誕生日プレゼント
初めまして。初投稿ですので読みにくい部分もあるでしょうが、楽しんで読んでくれたら嬉しいです。
寒い二月半ば俺、アレク=ナルスタックは明日五歳になる。
子供が五歳になると体内にある魔力が活性化して魔法が使えるようになる。
自分がどんな魔法を使おうか三歳ぐらいから楽しみにしていた。火の魔法を使って派手に燃やしたり、風の魔法で空を飛んだりといつも楽しみにしていた。
そして明日、どんな魔法を使えるかを楽しみに眠りについた。
眩しい。なんだもう朝か。
そう思って起きると、そこはあたり一面白かった。
どこまでも続く白。果てなど見えず、上を見ても下を見ても白一色だ。
「…?…何これ、夢?寝れば夢から醒めるかな。」
そう思ってまた寝ようとした時、どこからか聞いたことがある声が聞こえた。
「おーい、アレク起きろ。夢の中だけど詳しいことを話すから起きろ。」
「その声は……ルーベル兄さん?」
「おう、お前の兄ルーベルだぞ。話しがあるから起きろ。」
声が聞こえてそちらを見ると二人の人物が立っていた。
一人はナルスタック家の長男ルーベル=ナルスタック、髪は茶色で所々髪が跳ねて、背丈は高い。服装はよく見る白衣の格好で、やる気の無さそうな目をしている。現在王宮の開発部という部署で局長をしていた筈だ。
そしてもう一人、兄さんの隣に立っているのは初めて見る女性だった。陶器のように白い肌、黒く長い髪は地面についており、眠そうな顔をしている。
どうでもいいけど、髪が長い人は洗う時に時間も掛かるし乾かすのも大変そうだな。
「夢の中とはいえ三度の飯よりも実験が好きで、王宮を何回も爆破した事もあるルーベル兄さんが出てくるはずがないな。我ながら夢の中に出てくる人選が間違ってるだろ。」
「おいおい、いくら何でも兄に対して酷くないか?俺はまだ二回しか爆破したことがないし、ちゃんと実験よりも家族が好きだぞ。それに妹のイントアよりは俺の方がマシだろ。」
「王宮を一回でも爆破する時点でアウトだよ!」
確かにイントア姉さんに比べたらルーベル兄さんの方がまだいい。
イントア=ナルスタック、ナルスタック家の長女だ。我が家の兄弟は兄一人に姉一人そして末っ子の俺。
イントア姉さんは俺が好きなのだが、好きの方向が他の人よりずれている。
「イントア姉さんと比べるのはダメだろ。正直、ルーベル兄さんは苦手ではないけど面倒くさい。」
「俺は妹や弟が好きだというのに、それは正直すぎるだろ。」
だってルーベル兄さんについて行くと、毎回酷い目に遭ったもん。何回、中型魔物の群れに追い掛け回された事か。
「おい!いい加減本題に入れ。いつまで雑談をする気だ。」
「すまんな。久しぶりに喋るもんだから、少し雑談し過ぎた。今から本題を話すわ。」
俺とルーベル兄さんが話していると、隣にいた女の人が我慢の限界らしく本題に入れと促してきた。
「本題?」
「おう、お前は明日で五歳になるから、魔法が使えるようになるよな。」
「うん、すごく楽しみだよ。」
「だろうな。そこで俺が、誕生日プレゼントに俺の持ってる魔法をあげようと思ったんだ。」
「……何を言ってるの?人に魔法を渡すなんて出来るわけ無いのに、頭大丈夫?熱出てない?詐欺師にでもなったの?」
「誰が犯罪者になるか!俺の頭は大丈夫だし至って健康だ!それに魔法を渡す事もできる!」
この兄は何を言ってるのだろうか?魔法を渡すなんて聞いたことが無い。
普通に考えたら出来ない事を言い出したので、頭がおかしくなったと思い心配したら怒られてしまった。
「それならどうやって魔法を渡すの?」
ルーベル兄さんが魔法を渡せると自信あり気に言っているが、そもそも此処は夢の中だ。夢の中で渡した物を現実に持って帰れるなんてやっぱり嘘っぽい。
俺が若干疑った目で見てたら、ルーベル兄さんがその顔を見て笑ってきた。
「ふっ、今から色々と話すから黙って聞いてろ。」
腹が立つ笑い方をするなぁ。話が進まなくなるから今はやめとくけど後で一発殴ってもいいかな?
詳しい事を話してくれるので頷いたらルーベル兄さんは話を始めた。
「まず俺について簡単に話すが、俺は別の世界で生きていたが、そこの女が原因で死んだ。で、手違いで殺したから詫びとしてこっちの世界でもう一回生きるか、女の部下として就職するか選べと言われ生きる方を選んだ。ちなみにその女、神だからな。何か質問はあるか?」
……質問はあるかと聞かれても、質問だらけの話だ。この兄は何を言ってる?一回死んだとか女の人は神様だとか、到底信じられる話じゃない。今時の子供でも、もう少し上手な作り話をするぞ。
「えーと、冗談?それとも頭でも打って、現実と夢の区別がつかなくなった?」
「お前、ちょっと見ないうちに言葉が酷いな!?冗談じゃなくて本当の話だから、少しは兄の言葉を信じろ!」
「なら、その人が神様って言う証拠を見せてよ。それか兄さんが別の世界で生きていたっていう、証拠でもいいけど。」
「うーん、証拠ねぇ。今まで発明したやつは俺が生きていた世界の物って言っても証拠がないし――。」
兄の言葉が信じられずに証拠を見せろと言ったら、兄さんはぶつぶつ言いながら悩み始めた。
証拠でしばらく悩んでいた兄さんだったが、やがて何か思いついたらしく、こちらを向いて話し始める。
「よしっ、少し早いが魔法を一つ渡す事にする。ちなみにこれは、プレゼントじゃなくてお試しだから安心しろ。」
「……どうやって渡すの?」
証拠で魔法を渡すと言い出した兄さん。その言葉を信じた訳ではないが、俺は方法を聞いてみた。
「やり方は簡単。俺が魔法を使いながら、この神様の手を握ります。」
そう言ってルーベル兄さんは、手から火花が飛び散っている魔法を発動しながら神様の手を握った。
血や肉片を見たくなくて目をつぶってしまうが、何も起きない事を不思議に思い、目を開ける兄さんと神様は普通に握手をしている。
「よし、次に神様が先ほどの魔法を使います。」
ルーベル兄さんがそう言って神様の手を見ると、先ほど見た火花が飛び散っている魔法が出ていた。
「最後にお前がその手を握ると、魔法の受け渡しは終了だ。」
「いや無理でしょ!?見るからに危ないよ!触った瞬間、俺の手が吹き飛ぶよ!いいの!?弟の手が吹き飛んでいいの!?兄さんが冗談で作ったゴーレムと同じロケットパンチを俺が撃つ事になるなんて嫌だよ!」
「この場合はロケットパンチじゃなくてミンチになるな。まぁ大丈夫だから安心しろ。仮に手が吹き飛んでも、俺が立派な義手を作ってやるよ。義手に念じればドリルに変形する機能も付けてやるぞ。格好いいだろ?」
「安心できるか!手を握る事も兄さんの作る義手も何一つ安心できないよ!まだ小型魔物に群れで追われてる方がマシだよ!」
「何が嫌なんだ?ドリルは俺の世界で人気だったんだ。それをお前は……ならあれか?ドリルじゃなくて、ビームや魔法を撃てる銃に改造してやろうか?」
「そういう問題じゃないから!頼むから、ルーベル兄さんは人の心を持って!開発部にいる人達に人体改造を施してないよね!?お願いだから「実は改造してます。」とか言わないでよ!?」
あまりにも酷い兄の発言に言い返していると、神様がこちらにやって来て俺の腕を掴み手を握ってきた。
「うるさい。遅い。男なら腹を括れ。それとも股にぶら下がってるのは飾りか?切り落としてもいいのか?」
「すみませんでした。それだけは勘弁してください。」
手が飛んでいくよりも俺は男として死にそうになったので即座に謝罪をした。
俺は生きている限り息子を切り離すつもりは絶対無い。
兄の方を見ると若干内股になって冷や汗を流し「二度とやられたくない」と呟いた。…兄さん一回息子と別れたことあるの?あれ?でも昔一緒にお風呂に入った時あったよね?それとも兄さんの息子は取り外し可能?
そんな馬鹿な事を思ってるうちに終わったらしく神様は手を離した。
「これでお前は今渡した魔法が使えるはずだ。初めて魔法を使うんだから、ちゃんと詠唱を唱えろよ。」
「分かってるよ、どんな詠唱なの。」
魔法を使う時、慣ない魔法や苦手な魔法を発動するには詠唱を唱えるのが常識だ。詠唱を唱えず魔法を発動する事もできるが、使い慣れない魔法を発動する時に詠唱せず発動すると暴発したり不発だったりする。
そんな理由から一般的に慣れない魔法は詠唱を唱え魔法名を言い、慣れた魔法は詠唱無しで魔法名を言うだけで発動できる。
「自分が今使える魔法が分かるだろ。魔力を流しながら使いたい魔法名を選ぶと頭に詠唱が浮かびあがる。」
確かに自分が今どんな魔法が使えるか分かる。言われた通り魔力を流しながら使いたい魔法名を選ぶと頭に詠唱が浮かび上がったので、早速詠唱を唱え魔法名を俺は言った。
「火よ 突き進み花を咲かせ 「ロケット花火」」
さっきのロケットパンチの話で思い出したのでなんとなくこれを選んだ。ロケット花火は手を向けた方に真っすぐ飛んで行き、しばらくすると少し大きめの爆発をした。
初めて魔法を打てた嬉しさに自分の手と魔法を打った方を交互に見てるとルーベル兄さんに呼ばれた。
「今打った魔法は見ての通り真っ直ぐ飛んで行き暫くすると爆発する魔法だ。慣れると連射もできるぞ。これで俺が嘘を言ってないと信じてくれるかな?」
そう言われて俺は魔法を貰う前の話を思い出した。いろんな事がありすぎてその話を忘れていた。
「疑ってごめん、ルーベル兄さんさっきの話の続きをしてくれるかな。」
こうしてルーベル兄さんの話を最後まで聞いた。話を聞いていくうちに色々と分かったが兄さんは死んだ特典で今世界で判明している魔法すべて使えたり、今まで開発したほとんどの物は前の世界にあった物をこちらの世界用に改造したりとそういった話を教えてくれた。
「さて、ほとんど話したしそろそろ魔法を渡すか。」
ルーベル兄さんは話終えたのかそう言いだした。
「あっ、その前に聞きたかったんだけどいいかな?」
「ん?どうした?」
「魔法をくれるのは嬉しいけどさ……正直、兄さん必要?神様だけで良かったんじゃ……。」
その言葉で兄さんの顔が固まり、神様は笑いを堪えている。
「悲しい事言うなよ。ぶっちゃけると必要ないけどさ…。」
「必要ないのかよ!」
なら何で来たのやら。まあ、誕生日プレゼントを渡す序に俺の顔が久しぶりに見たいとか、そんな理由で来たんだろうけど。
「まあ聞け。実際魔法を渡すだけならこいつに頼めばいいけど、俺がこいつを通して渡したのは熟練度が勿体ないからだな。」
「熟練度?」
「ああ。魔法を使っていくうちにその魔法で新しい魔法名を覚えるだろ?」
「うん。」
兄さんが言いたい事は、火魔法を使っていれば火魔法の中の新しい魔法が使えるという事か。
「で、俺が使ってる魔法は大体が半分まで使えるようになっている。」
「凄いね、それ!なら俺もそれだけ魔法が――。」
「使えないぞ。」
「使えないのかよ!」
「人の話は最後まで聞け。使えない理由は単純でお前の魔力が足りないとか魔法の使用回数が足りないってだけの理由だ。」
「なら俺が魔力や回数が足りれば?」
「使えるな。で、条件がそれだけで済んでるのは、熟練度のおかげなんだ。」
あっ、ここで熟練度が出るんだな。
「本来魔法名を増やそうと思ったらめんどくさいんだぞ。難しいのだと、一つの魔法で何百体倒せとか一人で魔法一発で大型魔物の群れを倒せとか。」
「聞いてるだけでめんどくさいって分かるな。」
「だろ。だから俺から渡そうと思ったんだよ。育てるのを楽しみたいなら熟練度を消すけど。」
「このままでお願いします。」
人によるだろうけど、今の話を聞いて俺は消したいと思わないな。
「兄さんを通して魔法をくれる理由は分かったよ。で、魔法をくれるのは嬉しいけど何の魔法をくれるの?」
「それを今から決めるんだよ。さっき渡した魔法は返さなくていいからな、その魔法もお前にやるよ。」
ルーベル兄さんはそんな事を言いながらを何か準備を始めた。
少し待つと俺の目の前にルーレットが準備されダーツの矢を三本渡された。
「よし出来た。見たら分かると思うが一応ルール説明するぞ。」
そう言ってホワイトボードを取り出すとルール説明が始まった。
「ルールはダーツの矢を的に当てるだけで、その当たって書いてある魔法が貰える。チャンスは三回で全部当てると特賞が貰える。無いと思うが全部外れたら、かわいそうだしくじで一回だけ引いていいぞ。書いてある魔法に基本の火、風、水、土は入れてないから安心して投げろ。では、ルーレット開始。」
こういうのって相手の要望を聞いてそれに当てはまる物を選ばすんじゃないの?何でルーレット?そんな事を疑問に思っているうちにルーベル兄さんのルール説明は終わり投げるように言ってきた。正直火魔法、風魔法、水魔法、土魔法が入ってないのは嬉しかった。それらは初心者魔法の書を読めば誰でも覚えられるからだ。
「まずは一投目、どうぞ。」
ルーベル兄さんの掛け声と共に神様がルーレットを回し始めた。取りあえず投げるか。外さない様によく狙って、投げる。
俺が投げたダーツの矢は外れることなくルーレットに見事刺さった。
「続けて最後まで投げろよ。」
言われるままにダーツの矢を二投目、三投目、と投げて全部投げ終わった。
「おお、上手いな。全部的に刺さってる。特賞はお前の目が覚めたら送っとく。よし発表するぞ。」
正直全部刺さるとは思わなかった、良くて二本くらいしか刺さらないと思ったが三個も魔法が貰えるなんて嬉しい。
俺はどんな魔法が貰えるか楽しみにしながらルーベル兄さんの発表を聞いた。
「最初の魔法は索敵魔法だな。」
索敵魔法は知りたい人、物、生物が何処にいるか知ることが出来て鍛えると生物の場合、何をしているかまで分かる魔法だな。
「次は危ないけどいいか毒魔法。」
あまり思い出したくないが毒魔法はイントア姉さんが得意だった、一回麻痺毒を入れた紅茶を出された事があるが飲む前にルーベル兄さんが助けてくれたな。あれ以来イントア姉さんが渡す食べ物は疑うようになった。
その後、貰う魔法の発表を聞いて俺が貰える魔法が決まった。
索敵魔法、毒魔法、転移魔法、が当たった。ちなみに最初ルーベル兄さんに貰った魔法は花火魔法と言うらしい。
「これで誕生日プレゼントは渡したし帰るわ。」
ルーベル兄さんが帰ると言い出したので気になっていた事を聞いてみた。
「ルーベル兄さんは何で俺の誕生日プレゼントに魔法をあげようと思ったの。」
俺が気になっていた事を聞いたら兄さんは頭を撫でながら言ってきた。
「お前に渡したら面白可笑しい事をしてくれそうだから、かな。」
楽しそうに笑ってそう言ってると頭を撫でる手の感覚に違和感を感じると同時に二人の姿は薄くなってきた。
「そろそろ時間だ。」
「なら、帰りますかね。俺が魔法をあげたのは内緒だぞ。」
「魔法を渡せる事が知られるとめんどくさいもんね。ありがとうルーベル兄さん最高のプレゼントだったよ。神様も俺の為にありがとうございます。」
「最後にアドバイスだ。魔法は使えば使うほど魔法の威力が鍛えられ魔力量も増える。」
「気にするな後の部下のためだからな。後で私も何かプレゼントをお前に与えよう。」
「……何でお前もやるんだよ。」
「気に入った部下の弟が魔法を使えるようになったのだ。なら、折角だと思ってな。」
「弟も狙ってんじゃねえだろうな?」
「やきもちでも妬いてるのか?可愛い奴よ。」
そんな言い合いをしながら二人は消えていき暫くすると自分の姿も薄くなり消えていった。
鳥の鳴き声で俺は目が覚める。今日から魔法の使える生活が始まる。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
次回も楽しんで読んでください。
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