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第八話 猛攻、そして痛手

 

 智之が跳び上がりグリーンドラゴンが翼を広げる。


「健志っ!」


 呼びかけに健志が悠紀の方を見る。

 そしてーーそれで十分だった。

 健志は頷いた後大きく跳躍した。

 しかし、智之とドラゴンの元までは届かない。

 瞬間、悠紀が杖を健志に向ける。

 すると地面の一部がせりあがり足場を形成した。

 健志はそれを蹴って更に高く跳ぶ。

 そして、竜の頭まで到達するとハンマーを振りかぶり右目のナイフの柄に勢い良く叩きつけた。

 ナイフが深く、突き刺さる。


「ーッーーーァーー!?」


 竜が苦し気な声を上げる。

 そして、衝撃と共に地に墜ちた。


「大丈夫か? 智之」


「何とか……、でも死ぬかと思ったっしょ。サンキュー健志」


 着地した二人がそんな会話をしていると辺りに凄まじい咆哮が響き渡った。

 咆哮の主はグリーンドラゴン。

 右目を潰されたにも関わらずその気迫は衰えを知らない。

 いや、むしろ目を潰される前よりも増している。

 健志と智之を見下ろす巨竜。

 その背のクリスタルの輝きが強くなる。


「ブレスが来るぞ! 避けーー」


 悠紀が言い終わる前に竜の口から『銀色に輝く魔力の奔流』が放たれた。


「何っ!?」


 悠紀が驚きの声を上げる。


(速すぎるっ! それに炎じゃないだって!?)


 悠紀が内心毒づく。

 グリーンドラゴンのブレスは強力だが通常溜めが入る。

 だが目の前の竜にはそれがほぼなかった。

 加えて放たれたのは火炎ではなく純粋な魔力の塊。

 それはドラゴンという種の中でも一部の上位種しか使えない超高温のブレス。

 そして、このタイミングと想定外の速度で放たれたブレスは完全に不意打ち。

 最早二人に回避は許されなかった。


「智之! 自分の後ろにいろ!」


 健志が盾を構えながら言う。


「わりぃ、健志……。頼んだっしょ」


「謝るな。大丈夫だ、耐えて見せるっ!」


 健志が全身にグッと力を込めた。

 そして、銀の閃光が健志を直撃した。


「ぐっ……!」


 何とか受け止めているが盾越しにも関わらず健志の身体が焼けていく。


「ラストヒール!! ラストヒールっ!! ラストヒールっっ!!!」


 一樹が必死に回復魔法を唱えるがそれでも健志の傷は増え続ける。


「うっ……くそっ!」


 大盾があまりの高温にひしゃげ始める。

 そして、健志が膝を折りそうになった時ーー


「健志! まだやれるっしょ!」


 その背を智之が支えた。

 健志が一瞬、智之を振り返る。

 そして、フッと笑った。


「ああ……当然だ!」


 折れかけた足に再び力が戻る。


「うおおおおおおお!!!!」


 健志が咆える。

 巨大な閃光を前に一歩も退かず受け続けた。

 やがて少しずつブレスの勢いが弱まっていく。

 後に広がったのは大きく抉れ所々がマグマのように溶けた大地。

 そしてーー


「ハァッ、ハァッ、ハァッ!」


 盾はひしゃげ、全身ボロボロになりながらもしっかりと立つ健志の姿。


「健志っ!!」


 悠紀が喜びの声を上げたのも束の間。

 竜が止めを差すべく健志に向かっていく。

 気づいた悠紀が急いで叫ぶ。


「大海! 撃てっ! ありったけだ!」


「承知!!」


 無数の氷弾が竜に放たれる。


「ファイアーボール!」


 そして、竜に氷弾が当たる直前。

 それら全てが炎に呑み込まれた。

 急激に溶かされた氷が水蒸気となり辺りに広がる。

 それは霧となってドラゴンの視界を奪った。


「全員すぐに撤退だ! 一旦立て直す!」


 濃い霧の中、悠紀の声が響き渡った。

読んで頂きありがとうございます。

あと、三話から四話程で一章は終わる予定なので読んでもらえると嬉しいです。

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