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-二章- プリエール女子学園 その07。

 けど、結界張り直し完了後。私は魔力欠乏症に陥って気を失ったのだった。


**********


 魔法学実習模擬戦が行われたその日から1週間が経過した。

 その間に今度は魔法禁止の武闘学実習模擬戦が行われて魔法が使えなければ[紙]な私は一撃で模擬戦の相手に叩きのめされるなどといった醜態を晒したりしたのだけど、逆にアリシアとミーアはその模擬戦で株を上げ、私達【リリエル】は学園内で一躍有名人となった。


 私達【リリエル】のことを最初から知っている人達も中にはいた。

 けれど、3人がそれぞれにそこ迄の強さを持っている迄は知らなかったらしく、私達はクラスメイトは当然で他のクラスの生徒やら時には教師陣迄休憩時間の度に私達に構ってくるようになった。


 生徒はともかくとして、教師陣から戦闘の仕方やら魔法の扱い方を聞かれるのは少々複雑に思うところがあるのは否めない。この学園の教師陣はそれなりに優秀と学園編入前にシエンナ様から聞いていたような気がするんだけどなぁ。


 今日もクラスメイトと話していると私達の傍にケーレがやって来る。


「うちも話に交じっていいかな?」

「はい。勿論ですよ」


 ケーレは私に[格]の違いを見せつけられて以来、人が変わった。

 今ではそれ迄の[鬱陶しい人物]から[友達]と呼べる人物に代わっている。

 以前迷惑をかけたクラスメイトにも頭を下げながら謝罪して、今はこのクラスの皆が仲が良い。

 元々授業は真面目に受ける人物だったのだ。

 私が初日に思っていた通りに性根から[悪]というわけでは無かったのだろう。


「でも、びっくりしたよ。魔法ではこの学園ではリーネの右に出る者なんていないのに武闘実習ではちょっと殴っただけで地面を転がるんだから」

「あははっ。私は本当に魔法しか能が無いんですよ。もしも武闘実習が先であったならば、きっと私と貴女の関係は変わっていなかったでしょうね」


 武闘学実習模擬戦でも私と組んだのはケーレだった。

 別にその時はどちらかが立候補したとかではない。

 たまたまそうなったのだ。


 彼女は前に魔法で私に恐ろしい目に合わされていたからだろう。

 最初から警戒心丸出しで、私に全力で殴り掛かってきた。

 私に反撃されたらまた殺されそうな目に遭わされる。

 彼女はそう思ったから、すぐに全力を出したのだろう。


 それでも私に攻撃を躱されて、何かされる―――。


 ってその時は実は思っていたらしい。

 ところが、彼女の全力の拳の力を受けた私は軽く吹っ飛んで、"ゴロゴロ"と地面を転がった挙句に運動着を泥だらけにして「参りました」とすぐさま敗北の宣言をした。


「は!?」


 その宣言を聞いた時のケーレの顔は忘れられない。

 鳩が豆鉄砲……。逆に狼狽えていた。


「そう聞くと魔法実習が先で良かったって思う。ところでリーネは完全に後衛ってこと?」

「いえ、魔法が使えるのなら以前にケーレに見せたように身体に魔力を纏わせて、それと共に武器を扱えるので前衛。……でしょうか? 遊撃手ですかね? の代わりを務めることもできるのですけどね」

「ふむ。なるほど。じゃあさ」


 ケーレはそこで私が思ってもいなかった提案をしてきた。

 放課後。

「うん。うちが思った通りにやっぱりリーネは筋がいいね」


 私はケーレの指示の元で[弓]の訓練を弓道場で受けている。

 そうだった。どうして今迄思い付かなかったんだろうか。

 エルフと言えば魔法と弓じゃないか。

 地球での私のヲタク知識はそれが半ば常識だった。

 それがこの世界に来てからは、弓の存在は私の頭の中から"すっぽり"と抜け落ちてしまっていた。


 あのクソゲー内で[リーネ]は弓なんて使ったことなかった。

 使うのは魔法か魔法を身体に纏わせての暗殺術。

 私は[リーネ]の固定観念に捉われてしまっていた。


「ありがとうございます。ケーレ。これで私も武闘学がなんとかなりそうです」


 弓も立派な武闘学の中に入っている。

 正直なところ、ケーレがこのことを言い出してくれる迄は武闘学は単位を落とすかもしれないって戦々恐々としてた。

 何度も言うが、この学園はただ一般常識などの学力を身に着けるだけでなくて、騎士や衛兵やハンターを養成することを兼ねている学園。

 なので筆記だけでも単位は取れるが、実習の方が重要視されているのだ。

 実習が単位の7割を占めていて、筆記の方は3割程度。

 それだけに実習抜きの筆記だけでなんとかしなくてはならない場合、例えば実習を普通に熟せる者へのペーパーテストの合格点が40点としたら、筆記だけの者へはそれが80点に迄跳ね上がる。

 [理不尽]だが、こればかりは仕方がないところもある。

 でも中には生まれつき魔力を持たない者もいる。特に獣人にそういう者が多い。

 なのだから、その辺りの者にはもう少しは融通を利かせてあげてもいいのにって思ったりもするけれど。

 【リリエル】の場合、武闘学も魔法学も普通に熟せるのはアリシアだけ。

 私は武闘学実習時にはほぼ無能。ミーアは魔法学実習時にはほぼ無能。

 なので2人共にそれぞれの授業を筆記だけでなんとかしなくてはならないところだった。

 でも私はこれで安心だ。幾ら頑張っても魔力が[0]なミーアは魔法学を筆記だけで頑張らないといけない。ので彼女には申し訳なく思うけど……。


 しかし一度は憎んだ相手だけど、今日からはケーレを敬わなくてはいけないかもしれない。

 とか思っていたら、別に私の心を読んだとかではないのだと思うけど、ケーレが少し苦笑いしながら言ってきた。


「別に気にしなくてもいいよ。でもこれでお互いに貸し借りは無しってことにしてくれたら嬉しいかな」

「そうですね。……ところでケーレ、もう少し時間ありますか?」

「うちは寮生活だから門限迄なら問題ないけど。どうかした?」

「すみません。ぶしつけなお願いなのですが、もう少しだけ私に弓の扱い方を教示願えませんか?」

「そんなこと? いいよ、別に。その代わりに明日はリーネがうちに魔法の使い方を教えてね」

「分かりました。では、契約成立ですね」

「んっ」

 

 それから私は、ケーレから1時間程弓の使い方の手解きを受けた。

 結果、私は長弓よりも短弓の方が向いてるってことが分かった。

 今後の武闘学ではこれをメインの得物として使うことにした。


「帰宅したら村の鍛冶屋の人に弓を作って貰う手筈をしないといけませんね」


 この学園。武器の貸し出しもあるけど、持ち込みも自由。

 なのでどうせなら、学園が用意した物よりも自分が用意した物を使いたいと思うのは人が100人いれば70~80人くらいはそう思うんじゃないかな。

 汚したくはない・壊したくはない。とかの理由で試供品の方がいいっていう人もいるだろうけど。


「あのさぁ……」


 物思いに耽っているとこちら側に私の自我を戻してくる人物が1人。

 ケーレが私の右肩に手を置きながらドン引きした様子で言ってくる。


「たった90分。それだけの時間で動き回りながら(まと)に全部矢を当てれるようになるってなんなの。貴女」

「え~っと、変ですかね?」


 リーネはAgility(素早さ)とDexterity(器用さ)があのクソゲー内で最大値の存在だった。

 それはこの世界でも健在で、なので弓の扱いに容易に慣れることができた。


「弓はいいですね。矢を放つときの音が小さいので獲物に気付かれにくいですし、敵が遠くにいても狙えるというのがいいです。でも欠点もありますね。矢を接げるのに時間が掛かるところと、接げる為の矢が無くなれば終わりというところ。後は敵に命中すればいいですが、外すとこちらが隙だらけになるというのが最大の弱点ですね。魔法を使うことが許されているのなら、物は弓だけで矢は魔法の矢にしてしまえばその弱点を克服することが可能なんですが。ふむ」


 学園で用意されている短弓を見ながら"しみじみ"と語る私。

 それをケーレは聞いているのか、いないのか。はてさてどちらか分からない顔で"じと~っ"と私のことを見つめている。


「どうかしましたか?」


 私を通り越して何処か遠い所を見ているような視線が気になりすぎて、手に在る弓から視線を外してケーレにその視線の理由を問い掛けてみた。


「例えばリーネが矢を外すかもって思うのは、どんな相手?」

「え? それは空を飛んでる相手とかでしょうか?」

「あ~、確かに空を飛べる存在もいるものね。この学園。魔物がさ」

「そうですよね」

「いや。でもうちは思うのよ」

「何をです?」

「リーネならさ弓に矢を2~3同時に(つが)えて相手の翼なり、なんなりを撃ち破って、その相手を地面に落とすことができるんじゃないかなって。それと弓の他にナイフを使うっていうのもありなんじゃない? あれなら軽いし、リーネでも普通に武器として使うことができると思う。普通に手に持って戦うなり、投げて相手を翻弄するなり、貴女にならできるんじゃない?」

「……!! その手もありましたね!」


 目から鱗。今日はこれで2回目だ。

 どちらもケーレから学んだ。

 彼女の手を取り、お礼を言いながら"ぶんぶん"と上下に振り回す私。


「ありがとうございます。ケーレ。貴女は凄いですね。私が全然思い付かなかったことをこんなにも教えてくれるなんて。正直ハイエルフは気位が高くて戦いに敗北したとしても絶対に私達エルフとは関わろうとしないだろうなぁって思ってた面がありました。そんな自分が恥ずかしいです。本当にごめんなさい」

「はぁ……っ。謝るのはこっち。うちは里の()鹿()()鹿()()()()()()()()()()()貴女達エルフとダークエルフのことを見下してた。そんな自分が凄く恥ずかしい。本当にごめんなさい」


 頭を下げるケーレ。この女性(ひと)って実はいい人だ。

 意固地にはならずに何が問題だったのか? それを考えて、自分のことを外側から見直すことができるっていうところに好感が持てる。

 私達はその日1日で完全に打ち解けあって、翌日には約束通りにケーレに魔法の使い方を教えて、そうしている間にケーレはアリシアとミーアからもあれこれと学ぶようになっていった。

 その結果、私は彼女を【リリエル】に勧誘した。

 ケーレは私からそれを聞いた当初は大慌てで断ってきたけど、【リリエル】3人で説得。

 最終的にケーレはお試しの後でってことで折れてくれた。

 1ヶ月後。私達はそのお試しのためにロマーナ地方でよく邪族が出没する荒れ地の前に立っていた。

誤字報告を下さる読者様。ありがとうございます。

本当に感謝しております。UP前に気を付けて見ているのですが、見落としがあるものですね……。

さて、今回もいただきましたが、調べてみたところ弓場ではなく、弓道場の方が正しいようですので、そちらの適用は控えさせていただきました。大変申し訳ありません。

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