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採取と虫探し



 後部座席に気絶したカゴットとシムを乗せ俺らは今、シアンの運転で森を目指して走っている。


「先ほどは取り乱してすみませんでした。」


「いや、俺の方こそすまんかった。俺もシムが男と証明するためにいきなりあんなことをしてしまったから。それに謝るなら俺じゃなくて、シムに謝れよ俺も一緒に謝るからさ。」


「そうですね。取り乱していたとはいえ男の人の大事な所を――。」


「それ以上は言わなくていいよ。」


 シアンはシムのを触った感触を思い出して顔が赤くなっていた。


 正直この話をしているとさっきのを思い出して、俺の息子に痛みを感じる気がして落ち着かないのでこれ以上この話をしたくない。

 別の話を振って会話をしていたらその途中でカゴットとシムも目を覚まし、ようやく森に到着した。


「ようやく着いた。ここに来るまで長かったような気がするんだが。」


「そうですね。私も来る前からすでに疲れています。」


「今日は疲れたから、なんて理由で何もせずに帰ったらまずいよね?」


「まずいだろ。それとも海に沈められたいのか?」


「それは勘弁してほしいな。」


「今更だけど、なんで私は連れてこられたの?」


 俺らが車から降り森の前で話をしていると、ただ一人連れて来た理由を話していないシムが聞いてきた。そういえばあの騒ぎで気絶したから話してなかったな。


「実は俺ら三人、母さんに脅されて森に行かされる事になったんだ。俺は街道を破壊した罰で虫退治。」


「俺は店に置いてある素材を使ってしまったから、それを取りに行けと。」


「私はアレク様のお供ですね。」


「三人が問題を起こしただけで、私は関係ないよね?帰っていいかな?」


「帰ってどうぞ、と言うとでも思ったか?」


「シムさん連帯責任と言う言葉を知ってるか?」


「シムさんは友達が困っていても助けずに見捨てるのですか?」


 シムは自分が関係ないと分かると帰ろうとしたが、俺だけじゃなくカゴットとシアンも家に帰すまいとしている。俺とカゴットの言葉には何か言い返そうとしたシムだったが、シアンの言葉で答えに一瞬詰まるものの、それでも行きたくないらしく反論してきた。


「普段なら困っているのを見捨てずに助けるけど、今回はどう考えても問題が起こるだろ。特に虫退治!それに、なんで服を着せ替えずに連れ出すのさ!」


「大丈夫。問題を起こさせないためにブレーキ役のお前を連れて来たんだから。」


「シムさんにしかできない役割だな。」


「シムさん、大変な役回りですが頑張ってください。」


「人任せでなく、自分らで自重しようとは思わないのか!」


「そうそう母さんからの伝言で、お前が行かない場合は股にぶら下がっている物を切り落とすらしいぞ。」


「……。」


 母さんの伝言を伝えると、今まで反論していたシムも黙ってしまった。母さんなら冗談でなく本気でやると分かったのだろう。俺はシートベルトを外し黙ってしまったシムの肩に手を置いて、目を合わせて。


「一緒に行ってくれるよな?」


 シムは先程の伝言を聞いて、出せる答えは一つしかなかった。


 俺らの説得にようやくシムは頷き、一緒に森の中へ入って行く。俺やカゴットはシムを説得出来て良かった、と思っていてシアンは「ブレーキ役のシムさんが居れば大丈夫ですね。」などと言ってる。


 それを聞いて俺は、本来ブレーキ役はシアンの役目じゃないのか?と思ったが、すぐに自分でその考えを否定した。森に来る前にシアンも俺やカゴットと同じ暴走仲間と母さんが言ってたのを思い出したからだ。


「ここに来る前にも聞いたけど、カゴットは素材集めだったよな?」


「そうだな。店にある素材を少し魔法の練習のために借りただけなのに、使った分だけ取って来いなんて言うんだぞ。酷いよな。」


「それは店の売り物に手を付けるカゴットが酷いとして、どんな素材を取ってこなきゃいけないの?」


 森の前に車を置いて暫く歩いていると、ふと疑問が沸いた。俺は虫退治のために森に来たが、カゴットはどんな素材を集めるんだろうと思い聞いてみたら、集める素材はよくある薬草や毒消し草、眠り花に活力花の根っこが必要とのこと。


「結構あるな。」


「だろう。いっそのこと二手に別れて探すか?」


「いや、別れない方がいいと思います。」


「私も別れるのに反対だね。」


 集める素材が多いのでカゴットが二手に別れる提案をしたがシアンとシムが反対した。まあ俺も別れるのには反対だな。何が出てくるか分からないし、そもそも攻撃役が四人の中で俺だけだから何かあった時のために集団でいた方がいいだろう。


「やっぱりそうか。まあ対処できそうな人が四人の中でアレクさんくらいしかいないもんな。」


 カゴットも分かっていたらしく簡単に引き下がった。

 探す、という言葉で俺はここなら反応があるかなと思い、索敵魔法を試そうと思うがまずは三人に伝えてから使おう。


「ちょっと試してみたいことがあるんだけどやってみていいか?」


「何をされるのですか?」


「試したいこと?」


「……それを使って問題が起こらないならいいけど。」


 発動する前に三人に聞いてみたらシアンとカゴットは疑問に思い首を傾げ、シムはジト目でこちらを見てきた。そんな目で見てシムはもう少し俺を信用しろよな。

 そんな事を思いながら俺は索敵魔法を発動した。


「じゃあ使うぞ「物敵索敵」」


 物敵索敵を使うとマップが現れ予想通り森にある素材の位置が黄色に光っていた。俺がマップを見ていると他の三人には見えないらしく俺に近づいてきた。


「あのアレク様?いつの間にそのような魔法を覚えたのですか?」


「少し前にな。あまり使う事がないからシアンも知らないのは仕方ないよ。」


「話には聞いたことがあるけど、今使った魔法は索敵魔法のはずだよ。」


「そうだな。索敵魔法の物敵索敵と言う魔法だ。これを使うとマップが現れ自分を青色、物を黄色、魔物を赤色で表示してくれるんだ。」


「アレクさん。うちの商会に入る気ないか?仕事の内容は素材を取ってくるだけの簡単なお仕事だからさ。今ならお給料も高めに出すし、この魔法バックもあげるよ。」


「魔法バックは欲しいけど、商会に入る気はないな。」


 魔法バックとはバックに収納魔法を付与しており見た目よりも物が入るバックだが、小さな物でも相当の値段がすると聞いた。正直「収納」を誤魔化すために魔法バックは欲しいけど、こいつのとこに入るとめんどくさい事を頼まれそうだしやめておこう。

 シムは俺の魔法を警戒していたが危険性がないとわかると警戒を解いた。そんなに警戒するほど俺は信用がないのか?


「じゃあ近くに表示されてる所から行くぞ。」


 そう言って表示された場所に行くとあったのは毒消し草だった。


「おお。本当にあった。アレクさんこの調子でお願い。」


「おう。任せておけ。」


 そして次々とマップに表示されている素材を取って行った。俺はこっそり「収納」の中へ、シアンは持ってきたカバンにカゴットとシムは魔法バックに素材を入れていくが、表示されるのは黄色ばかりで赤色はまだ表示されない。

 結構歩き回ったけどおかしくないか?それとも今年は思ったより虫の数が少ないとか?それか無いとは思うけど、俺に罰を与えるために昨日の夜に母さん達が魔物の数を減らしたりしてね。


「どうかしましたか?」


 三人は素材を集めていたが、俺が考えて立ち止まっていたらシアンが心配そうな顔をして近くに来た。


「いや、魔物がまったく出てこないなと思ってね。」


「あれ?わざと魔物避けてたんじゃないんですか?」


「どうせ索敵魔法が使える事は母さんに知られるんだからそんな事しないよ。」


「確かにそんな事をしてバレたりしたら冷凍便ですもんね。」


 そんな事を話しながらマップを見ていたらようやく赤い光が表示された。


「おお。やっと出てきたか。おーい二人とも、魔物を見つけたから退治するためそっちに行くぞ。」


 ようやく魔物の位置が表示されたので、退治しに行くため二人に声をかけると採取を中断して来てくれた。


「今度はどこに表示されたの?」


「もう結構取ったしそろそろ帰らないか。」


 カゴットはまだ採取する気満々でシムは問題が起きないうちに帰りたいようだ。


「いや、ようやく魔物の位置が分かったから次はそっちに行くぞ。俺は採取じゃなくて退治しに来たんだから。魔物の近くに黄色の光もあるし丁度いいだろ。」


 俺が素材じゃなく魔物の方に行くと言ったら二人とも行く気をなくしたが、近くに素材があると分かるとカゴットは行く気になってくれた。シムは行くのを渋っているが、三人が行く気になっているのを見て諦めて一緒に行くことにしたっぽいな。


「虫系の魔物とは聞いたけど、どんな魔物が出てくるんだろ?」


「そうですね。森でよく見るのは時期にもよりますが芋虫や蜂、ダンゴムシあとはアリや蜘蛛などですかね。」


「芋虫や蜘蛛が出す糸は状態が良ければうちで買い取りするよ。」


「アリなら種類にもよるけど蜜を持ってるやつもいるし、ダンゴムシなら一部が防具にも使えるから売れるね。」


「まあなんにしても行ってみるか。」


「「賛成!」」


「……はぁ。何も起きませんように。」


 俺が言うと二人は賛成してくれたが、シムだけはまだ問題が起きると心配している。


「そんな事を言うと何か起きそうなんだけど。」


「私も前に似たようなことを言ったせいで起こりましたもんね。」


「不吉だからそういう事を言うのやめてもらってもいいかな。」


「まあ、何か起こっても大きな問題にしなければいいだろ。」


「うるさい。問題児一号。アレクが一番やらかすんだから本当に頼むよ。」


「心配するな少しは俺を信用しろ。」


 そう言いながら俺らは表示された場所まで行く事にした。

明日は投稿せず、月曜に投稿する予定です。

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