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-特別編4- 新天地でのお仕事事情 その01。

 プリエール女子学園。

 長い長い歴史を持つその学園は一時期は衰退していた時期があった。

 生徒を他の地方の学園に取られてしまい、空き教室が増えて4棟あるうちの3棟が使われていないといった悲惨な過去が。

 盛者必衰。この頃のプリエール女子学園はまさにそれだったと言えるだろう。

 過去の【リリエル】と【クレナイ】がいなくなったことで起きた現象。

 栄華を誇った文化や人物もいずれはなんらかの形で衰退していくもの。


 とは言え、理事長である魔王ラピスはその現状を指を咥えて黙って見ていた訳ではない。

 策は幾らか講じられて、盛り返そうとした。学食のメニューをより良い物に変えてみたり、施設をリニューアルしてもみたり、増やしてみたりなどした。

 したのだが、いずれも失敗に終わった。

 施設は良くても教師陣が無能だと[人]が集まろう筈もない。

 それに女子学園という割には[華]が無い。

 プリエール女子学園は[人]に選ばれることなく、別の学園に流れていくばかり。

 ロマーナ地方の人々でさえも他の地方の学園に行って、そこで勉学を学び身体を鍛えてから、この地方に帰ってくるといった有様。

 これでは何の為にこの地方に学園があるのか分からない。

 魔王ラピスは頭を抱えていた。

 そこに舞い込んできたのが【リリエル】の復帰の知らせ。

 新生【リリエル】。すぐにでも雇い入れたかったが、魔王ラピスは敢えて彼女達が成熟する迄待機した。

 未熟なままで雇い入れたところで生徒数が戻るとは思えなかったから。

 その思惑は当たり、新生【リリエル】が成熟しきってから学園に雇い入れたところ、入学願書やら編入願書やらが魔王ラピスの元に多く届くようになった。

 それらを見て、"ニヤリ"と頬を緩ませてしまった魔王ラピス。

 

 魔王ラピスはこれだけで、また自分の趣味が多分に堪能できると喜んでいたのだが、1つ誤算があった。

 悪い誤算では無く、嬉しい誤算が。

 過去の【リリエル】は講師としてのみで雇われていた。

 が、新生【リリエル】は講師の他にもう1つ、どうしてもやりたいことがあるのでやらせて欲しいと申し込んできたのだ。

 それが通るなら学園に勤務します! と言いながら。

 魔王ラピスはやりたい内容とやらを聞いて、願ってもないことだったのでそれをその場で受諾した。

 という訳で現在。

 新生【リリエル】との契約は週に3日は講師としての雇用。

 残りの2日は彼女達の申し出の通りに学園の食堂施設。

 購買部、学食部。その隣に新たに設けられた施設で働くという雇用形態が成されている。

 ただ、【リリエル】が出張らないと危険な邪族が現れた場合には邪族討伐が優先されるという形で。


 今日は講師ではなく、その施設で働いている【リリエル】。

 生徒達はそこに集い、目の保養中。

 ここでは講師の際の【リリエル】、ハンター時の【リリエル】。

 それとはまた別の彼女達の姿を見ることができる。


「イリーネ、アリア。ドリンクと料理あがったからよろしく」

「「はい」」


 カフェ・リリエル。

 これが彼女達がやってみたかったこと。

 イリーネとアリアが接客係(ウェイトレス)でカレラとケーラが料理人(シェフ)

 ミーシャはコーヒを淹れたり、ラテアートを描いたりする職人(バリスタ)を担当している。


 カレラとケーラ、ミーシャの衣装は頭には白色のキャップ、身に纏っているのは黒色のワンピースに白色のエプロンのヴィクトリアンメイドなモノ。

 それに対してイリーネとアリアの衣装は頭には白色のプリム、トップスは白色のフリル付きな半袖肩だしブラウスでボトムスは黒色の膝上10cmのスカートに黒色のニーハイソックスと黒色の革靴という出で立ち。

 この衣装を決める際は【リリエル】内でひと悶着あった。

 接客係を担当することになったイリーネとアリアから恥ずかしいから絶対に嫌だという反対意見が他の3人に齎されたのだが、ミーシャから「なんならもっと恥ずかしい恰好にしても良いんだよー。アリアもイリーネも可愛いし、そっちの方が受けるかもねー」と笑顔で脅されて、イリーネとアリアの2人は怯えてしまって現状の衣装を着用することを渋々ながら受け入れた。


「私、ここに編入して来たこと褒めてあげたい」

「分かるわ。目の保養になるよね」


 そんな言葉がイリーネとアリアの耳に届いて顔を赤くしてしまう2人。

 このカフェがOPENしてから半年程度。すなわちこの衣装を着用するのは50数回目となるのだが、2人はまだどうにもこの格好に慣れることができないでいる。

 毎回顔を赤くしながらの接客業務。そういう可愛いところも生徒達には大人気。

 それにここのカフェの雰囲気もなかなかに良い。

 白を基調とした女性が好みそうな可愛らしくて、柔らかな建築デザイン。

 机や椅子などは木の温もりをそのまま伝える為に色などは塗られていない。

 そして壁などに飾られているのは、実は偽物だが本物にしか見えない色とりどりの百合の花。

 魔道具の冷暖房完備。期間限定のメニューもあり、このカフェを訪れる者を飽きさせない工夫が随所に成されている。

 

 落ち着ける場所。でもあるが、さっきも言ったようにイリーネとアリアの格好に見惚れてしまう場所でもあり、【リリエル】と言えば無意識的に好きな女性(ひと)同士でイチャついてしまう存在。

 イリーネとアリアとミーシャは料理などを手渡す時にそれとなく手を重ねて微笑みあったり、ミーシャから何やら耳打ちされてイリーネとアリアが全身を真っ赤にさせたりすることもあれば、カレラとケーラは寄り添いながら料理を作り、幸せそうにお互いのことを眺めあったりする。


 そのせいで尊死して保健室送りになる者もしばしばいる。


 ちなみにこのカフェ。凶悪なことに稀に【ガザニア】が手伝いに来る時がある。

 【カザニア】が手伝いに来た時は彼女達はイリーネとアリアと同じ接客に回されて可愛いのが増えると同時にイリーネとアリアとミーシャの3人から別の意味で愛嬢子(まなでし)が可愛くて仕方がないという優しい眼差しが【ガザニア】に注がれることになり、これにノックアウトされてしまう者もいる。

 【ガザニア】。フィオナとマイリーの2人も[師]を慕って、たまに甘えるように傍に行って頭を撫でて貰ってご満悦な姿も見られるのだから、この日に出くわしたら運が良い……。悪い……? 尊死する者が増える。

 休憩時間中は生徒達で席が埋まり、授業中はその時間に授業のない教師達が集うカフェ・リリエル。

 基本的にはプリエール女子学園の関係者しか使えないカフェ。

 でも1年に2度だけ一般市民でも使える日がある。

 文化祭の日とウィンターバケーション時の12月の26~28日限定の3日間だけ。


 余談だが、遠い過去は月々のことをジャニア~とか呼んでいたが、覚えにくいということで異世界人が自分達の文化を広めて今は1~12月と呼ばれるようになっている。

 季節の言葉[サマーなど]はまぁ、別にそのままでいいかということで残されているが。


 で、通常、生徒が長期休暇に入るサマーバケーション時(7/26~8/31)、ウィンターバケーション時(12/26~1/6)、スプリングバケーション時(3/26~4/6)の期間はカフェ・リリエルも閉店しているのだが、12/26~12/28は少し遅いクリスマスというコンセプトで開店される。

 その間は【ガザニア】も強制連行で【リリエル】と【カザニア】が身に纏う衣装はサンタ服。

 【ガザニア】とイリーネとアリアは肩出し、ミニスカートで他のメンバーはよくある普通のサンタ服。

 

「暖房が効いているので寒くはないのですが……」

「恥ずかしいわよね。この格好」

「私も恥ずかしいです。イリーネ師匠・アリア師匠」

「しかも普段と違って何故か生脚なのが……」

「ミーシャの提案なんです。彼女が言うには、ウィンターこそ生肌、生脚が見たい女性(ひと)が多い筈だとのことです」

「でも自分達は普通の衣装なのよね……」

「苦労してるんですね。イリーネ師匠・アリア師匠」

「貴女達もですけどね」

「ミーシャ師匠に逆らうの怖いから……」

「分かるわ」


 過去のイリーネ(リーネ)が転移前に生きていた世界なら女性が女性の生脚などを見て喜ぶなどという発想を持つ者は少なかった。

 しかしこの世界。いや、この新大陸は別だ。

 女性が女性と恋したりするのが常識なのだから。

 

「カフェ・リリエル。OPENしますー」


 ミーシャがドアを開けるとわらわらと入店してくるお客さん。

 カフェ・リリエルは大賑わい―――。

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