」
「間違えたって、これがシアンやクレアだったら、もっと丁寧に助けるでしょ?」
「そこは否定しない。」
「否定してくださいよ!?」
否定されない事にラーシェはショックを受けているようだったが、そう言われてもなぁ。クレアは妹だし、シアンは妻なんだから多少の扱いの差は許して欲しいよ。まあ、これを言ったらまた面倒くさそうだし、話を変えるか。
これ以上この話を続けても面倒くさいと思った俺は話を変える事にする。
「というよりラーシェ。お前、助け方に文句を言ってるけど何勝手に人の部屋に侵入してんだよ。」
「侵入だなんてトンデモない。私はシアンが倒れたと聞いたので、心配してお見舞いにでもと思って行ったらソフィーさんに捕まったんですよ。私は悪くないです。」
「お見舞いは良いとして、仕事をサボって行くか?」
「友達を心配するのは普通の事でしょ!アレク様は友達と仕事どっちが大事なのですか!?」
出たよ、男が女に言われて面倒くさい、どっちが大事シリーズ。大抵こういうのは、付き合ったり結婚してから言われると思ったが、まさか今言われるとは思わなかったよ。
とは言え、その二択でどっちが大事かと言われれば……。
「その二択だったら友達だな。」
「でしょ。だったらアレク様も――。」
「ただそれは普通の人の場合で、ラーシェの場合は普段から仕事をサボってるせいで、サボりたいが為に見舞いに来たようにしか見えないんだよ。」
「そんなぁ、アレク様は友達想いのラーシェちゃんを疑うんですか?」
「これも日頃の行いだろ。普段から仕事をサボってなければ、疑ってないわ。」
「流石アレク様。普段から問題を起こして、何かあれば真っ先に疑われるだけの事はありますね。」
「喧嘩売ってるだろ、お前!?」
くそ、相手が男だったら軽めの魔法でも当ててやるのにラーシェは女だからな。流石に縄で縛られて動けない女に攻撃するのは人として最低だろ。
一発お見舞いしてやろうかと思ったが、無抵抗のせいで攻撃出来ず悔しそうにしているとラーシェが芋虫のようにもぞもぞと動き出した。
「そんなに動いてどうしたラーシェ?」
「いえ、助け方はアレでしたが、よいしょ。」
「怪我しないように配慮したんだから、アレとか言うなよ。」
「配慮して失敗してたら意味ないでしょ、っと。」
「ごもっともで。」
「それで、いい加減に自由になりたいのですがっ!縄抜け使用にも、縄が解けないのですよ!って、首がっ!?」
話ながら解こうとしていたラーシェだったが少し失敗したらしく、身体に巻かれた縄で自分で自分の首を絞めていた。
「おいおい、大丈夫か?」
「うえっほ!?えほっ!?えほっ!?……ええ、何とか大丈夫です。あのまま首が締まってたら窒息して、シアンの胸で死んだアレク様と同じ場所に行くとこでしたよ。」
首を絞めてラーシェは咳き込んだが、呼吸を整えると目に涙が溜まっているが大丈夫と言っている。
大丈夫ならそれで良いけど、俺が胸で死に掛けたのを言う必要ないだろ。喧嘩売ってるよな?
「お望みとあらば、そこの窓から首吊りでもさせてやろうか?」
「まあ、そう怒らないでください。何を怒ってるのか分かりませんが、短気は損気。怒っても良い事は何もありませんよ。」
怒気を感じたのかラーシェは宥めるように言うが、やっぱりこいつ喧嘩売ってるだろ。
俺は手をラーシェに向け、狙いを定めると大きく息を吸い。
「怒ってるのは、お前の発言が原因だろうが!!「ロケット花火」」
無抵抗な女性というのも忘れ、ロケット花火を放った。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみください。




