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-外伝- 遠い未来 その09。

 それからコレットさんとエスタさんが恋仲になる迄2週間も掛からなかった。

 気が付けば2人仲良くいる姿を邸宅内でよく見掛けるようになり、私達はその様子を生温かく見守って微笑んだりするのだった。


**********


 コレットさんとエスタさんはその仲を深め合った上、【アングレカム】にも加入することになった。


 もう全部エスタさんに任せておけばいいんじゃないかなって、この時全員が思った筈だ。

 彼女が背中から生やすことができる10本の触手。

 伸縮自在で自由に動かすことができて、邪族なんてその触手で頭とか心の臓を狙って一突きで倒してしまうのだ。

 私達の出番なんて殆どない。

 精々エスタさんが取り零した相手をこちらで始末するくらい。

 エスタさんは「10本しか使えないから、相手が多いとどうしても取り零しちゃうんだよね。ありがとう」なんて言ってるけど、あれは絶対に謙遜だと思ってる。


 彼女が本気になれば、数が多くても普通に倒せるんじゃないかなって。

 でも私達に[花]を持たせてくれてるんじゃないかなって。


 誰もそのことを口にすることはないけれど。


 とりあえず私達は無事に邪族狩りを終え、ハンターギルドへと凱旋した。


「あ! 【アングレカム】の皆さん、お帰りなさい」

「はい。ただいま戻りました」


 受付嬢さんが笑顔で出迎えてくれる。

 いつものこと。……なんだけど、私はどうもここの受付嬢さん苦手なのだ。

 カミラさんというらしいんだけど、私達【アングレカム】を別の意味で狙っているような気がするのだ。目が、ね。


 サキュバスだから本能なのかもしれない。

 だから彼女も無意識でそんな目をしちゃってるのかもしれない。

 しれないけど、なんか怖く感じてしまうのだ。

 彼女にはケーレさんっていう鳥翼人類(ハーピー)のギルドマスターと結婚してるって聞いたことあるから、私が単純に警戒しすぎな可能性が高いのだけど。


 ケーレさん。何処かでその名前を聞いたことがあったような……。

 何処だっけ? 気のせい……かなぁ。


 カミラさんにアリシア様が今日の戦果を報告しに行くのが見れる

 石板に手を置いて終了。……の筈なんだけど、アリシア様はカミラさんから何かを聞いているような気がした。


**********


 それから1ヶ月程が経過した。

 おはようございます。

 堕ちるところ迄堕ちました。

 全てはアリシア様がカミラさんから女性を堕とす魔法を習ったせいです。

 あの時にアリシア様がカミラさんに聞いていたのはこのことだったのです。

 ただでさえ耐えられなかったのに、その魔法で身体の内側にとある刻印を刻まれて、それで私はアリシア様の思うがまま。

 アリシア様がミア様にもそれを教えて……。


 あんなの我慢できないです―――。


 朝からお風呂に入らないといけない羽目になった。

 ううん、こう言うと誤解があるかな。カミラさんがアリシア様に魔法を教えるよりも大分前から習慣になってるというのが本当のところ。

 今日も石鹸の香りをさせながら仕事場に赴くと、コレットさんに揶揄われた。


「人のこと言えませんよ」


 って言い返したら、顔を真っ赤にして目を泳がせていることに"くすくす"と少し笑ってしまった。

 知ってるんですよ。エスタさんと、もうそこ迄の仲になっていることは。


「後で恋バナ聞かせてくださいね」


 って言ったら、「リーネちゃんもね」って返事をされて私達は休憩時間中にお互いの近況をコレットさんの部屋で話し合った。

 コレットさんも見事に堕ちていた。他種族はきっと魔物には勝てない。

 

 これで更に仲間意識が芽生えた私達は、師とその教え子の関係を超えて本当に親友の関係になった。

 そこからコレットさんとエスタさんの関係の発展は本当に早かった。

 2人は結婚して婦々となり、コレットさんは一応自分の部屋はあるけれど、主にエスタさんの部屋で過ごすようになった。

 幸せそうな2人。見ているとどんどん羨ましくなってくる。

 こんなこと思ったらいけないのに、たまに嫉妬心が湧いてくる。

 私とアリシア様とミア様はあんまり発展していない。

 それは良いことなのかもしれないけど、コレットさんとエスタさんが結ばれたのをずっと傍で見ていると、物足りなさを感じてしまう。


 [人]っていう生き物は欲望の権化だ。


 いつだったかにアリシア様がお話してくれたことを思い出す。

 [一婦多妻]。今世でもそうなりたい。


「はぁ……っ」


 侍女として邸宅の掃除をしている時にため息。

 その時に丁度アリシア様が背後を通りかかった。


「リーネ」

「はい!」


 拙い! ため息聞かれていたかもしれない。

 叱られる。覚悟していたら、アリシア様から言われたことは全然違うことだった。


「お客様がお見えになっているから貴女も一緒に来なさい」

「お客様、ですか? お茶を用意ということでしょうか?」

「違うわ。お客様は【アングレカム】に用事があって来られているのよ。だから、お茶の用意は別の侍女にさせるから貴女はわたしについてくるだけでいいの」

「【アングレカム】にですか」

「そうよ。ほら、お待たせしたら失礼だから行くわよ」

「はい」


 なんだろう? 【アングレカム】にお客様ということは依頼かな?

 アリシア様に続いて邸宅の客室へ。

 そこにいらしたのは、ルーディア王国の女王ミュリエル様だった。


**********


 深夜。

 私はどうしても眠りにつけず、今日起こったことを思い出していた。

 アリシア様に呼ばれて、客室について行くとそこにいらしたのはまさかの女王様。

 固まってしまった私を見て女王様は笑い、それから【アングレカム】が全員揃ったところで女王様は今日この邸宅に来られた目的をお話し始めた。


 簡単に言えば、【アングレカム】全員への爵位の授与の話だった。

 アリシア様は女子爵から伯爵へ爵位が上がる話が出たけど、アリシア様はそれをやんわりとお断りになって女子爵のままとなった。ミア様は女子爵を授与されてアリシア様と並ぶ位に、私とコレットさんとエスタさんの3名は女爵の爵位を授けられて、これで【アングレカム】は全員爵位持ちとなった。


 アリシア様にお仕えする前の私であれば、何故? と思ったことだろう。

 でも今は違う。女王様が私達に爵位を下さったのは、表向きは【リリエル】の再来と迄言われるようになった【アングレカム】の働きを称え、女王様がそれを認めてくださったから。だけど実際は違う。真実の理由は私達をこの国から逃がさないようにする為だ。

 ハンターは本来は自由。でも私達は爵位があるからこの国直属のハンターということになる。

 これを喜んでいいのやら? どうなのやら?


「分からない」


 つい独り言を漏らしてしまうと、まだ起きていらしたらしい。

 アリシア様から声が掛けられた。


「ねぇ、リーネ」

「はひっっ!!」


 今は結構な時間だ。草木も眠っている頃。

 そんな時間なのに、まさかアリシア様が起きているなんて思ってもいなくて、私は驚いて変な声で返事をしてしまった。


 それを聞いてアリシア様が笑う。


「なぁに、その返事」


 と思っていたら、背後からも笑い声が聞こえて来た。


「まぁ、可愛いと思うけどな」

「ミア様も起きてらしたんですか!!」

「ああ。少し考え事をしていてな。ですが、アリシア様も起きていらっしゃるとは思いませんでしたが」

「あら。わたしも考え事をしていたのよ。女子爵と女爵ってほぼ同じ[位]よね」

「同じことを思っていたみたいですね」

「……? どういうことですか?」

「リーネ、本気で聞いている?」

「はい」

「やれやれ。私はリーネも同じことを考えていると思ったんだがなぁ」

「私はミュリエル女王様が【アングレカム】に爵位を授与した理由をずっと考えていました」

「そんなの理由は1つしかないだろう」

「やっぱりそうですよね」


 私の言葉でアリシア様からもミア様からもため息が聞かれる。


「リーネ。わたしは前に言ったわよね。身分のことは気にしなくて良くなるって」

「そう言えば。あれってこういうことを見越してらしたんですか!!!」


 アリシア様凄い! 素直に称賛してたら、アリシア様のお顔が少し赤に染まった。


「ち、違うの。こうなること迄は予測してなかったわ。ただ、爵位の返上をすることでわたし達も平民となるからと思っていたのだけど。でも……」

「まぁなんでもいいじゃないですか。これで私達は気兼ねなく[結婚]できるということですよね」

「あっ……」

「そういうことよ。ミアもリーネも異存はないかしら?」

「ありません!」

「わ、私もありません。アリシア様、ミア様」

「そう。じゃあ決まりね」

「「はい!!」」


 夢じゃない、よね。

 私、アリシア様とミア様と一緒になれるんだ!!

 嬉しい……。あまりに嬉しくて、嬉し泣きしてたら、アリシア様とミア様がほんの少しだけ私のことを強く抱き締めてくれた。


「【アングレカム】その名前に込めた願いが叶ったわね」

「そうですね」

「はい!!」


 アングレカム。[祈り]・[ずっと一緒]。

 後日、私達はリリカ地方の神殿で恋愛とその安寧を願う女神セレナディア様に永遠の愛を誓いながら式を挙げた。

 過去は異世界地球・日本式。今はルーディア王国と姉妹国のルージェン王国では定番となった形の結婚式を。お二人のウェディングドレス姿があまりにも眩しすぎて見惚れてしまい、この式を取り仕切ってくださった枢機卿様に咳払いさせてしまったのは良い思い出。

 

 私は前世のことは覚えていない。

 でも今世も、私は……幸せです―――。


**********


 後日談。

 私はこの邸宅の主人と結婚した身の上。

 なのに身分がヘッドメイドの下のままでは拙いだろうということで、専属侍女の座はミア様の家令に次ぐ使用人という階級に変えられることになった。

 コレットさんより上の立場。忙しくはなったけど、そんなに苦じゃない。

 里から出てきて正解だった。毎日が忙しくも楽しい。


 さて、今日もお仕事頑張ります!!

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