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甲子園4連覇チームを倒す話  作者: @tokizane
令和■年のベースボール
6/102

私を見返すためだったんでしょ?

 青海高校からの帰り道。

 俺は明智家所用の高級車の後部座席に乗りまもなく眠ってしまったが、約三〇分後、交差点で車が停まったタイミングで夙夜に脇腹を優しくつつかれ眼を醒ます。

 見覚えのある街の風景、もうすぐ家に到着するころか。

 俺は無意識に制服の胸ポケットを探った。執事の人から返してもらったメガネが収まっている。

「……ねぇ、さっきのってどういう意味?」

 車窓から外の風景を見ているふりをしながら、夙夜が俺に問いかける。

 わずかに頬を赤らめている。なにを思っているのだろう?

 夙夜は気がつけば長い髪を下ろしていてその横顔はよく見えない。相変わらず幼い顔立ちで中学生にしか見えない。背丈は同世代の女の子と比べても小さくはないのだけれど、身体がどこも細くて成長が遅いからますますそう見えてしまう。横に並んだら兄妹に見えてしまうのもしかたない。

 夙夜は窓ガラスの反射で俺の反応を見ているようだ。

「グラウンドで最後に俺が言ったこと?」

「そう! 野球やってるのは私を見返すためだったんでしょ?」

 それが俺の目的だ。素直にうなずく。

 続けて夙夜。

「だから一人でも練習し続けていたの?」

 完全に一人でトレーニングしていたわけではなくて、よその学校の野球部の練習に混ぜてもらっていたのだけれど。

「夙夜は普通の女子高生じゃないでしょ」

「わ、私が普通じゃない? そう?」

「自覚ないの? 美人で頭が良くて、私服のセンスモデルかってくらいいいし、体育の授業でなにやっても上手いし」

「そんなに褒められると恥ずかしいんだけど///」

「校内に親衛隊ができるくらいルックスと《外面》が良くてーー」

「最後の表現はなんかイヤミっぽい」

 冷静に返す夙夜。

 彼女のは校内では優等生で大人っぽくてお嬢様っぽいふるまいをよそおっているが、その正体は傲慢な女王様なのだ。友達にも家族にもキャラをつくって接しているが、恋人の俺にだけは本音を話してくれる。

「野球なら俺も特別になれる」

「……スポーツ選手と勉強ができる子なら、前者のほうがはるかに評価されるでしょう?」

「そりゃニュースバリューは前者のほうがあるんだろうけれど、勉強していい大学にはいる奴だって同じくらい偉いと思うよ」

 夙夜は本当に頭がいい子だ。思想があるというか、教養があるというか……。というか夙夜の父親はベストセラー作家で母親はトップ女優。その二人から「猫かわいがり」されて育ってきた一人娘だ。生まれ育った環境からして俺なんかとは違う。父子家庭でここ数年父親から放置気味の俺とは。

 その上で彼女に認められたい思っているわけで。

 そのためにはなにか大きなことを成し遂げなければならない。

 野球はそのための道具でもある。

「それで?」

「夙夜は青海のことあんまり知らないみたいだから超速で教授してあげる」


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