-特別編5- もう1つの正史 その3。
魔法の炎は彼の全てを焼き尽くし、戦闘と戦争は終わりを告げた。
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炎獄の魔公アポロクスの裏切りと愚行。
彼の愚行は一時ルージェン王国内を騒然とさせたが、数日も経てば下火となり、人々は何事も無かったかのように日常へと戻っていった。
侯爵という地位・魔公という立場にあっても人徳は皆無だったのかもしれない。
でなければ、もう少し騒動は続いていただろう。
死して直ちに忘れられてしまう存在。哀れなものだ。
日頃の振る舞いが後々に如何に響いてくるのかを痛感させられる[事]だった。
女王フレデリークは彼を反面教師として、自身の言動を常に顧みることを決意。
国内が落ち着いてきた頃、彼女は彼の代わりとなる新たな領主を派遣した。
新領主は[白]のドラゴンことハク。シエンナの死去後は例の森で再度隠棲生活をしていたが、フレデリークの[命]によってアポロクスが治めていた地を立て直し、統治することになった。
これはちょっとばかりフレデリークの私怨も籠っていたりする。
ハクにも権力者たる者の苦悩を味合わせてやろうという思いが。
ハクはフレデリークの私怨と同じ思いを抱いて好き勝手してきた身。
ツケが回ってきたと思い、断れずフレデリークの[命]を謹んで受け入れた。
アポロクスが領主であった地。ハクには聊かの懸念があったが、彼女は予想よりも領民に大歓迎され、やはり彼が人徳が無かったことが浮き彫りとなった。
数日後、女王フレデリークはヴァフール王国に報復措置を行った。
以前、バーシア帝国が奇襲してきた時は国を丸々処刑するという報復だったが、あれは帝国に完全に比がある戦争だった為に取った措置。だが、今回はこちら側に裏切者がいた為に起きた戦。
で、あるのでルージェン王国側に非が無いとは言い難い。
自国の比を考慮して、フレデリークはヴァフール王国の王と王の側近及び一部の兵士のみ奴隷落ちという罰則を与え、他の[事]は不問とすることにした。
思えば戦争というよりも小競り合いみたいなものだったから。
何しろ、どちらの側にも大きな被害は出ていないのだから。
これにて先の戦争については後処理も何もかもが片付いて真の終了と相成った。
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時間の経過は早い。今からは2年前。ルージェン王国と同盟国では突然女性達が10~20代に迄若返り、人それぞれ体内に蓄積できる魔力量に差はあれども、誰もが魔法を使えるようになるという革命が起こった。
起きた革命により、ルージェン王国と同盟国では国の在り方に梃入れが始まり、クオーレの予言の通りに本格的に魔法国家としての歩みが始まった。
日常品から公共交通機関、公共事業、学問。それら全てに魔法という[力]が取り入れられ、今や魔法が無くては生きていけない状況。
魔女や聖女といった特別な称号を持つ者達の在り方も見直され、これ迄は魔女や聖女達は何ものにも繋がれることのない自由な存在だったが、魔法連盟と呼ばれる組織が設立されてルージェン王国と同盟国に属する魔女や聖女達は皆等しく組織に加入しなければならなくなった。
魔法連盟。組織の仕事は魔女や聖女達の管理と統率。
詳しく言えば、魔女や聖女達の個人情報は連盟によって管理される。
今迄は魔女や聖女などの称号は基本的には自身が属する国の女王が授けるモノであったが、これからは魔法連盟が素質があると認めた者に与えられることになる。
連盟加入後は特別な刻印が入ったカードが渡される。
持っていない者は例え[力]があれど、魔女や聖女では無いとみなされる。
元々[力]なんて無いのに自称で魔女や聖女と謳っていた者達は一掃されることが決定付けられたというわけだ。
尚、魔女や聖女達は組織に雁字搦めにされるなんてことはない。なんならこれ迄と生活は変わり無い。
但し、魔女や聖女といった称号を持つ者には称号に相応しい品行と品性と品格が問われることになる。
これら3つの品。論理感を損なわせた者は即刻連盟から資格をはく奪。
良くて魔女 または 聖女見習いからやり直し。悪くて一般人に戻される。生涯2度と称号が返還されることはない。
魔法連盟が管理するのは女性達だけ。
男性達については魔法連合という別の組織が管理・運営することになっている。
魔法連盟の本部はルージェン王国だが、魔法連合の本部は金のドラゴンが元首のザウルビーツ王国にある。ルージェン王国にあるのは小さな支部。
ルージェン王国と同盟国に設立された魔法連盟。
組織の組織長を務めるは永劫の魔女ことエスタ。
副組織長は風雅の魔女ことフラン。
正体はナツミとパートナーのコハル。
2人はハンターギルドにも所属していて、【アングレカム】という通称名で活動を行っている。
【リリエル】と【ガザニア】は魔法連盟という名の組織を設立したので加入するようにとフレデリークから直々に[命]があり、翌日に連盟に加入の手続きを行い、何事もなく素早く申請は受理されて晴れて魔法連盟の一員となった。
【クレナイ】と【オダマキ】については魔法連盟には所属していない。
理由は至極単純で彼女達の中に魔女や聖女と呼ばれる存在がいないから。
【リリエル】と【ガザニア】が表の存在で【クレナイ】と【オダマキ】は裏たる存在。
彼女達はそのように関係が成り立っている。
正確には【オダマキ】は【リリエル】直下のメンバーではなく、【クレナイ】の傘下に入っているメンバー達だが。
魔法連盟の一員となった【リリエル】一行。
本日は本業は臨時休業とし、副業であるハンター活動に勤しみ、つい先程任務を終わらせてハンターギルドへと戻ってきたところ。
時が幾ら流れようと変わらずに出現しては人に迷惑をかける邪族。
国の者達が強くなったとはいえ、極稀に【リリエル】クラスのハンターでないと狩ることができない者が現れる時がある。
上から絶望級・天災級・災害級・狂戦級・悪夢級・恐慌級と分けられた邪族。
狂戦級迄なら、【リリエル】が出張らずとも他のハンター達で協力し合えば討伐できる。
今日は天災級と災害級が多く出没した日だった。
多勢に無勢。【リリエル】だけでは少々骨が折れるだろうということで、彼女達の傘下にある者達と【アングレカム】も臨時に参加して邪族狩りが行われた。
当初、【リリエル】には少しながらの不安があった。
【ガザニア】と【クレナイ】。自分達の傘下にある者達の動き方はよく理解しているので連携を取りながら邪族を狩ることに問題はない。
が、【アングレカム】と組むのは初めてのこと。
連携に乱れが生じはしないかと思っていたが、いざ邪族との戦闘が始まってみると【リリエル】が抱えていた不安は秒のうちに吹き飛んだ。
【アングレカム】は【リリエル】と彼女達の傘下のメンバーの動きを幾ばくかの時間内で理解し、時には補助、時には主体として【リリエル】達が戦いやすいように立ち回ってくれたのだ。
お陰で怪我などを覚悟していた強敵との戦いはかすり傷1つ負うことなく圧勝という形で幕を下ろした。
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カフェ・リリエル。
戦闘の後の打ち上げ会場。
現在、ここには会場のオーナーたる【リリエル】と彼女達の傘下の者達に加えて【アングレカム】とハンターギルドのギルドマスター・ルミナと彼女のパートナーである[赤]のドラゴンことクリスタとロマーナ地方の領主であるシエラが居る。
テーブルに並べられているのはカフェの名物料理の数々。
料理を各自のお皿に取り分けているのは何故かウェイトレス姿にさせられているリーネ達。普段からウェイトレスをやっている面々。
カフェが開店してから1年と半年。未だに慣れないのか。ウェイトレスな面々はいつもの様に笑顔と頬に恥じらいを浮かべながらテーブルに並べられた料理を給仕していく。
リーネ、アイリ、ケーレ、フィーナ。
いずれの者達も邪族との戦闘時には豪となる者達。
今は豪の姿は何処にもない。
あるのは可愛いとしか表現しようのない少女の姿。
自然と彼女達にこの場にいる者達の視線が集まる。
視線を受けてますます愛らしい存在へとなっていくリーネ達。
耳迄深紅に染まっている。
「あの、あまり見ないでください」
と言われても可愛いにも程がある姿。
見ないでおくなんて勿体無いことができる者はこの場には誰1人としていない。
「うぅ……っ。いつ迄も慣れません」
「同感だわ」
「うちもそう」
「私もです。リーネ師匠」
ウェイトレス達の愚痴。
愚痴を吐く者達に対し、彼女達に熱烈な視線を浴びせている者達は彼女達のことを穴が開く程に見つめ、図らずも彼女達を辱める言葉を口から吐き出す。
「リーネもアイリも可愛いー。可愛すぎて理性が辛いー」
「流石は私のケーレだな。これは今夜も可愛がってやるしかないだろう」
「フィーナ。ほんっとにもう、可愛すぎてどうしよう」
「初めて見たけど、あの格好とてもいいね。ねぇ、フラン。ボク達もここで雇って貰おうか?」
「え! でも私達には魔法連盟の仕事があるよね? ちょっと無理があるような」
「それもそうか。じゃあ魔法連盟内にてフランの服はあの服と似たような物を着て貰うようにしようかな」
「……冗談、だよね?」
「いや、本気!!」
「ナツ……、じゃなくてそれだけはやめてエスターーーー」
「うん、じゃあ決定で」
「そうだよね。エスタはそうだよね……」
がっくりとするフランを余所に料理の給仕も終わって宴会開始。
乾杯の合図と同時にリーネとアイリに迫っていくミーア。
「リーネ、アイリー」
一切の躊躇なんてすることなく2人の唇に順番にキス。
2人の唇に自らの舌を這わせ、唾液で濡れさせてから食む。
程好い弾力。甘噛みしたり、吸い上げたりして2人を味わうミーア。
「「んっ……」」
「美味しい。もっとー」
蜂が花の蜜を求めるように、2人の唇を開かせ自身の舌を2人の口内へ。
舌を器用に使って口内を混ぜ、絡ませて唾液という名の蜜を摂る。
拒まない2人。現実がミーアの心に悦びを齎し、[色]を濃くする。
気を良くしたミーアは舌と舌の接触を濃密にさせる。
繰り返せば、繰り返す程に愛おしさが増し、ますます欲しくなる。
魔法を使うミーア。
「婦々だけの愛の鎖」
ミーアとリーネとアイリの3人。婦々だけにしか見えない鎖。
透明で薄っすら桃色の鎖がリーネとアイリに巻き付く。
不自由になった2人を押し倒す形でミーアは2人の胸元に頬を寄せる。
擦り付け。3人の呼吸は荒い。それ故にこう……。
なのだが、少女3人の甘え合い、愛くるしいじゃれあいに見える。
「いい匂いで柔らかいー」
「擽ったいです」
「変ね。昔はリーネ1人を2人で愛していた筈なのだけど」
「それって数百年前の話だよねー。アイリのことも大好きだよー」
数百年前。確かにアイリとミーアはリーネを2人で愛していた。
が、人生の中でアイリの包容力に何度も触れて行くうちにミーアはアイリのこともリーネと同じくらいに好きになって彼女にも迫るようになった。
今の3人の関係はミーアが主妻でリーネとアイリは彼女の嫁という感じだ。
会場に咲く七部咲きの百合の花。
七部咲き。満開じゃないのも又尊い。
見せられて他のパートナーがいる面々が大人しくしている筈もない。
いや、大人しくなんてできない。
カミラがケーレの顎を片手で"クイっ"と上げさせて「愛している」の言葉。
彼女の愛の宣告を聞いて頬を紅に染めてカミラに答えようとするケーレ。
「うちも愛して……」
言葉は最後迄は言うことはできなかった。
カミラがケーレの唇を自分の唇で塞いできたから。
婦々達同様のキス。カミラのキスで目が蕩けてしまうケーレ。
カミラが離れるとケーレは「もっと」と強請り、カミラは彼女の可愛さに完全に中てられて再度ケーレの唇を塞ぐ。2人の脳内を粘性の愛欲が支配する。
2人は人目を憚らず……。
次は嬢子達。
リーネ達のことを見てやや照れながらマリーの服の裾を軽く引っ張るフィーナ。
そんな仕草だけでも可愛いが、フィーナは自身に振り向いたマリーに「あのね、私もマリーに……キス、して貰いたいな」と呟いてマリーのことを悶えさせた。
「フィーナ、それはずるいよ!」
「ダメ?」
「ダメじゃない!!」
フィーナを抱き締めるマリー。
少しの時間だけ見つめあい、フィーナが目を閉じたところでマリーは彼女の唇に吸い寄せられるかのように自分の唇を重ねる。
キスした瞬間にマリーが腰に感じるフィーナの腕の感触。
互いに抱き締め合っている。
マリーは幸せを感じ、キスの後もフィーナの身体を強く抱き締め続けた。
宴なんてそっちのけ。
あちこちに咲く百合の花。
ここにいる中でパートナーがいないのはシエラだけ。
しかし彼女はほんの僅かも寂しさなんて感じていない。
荒い鼻息を吹き出しながら【リリエル】達のことを見つめ続けている。
「はぁ、はぁ、なんて素晴らしい光景なのかしら。尊い。尊いわ」
頭のネジが飛んだ彼女の後ろで密かに始まる【アングレカム】及び【クレナイ】のパートナー同士の戯れあい。
「はっ! わたくしの後ろでも!!」
頭の裏に目でも付いているのだろうか。
【アングレカム】と【クレナイ】のことも即座に気が付くシエラ。
前に後ろに、シエラの首が忙しい。
その様子を生温かく見つめる者が2人。ルミナとクリスタ。
この2人だけは他の者達と違って熟年婦々のようにただ寄り添っているだけ。
「なんて言えばいいのかな? 皆も皆だけど、シエラ様もシエラ様だよね」
「残念ぶりが目立つな」
「「はぁ……っ」」
2人のため息。
料理はもう冷めかけている。
いつになったら全員こっちの世界に戻ってくるのだろうか。
2人はそのうちに顔を見合わせ、皆のことはこの際放置して完全に冷め切る前に先に料理をいただくことにした。
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その後、全員が戻ってきたのはルミナとクリスタが自分達の料理を食べ終わろうとする頃だった。
「つい夢中になってしまいましたね」
リーネの照れながらの言葉。
その他全員は「あははっ」と照れ隠ししながら笑う。
「では改めて」
料理はもう冷めきっているが、漸くまともに始まる宴会。
女性らしく恋バナなどに花を咲かせながら宴会は陽が落ちるその頃迄続いた。
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深夜。
解散してから現在はそれぞれの自宅。
宴の最中に戯れあっていた者達は余韻が抜けず、それぞれの地で再び戯れあっていた。
そのうちに段々と盛り上がる気分。
彼女達は自分達が愛し合う者同士でまるで示し合わせたかのように……。




