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-番外編3- 【リリエル】の休日 その02。

 特に用は無いけど、彼女達はお店に入店することにした。


**********


「こんにちは」


 そう言ってニアのお店に入店した彼女達を待っていたのは、何故か目を輝かせるニアだった。

 不思議に思い、リーネが「何かありましたか?」と尋ねようとする前に彼女達はニアのお店の従業員達によって左右の腕を取られて捕獲される。

 リーネにアリシアにミーア。全員がそうされている。


「「「え? えっ?」」」


 3人が3人。戸惑いの声を上げる。

 3人の腕を取っている従業員達の顔色はと~っても笑顔だが怖い。

 ニアも"ニヤっ"と笑っているところがリーネ達の心を不安にさせる。


「あの……。これは一体? なんですか」

「わたし達は今から何をされるんです?」

「あ~、なんか地球で宇宙人が捕獲されて、何処かに連行されていく画像を思い出すなー。これ」


 それぞれにそれぞれなことを言うリーネ達。

 ニアのお店の従業員達は彼女達を無視して、店長であるニアに声を掛ける。


「店長。良かったですね。()()()()()()()()()()【リリエル】の皆さんが来店してくださるなんて私達はついてますね」

「はい。これはきっと女神セレナディア様の思し召しですね」

「そうですね。そうに違いありません」

「……ということで【リリエル】の皆さん」


 ニアに声を掛けられて、とりあえず返事をするリーネ達。


「はい」

「なんでしょう?」

「なんか嫌な予感がするー」


 ニアは彼女達の三者三様の返事を聞いて満足気に頷く。



 そして―――。



「【リリエル】の皆さんにはこれから着せ替え人形になって貰います。服の新作ができあがったばっかりだったんですよ。なのでモデルを探していたんです。そこに皆さんが来てくれたものですから」


 あ~~~。そういう~~~。

 悪い時に来てしまったと後悔するリーネ達だが後悔先に立たず。

 最早後戻りはできないところに迄なっている。


 ニアから従業員達に指示が飛ぶ。


「では皆さんを連れて行ってください!」


 ニアの指示を聞き、「はい、店長」元気よく返事をするニアの手足と化している彼女のお店の従業員達。

 リーネ達はまさか一般人に暴力を振るうなんてことはできず、これから自分達がされるであろう[事]について『仕方がない』と諦めた。

 それからはニア達にとっては楽しい時間だった。

 リーネ達は元が良い。良すぎる。良すぎるから何を着せても似合うのだ。

 一着、一着と着せ変える度に「似合いすぎです」と騒ぐニアのお店の従業員達。

 そういうリーネとアリシアとミーアについても、それぞれが服を着せられた姿を見ては褒めちぎり合う。

 仕舞いにはドレスも着せられ、それはまだいいとして、水着迄も着せられることになってリーネ達は恥ずかしい思いもしたが、婦々それぞれの可愛い姿が見られたので、彼女達は『まぁ、良し』とすることにした。


 どれくらい服を着せ替えられたのだろう?

 何時間くらいニアのお店に留められていたのだろう?

 ちょっともう覚えていない。


 新作どころか、店内に元よりあった服をも着せられ、リーネ達は先程やっと解放された。


「疲れたわ」


 真っ先にそう言ったのはアリシア。

 それにはリーネとミーアも同意だったが、リーネは別のことを口にした。


「ですが、アリシアもミーアも着せられた服がよく似合っていましたよ。流石は私の妻ですね。目が幸せでした。後、またお菓子を貰いました……。梅味の飴」


 時々リーネはアリシアとミーアを瞬く間に幸福に浸される言葉を口から紡ぐ。

 今回もリーネの言葉に嬉しくなり、アリシアはリーネの右手、ミーアはリーネの左手を取って恋人繋ぎにしてリーネのことを2人で見る。


「わたしもリーネの可愛さは目の保養になったわ。水着とか下着とか。その……。はしたないけれど、悦びでいっぱいになったわ。指を貴女の肌に滑らせたくなったくらいよ。それと、今回はわたし達も貰ったわ。リーネと同じ物……」

「うん。でも個人的にリーネは勿論だけどね、アリシアの色んな服装姿も自分には眼福だったよー。リーネとアリシア。違う色気。心臓が煩かった。で、この梅の飴って地球では男梅だった気がするけど、ここでは女梅なんだねー」


 これは決してお世辞ではない。

 ミーアは心から本気でそう思っているのだ。

 それが分かるから、アリシアも心からの笑みでミーアに返事をする。


「わたしと共にリーネの[妻]になったのが貴女で良かったって思うわ」


 アリシアとはミーアはリーネを巡って喧嘩なんてしたことは無い。

 戯れ合いみたいな喧嘩はしたことはあるが、2人共リーネを1人占めにしたいとか本気の本気の本気で思ったことなんて無い。

 リーネとはいつだって2人一緒にいる。

 2人で共にリーネのことを可愛がり、2人で共にリーネのことを愛して求めるのがアリシアとミーアにとっての当たり前。

 アリシアとミーアはリーネを挟んで楽しそうに微笑みあう。

 リーネに伝播。2人の微笑みを見て"にこにこ"とするリーネ。

 ついでにこの町の人々も3人の百合百合な様子を見て朗らかに笑んでいる。

 【リリエル】は強いから人気ってだけじゃない。

 こういったところがあるから人々から親しまれているのだ。


「ふふっ」


 リーネの声で我に返るアリシアとミーア。

 リーネを見て、「次は何処行くー?」とミーア。

 質問しながら、彼女の足はすでに自分が行きたい所へと動いていたりする。

 ミーアが何処に行きたいのかは分からないが、別に何処でもいい。

 リーネとアリシアが付いて行くと、到着した場所は魔道具屋だった。

「おお、思っていたよりも色んな品物があるのですね」


 ロマーナ地方には魔道具屋が2店ある。

 そのうちの一店にはリーネもわりかし世話になっていたりするのだが、ミーアが選んだ側の魔道具屋に来るのは初めてだったのだ。


 なんというか、地球で言うとド〇キ。


 何故に魔道具屋に? と思ってしまう食品類から他雑貨。

 果てはちょっと口にはできない品物迄置いてある。


 そこのコーナーは3人共『何も無い』という感じの顔で素通りして、他の品物を見て回る。

 バッグ類が置かれているコーナーに来た時、リーネはとあるバッグに付けられたタグを見た途端に脳内に電撃を受けたような感覚を覚え、バッグに飛びついた。


「これ! これ絶対買います。これはきっと運命の出会いです。絶対絶対絶対絶対に逃しません。買います!!」


 それは焦げ茶色のショルダーバッグ。

 バッグに設けられたバッグ本体の焦げ茶色よりも濃い茶色の帯と金色のバッグルによって開け閉めが可能となっている。

 椎茸目でバッグを見て、今にも頬擦りを始めそうなリーネに若干引くアリシアとミーア。

 が、バッグの何が自分達の愛する女性(ひと)をそこ迄にさせるのか?

 気になってリーネにタグを見せて貰うと2人共すぐに納得に至った。


 [アイテムバッグ]容量5,000リットル分の品物を収納可能。

 値段。金貨10枚。


 元々この世界に[アイテムボックス]やら[アイテムバッグ]などという代物なんて無かった。

 異世界人召喚の際に運良くこの能力。空間収納を引き当てた人物が現れてから、魔道具屋に時折登場するようになったのだ。時折なのはヒカリの歓迎の能力と同じで1ヶ月に1度しか使えないから。そのせい。

 その分だけ値段はお高めだが、買わないなんて選択肢はないだろう。

 少なくともリーネには無い。【リリエル】は数年間は働かなくても生きていけるくらいに稼いでいる。

 それでも普段は庶民な生活をしているが、使うべき時には使うべきだ。


「買ってもいいですか?」


 アリシアとミーアに対してお強請り。

 小動物が自分達に甘えてきてる。"デレデレ"してしまうような可愛さ。

 2人はリーネの頭を順番に撫でて「買っておいで」と声を掛ける。

 リーネは2人を言葉を聞いて颯爽と料金支払い所へと飛んで行った。


 彼女の動きが並外れて速くて大笑いしてしまうアリシアとミーア。

 リーネが戻ってくる迄自分達はゆっくり他の品々を見てみることにする。


 その頃、料金支払い所にアイテムバッグを持って行ったリーネは店員から説明を受けていた。

 このアイテムバッグには特殊な機能が設けられていること。

 それはアイテムバッグの中央にある魔法陣の刺繍に自分の魔力を注げば、万が一盗難にあっても、アイテムバッグは盗難した者が使おう、開こうとしても骨折り損に終わるどころか、盗難した者の場から飛び立って魔力を注いだ者の所へと戻ってくるという仕組みな機能になっていること。

 それが付いていないバッグもあって、そちらは今リーネが持ってきたそれよりも盗難に対しての危険度は高まるが、少しくらい安くなること。


「どちらにしますか?」


 と店員に聞かれたリーネは当然、盗難防止用の刺繡が施された側を選択した。

 金貨10枚を店員に渡し、早速自分の魔力をバッグに注ぐ。

 これによりこの[アイテムバッグ]はリーネが生きている限りはリーネだけの物となった。


「ただいま帰りました」

「お帰りなさい。いい品物が見つかって良かったわね」

「はい! お買い得でした」

「リーネ、本当に嬉しそうー」

「はい、それはもう。とっても嬉しいです」


 欲しかった品物が手に入って歓喜するリーネ。

 それを「「うちの妻が可愛い」」と見るアリシアとミーア。

 愛らしい女性3人の様子を店内の人目に付きにくい場所で顔をニヤけさせながら見ている愚か者共がいた。

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