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-特別編1- 特許 その01。

 【リリエル】が旅を終えてロマーナ地方へと帰郷してから早くも2ヶ月程の日が経過した。

 過去は本業だった[万事屋]は本格的に【オダマキ】に任せ、自分達はプリエール女子学園の講師を本業とし、ハンター活動を副業として、この地での生計を立てるようになった【リリエル】。なのだが、最近少々困ったことに巻き込まれ、全員が頭を抱える事態に陥っていた。


 彼女達の困りごと、【リリエル】の制服を真似る者が多く出てきたこと。

 通常の性根の持ち主が自分達を真似るのは別に構わない。

 いや、【リリエル】の制服は自分達が【リリエル】であることを示す為の制服。

 大切な通称(パーティ)名と大切な制服。本音としては誰にも真似して貰いたくない。


 のだが、彼女達の気持ちを逆撫でするかのように野盗やら何かと性格などに問題がある者達迄も偽りの制服を着て悪さをするようになり、そのせいで【リリエル】の犯行と稀に決めつけられて、衛兵から何時間にも及ぶ職務質問に付き合わされるようになったりなどしているのだ。


 ロマーナ地方の人々は【リリエル】がそんなことをする筈がない。

 と、彼女達のことを信用してくれているので、偽りの制服を着用した者が何らかの事件を起こしたとしても【リリエル】の仕業とされることはない。


 【リリエル】が職務質問に付き合わされるのは別の地方で問題が起きた時。

 この世界・この時代はまだまだ科学技術などが発展していない。

 それが為に【リリエル】側からしたらあり得ないことになっているのだ。


 【リリエル】にはクオーレというロマーナ地方から別の地方へと飛び立てる存在がいる。

 [悠遠の魔女]と[雪華の魔女]という[転移]の魔法が使える者もいる。

 相手側から見たら、充分に犯行は可能なのではないかという訳だ。

 中には「嫁になるなら赦してやる」などとフザけたことを言ってくる者もいたりするが……。


 今月だけで6回目。

 精神的に参ってきた【リリエル】は休日を利用して会議を開くことにした。

 【リリエル】のリーダーたるリーネが口を開く。


「議題は皆さん、言わなくても分かっていると思いますので省きますが、このままでは私達の沽券に関わって来て、遠からず【リリエル】の評価は地に落ちることになるでしょう。そうなると、ロマーナ地方の人々にも迷惑が掛かります。私達自身も困ったことになります。例えば学園で私達に授業を受け持たせるな! などという親も出てくるでしょうし、ヒカリお姉ちゃんが幾ら頑張ったところで私達への依頼が減ってしまうのは確実です。そうなると私達は外を歩くことにも苦労することになるかもしれません。満足に食事にありつくこともできなくなるかもしれません。そこで、どうしたら良いのかを考えましょうというわけですが……」


 リーネは正直疲れ果てていた。

 【リリエル】の中で一番疑いが掛けられるのが彼女なのだ。

 昨日も面倒臭い貴族に絡まれて、何時間にも渡って自分の身の潔白を晴らすようにあれこれと説明しなくてはならない羽目になった。

 アリシアとミーアもリーネから離れられないので彼女と共に話を聞いたり、時折口を挟むなどした。

 ロマーナ地方から近い地方の貴族ならまだ分かる。

 ところが先日リーネが呼び出されたのはこの地方から遠く離れた地方。

 伝書鳩による呼び出し。ただ難癖をつけたいが為に呼び出されたわけだ。

 【リリエル】のことを面白く思ってない貴族に。


「制服のデザインを変えることも考えました。ですが、変えたら変えたで相手側も変えてくるでしょう。イタチゴッコになるのは分かりきっているのです」

「それなら、以前のように制服ではなくて、それらしい服にする? それが一番いいんだろうけど、わたしはこの制服気に入っているし、相手側の思う通りになって、ほくそ笑む者がいるのが気に食わなかったりするのよね。そんなことを言っている場合ではないのは分かっているのだけれど」

「アリシアの言うことはよく分かる。そもそもさ、【リリエル】の制服はニアの店の印が入ってるし、偽りの制服とは品質が違うのが一目瞭然の筈なのにねー」

「だな。この制服はニアにしか縫えない。彼女は【リリエル】の制服を仕立て直しができることを誇っている。仕立て直しを拒否しろと苦情(クレーム)を言われようが、彼女が誰かに私達、「【リリエル】と同じ制服を作れ!」と言われて、どれだけ金を詰まれようが、首を縦に振ることはない筈だ」

「脅されたりとか……してたりは?」

「無いとは言えんが、彼女の店には店を守護するゴーレムがいる。ゴーレムの前で彼女を脅すことができると思うか?」

「なら店の外は?」

「あのゴーレムはニア専属のゴーレムだ。店内だろうが、店外だろうが同じだ」

「ふ~む。じゃあ多くの連中は【リリエル】に難癖つけたいだけってわけね」

「後は[悠遠の魔女]にもでしょうね。自分で言うのもなんですが、私は特に多くのハンターにとって邪魔な存在でしょうから」


 リーネがそう言うと、場が静まり返る。

 実際、【リリエル】もそうだが、[悠遠の魔女]も多くのハンター達の手柄を収奪している。

 ただ誤解して貰いたくないのは、リーネが別のハンターが倒してきた邪族を自分の手柄として横取りしているという意味じゃない。単純に彼女が強いから、彼女に様々な人々から依頼が集まり、別のハンター達が依頼にありつけずに彼女に逆ギレしているという話だ。


 それならそれで自分達が努力して人々の信頼を勝ち取ればいいのに―――。


 とか一時思ったこともあるリーネだが、自分の[力]はこの世界に召喚された際に授かったモノ。

 本来の自分の[力]じゃない。なら偉そうなことなんて言えない。


 逆に突然強大な[力]を持った奴が世界に現れて、好き勝手なことしてたら逆ギレもしたくなる。

 と、思い直して考えを改めた。


「はぁ……っ」


 ため息を吐くリーネとミーア。

 旅の最中に邪族を倒して回ったのが(あだ)になったのかもしれない。

 【リリエル】が旅の最中に弱くなっていたら笑えないからというのが旅の最中に邪族を狩る目的だったが、余所の地方の人々に【リリエル】の強さを提示する形になってしまった。

 自分達の所のハンターよりも余程頼りになる存在。

 そりゃあ【リリエル】に話題が集まるに決まっている。


「ごめんねー。皆」


 これは自分が招いた結果かもしれない。

 そう感じて【リリエル】全員に謝るミーア。

 邪族を倒して回ろうと言い出したのはミーアだ。

 責任を感じてしまったのだろう。


 凹むミーアに【リリエル】は全員で彼女だけのせいじゃないと慰めた。

 だって自分達も彼女の提案に同意したのだから。同罪だ。


「仕方がありません。当分制服無しで活動することにしましょう。アリシアが先程言っていたように、相手側の思うツボになったようで癪ですが……。衛兵やら貴族やらに何時間も拘束されるよりはマシです」

「そうね……」

「うん」

「仕方がない。……とは思うが、なんなんだろうな。翼を捥がれたというか、半身を失ったというか、大きなモノを喪失した気分になるのは。……やっぱ私達の真似をして犯罪を犯す連中に腹が立つな」

「そうだね。本当にそんな気持ちだよ」

「………………仕方がありません」


 項垂れるリーネ。彼女に続いて【リリエル】も項垂れる。

 それから彼女達は制服無しで活動するようになった。

 講師の仕事の時は自分の私服でハンターの仕事の時はそれぞれがそれらしい恰好での仕事。

 本業の時はともかく、副業のハンター時の活動にどうにも身が入らないのは気のせいだろうか。

 本当に翼を捥がれたようになった【リリエル】はハンターの活動中に精彩を欠くようになり、怪我が多くなるようになった。

 リーネにアリシア、ケーレがいるのですぐに治癒は可能なものの、【リリエル】は段々と苛々が募っていく。


 口喧嘩が増え、仲間割れを起こしそうになって、そこで全員が"はっ"として我に返ることで互いに謝罪して元の鞘に戻るなんてことを繰り返す日々。


 1ヶ月が経過した頃、最初にカミラがキレた。


「なぁ、なんで私達がこんな思いしなくちゃいけねぇんだ。問題があるのは私達の真似をしてる連中だろうが。このままじゃ耐えらんねぇよ」

「ではカミラ。この状況をどうにかする方法が貴女にはあるのですか? どうしようもないではないですか」

「ある! って言ったらどうする?」

「え!!」


 【リリエル】全員がカミラを見る。

 不敵な笑みを浮かべているカミラ。

 彼女はそれから、【リリエル】の他のメンバーが思ってもいなかったことを口にした。

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