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卵入れ

 しかし探し始めたのはいいが残骸が全然見つからない。あまりにも見つからないので索敵魔法で探すも反応がなく、反応があってもそこにあるのは鉱石かウドンテの卵であって残骸はない。


「こんなに探しても無いなんて、ねえアレクさん。」


「索敵魔法で探しても見つからないなんて、ねえアレク。」


「お前ら嫌味か!いちいち名前を呼ぶな。」


 確かにここまで見つからないのは俺のせいなんだけど、言いたいことがあるならはっきり言ってほしい。


「でもアレク様の魔法で粉々にしてしまいましたから。」


 はっきり言ってほしいと思ったらカゴットでもシムでもなくシアンが言った。シアンの方を見たら怒ったと思ったのか慌てながら。


「すみません。アレク様の魔法がないと倒せなかったと言うのに私ったら。」


「いや、いいよ。俺の魔法で粉々にしたせいで見つからないんだし。怒ってないからそんなに謝らなくてもいいよ。」


 必死に謝るシアンに俺は怒ってないと言ったらカゴットとシムがシアンに。


「シアンさんそんなに謝ることないですよ。本当のことなんですから。」


「カゴットの言う通り。アレクが粉々にしたから見つからないんだしね。」


「お前らも粉々にしてやろうか。」


 俺が手に魔力を込め二人に向けると二人は急いで離れて行った。


「駄目ですよアレク様。そんな事をして、もし魔法が発動したらどうするんですか。」


「大丈夫だよ。脅しに使った魔法は怪我をするような魔法じゃないから。それより結構探したけど見つからないから卵の方に行こうか。」


 俺が脅しに使ったのは毒魔法の「麻痺毒」だ。加減はしているので当たっても三十分は動けなくなるだけ。二人を呼び戻し探すのをやめて卵の方に行こうと提案してみたら、三人もこのまま探しても見つからないと考えていたらしく賛成してくれた。

 索敵魔法を使いながら卵のあった場所を目指したが、道中は特に問題もなく無事卵のあった場所にたどり着いた。


 しかし目的の場所で問題が発生していた。


「…ねえアレクさん。」


「…何かね、カゴットさん?」


「なんか卵、動いてるように見えるんだけど。」


「俺にも動いてるように見えるね。」


「なんで動いてるんだろ。」


「それはやっぱり、ねぇ?」


 そう卵のあった場所に戻ったらツフトローチが埋もれていた場所の卵が動き始めていた。これを放置して逃げ出すのはマズいよな。

 俺とカゴットが現実逃避をしているとシアンとシムが。


「お前らそんな事を言ってないで対策を考えろ!これ孵化しようとしてるじゃないか!」


「まずいですよアレク様!こんな大量の卵が孵化して町になんて行ったらとんでもないことに!」


 俺とカゴットが現実逃避をしているとシアンとシムが答えを言った。


「分かってるよ!少しくらい現実逃避させてくれ。」


「そんな事をしても無駄だろ。アレクの花火魔法で吹き飛ばせないか?幸い見える範囲だが孵化しそうなのは一か所だけだ。」


 ここから見えるのは三か所だが孵化しそうなのはそのうちの一か所。今危険なのはその一か所なのでそれさえ対処すれば一先ず危機は去る。

 確かに花火魔法で吹き飛ばそうと思えばできるけど、これ以上森を滅茶苦茶にしたらどう考えても怒られる。俺が使うか使わないか考えていたらシアンが何か思いついた顔をして聞いてきた。


「アレク様の転移魔法で海に飛ばせないのですか?」


「さすがに魔力が足りないかな。…あっ、もしかしたら。」


 索敵魔法でマップを出して海までの距離を見ながらシアンの疑問に答えていたら、吹き飛ばさずに解決できそうな方法を思いついた。


「何か思いついたのかアレク?」


「ああ。俺の予想通りなら吹き飛ばさずに解決できる。」


「おお!なら早速やりましょうアレク様。」


「そうだな。」


 そう言って俺は卵に近づき収納を発動。そして動いている卵を一つ持ち収納に近づけると卵は吸い込まれていった。


「よし。予想通りだ。」


 マップで見たら動いている卵がまだ黄色に光っていたのでいけるか?と思ったら見事に当たった。これで何とかなるな。


「待て待て待て。アレクさん収納を使えるの!?」


 俺の予想が当たりガッツポーズをしていると後ろからカゴットが驚きながら走ってこっちに来た。


「転移魔法は収納も使えるからね。」


「なあアレクさん。是非うちの商会に――」


「断る!そう言うと思ったから内緒にしたかったんだ。」


「大丈夫。アレクさんの魔法があればすぐに出世できるから。話をするためにすぐに家に行こう。」


「人の話を聞け!」


 カゴットの勧誘がしつこすぎる。全然人の話を聞かないなこいつ。


「これだけの魔法があるなら給料はこれくらい出るから。」


「だから入る気はない!」


 俺らが言い合っているとシアンとシムが来た。


「カゴットさん!アレク様は商会に入る気はないのですからやめてください。しつこいですよ。」


「シアンさんの言う通りだね。確かにアレクの魔法があれば便利だけどそこは本人の意思を尊重しないと。」


 二人に言われてようやくカゴットも落ち着いてきた。


「すみません。アレクさんの魔法を見たら、ついね。」


「まあ気持ちは分かるけどさ。商人からしたらアレクの魔法はすごく欲しいよね。」


「だろ。そう思うならシムさんも――。」


「一緒に説得はしないからね。」


「あのー、アレク様。あれを見てください。」


 俺が二人のやり取りを見ていたらシアンに呼ばれ、そちらを見るとシアンは俺の後ろを指差していた。


「何?」


 俺は指を指されている後ろを見たら卵の動きが先ほどよりも激しくなっていた。


「やばい!もう少しで孵化しそうになってる!」


 俺は再び収納を発動してシアンと一緒に収納の中に急いで卵を放り込んでいった。


「おいシアン!なんで早く言わなかった!?」


「私も今気づいたんですよ!」


 カゴットとシムも俺とシアンの声が聞こえ気づいたらしく、言い合いをやめて急いで収納の中へ卵を入れていった。


「カゴットがアレクを勧誘なんかしようとするから、卵の事忘れてたよ!」


「そんな俺のせいかよ!」


「「「カゴット(さん)のせいだろ(でしょ)!」」」


 カゴットの発言に俺ら三人は異口同音で返した。

最後までお読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみください。

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