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深夜2時  作者: まさみ
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泣き袋

笑い袋ってご存じですか?はい、あの悪趣味なおもちゃです。赤い袋に入ってて、真ん中のスイッチを押すとげらげら笑いだすんですよ。

一体何が面白いのか子供心に全然理解できなかった。怖がる私を見て他の家族は笑ってました。昔流行ったジョークグッズらしいんですが、開発者はどうかしてますよね。人を脅かすのが楽しいんでしょうか。


笑い声って怖いですよね。

特に不意打ちで響くのは……心臓が底上げされます。無防備な鼓膜を殴り付けるような哄笑。


今から話すのは私が小学生の時に体験した出来事です。

当時ひとりで下校中だった私は、通学路の半ばで落とし物を拾いました。薄汚れた赤い布袋です。一目で笑い袋だ、と直感しました。うちにあるものとそっくり同じだったからです。

内心いやだなあと思い、迂回して行こうとしました。けど落とし物を無視するのは良心が咎め、勇気をだして手にとりました。やっぱり真ん中にボタンが付いています。


いじっている最中、偶然スイッチを押してしまいました。


直後、ノイズまじりの鳴き声がスピーカーから漏れてきました。びっくりしました。それ、笑い袋じゃなくて泣き袋だったんです。録音されていたのは若い女の人の声です。


「お前たちのせいだ。お前の母親があの人を寝取ったんだ。お前も淫売だ。この××が、××を焼いて塞いでやろうか」


潰れた嗚咽とともに延々呪詛が紡がれます。所々ノイズに邪魔されて聞こえません。

それがとてもおぞましいものに思えて……ああ、コレは誰にも拾わせちゃいけないと空き地の土管の中に隠したのです。

翌日、同じ道を歩いていたら低学年の女の子と出会いました。この道で落とし物をしたそうです。もしやと思って聞いてみると予感的中、あの笑い袋もとい泣き袋の事でした。


「大事なものなの?」

「ううん、お父さんの友達の女の人がくれたの。あたしへのプレゼントだって」


ということは、泣き袋に吹き込まれていたのは……。


「お姉ちゃん、知らない?」

「ううん知らない。きっと誰かが拾って帰っちゃんだよ」


嘘を吐いた事は後悔していません。

私は早々に聞くのをやめましたが、泣き袋には泣き言以上の憎悪が封じられていたのです。

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