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見つけた虫は

今回は虫が出てきますので苦手な方は注意してください。

「なあ、だいぶ歩いたと思うけどまだつかないの?」


「マップを見る限りそろそろのはずなんだが。」


 俺ら四人は魔物が表示されている場所に行こうとしているが森が入り組んでいるせいか思うように進めない。マップではそうでもないけど歩くと思ったより距離があるな。なんて思っているとシアンが心配そうに。


「あのアレク様。だいぶ森の奥に来てませんか?このまま進んでも大丈夫でしょうか?」


「採取に夢中で気づかなかったがそう言われればそうだな。」


「私も採取をしていたから言われるまで気付かなかった。」


 俺は魔物がいる場所までの道のりしか気づかず、カゴットとシムは採取に夢中で気づかなかったらしい。シアンが言わなければ誰も森の奥へ来ていると気づかなかった。このまま進むかそれとも帰るべきか。母さんが言うには奥の方に行くほど強い魔物が出てくるらしいし。取りあえず三人にも聞いてみるか。


「どうする。このまま進む、それとも帰る?」


「俺はこのまま進んでみたいな。奥に行くほどレアな素材があるしね。」


「出来るなら問題が起きる前に帰りたい。それに奥に行くほどレアな素材はあるけど、その分魔物も強くなるだろ。」


 カゴットは素材のために進みたいシムは安全のために帰りたい。まあ、この二人はそう言うだろうと思ったけど、ならシアンはどっちだと思い見たら。


「私はアレク様が進みたいと言うならそれについて行くだけです。」


 シアンよ、お前は嫌なら嫌と言うような奴だろ?何でここで俺に任せるかな?そのせいでカゴットからは進めと目で訴えてくるし、シムも帰ると目で訴えてくるんだぞどうしてくれる。


「アレクさんはもちろん進むよな?素材だけ取って魔物は退治していませんはちょっと不自然じゃないか?」


「いやいや、全然不自然じゃないよ。春とは言え、まだ魔物が出てくる暖かさじゃないだけでしょ。」


「そうは言うけどシムさん。今年は昨年より気温が高いですよ。」


「そうかな?今年も昨年と変わらない気温と思うけど。」


 …これどっちを選んでも角が立つよな。正直選ぶのがめんどくさい。シアンが俺に任せるからと若干恨んだ目で見るとシアンは目を逸らした。このメイド後で憶えとけよ。もうめんどくさくいし二人でじゃんけんさせて決めるか。


「おい、二人ともちょっと……。…何してるの?」


 じゃんけんさせるために二人を呼ぼうとそちらを見ると、二人はお互いの頬を引っ張りあっていた。


「「こいつが譲らないから!」」


「敵の数も位置も分かってそこに素材があるなら行くべきだろ!」


「そんな事を言うけど倒せない場合どうするんだよ!」


「そこは敵を見て勝てそうかどうかをだな。」


「はいはい、そこまで。二人ともこっち来て。」


 この二人、放っておいたらずっと言い争いをしてるんじゃないか?まあ、時間も勿体ないから中断させるけど。


「「で、どっち!」」


 俺が二人を呼ぶと言い争いをやめて来てくれるのはいいけど顔を近づけるのはやめろ。カゴットは普通に男だからやめろと言えるが、シムの場合は男だと分かっていても顔と今の格好のせいで女にしか見えないんだからな。

 俺は二人から離れ二人にじゃんけんで決めるように言った。


「まあそのほうが後腐れ無さそうだな。」


「私もそれでいいよ。」


「なら一回勝負でカゴットが勝ったら進む。シムが勝ったら帰るでいい?」


 二人はじゃんけんで決める事に賛成しルールを確認すると頷いた。


「よし。なら開始。」


 俺は頷くのを二人が確認すると開始を告げる。


「「じゃんけん…ほいっ」」


「俺の勝ちだ。じゃんけんで勝ったから約束通りこのまま進むでいいよね?」


「約束だからね。」


「やった!これでレア素材も取れる。」


 じゃんけんに勝ったのはカゴットだった。カゴットがチョキでシムがパーを出していた。そしてカゴットは俺に確認をしてきたので約束通り、このまま森の奥に進むと言ってやると嬉しそうにしていた。


 そして俺らは奥へと進んで行きもう少しという所で話し合って魔物を見てから倒すか退くか決めようと相談すると茂みに隠れ慎重に進んで行った。俺がもう少しで何の虫か分かるなと言ったところでシムから質問がきた。


「なあアレク。気になっていた事があるんだが聞いていいか?」


「内容によるけど何だ。」


 この質問に俺だけでなくシアンやカゴットも何を聞くのかと不思議そうな顔をしている。


「森に入ってから虫退治と言って探し、マップに表示されている魔物を虫系と確信している感じだけど、他の種類の魔物の可能性はないのか?」


「ああ、そのことか。」


 俺はシムが何を聞くのかと不思議に思ったがどうやらシムは出てくる魔物が虫系と言っている俺に疑問を覚えたようだ。そしてシアンとカゴットもこの質問を聞いて確かにと納得していた。


「簡単な話だ。どうやら魔物を探す時は種族も選べるらしい。」


「種族?」


「そう種族。例えばスライムを探す時はスライムの種族で索敵できるし、ゴブリンで索敵する時はゴブリンの種族で索敵できると細かく指定できるんだ。」


 索敵魔法は他にもアンデッドやドラゴンさらに魔物ではないけど山賊など細かく分けられている。この答えに三人は驚いたが納得すると進んで行き。


「ようやくたどり着いたか。この茂みの向こうにいるから何が出ても騒ぐなよ。」


 俺の言葉に三人は頷くと茂みからこっそりと魔物の姿を見た。まず目に付いたのは白い粒の塊だ。その白い粒が大量にあり、その次に目に付くのが白の中に埋もれている黒い虫だ。その黒い虫を見た瞬間俺たちは鳥肌が立った。その虫は普段ゴミ捨て場や家具の裏などにおり、平べったい体で触角を二本ひよひよと動かしている。家で出てくるのはそんなに大きくないが今目の前にいるのは体長が五メートル、高さは遠くでよく分からないが三メートルは超えていた。

 黒い虫の名前はツフトローチ。戦闘力はそんなにないが繁殖力は高く餌を求め村を襲い滅ぼしたと聞いた事がある。


 それを見た俺らは少しの間固まっていたがすぐに小声で話し合った。


「おい!アレク、カゴットお前らあれと本当に戦う気か!?」


「俺はごめんだ!あんなのと戦うくらいなら半年くらいイントア姉さんと一緒にいた方がましだ!」


「俺だってあんなのが出てくると分かっていたら来てないよ!」


「ならすぐに引き返しましょうよ。」


「そうだな幸い向こうは気づいて無さそうだし、ここは町まで戻って討伐隊を編成するべきだろ。」


「確かにここは怒られるとか考えるよりもこの事を伝える方が大事か。」


「あのアレクさん。退くことは賛成だけど魔物の近くにある素材って結局何か分かる?」


 俺がシムの提案に乗って退こうとしたら、カゴットがここに来た目的の素材の質問をしてきた。


「それ今聞く事か?」


「私は今すぐにでも帰りたいのですが。」


「まあ俺の目的は素材だったわけだし。頼むよここから見えるマップに表示されてる場所だけでいいからさ。」


 カゴットに言われ仕方なしにマップに表示されている素材の位置を教えていると気づいた事がある。


「……何かアレクが言った場所に全部白い塊があるんだけど。」


「……それは俺も思った事だな。」


「で、あの白いの何?」


 シムのその言葉に俺らは黙ってしまった。ここから見える範囲で三か所、表示されているのも合わせると六か所ある。誰が言うかで黙っていたがシアンがポツリと呟いた。


「あの虫の卵でしょうか?」


 その答えは俺らが予想していた通りだった。卵の大きさは一粒六十センチくらいで数は一塊数百はある。そんなのが六ケ所。これが全部孵化したら町は滅びるだろう。俺らは顔を見て頷き合うと素早く退くことにした。


 退く順番は先頭からシアン、カゴット、シム、アレクだ。誰が最後尾になるかで話し合った結果、向こうがこちらに気づいても攻撃できるようにと満場一致で俺になった。


 幸い向こうはまだ気づいておらず触角を動かしているだけだ。大きな音を立てない限り気づかれることは無いと思ったのがいけなかったのだろう。


「うわっ!」


「きゃあっ!」


 ゆっくりと進んでいたがカゴットが足元の石に躓いてしまい、その拍子に前にいたシアンを押して一緒にこけていた。


「おい大丈夫か?」


「こっちは大丈夫。シアンさんは大丈夫かな?」


「ええ。私も大丈夫です。あのアレク様。ツフトローチはどうしてますか?」


 怪我が無いか聞いてみたが二人とも大丈夫らしい。そしてシアンに言われツフトローチの方を見ると、今の声に反応したのか触角の動きは止まり体はこちらを向いていた。


「やばい!今のでバレたかも!」


「ちょっ!二人とも早く起き上がって!」


 二人が起き上がり急いでその場を離れようとしたらツフトローチが走り出した。こうなると隠れながら逃げてる場合じゃないので俺らは立ち上がり走り出した。


「いやああっ!!気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!」


「うわああっ!あ、アレクさん早くあいつに攻撃して!」


「分かってる!「ロケット花火」」


「きゃああっ!やっぱりこんなことになるんじゃないか!」


 俺はツフトローチの頭に攻撃したが効いてる様子もなくこちらに迫ってきている。


「マジかよ!全然効いてねえ!」


「ならもっと威力の高いやつはないの!?」


「巻き込んでいいならあるけど。」


「巻き込まれるのは嫌だな。」


「って。アレク様後ろ後ろ!!」


 俺とカゴットで言い合っているとシアンが後ろと言うのでそちらを見たらすぐ後ろまで来ていた。


「うおっ!やべええっ!!一旦横に跳ぶぞ!」


 俺がそう言うと三人は返事をして1、2の3で横に避けた。横に跳ぶとツフトローチは俺たちを通りすぎそのまま突き進んだ。


「はあ。なんとか助かったな。」


「そうですね。ただせっかく採取したのにいくつか落としてしまいました。」


「俺もいくつか道具を落としたな。」


「食われるよりかはマシだろ。それとも虫の餌になりたいのか?」


「まぁ、虫に食べられるよりはマシだけど。苦労して集めたんだよ。」


「苦労して集めたとか言ってるけど、カゴットが店の素材を勝手に使ったせいでそうなったんだろ。」


「そうだな。店の人達が苦労して集めた物を勝手に使ったお前が悪いからそうなってるんだよな。勝手に店の素材とかを使って、店の人もカゴットの扱いにも苦労してそうだな。」


「それはアレク様も同じでは?屋敷でアレク様の扱いに苦労してる人は多いかと。」


「……。」


 そこは同意するとこだろ。最近シアンは遠慮なく言うことが多いな。ちょっと意地悪でもしてやるか。


「よしっ。次、襲われたらシアンを囮にして逃げるか。」


「すみませんでした。囮にするのは勘弁してください。実家で可愛い妹が私を待っているのです。」


 こいつ長女だったんだ。姉がこうだと妹も苦労してそうだな。どんな妹なんだろ?

 シアンの妹が気になって俺は聞いてみることにした。


「シアンって長女だったんだ。どんな妹さん?」


「アレク様と同じ五歳ですが、すごく優秀なんですよ。私がミスをしてもフォローしてくれますし、家事も私よりできるんです。雇ってもらう前の話なんですが――。」


 妹が好きなのは分かるけど話を聞くとシアンのやつ、相当妹に助けてもらってるな。多分妹さんシアンが知らない所でも助けてるよこれ。カゴットとシムも話を聞いているけど、カゴットは妹さんを勧誘しようと考えているっぽいし、シムはシアンのミスの多さに頬を引きつらせているな。


「なあシアン。」


「何ですか。」


「お前と妹さんを交換できないかな。」


「なっ。私にどこか至らぬ所でもありますか!?」


「むしろ至らぬ所だらけだな。」


 妹さんの話を聞いたら誰だって同じことを言いそうだけどな。


「どうか解雇はやめてください。私、アレク様のお世話をするのが好きなんです。」


「ちょっ。冗談だから交換するのは冗談だから泣くな。シアンを解雇させるつもりなんて全くないから。」


 俺が妹さんと交換するとか言ったらシアンのやつ泣き始めたんだが。カゴットとシムの視線が痛い。見てないで泣き止ますのを手伝って欲しいのだけど。


「……ぐすっ。……ほんとうにしませんか?」


「しない、しない。」


「妹よりわたしのほうがいいですか?」


「妹さんよりシアンの方がいいから。俺のお世話係はシアン以外にはいないよ。」


 俺がそう言ったらようやく泣き止んだ。こいつダメな所が多いけど、他の人と比べて話すのに丁度いいんだよな。


 そうして四人で話しているとツフトローチが進んで行った方から。バキッ。メキメキッ。ドスン。と木が折れて倒れる音が聞こえてきた。しかもその音はどんどん近くなって聞こえてくる。


「「「………。」」」


「……なあアレク。」


「何?」


「この音ってもしかして。」


「多分そうだね。その予想で合ってると思うよ。」


 シムだけでなくこの場にいる全員は近づいてくる音の正体に予想がついている。さっき突き進んで行ったツフトローチがこっちに戻って来たんだろうと。俺らはこの場所から離れるために再び走り出した。


「なあアレク。もっと威力のある魔法を当てられないのか?」


「当てようにも森のせいで視界が悪いし木が邪魔。そもそもお前らが近すぎて巻き込んでしまう。」


「ならどこか高い所から打てばいいんじゃないか。」


「そんな場所がどこにあるんだよ。」


「確かにないよね。ここに生えてる木は全部同じくらいの高さだし。」


 周りに障害物がなければ当てれるが、今みたいな木が沢山ある場所だとさすがに無理だ。索敵魔法を使って位置が分かっても木にぶつかり続ければツフトローチに当たる前に破裂してしまい失敗に終わる。

 それに俺の魔法は範囲も広いからこいつらを巻き込んでしまう。なら上から当てれば、とカゴットが言うがこんな森の中にそんな高そうな場所なんかない。


 俺たちがどうしようかと考えているとシアンが。


「木が高ければ問題ないんですね?」


「まあそうだけど。その高い木がないから困っているんだけど。」


「なら私に任せてください。私なら木を高くしたり低くしたりできますから。」


 シアンのその言葉に俺達は「はい?」と思ったが俺はすぐにシアンの魔法を思い出した。


「そうか!成長魔法で木の成長を操るんだな。」


「そうです。成長魔法なら高い木を低くしたり低い木を高くしたりと自由ですから。」


「これなら倒せそうだな。頼むぞシアン。」


「はい。」


 シアンが成長魔法を使って木の高さを操りその木の上から俺がツフトローチに魔法をぶつけまくるこれならいける気がしてきた。


「成長魔法はそんなに便利なんですね。ちなみにシアンさんその魔法は木だけじゃなく草などにも?」


「ええ、できますけど。」


「おお。アレクさん、シアンさんをうちで――」


「働かす気はないからな。」


「それは残念。シアンさん、もし解雇されたら――。」


「解雇なんかさせないよ。」


 俺とシアンがツフトローチの倒し方を話していると、成長魔法で木だけじゃなく草などにも有効と聞いたカゴットがシアンを引き抜こうとしやがった。シアンを辞めさせるつもりも渡す気もない。睨むようにカゴットを見るとカゴットは近くにいたシムに頭を叩かれてた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみください。

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