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-序章- ライバル? との遭遇。

 そんな私達2人の前に突如として1人の男性エルフが恐らくは近くに生えている木の上からだろうか? 飛び降りてきてある種怒号にも似た声を掛けてきた。


**********


「アンリ。そいつはなんだ?」


 エルフだけあって顔はいい。

 だけど正直言って性格が気に入らない。

 今、私に掛けられた一言だけで私のことを完璧に私を侮蔑しているのが手に取るように分かる。

 心の中で"むっ"としてしまう私。

 しかしそんな自分に自分で驚いたりもする。

 私は学園で虐められていた・親はネグレクトだった。

 故に自分で言うのもなんだけれど、良く言えば控えめ。悪く言えば自分がない。性格だった。

 それがまさか[怒り]という感情が自分の中に沸くとは思ってもみなかったのだ。


 私が自分に戸惑っているうちにアンリと男性エルフの会話が進む。


「あんたには関係ないでしょう。まぁ、それじゃあ引き下がらないだろうから言うわ。この子は私の友達よ。文句ある?」

「友達ねぇ? どう見てもこの里では見たことない顔だがな? 余所の里からの間諜か何かじゃないのか?」

「それはないわ。だってこの子は転移者だもの」

「転移者」


 頭の先から足の先迄、その男性エルフが私のことを少しの配慮もなくじろじろと見てくる。

 


 ―――気持ち悪い―――



 私の心の中に浮かぶその気持ち。

 それが表情に出ていたのだろうか?

 アンリがその私を見て、私を引っ張りながら男性エルフの横を通り過ぎて去ろうとするが、彼はそんなアンリの腕を掴んで無理矢理に立ち止まらせた。


「おい! 何処に行くつもりだ」

「家にこの子を連れて行くのよ。鬱陶しいからその手を放しなさい」

「ダメだ。大体お前は俺の婚約者なんだぞ。勝手なことは俺が許さん」

「……っ」


 アンリが歯を"ぎりっ"と噛み締めるのが見て取れる。


「婚約者?」


 それを横目に見つつ、私が聞いてみると何やら悔し気に話し出すアンリ。


「そう。こいつ……。アロガンはわたしの婚約者よ」

「それってアンリの両親が決めたとかですか?」

「違うわ。この里では決闘によって……。例えば里の方針とかが決められるの。それで、わたしとアロガンが決闘をして……」

「そう。俺と決闘をしてお前は負けた。で、お前は俺の()()になった訳だ。だからお前は俺の言うことを聞かなくちゃいけない。ということで、その胡散臭い友達とやらのことを俺は認めない。今すぐにそいつのことをこの里から追い出すか、さもなくば殺せ!」

「ふざけ……っ」


 彼・アロガンの言い様にアンリが怒鳴ろうとする。

 でもその前にアンリとアロガンとの前に私は立ち塞がった。


「リーネ?」

「てめぇ。何の真似だ?」


 アンリとアロガンが交互に聞いてくる。

 アンリは私の背後。アロガンは私の目の前にいる形になるので、アロガンにだけ目を合わせて微笑む私。


「つまり、ここで私が貴方を倒せば貴方はアンリに手を出せなくなるってことですよね? それどころか私が叶えたいこと次第によっては貴方は私の言いなりにならないといけない、と」

「お前……。つまり俺に決闘を申し込むって言いたいのか」

「まぁ、そういうことになりますね」

「ちょっ、リーネ」


 背後のアンリから焦った声が発せられる。

 自分が今しがた連れてきた存在が行き成りそんなことを言い出したのだ。

 気持ちは分かるが、敢えて無視させて貰うことにする。


「本気で言ってんのか?」

「逆に聞きますけど、冗談に聞こえますか?」

「アンリの横で縮こまってる雑魚だとばかり思ってたら、なかなか良い性根してんじゃねぇか」

「お褒めの言葉をどうもありがとうございます。まぁ、貴方に褒められもちっとも嬉しくないですけど」

「あんまり調子に乗るなよ」

「……無意味な問答はもう結構です。で、私との対戦を受けるんですか? それとも逃げるんですか? どっちです?」

「このっ……、くそ野郎が」

「野郎じゃないです。私、女性なので」

「そういうことじゃねぇよ! まぁいい。受けてやるよ。その代わり、手足の1~2本失っても文句言うなよ」

「交渉成立ですね。で? 決闘とやらは何処でやるんです?」

「ちっ。そんなことも知らねぇのか。やっぱり何処かの里からの間諜なんじゃねぇのか。……まぁいいさ。着いてこい」


 アロガンが私達に背を向けて歩き出す。

 私もそれに続こうとすると、私の腕を掴んでそれを止める者が1人。


「リーネ。貴女、何考えてるの!!!」


 アンリは怒っている。

 今にも私のことを(なじ)りそうな勢いだ。


「リーネ。今日この里に来たばかりの貴女は知らなくて当然だけど、アイツは……。アロガンはこの里でも有数の実力者よ。ううん、アイツに勝てる奴なんてこの里には……」


 沈むアンリの顔。その頬に片手を当てて穏やかに私は告げる。


「大丈夫です。勝つ自信ありますから」

「その自信は何処から来るのよ。大体転移者はろくでもない能力しか与えられないわ。これ迄29人全員がそうだった。リーネ。貴女がどんな能力を世界から与えられたのか知らないけど……」


 ふむふむ。アンリの話を聞くに、この世界に転移してきた者にはなんらかの力が世界から与えられるらしい。

 と、すれば私がこの世界に転移して来てすぐの時に覚えた違和感も世界から能力が与えられた合図だったのだろう。


「ところで、さっきアイツは手足の1本や2本失っても文句を言うなって言っていましたよね? 決闘は何所迄なら相手を痛めつけることが許されてるんですか?」

「今はそんなこと言ってる場合じゃ……」

「いいから教えてください!」


 ちょっとした威圧。それに息を呑むアンリ。


「半殺し……、迄よ。だから手足の1本2本どころか男性が女性の顔に傷をつけたって許されるわ」

「なるほど。よく分かりました」


 女性の顔に傷をつけても許される、か。

 最低だな。


「おい! いつ迄話し込んでやがる。それとも何か? やっぱり怖くなったのか?」


 アロガンが私達のことを嘲笑う。

 どうやら私達が話し終わる迄、ずっとその場で立ち止まって待っていたらしい。


「意外と紳士な面もあるんですね」

「あぁ?」

「なんでもありません。行きましょう」


 私は未だ私の腕を掴んで放さないアンリの手を軽く握ってそこから放させる。

 それでどうやらアンリも観念したらしい。

 黙って歩き出した私の後に彼女も黙って着いてくる。

 着いた場所は、地球でいうと古代ローマ時代のコロッセオみたいな所だった。

2023/05/24 お詫び

思うところがあり、主人公のライバル名を変更しました。

前:ザール → 後:アロガン

ライバルの名前を変更したことで、もしも変更前の読者様に混乱を生じさせておりましたら、そのことお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。

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