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大きな木の頂上で

「お兄ちゃん、星が綺麗だね?」


「……そうだな。」


「アレク様、月も良く見えて綺麗ですね?」


「……そうだな。」


「お兄ちゃん。」

「アレク様。」


「「遠くまで見えて、中々に絶景だね(ですね)?」」


 今回のお仕置きは、これ以上問題を起こさせないように姉さんが帰る二日後までシアンと同じ木に吊るされるお仕置きだったのだが、その木というのが……。


「そりゃあ、屋敷に生えたバカでかい木に吊るされたら絶景だろ。」


 祭りの前日、酔っぱらったシアンとニーシャが屋敷の真ん中に生やした木だった。


 しかも頂上付近に吊るされて分かった事だが、二人の生やした木は高いとは思っても、まさか雲と同じくらいの高さとは思わず、枝も大人が四、五人横に並んでも余裕がある太さとは思わなかった。お陰で下にある筈の屋敷は見えず、高い建物はないので景色を遮らず良く見える。


「もう、そこは「シアンの方が綺麗だよ。」って言わなきゃ駄目でしょ、お兄ちゃん。」


「もしくは「こんな景色よりも、二人の方が綺麗だよ。」って言ってくださいよ。」


「こんな状態でそんな事言えるか!二人とも良くこんな状態で楽しめるな!?」


 どう考えても、楽しめる状態じゃないと思うんだけど!?


「そんな事言っても、滅多に来ることが出来ないんだよ?楽しまなきゃ損じゃん。」


「普段ならともかく、吊るされてる状態で楽しめるか!?」


「では、転移で自由になったらどうですか?そうしたら、アレク様も楽しめるでしょ?」


「そんな事したら、楽しむ前に見張りから殺されるわ。」


 そう言って、自分を吊るしている木の枝を見る。


 そこには木の枝の幹側に鳥箱の形をした小屋が作られており、その窓からお仕置きとして俺たちの見張りを言い渡されたネフィーさんが顔を出している。


「嫌だなぁ。私がそんな暴力的な事をする訳ないでしょ~。」


「追いかけられてなければ、その言葉を素直に受け取ってましたよ。」


 俺たちの話を聞いていたネフィーさんは殺すことを否定してるが、呪いの剣を振り回して男女問わず処女を狙った人が何を言ってるのやら。あんなのを尻に入れられたら、確実に死ぬに決まってるだろ。


「もう、あれは呪いのせいだって話したでしょ~。」


「確かに話は聞きましたが、どんな呪いか知ってるなら取り出さないでくださいよ。」


「ごめんねぇ。自慢の一品だから、見せたくなっちゃったんだ~。」


「それで尻を狙われたら、堪ったもんじゃないんだけど。」


「お兄ちゃんなんて、狙われたのがお尻だけでまだ良いでしょ。私は女の子だから、お尻だけじゃなく――。」


「それ以上、言わなくて良いから!」


 ネフィーさんとの会話を聞いて、トンデモ発言をしようとしたクレアにそれ以上言わさないように大声で遮るが、会話から察したのか隣に吊るされているシアンの顔が真っ赤になっていた。


「ふふふ。ほんと、面白くて仲の良い兄妹ね〜。私もヴィーちゃんと姉妹だったら、こんな感じなのかしらぁ?……ふわぁ〜。」


 ネフィーさんは俺たちのやり取りを笑いながら見ていると、眠いのか欠伸をした。


「う~ん……。アレクちゃん。」


「なんですか?」


「私、もう眠いから今日はもう寝るね~。」


「……はい?」


「それじゃあ、おやす――。」


「「ちょっと待て!!」」


 始めは何を言ってるのか分からず、俺だけでなくクレアも固まっていたが、ネフィーさんが部屋に戻る為に窓を閉めようとするのを見て、ようやく理解した俺たちは大きな声を出して止めた。


「……もう何?私、眠いのだけどぉ。」


 寝ようとする所を止められたせいか、ネフィーさんは不機嫌そうな顔をして低い声で聞いてくる。


「何じゃないでしょ!?ネフィーさんって見張りでしたよね!?」


「何、普通に寝ようとしてるんですか!?」


「何って言われても、夜更かしは美容と健康の大敵。明日もヴィーちゃんに可愛いと言われたいから、寝ようとしてるのよぉ。」


 ほんと、この人母さん中心だな!まあそれは母さんも同じだけどさ。って……。


「だから待って!?」


 理由を話したからか、寝る為に再び窓を閉めようとしているネフィーさんを俺は呼び止める。この人、どれだけ寝たいんだよ!?


「もう、今度は何?いい加減に寝たいのだけど?」


「いや、寝たいじゃなくて見張りは!?」


「それはしなくて大丈夫よぉ。ちゃんと罠魔法を使って即死級の罠を設置したから、逃げようとしても大丈夫。」


「俺たちが大丈夫じゃないわ!?」


 いつの間に設置したか分からないが、何物騒な物を設置してんだ!?この人、本業が先生じゃなくて処刑人や殺し屋だろ!?


「逃げなきゃいいのよぉ。それじゃあ、おやすみ~。用があったら、入り口にあるインターホンを押してね~。」


「押せねえよ!」


 言い終えると俺のツッコミも無視して窓を閉め、部屋に戻ると少しして明かりが消えた。……本当に寝やがったよ、あの人。


「……なんか、自由な人だね。」


「……だな。」


「……私達も寝る?」


「……そうするか。」


 罠の話の真偽は分からないが、あの話が嘘で逃げるのに例え成功しても母さんに捕まれば更に酷いお仕置きが待っているのは確実だろう。クレアの提案もあって吊るされた状態で寝る方を選んだが、その前に……。


「おいシアン。少し話したい事が……。」


 告白した後に姉さんとの関係を話してくれと言われたが、今ならネフィーさんも居らず、クレアは俺と姉さんの関係を知っているので問題ない。シアンに姉さんとの関係を話そうと思い隣を見ると、顔を俯かせ髪で隠れているので表情は分からないが、身体が少し震えているシアンが目に映った。


「なんか体が震えてるけど大丈夫か!?」


「シアンお姉ちゃん?シアンお姉ちゃん!?」


 俺の声に気付きクレアも名を呼ぶと、シアンはようやく顔を上げたがその顔は赤く、泣きそうな顔をしていた。


「あ、アレク様、クレアちゃん……。」


「どうした?」


「何かあったの?」


「…………………ぅ。」


「声が小さくて、聞こえんぞ。」


「……に……き…い…ぅ。」


「もっと大きい声で言って。」


 何かを伝えようとしていたシアンは先程よりも大きな声を出したが、それでも風の音が邪魔をして聞こえず、クレアに言われ強く目を瞑ると大きく息を吸い込み。


「だから、トイレに行きたいんです!うっ……!?」


 叫んだせいで尿意が近くなったのか、足を擦り合わせながら先程よりも動きが激しくなり、それを聞いた俺たちは慌て始める。


「クレア、トイレ持ってないか!?このままじゃ、シアンが別の意味で死んでしまう!」


「そんなの持ってる訳ないでしょ!?お兄ちゃんこそ持ってないの!?」


「紙ならあるけど、トイレなんて普通持たんわ!」


 慌てているせいで言ってる事が滅茶苦茶になりながら、お互いに収納と影を確認するが当然トイレは入っている筈もなく、どうしたら良いかと思ったら突然シアンが動きを止めた。


「し、シアン?」


「大丈夫、シアンお姉ちゃん?」


 あれだけトイレに行きたくて激しく動いていたのに突然動きを止めたシアンを心配して声を掛けると、シアンは満面の笑みをこちらに向け。


「アレク様。」


「どうした?」


「アレク様って、お漏らしする女の子に興奮しますか?」


 覚悟を決めたらしくシアンはトンデモない事を聞いてくるが、それを聞いた瞬間、俺とクレアは急いで何か使える物はないかと探し出す。


「シアン、早まるな!代わりの物を探すから!」


「シアンお姉ちゃん!それは超えたらいけない一線だよ!?」


 えーと!?何か使えそうなのは……。良し、これなら。


「シアン、このコップに――。」


「そんな小さいコップじゃ溢れてしまうよ!それに縛られてるこの状態から、どうやってさせるの!?」


「だー、そうだった!」


 他に何か、何か使えそうな物は……。丼はコップと同じ理由で駄目!袋もバケツも無理!くそ、入れ物は見つかっても宙に浮くものが見当たらない!何か、無いか!?宙に浮いて、トイレの代わりになる入れ物!宙に浮く入れ物!宙に浮、く……。


「…………。」


 その時、収納リストを確認していた俺は一つ、トイレの代わりになりそうな物を思い付いた。ただ、使用上の問題で使うかどうか迷っていると、俺の耳にシアンの声が聞こえた。


「10、9」


「ちょっと待て!!その数字は何!?」


「限界なの!?シアンお姉ちゃんのダム!限界で決壊しちゃうの!?」


「8、7、6」


「お兄ちゃん!私の方は使える物がないけど、そっちはないの!?」


「あるにはあるけど!別の意味で使いにくいんだよ!?」


「5、4」


「使えるんなら使って!このままじゃ、シアンお姉ちゃんが女として死んじゃう!」


「簡単に言うなよ!って、時間が!?」


「3」


「お兄ちゃん!」


「2」


「くそ「転移」」


「1」


「「収納」」


「0」


 クレアの悲痛な叫びと残りの僅かな秒数を聞いた俺は、転移でシアンの下着を跳ばし急いで収納をスカートの中で開くが、間に合ったかどうかは三人の秘密だ。

お読みいただきありがとうございます。


次回もお楽しみください。

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