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-番外編2- 悠遠の魔女 その04。

 彼女は駆け出し、皆の中に飛び込んでいった。


**********


 バーシア帝国との戦争から数日後。

 ルージェン王国は復興に向けて歩み始めると共に、女王フレデリークの[国命]により、バーシア帝国への報復もキッチリと行われた。


 まずバーシア帝国の象徴たる[城]は完膚なき迄に破壊されて、その場所に[城]が在ったという痕跡すら消し去られる有様となった。

 次にバーシア帝国人に奴隷扱いされていた、バーシア帝国人から見たら[亜人]、ルージェン王国人から見たら[人]が解放されて、そのうちの女性陣の殆どの人達はルージェン王国が引き受け、男性陣は[金]のドラゴンが守護する国に移り住むことになった。


 それだけでは済まない。

 今回の一件、ルージェン王国が女王フレデリークは大いに腹に据えかねるものがあったらしい。

 女王に即位した頃こそ、「何故こんなことに」などど思っていた彼女だったが、女王として国を治めているうちに国への[愛着]だとか、女王としての[器]だとか、そういった類のモノが目覚めていたのだろう。

 何にしても今や[情]がある国を好きなようにされたのだ。赦せる筈もない。


 そこで、女王フレデリークは骨の髄迄バーシア帝国の翼を捥いだ。

 バーシア帝国への経済制裁を行い、魔王ラピスと聖女アレッタとリーネと[赤]のドラゴンの協力によってアダマンタイトとオリハルコンとミスリルを絶妙に配合をさせて完成させたゴーレムをバーシア帝国国内に多数配置。

 少しでもバーシア帝国人が妙な動きを見せたならば、その者をゴーレムが有無を言わせずに排除するようになった。

 ゴーレムは休まない。24時間ずっと働き続ける。

 内蔵された魔力電池によって最低でも300年は稼働が可能。

 切れたときは切れた時で、また電池の充電をしてやればいいだけのこと。

 

 これによってバーシア帝国はルージェン王国へは当然のことながら、他の国へも手出しすることができなくなった。

 ただ、悪いことばかりじゃない。ゴーレムのお陰で他の国からのいかなる侵略も退けられるようになったのだから。その代わりにバーシア帝国人はどのような理由があれど、国から出国することは一切認められなくもなったけれど。

 籠の中の鳥のような生活。安全でもあるが、外の国の情報が一切バーシア帝国内に入ってこない状況。

 果たしてそれはバーシア帝国人にとって幸せと呼べるのだろうか?

 それでもバーシア帝国人は籠の中で生きていかなくてはならない。

 恐らくは国が少子化などにより滅亡するその時迄。


 

 一方で女王フレデリークはもう二度と国外から国を蹂躙されたりなどされることがないように、国内の軍備を強化した。

 こちらにもバーシア帝国と同じゴーレムを多数配置。

 ゴーレムはバーシア帝国に配置したゴーレムとは違うところが幾つかある。

 ルージェン王国に配置されたゴーレムは国を守護する為の存在であること。

 この世界で言うと、衛兵こと犯罪を取り締まる役人と一緒に各地を回る存在。

 地球で言うと、警察と一緒に回る警察犬みたいな存在と言ったところだろうか。少し違う気もするが。

 それから貿易などの為にルージェン王国人が他国へ出国することを邪魔するようなことはないというところ。


 追加で魔王ラピスと聖女アレッタとリーネと[赤]のドラゴン。

 ゴーレムを完成させたメンバーに女王直々の[(めい)]を下し、ルージェン王国全土に結界魔法を施した。

 国がゴーレムと結界により守られるようになった後、女王フレデリークはリーネの先の働きと戦争時における働きなどを称え、彼女に勲章と共に彼女だけが名乗ることができる特別な称号を与えた。



 ―悠遠の魔女―



 実は女王フレデリークと魔王ラピスは勲章と称号をリーネが受け取る際に、彼女が嫌な顔をするかもと心の中で思っていたりした。

 予想は大外れ。彼女はそんな顔など一切見せることなく、寧ろ逆に凛とした顔でそれらを女王フレデリークから恭しく賜った。

 案外気に入ったのかもしれない。

 リーネは以降、人々からこう呼ばれるようになる。

 [悠遠の魔女リーネ]と。


**********


 さて、悠遠の魔女となったリーネ。

 彼女は【リリエル】一行と共にルージェン王国各地の復興の手伝いは勿論、先の戦争で傷付いた者達を癒して回る旅に4ヶ月程の時を費やした。


 聖女アレッタは南側、自分達は北側という風にルージェン王国内を二分するようにして。



周囲上級治癒魔法(エリアハイヒール)


 今日もリーネは幾人もの人達の傷を癒し終えた。

 そのせいだろうか? 「魔女」なのに、たまに「悠遠の聖女様」とも呼ばれるようになったのは。

 これにはリーネも苦笑いした。

 「魔女」と呼ばれることには抵抗が無い。

 けれど「聖女」と呼ばれることにはどうにもむず痒いモノがあったのだ。

 でもリーネにも思うところがあったので、それを止めたりするようなことはしなかった。

 それはあのクソゲーのこと。あのクソゲーは本気の本気でクソゲーで、ラスボスは[聖女]となった者にしか倒せない仕様となっていたのだ。しかも通じるのは光の魔法のみ。この世界は現実世界。決してゲームなどの世界ではない。ということはリーネも分かってはいる。分かってはいるが、あのクソゲーにハクが関わっていたせいだろうか? たまにあのクソゲーと同じような見た目の物・モノがこの世界でも見られたりする。


 ルージェン王国の王都内の一部の建物だとか、人々の心意気だとかを。

 そもそもリーネとミーア自身もそうだ。

 バーシア帝国の城については全く違っていたので彷徨うことになったけれど。


「けど、ラスボスは同じ顔だったのですよね。ですが、ゲームでは私は[聖女]ではありませんでしたから、倒すことはできませんでしたが」


 リーネは独り言を言いつつ、あのゲーム内でのことを思い出す。

 [聖女]しか倒せないことは分かってはいても、物は試しだと一度だけラスボス戦に挑んだことがあった。

 結果的に"ぼっこぼこ"にされて即座に敗北するという苦い思い出となった。


 それが、今回の戦闘では勝ててしまった。

 しかも自分が使った魔法で。


「まさか……」


 リーネはちょっと考えてしまったことに首を振る。


「この世界は現実です。ゲームとは違います。私が皇帝に勝利できたのは現実世界に生きているからでしょう。そうですよ。きっと。私は聖女ではありません。大体聖女様はもういるじゃないですか」


 リーネが思い浮かべるのは聖女アレッタの顔。

 魔王ラピス同様にちょっと残念なところがある聖女様だけど、聖女は聖女。疑う余地は無い。


「やっぱり気のせいですね」


 聖女アレッタを思いながら"ほっ"とした笑みを見せるリーネ。

 彼女を3歩程離れた所から見ている者達が一様に言葉を吐き出した。


「あれ、なんか気に入らないよねー」

「だな。そろそろ()()()()()必要があるな」

「うちとは違う形で分からせるんだよね?」

「ええ。身体に躾するわ」


 彼女達の言葉がリーネに届いたわけではない。

 そうではないのだが、ふと背筋に悪寒が走るリーネ。

 彼女はこの日の夜、自分の愚かさを分からされることになる。


**********


 夜。

 リーネは自分を除く【リリエル】のメンバーの前で正座させられていた。

 ここ迄【リリエル】のメンバーは彼女に人々の癒しという仕事がある為に鬱憤をぶちまけることは避けていたが、癒しの仕事も明日で終わり。

 ということで、今の今迄ずっと我慢していた鬱憤をリーネに直接ぶつけることにした。


 バーシア帝国との戦争でリーネが勝手な行動をしたこと。

 置いてけぼりにされた自分達がどんな思いをしていたかということ。

 魔王ラピスと共に転移した先で見た光景が自分達にとってどれだけ目を覆いたくなる程のモノだったのかということ。

 後は過去のことについてもリーネは滾々と説教をされた。


「そもそも貴女は何処か1つ抜けたところがあるのよ」

「そうそう。でも自分でも分かってるんじゃないのー」

「仲間っていうのをなんだと思ってるんだ? リーネにとって【リリエル】は自分の都合のいい時しか使わない道具的な存在なのか!!?」

「それは違っ……」

「じゃあ今回のは何? うちはリーネがしたこと。すっごく興味あるなぁ。是非とも聞かせてよ。リーネの口からさ」

「ごめんなさい」


 リーネに言い返す言葉は無い。

 アリシアにミーアにカミラにケーレ。

 彼女達が言うことは何も間違ってない。

 今のこれは全部自分が招いたことだ。

 

「私が馬鹿でした。【リリエル】は私にとってかけがえのない仲間です。人と人。信頼を失う行動を私はしました。今の仲間間の軋みは私の暴走の結果です。私が、皆さんをそうさせました。ごめんなさい」


 皆の前で土下座。

 アリシアとミーアはそんなリーネを見て"にこっ"とし、彼女の眼前に例のアレを突き付けた。


「謝罪は受け入れるわ。でも、わたしはね、リーネがまた勝手な行動を起こさないように見張る必要があると思うのよ」

「リーネ。どうするー? 断る?」

「いえ、断りません。自分でもその方がいいと思うので。……アリシアとミーア。お願いできますか?」

「ふふっ。分かってくれて嬉しいわ。リーネ」

「けど、この後で身体にも教えることがあるけどねー」

「……うっ。………………分かりました」

「【リリエル】全員でお尻百叩きな」

「リーネが望むなら千叩きでもいいけど」

「本当に反省しているので、百で許してください……」

「仕方ないな」

「とりあえず首輪を私に填めて貰っていいですか?」

「自分から望むのね。リーネ」

「まぁでも、こちらとしては願ったりだけどねー」

「よろしくお願いします」


 アリシアとミーアがリーネに頼まれて2人一緒に行動を開始する。

 リーネにとって久しぶりに覚える首への金属と革が混合した独特な感触。


「……何故でしょう。これがある方が不思議と落ち着きますね」


 そう言ってリーネは自分の首に填められた[隷属の首輪]を優しく撫でる。

 まるで大切な道具を慈しむように。


「お帰りなさい」


 リーネの口から"ぽろっ"と零れる言葉。

 彼女の言動。愛らしさに中てられて、やられそうになってしまう【リリエル】のメンバー達。

 悠遠の魔女・聖女。なんて言われていても、普段は可愛い子なのだ。彼女は。


「でもここで倒れるわけにはいかないのよ」

「そ、そうだな」

「頑張れ。うち達」

「リーネ、お尻出そうねー」


 この後、リーネは【リリエル】のメンバーから1人につき25発ずつお尻を全力で叩かれ、痛みに悲鳴を上げた。

 悲鳴を聞いて彼女が可哀想になった【リリエル】のメンバーだったが、お尻叩きをやめて温情を与えてしまうと、同じことを繰り返してしまうかもしれない。

 【リリエル】のメンバー全員、心に痛みを覚えながらも、ここはそれを無理矢理封印。鬼になって、リーネをしっかりと躾した。

 アリシアの部屋。

「お、お尻が痛すぎます」


 お尻百叩きで躾されてから、リーネはアリシアとミーアに連れられてこの部屋にお邪魔していた。

 強烈な痛みに涙目なリーネ。泣きそうな顔も可愛いと思うアリシアとミーア。


「ミーア……。ちょっとは手加減してくれても良かったと思います。貴女の場合、Strength(力)が最大値なんですから」

「リーネー」

「はい」

「自業自得ー」

「うぐっ。そうですよね……」


 ミーアに論破されてしょぼくれるリーネ。

 ミーアは彼女の頭を撫でながら頬にキスをする。


「あっ」


 キスでリーネの顔がしょぼくれたものから一気に笑顔へと変わる。

 単純。笑いながらアリシアとミーアが彼女に告げる。


「ここからは甘い躾だよー」

「リーネは私達のモノ()だって分からせる為のものよ」

「は、はい」


 行動開始。2人はリーネを一糸纏わぬ姿にさせる。

 子供と大人の中間。いや、どちらかというと子供寄りだろうか。

 華奢な身体。可愛いが、ちゃんと女性である。

 愛しい人の裸体に目が釘付けになる2人。

 見られている側のリーネは顔を[赤]にさせつつ、はにかむ。

 魔性の表情。理性? それってなんだっけ?


「リーネ。最初に謝っておくねー。今日も優しくはできないよー」

「私も……。多分」

「……えっと」


 2人の目の色が変わる。知覚して急に羞恥心を覚えるリーネ。

 視線だけなのに触れられていると錯覚。

 "ぞくぞく"としたモノが身体中に広がっていく。


「アリシア……。ミーア……。大好きですよ」


 蕩けた瞳と声色のリーネ。室内が甘く甘くなっていく。


「もうダメだわ」

「うんー」


 2人は今度は本当にリーネに触れる。

 愛を刻み、彼女を求める。彼女も2人を求める。

 3人で深く深く愛し合う。細胞にも愛を伝えるように。

 切なくて、幸せで、大切な時間。

 求めあいは長きに時に渡って続いた。


 そして彼女達が眠りついたのは、そろそろ黎明を迎えようとする頃だった。

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