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-特別編6- 審判 その1。

 ルージェン王国の同盟国ルーディア王国。

 ここはスライムの女王オータムと彼女の妻。王妃・人間なリザが治めている国。

 2人共に本当は過去のスライムの溶液の効果のままに年齢を重ねて終末には大人しく死を受け入れるつもりであったのだが、ルージェン王国の女王フレデリークとナツミ、マロンの脅迫にも似た説得によってホムンクルスとなり、今も現役で国を統治する立場にいる。

 ルージェン王国の女王フレデリークと同様に民衆からの支持が高い2人。

 引退はまだまだ遠い未来のことになりそうな雰囲気が国中に漂っている。


 そんな国に本日【リリエル】はハンターギルドのマスター・ルミナからの依頼を受けて転移の魔法を使ってやって来ていた。

 ルーディア王国の王都ベルティアを歩く【リリエル】一行。

 彼女達が思うのは、この国も自分達の国と同じように見事に魔法国家になっているなぁということ。

 お店には魔力が必須の日常生活用品が並び、道を行くは馬の姿を模した数多くのゴーレム馬車。

 このゴーレム馬車。魔力をゴーレムの背に在る魔力電池に充電することで動くので魔力が尽きる・故障しない限りは何処迄も走り続けることができる。

 魔道列車も走っている。

 見た目はSL。だが、燃料は石炭ではなくこちらもゴーレム馬車と同じ魔力。魔力電池は先頭車両に設置されてある。石炭と違い、変な物質は出力されないので環境に優しい。

 地上はそんな感じ。続いて空を見上げれば、箒に乗って飛んでいる女性達。

 魔女とその見習い。これは魔女から習って始めて許されることなので、一般人は飛行群にいない。

 空を飛びたいと思うなら、魔女に嬢子(でし)入りするしかない。

 最も、嬢子(でし)入り志願をしたからと言ってすぐに受け入れては貰えない。

 魔女になるには最低でも各地にある学園のいずれかを卒業していることが必須。

 しかも成績優秀者でなければならない。

 それだけじゃない。後に待っているのは魔女からの試練の数々。

 試練を乗り越え、最終関門。魔法連盟に魔女となりたい旨を申請し、連盟が魔女としての素質があるか否かを精査して合格すれば晴れて魔女と名乗ることができる。

 逆に言えば、嬢子(でし)入りした魔女から合格の旨の言葉を貰っていたとしても、魔法連盟が魔女として相応しくないと判断すれば蹴落とされることもあるわけだ。

 狭き門。現在魔女見習いとなっている者達が無事に魔女となれる確率はとてつもなく低い。

 それこそ岩だらけの荒地で特別な鉱石を見つけないといけない程度には。


「あの中の何人が魔女と呼ばれる存在になれるのでしょうか」


 リーネが"ポツリ"とそんな言葉を口から漏らす。

 現在、魔法連盟に魔女や聖女として認められているのは80名程。

 内訳は魔女が70名で聖女が10名。

 その中でも階級があって、魔女としての頂点の座にいるのは【アングレカム】と【リリエル】と彼女達の嬢子(でし)の【ガザニア】。

 それとロマーナ地方ハンターギルドマスターのルミナ。

 聖女はアレッタとマリー。そして本人は知らないが、密かにリーネもそこに振り分けられていたりする。

 魔女と聖女。2つの称号の頂点にいるリーネとマリーは特別な存在。

 かと言って2人共に称号への誇りはあっても、決してそれを鼻にかけて威張ったりしないところが彼女達の良いところ。


 空から顔を地上へと下げる【リリエル】一行。

 目指すは本日の目的地。

 その前に案内人に合う必要がある。

 ルミナから予め「覚悟しておいてください」などと意味深なことを言われてからの出発だっただけに、その人物がどういう人物なのか気になるところではあるが、会ってみないことには始まらない。

 リーネがバッグからこの王都の地図を取り出し、ルミナが教えてくれた案内人が住んでいるらしい家へと向かう。


「こっちですね」


 歩いて数十分。無事に案内人の家に【リリエル】一行は到着。

 この時点で彼女達は、今すぐに踵を返して帰りたくなった。


「なぁ、本当にここで合ってるんだよな?」

「雰囲気浮いてるよね。この家」


 カミラとケーレの嫌そうな声。

 彼女達の気持ちはリーネ、アリシア、ミーアにもよく分かる。

 自分達だってできれば信じたくない。


 なんというか、派手だ。

 壁に窓に屋根に至る迄パステルカラー。

 全体を見ると虹色。

 目が痛くなる。

 本気の本気で帰りたいが、依頼を受けた身の上とあっては、この家の扉を叩かずに去るということなんてできない。

 清水の舞台ならぬ王城のバルコニーから飛び降りる覚悟を決めてリーネが代表として扉を叩く。

 1分も掛からないうちに派手な家から姿を見せたのは、【リリエル】の黒と真逆の白を身に纏った女性だった。

「ったく、かったりぃなぁ。なんであたしがこんな依頼に参加しなくちゃいけねぇんだよ。しかも同行者は揃いも揃って小娘とはな。あたしは小娘の世話は苦手なんだがなぁ」

「初対面の人に小娘とは失礼ですね」

「小娘なんだから失礼も何もねぇだろ。事実だ。で、お前らそれぞれ何歳だ?」

「何故年齢を教える必要があるのですか?」

「理由なんてどうでもいいだろ。教えろよ」

「……私が15歳で皆さんは16歳と18歳です」

「ちっ。やっぱ小娘じゃねぇか。あたしは23歳だぞ? 23歳。分かるか? 年齢の差は何かとでかいんだよ」

「ハァ、そうですか」


 出会ってから数分。現在は案内人と目的地へと歩いているところ。

 派手な家に住んでいた住人、口が悪い。

 ルミナが「覚悟しておいてくださいね」と言っていた理由がよく分かった気がする。

 案内人に気が付かれないように心の中でため息を吐く【リリエル】一行。

 案内人こと覆滅の魔女ロジーヌはそんな【リリエル】一行のことなどお構い無しに彼女達を連れて歩きながら彼女達の恰好を見つめて口を開く。


「お前ら。スカート短くねぇか?」


 確かに短いと言わると短い。

 各自膝上10cm~20cmにしているから。

 アリシア・ミーアが10cm、リーネ・ケーレ・カミラが20cm。

 カフェ・リリエルでのスカート丈はミーアによるもの。

 【リリエル】のスカート丈はカミラによるもの。

 リーネの場合はカミラと彼女の妻達が結託した結果、そうなった。


 【リリエル】の恰好を見て悪態をつくロジーヌ。


「痴女なのか?」

「失礼ですね!!」


 とか言いつつ、リーネはロジーヌがカフェでの自分達の姿を見たらどういう反応になるのだろうかと想像する。

 スカート丈だけじゃない。制服そのものが……。

 

「やっぱ痴女じゃねぇか」


 悪態をつかれることは間違いないだろう。

 癪なのでカフェのことは黙っておくことにした。


「ってかあたしみたいにズボンにすればいいのによ」


 ロジーヌの姿は外側は白の三角帽子に白のローブ。

 内側は濃い藍色。トップスは黒のブラウスでボトムスは黒のワイドパンツ。

 その姿がワイルドな顔つきとでも言えば良いのだろうか?

 ロングな金髪のポニーテールに常に何かを睨んでいるかのような左右水平な細い蒼眼。

 良く似合っている。


「あ~、だりぃ。ってか腹減った。なぁ、お前ら何か奢ってくれよ」

「何故わたし達が貴女に奢らないといけないのかしら?」

「ここで会ったも何かの縁ってやつだろ? 年上を敬えよ」

「敬う気になれないなー」

「おいおい、失礼だな。お前」


 お前が言うな!!

 【リリエル】全員が一斉に思う。

 口には出していないが、顔に出ていたのかもしれない。

 突然笑いだすロジーヌ。


「あはははははははっ」

「何が可笑しいんです?」

「いや、お前ら正直だな。っと思ってな」

「なぁ、リーネ。これって褒められてんのか? 貶されてんのか?」

「どうでしょう? 私にも分かりません」


 覆滅の魔女ロジーヌ。

 どうにもイマイチ掴みどころがない。

 怠慢のように見えて、行くべき所に向かってるいるし、傲慢なように見えて案外そうでもない。

 こういう人物こそが相手にすると一番厄介だ。

 なるべく早く依頼を終わらせるようにしよう。

 リーネはロジーヌのことを見ながら心に誓う。


『一刻も早く目的地に……』


 リーネの心意気は他ならぬロジーヌ張本人によって儚くも打ち破られた。


「じゃあ金は出すからよ。何か買ってきてくれよ」

「自分で行ったらいいじゃないですか。それよりも早く目的地に行きましょう」

「おいおい、今はまだ昼だろ。目的地に着いても開いてねぇぞ」

「へっ?」

「あそこが開くのは夕方からだ。お前ら何も知らずに来たのか?」

「……聞いていません。どうして夕方迄家にいなかったんですか? 外に出てくる意味無いじゃないですか」

「あん? お前ら小娘と会うのは今日が初めてだろ。だから親睦が必要だと思ったから出てきたんだよ」


 言いながら首を左右に振るロジーヌ。

 手頃な公園を見つけ、彼女はそちらへと歩いていく。

 後に続く【リリエル】。


「ふぅ、一先ず休憩だ」


 公園の石作りのベンチ。

 ロジーヌはベンチに腰を下ろしてローブの中から財布を取り出し中を漁り始める。


「んじゃ、何か買ってきてくれ! 腹に溜まるものをよろしくな」


 彼女に言われてお金を手渡されたのはリーネ。


『どうして私が行かないといけないんでしょうか……』


 リーネはそう思いつつも、断るのもなんだか面倒臭くて近くに見える屋台へと歩き出した。

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