迎えに行こう
誤字、脱字があるでしょうが最後までお楽しみください。
俺は冷凍便で王都に送られる前にシアンに車を運転してもらいカゴットとシムを迎えに行った。考えてみればルーベル兄さんが車を作ったけどこれも前の世界にあった物なんだろうな。前の世界には他にどんな物が在ったんだろうと考えているうちにカゴットの家に着いたので扉をノックした。
「朝早くからすみません。誰かいますか?」
「はぁい。誰で……ああ、アレク様ですか。」
出てきたのはカゴットの母親でカエーヌさんだった。
「おはようございます、カエーヌさん。実は森に行くのでカゴットを連れて行こうと思いまして。」
「ヴィクトリア様から話は聞いてます。あの馬鹿、店にある素材を魔法に使ったから森に取りに行かそうと思ってたのよ。お願いできるかしら?」
「任せてください。森には車で行くので帰りもそんなに遅くはならないと思います。」
町から森まで歩きで大体二時間くらい掛かるが車なら一時間も掛からない。
「あの子の事、よろしくお願いします。今あの馬鹿を呼ぶから待っててください。」
そう言ってカエーヌさんは家の中に戻ると中から「この馬鹿息子!いつまで寝てるんだ!アレク様が迎えに来てるわよ。」と聞こえた。その後、中からドタバタとした音が聞こえ何かが割れる音もした。
待っている間、暇なのでシアンと話していると暫くしてカゴットが出てきた。出てきたカゴットは髪にまだ寝癖がついていて機嫌が悪そうにしている。
「こんな朝早くなんだよ。」
「母さんに俺とシアンが森で虫退治を頼まれたんだ。」
「それ、俺は関係ないよね。」
「お前とシムも連れて行けとご使命だ。」
「……断ったら?」
「母さんが言うには一週間くらい氷漬けにして海に沈めとくらしいよ。ちなみにおばさんの了承は得てる。」
「それ行くとしか答えられないよね。ヴィクトリア様だとやると言ったら本当にやりそうだし。」
「うん、そうだね。俺も行かないと冷凍便でイントア姉さんの所に送られるんだよ。」
「私も行かないとお給料を減らされて身体を売ることになりそうで……。」
「「「はぁあ。」」」
俺ら全員、行かない選択をすると何かしら酷い目に合わされるらしい。それを考えたら自然とため息が出た。
「ここに立っていても仕方ないし、シムの所に行くか。」
「確かにこんなとこでサボってたと思われたら更に酷いことをされそうですし、シムさんのとこに行きましょう。」
「一週間沈められるより酷いってなんだよ。」
そんな事を言いながら俺らは車に乗りシムの家に向かった。シムの家に着くと初めて来たシアンは驚いた顔をしていた。そういえばシムの事をちゃんと話してなかったな。
「シムさんの家なんか大きくないですか。建て替える前の使用人の寮より大きいような?」
「気のせいですよシアンさん。あいつは平民ですから。」
「そうだぞシアン。あいつは平民もどきだ。だから気にするな。」
「アレク様は前にシムさんの事を一応平民と言ってたりしてましたよね?なにかあるんですか?」
「何にもないよ。あれは可哀そうな平民だ。あいつ、姉さんのせいで色々と振り回されてるしな。」
「それは言えてるよ。しかしシムさんの所の家族もよく許したよな」
「聞いた話だけど母親同士が仲が良いらしいぞ。それにどちらの家も父親より母親の方が決定権を持ってるようなもんだしな。」
「シムさんのとこは意外だったけど。アレクさんの家はやっぱり、ヴィクトリア様の方が上なんだな。」
「やっぱりってなんだよ。」
「いやな、町で結構噂になってるよ。ナルスタック家の当主はヴィクトリア様だ、とか気に食わない人は氷漬けにしているとか。」
町の人も母さんが当主と認識してるんだな。しかし氷漬けまで知られてるとは。
「意外と当たっている所がありますね。少し前にもシュページ様が氷漬けにされてましたし。」
「おい馬鹿。家の恥を喋るな。喋ったのがバレたりしたら、次は給料を引かれるだけじゃ済まないぞ。」
「そうでした。すみません、カゴットさん。今のは内緒に。」
「あ、はい。まぁいいですけど。」
俺らがノックをせずに玄関前で話していたら扉が開き人が出て来た。
「玄関の外で聞いたことがある声が聞こえると思って来てみたら……。君たちノックもせずに人の家の扉の前で何してるんだ?」
「すみません、扉の前で話し込んでしまって。あの、シムさんはいらっしゃいますか?」
出て来た人は艶やかな黒い長髪を後ろに一つで纏め、服は袖のない襟のついたワンピースを着ていた。
そして聞かれた相手は言いにくそうな顔をしている。カゴットはシアンの発言を聞いて笑いを堪えていた。
「あの、私……す。」
「はい?」
「だから。私がシムです。」
「……えっと?」
そりゃあ言いにくいよな。シムのやつ可愛いからとワンピースやメイド服といった女物の服を好んで家で着ているなんて。しかし、これも姉さんのせい何だろうか?それとも元から興味があったのか、どっちだろ?
二人のやり取りを見ていたらシアンは困惑したような顔でこちらを見てきた。もう少し楽しみたいが時間がもったいないし助けてやるか。カゴットは我慢できずに笑い転げてる。
「あー、シアン。こいつは本当にシムだ。」
「?お姉さんか妹さんじゃなくて?」
「シムだ。」
「実はシムさんは女とか?」
「男だ。」
「シムさんのシムさんがついている女という可能性は?」
「シムのシムがついている男だ。」
「生まれた時は女で、後から建設工事をしたとか?」
「生まれた時から生えているな。」
「いくら何でもシアンさん疑いすぎでしょ!」
あっ。シアンの疑問に答えていたらシムが我慢の限界か突っ込んだ。まあ、シアンの奴も相当しつこかったもんな。
「すみません。ですが、シムさんがそんな恰好をしていると女にしか見えませんよ。シムさんは見た目だけじゃなく声まで女なんですから。それならまだ、実は女でしたとか姉もしくは妹です。と、言われた方が納得できます。」
「それでも私だってちゃんと付いているんですから。」
「ですが――。」
はぁ、証明する方法は簡単なんだよな。ただ、これをやるとシムが怒るんだけど……仕方ない。シアンがあまりにも信用しないのが悪いしな。そうして俺はシアンの手を取った。
「?あのアレク様?」
「あー。……シアン、シムすまん。」
俺は二人に一言謝って、掴んだシアンの手をシムの股に持っていって触らせた。
「きゃああああっ!!むにゅって!むにゅってして!きゃああっ!!」
「ちょ、アレ!あああっ!!に、にぎ、シア、あああああ!はな、握っ!私の、痛い!潰れええっ!」
「ちょっ!シアン放せ!潰れるっ!シムの玉が潰れる!シム君がシムちゃんになってしまう!」
男と証明するため、シムの股に手を持っていったのはいいんだけど、まさかシアンが驚いてシムの玉を握るとは思わなかった。このままでは最悪潰れてシムの子供が出来なくなってしまう。それはまずいので、何とか放そうとシアンの手を引っ張るが余計に力を込めて握ってしまう始末。こんなのどうしろと言うんだ。
その後、玄関の騒がしさに家の人も出てきて何とか手を離すことに成功したが、あまりの痛みにシムは白目をむいて気絶をしていた。俺は気絶したシムと握ってパニックになったシアン。そして笑い過ぎてまた気絶したカゴットを車に乗せシアンが落ち着くのを待って、森へと出発した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみください。




