-閑話2- フィーナの日記 その01。
始めに。
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ここ迄ご拝読頂いた読者様ありがとうございます。
※1
このお話は本来は外伝としようと思っていたのですが、閑話とさせて貰うことにしました。
この閑話は特別編Ⅰの中で伝えきれなかったことの補填という形でもありますので、展開の進みが早いです。
それから主人公はリーネではありません。
先にご了承をお願いします。
無理そうな方はこの閑話は読み飛ばしてください。
全4話となります。
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※2
師弟の関係が正しいのですが、この物語の主人公は女性。
ですので作者の心情・独断で師妹とさせて貰っています。
同じように弟子も違う気がするので嬢子とさせて貰っています。
人生というものは小説より奇なり。
本来の言葉とは違うけど、私には正しい言葉。
私が魔女になるなんて思ってもいなかった。
両親は私が赤ちゃんだった頃に起きた邪族大行進により[生命]を失った。
[生命]の灯が消える前、両親の機転によって家の床下収納に隠された私。
最後迄私を守ってくれた両親のお陰で奇跡的に私は[生命]を取り留めた。
赤ちゃんだったから私自身は自分の身に起きた事実は覚えてない。
私が助かった話。私とは縁もゆかりも無い他人から教えて貰った。
とにかく助かった私は、助かったのは良かったのだけれど、私以外。故郷の住民は邪族の強襲により全滅。
身寄りのない私は捜索隊に見つけられた後、孤児院に預けられることになった。
孤児院での生活は最悪だった。廃墟同然な建物に多くの孤児が詰め込まれ、食事も満足に与えられず、服は奴隷専用の貫頭衣そっくりな物を着用。
今はとある方々のお陰でこの国は豊かになって、人々も笑顔が増えたけど、昔は王様だけが私腹を肥やしていて、人々は生きる屍。生と死の隣り合わせ。どうにか生きていた。
人々が生きる屍となるのは当然のことだ。税金が8で人々の取り分が2。
馬鹿げた税率。これで生きていけ! とか無理がある。
人が100人いれば、99人は無茶苦茶だと思うだろう。
1人は世の中、常軌を逸している人がいる。そのような人は何とも思わないかもしれない。王様もそうだったし。
今は過去の王様の時代。無数の人々が他界した。死因は主に3つ。
1つは餓死。1つは流行り病の患い。1つは飢えに耐えられずに犯罪に手を染めて衛兵に検挙。翌日に火炙り または ギロチン公開処刑。
私達も飢えで死ぬのを待つのだろうと思っていた。
ところがそうはならなかった。
【リリエル】と呼ばれる方々が私達のことを救ってくださったから。
何やら前の王様は【リリエル】の皆様に失礼なことをされたんだとか。
余程のことをしたのだろう。王様は王様の地位を剥奪されて新たな国家元首様がこの国に立たれることになった。
新たな国家元首様。女王オータム様が行われた改革は国民全員が瞠目したことは記憶に新しい。
始めは王都の場所の変更。それ迄は元の王族の方々が休暇時に使っていた場所を新しい王都とし、元の王都は国の中の只の一地方となされた。
それからは新王都で種々様々な指示を飛ばされ、全ての指示が成功を収めた。
死を待つばかりだったこの国は息を吹き返すことになった。
元の王族の方々の末路は悲惨なものになったらしい。
これもまた、私は他人から聞いた話になるけど、王様達は王族から平民落ち。
人々から忌み嫌われていた元王様達は道を歩けば人から石を投げ付けられたり、仕事をしようにも誰からも雇っては貰えず、ついには犯罪を犯して現在は刑務所で服役中。生涯の禁固刑。それでもまだ元の王様達はマシな方。
【リリエル】の皆様に直接手を出した元第一王子様達は【リリエル】のリーダーの使い魔さんに邪族の前に強制連行されて[呪い]を受けることになった。
とっても地味な[呪い]だけど、私がされたら絶対に嫌だと思う[呪い]。
例えば毎朝必ずクローゼットの角に足の小指をぶつけるとか、毎日決まった時間に悪夢を見るとか、座していた椅子から立ち上がったら毎回ズボンが破れて下着が丸見えになるとか、何も無い所で転ぶとか、妙に害虫に好かれて何処にいても身体に張り付かれるとか、外出すると必然的に通り雨に降られるとか、そういうの。
初めのうちは小さな事象に顔を顰める程度だった元第一王子様達も積み重ね。
事象の連日の継続で流石に参ったようで心を病んでしまって、今は廃人も同然になっちゃってるそうだ。
余談が長くなったけど、私が魔女となれたのは【リリエル】のリーダーの使い魔さんのお陰。
女王オータム様の[命]によって再建中だった孤児院に使い魔さんは飛んで来て、私を嘴で摘まんで自分の背中に放り投げたかと思えば突然の空の旅。
何が起こっているのか? 呆ける私に使い魔さんは語り掛けてきた。
「リーネお姉ちゃんの雰囲気に似てる。君は魔女になれる素質があるよ」
「魔女? 魔女って神話に出てくる悪い魔法使いの女の人のこと? それより貴女って喋れるの?」
「喋れるよ。ぼくは特異種だからね。それで、君がなれるのは【リリエル】に次ぐ魔女だよ」
「え!!」
私が耳を疑ったのは当然のことだよね。
私を空の旅に連れ出した使い魔さんは【リリエル】の皆さんの前迄飛んで行き、私を背中から降ろした後で熱心に私のことを【リリエル】の皆さんに宣伝した。
使い魔さんが私を連れ出したことは【リリエル】の皆さんは関知していないことだったみたい。万事、使い魔さんの独断。
使い魔さんから話を聞いた【リリエル】の皆さんは驚いていらしたけれど、私はこの後で皆さんよりも、多分それ以上に驚くことになった。【リリエル】の皆さんを纏めていらっしゃる方・リーネさんから自分と私とでまさかの師妹の関係を締結しないかというお話を持ち掛けられたのだ。
リーネさんから見ても使い魔さんが言っていたように私は相当量の魔力を身体に宿していることが分かったらしい。
リーネさんにとって逸材の私を自分の嬢子として育ててみたくなったのだそう。
話を聞いた時の私は慌てに慌てた。
相手が相手だもの。私が慌てちゃったのは不可避なことだ。
「わ、私と師妹の関係の締結ですか」
「何を慌てているのかは分かりませんが、私は貴女さえよければ私の嬢子になって貰いたいと正直に思っています。どうでしょうか?」
「で、でも私、自分に魔力が宿っているなんて初めて知りましたし、恥ずかしい話ですが、今迄その日を生きるのに精一杯で、孤児院で勉強したこともなくて文字が読めませんし、書けません」
そんな自分が恥ずかしくて、私はリーネさんの前で肩を落としてしまった。
文字の読み書きもできない者がこの国を変えたと称えられる存在。
【リリエル】の皆さんの指揮者。リーネさんの嬢子だなんて烏滸がましいにも程がある。
「なので折角の話なのですが、辞退させてください」
「なるほど! ではこうしましょう」
リーネさんが私の話を聞いて出した案。
自分達がお世話になっている、とあるエルフの里の別荘でこれから私に暮らして貰うという案。
エルフの里の別荘にリーネさん達は休日など時間がある時には必ず訪れるので、その時に一般常識やら魔法の使い方やらを基礎から私に指導する。最終目標は私を自分と同じ魔女に育て上げること。里に暮らす権利の交渉などは【リリエル】側がするからと言われて私は今回何度目だろう?
大慌てして、酷く取り乱してしまったけど、リーネさんは意外と頑ななところがあって、笑顔の説得に負けて師妹の関係を締結することになった。
そうと決まれば諸々の手続きはリーネさんによってあっという間に進められた。
あれよあれよという間に気が付けば始まったカスタネアと呼ばれる里での生活。
私にとっては何もかもが初めてのことで、最初のうちは戸惑うばかりだった。
家事のやり方知らないし、他のエルフの人達とも接し方が分からない。
右往左往する私を助けてくれたのが、別荘の隣に住んでいるマリエルちゃんこと愛称マリーちゃん。
人懐っこい女の子で私に家事のやり方やリーネ師匠を始めとした【リリエル】の皆さんが教えてくれている勉強などの復習を一緒にしてくれた。
今思えば、リーネ師匠はこういうこともあると想定していたのだと思う。
なので、私にここで暮らすように勧めたのだ。きっと。
マリーちゃんとの邂逅のキッカケは私が何も分からずに落ち込んでいるのを彼女が見掛け、私に話し掛けて来てくれたことによるもの。雑談を交えて、私の心の内を彼女が聞き取った結果、今みたいに色々と教えてくれるようになった。
マリーちゃんは私と同じエルフ族でこれもまた私と同じく童顔な女の子。
私の瞳の色は黒。マリーちゃんは深い新緑の色。2人共鼻は小鼻で唇は薄紅色。
私は黒のショートヘアでマリーちゃんは太陽光の当たり具合で黄金にも黄緑にも見える不思議な色のミディアムヘア。豊穣の女神フレヤ様の愛しき子なので不思議な髪色に見えるのだそう。
マリーちゃんは他の人達には自分が[聖女]であることを内緒にしているけれど、私にだけだよと囁いて自分が聖女であることを教えてくれた。
マリーちゃんが聖女だと聞いた時は私って聖女様に相談事なんてしちゃったの!? 恐れ多いことをしてしまったと挙動不審になった。けど、マリーちゃんはパニックになっている私を見て「大丈夫だよ、フィーナちゃん。怖くないからね」って言葉を発して、私の頭を撫でてきた。
マリーちゃん、身長153cm。私150cm。年齢は同じで15歳。
自分の方が身長が高いからといって、マリーちゃんは時々こうやってお姉ちゃんぶるところがあるのだ。3cmしか差がないのに。
「聖女様に相談したことを、なんて恐れ多いことをしちゃったんだろうって思ったけど、"イラっ"としてどうでも良くなってきた」
「あははっ。わたしは聖女の中でも一番下だからそんなに気にしなくていいよ」
「え? なんでそんなこと分かるの?」
「他の聖女と違って、わたしは夢の中でフレヤ様から時折神託を授かれるからね。んで、今のところはこの世界に聖女はわたしを含めて3人いるよ。その中でわたしが一番下」
「聖女様って3人もいるんだ! それで一番上は?」
「【リリエル】の指揮者のリーネさん。フィーナちゃんの師匠様。リーネさん本人は知らないみたいだけど、実はセレナディア様の聖女だよ」
セレナディア様!! 名前を聞いて目玉が飛び出しそうになった。
私達の国の国教の主たる女神様。否、私達の国だけじゃない。
同盟国含めての主神。数多くの人々から信仰されている女神様だ。
主神様の愛しき子。そんな女性に手を出したのなら、元第一王子様達が陰惨な目に遭うのは道理だ。
使い魔さんの仕業だけど、神罰でもある。
多分裏でセレナディア様が使い魔さんに手を貸していらしたのだ。
元第一王子様達の末路やら他色々と思うことがあって背筋が凍り付いた。
「私、セレナディア様の愛しき子の嬢子なの?」
「そういうことになるね。凄い女性に見初められたね。フィーナちゃん」
マリーちゃんは"くすくすっ"笑いながら言っていたけど、笑い事じゃない。
様々な意味でとんでもない女性と私は師妹の関係を締結してしまった。
知らなかったとはいえ、過去の自分を殴ってやりたい衝動に駆られた。
あの時の私にもしも今の私が会えるなら、全力で自分を止めに掛かる。
私には女神様に見初められる女性の恥にならない自分になれる自信がない。
「どうしよう。マリーちゃん。今からでも師妹の関係の解消って可能かな?」
「無理ではないと思うけど、やめておいた方がいいと思うよ」
「リーネ師匠の恥にならない自分になれる自信がない」
「フィーナちゃんなら大丈夫だよ!」
「大丈夫の言葉の根拠は?」
「フレヤ様が言ってたから」
「もしかしてマリーちゃんが私に色々してくれるのってその為?」
「それもあるけど、フィーナちゃんは私の友達でしょ?」
「友達……」
友達。言葉の響きに私の騒めいていた心は安らかなモノに変わっていった。
生まれて初めてできた友達。なんて甘美なモノなのか。
私が感動を噛み締めていると、マリーちゃんが優しく微笑んで私の手に自分の手を重ねた。
-特別編1- 姉妹国の契りと迷い・吹っ切れのその後のお話です。
特別編内では描かれなかった王族達の末路。
間違えても良いものとは言えませんね……。




