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第六話 少年達の夜、そして遭遇

  中は板の間で道也リクエストのベッド以外は何もない。

  悠紀はリュックから電動のランタンを取り出した。

  そして、それを囲むように全員で円になって座った。


 

「んじゃ! さっそく飯にするっしょ!」


「さっき食い物で痛い目見たのによくその話できんな」


「それはそれ! これはこれ!」


  そう言ってリュックの中からレトルトのカレーと米を取り出す智之。

  悠紀達もそれに続いて食糧を取り出していく。

  そして、一樹がガスコンロと大きな鍋を真ん中に置く。


「大海、氷お願い」


「承知した」


  大海が鍋に手をかざす。

  そして、手が水色の輝きを放ったかと思うと鍋に拳大の氷がいくつか収まっていた。


「ありがとう」


  一樹はそう言ってコンロの火をつけた。


「ちょっと待とっか」


「悠紀の魔法で燃やして一気に温めれば良くね?」


「智之お前天才だな、所でこの小屋何でできてるか知ってる?」


  「木!」


「そうだなー智之は知らないだろうけど木に火をつけたら燃えるんだぞー」


「あ! 悠紀、オレっちのことバカにしてるっしょ!」


「やっと気づいたかアホ」


「ヒドイっしょ!」


  そんなやり取りをしている内に食事の用意が終わり各々が食べ始める。


「ん? 一樹、何食べてるっしょ?」


「だしまき卵の缶詰め。この前見つけて買ってみたんだ。食べる?」


「ありがと!」


  そう言って智之が卵を1つ摘まむ。


「お! 結構うまい!」


「でしょ! 皆も食べる?」


「でも一樹の分がなくなるだろ?」


  悠紀の言葉に一樹は首を振る。


「まだ他にもたくさんあるから」


  そう言って一樹はリュックから様々な缶詰めを取り出して並べた。


「すげー、たこ焼きの缶詰めとかあるのかよ」


「そうだな。自分はいつもカレーかカップ麺だから知らなかった」


「あ、僕このポテトサラダのやつ食べたい」


  道也が身を乗り出して指を指す。

  珍しく目を輝かせる道也からは尋常でない圧を感じる。


「そ、それじゃあこれも開けよっか」


「一樹はこういったものをどこから見つけて来るのだ? 私はあまり見たことがない」


「ボクはネットで買ってるかな」


「なあなあ、それよりこんだけあるならパーティーするっしょ! オレっちこんなの持ってるしーーじゃーん!」


  智之が取り出したのはスナックやチョコレートなど様々なお菓子。


「いいね!」


「やるじゃん智之! んじゃパーっとやりますか!」


「そうだな」


「私も賛成だ」


「ポテトサラダ」


「道也のそれは返事かな?」


「ポテトサラダ」


「……」


  約一名、語彙力を失った者がいるがこうして悠紀達の夜は更けていった。




「大変だよ!!」


  翌朝、尋常ではない様子の一樹の声が響き渡った。

  その声に全員目を覚ます。


「どうしたんだ?」


「結界が壊された!」


「なんだって!?」


  瞬間、大地そのものを揺るがすような咆哮が響く。

  それを受けた全員が身体を強張らせた。

  一樹の結界は並の魔物に壊されるような柔なものではない。

  それが壊されたということはーー

 

「戦闘準備!」


  全員悠紀の言葉に素早く反応し、寝袋などはそのままに武器とリュックを即座に用意する。

  そして、扉の前に立った。


「それじゃ……行くぞ」


  額に汗を浮かべた悠紀は緊張の面持ちで扉を開けた。

  そして、彼らの目に入ってきたのはーー


「まさかターゲットの方からやってくるなんてな……」


  背中にクリスタルを携えた深緑の巨竜だった。

  彼の竜が悠紀達を見据える。

  まだ少し離れているが確実にこちらへ向かって来ている。

 


「な、なあ、アイツでかすぎじゃね?」


  智之が震えた声で呟く。


「気のせい……だったら良かったんだけどな」


  動揺を隠せない悠紀が答えた。

  グリーンドラゴンの平均体長は約10メートル。

  しかし、目の前の個体はその倍近い体躯を誇っている。


「どうやら私達は『あたり』を引いたらしいな」


  大海は不敵に笑ってみせるが、その額には冷や汗が浮かんでいる。


「ボク、こんな嬉しくない当たり初めてだよ」


  一樹が呆然と言った。

  相手に呑み込まれた面々を前にしかし、依然変わらぬ二人がいた。


「それでも僕らのやることは変わらないでしょ」


「ああ、その通りだ。悠紀、自分は何をすればいい?」


  道也と健志が真っ直ぐに悠紀を見据える。

  動揺は一瞬、悠紀は薄く笑うと自分の両頬をパンッと叩いた。


「よし!」


  そう言って悠紀はニッと不敵に笑った。

  それを見た智之と大海、一樹にももう動揺は見えない。

  そして、悠紀は声高々と指示を出し始めた。


「健志は前に出て足止めをしてくれ!それから相手の攻撃を捌くことに集中しろ!」


「わかった」


「一樹はいつも通り後方で回復と援護を頼む」


「うん! 任せてよ!」


「大海、道也、それから俺で健志に攻撃を集め過ぎないように適度に気を引く。ダメージを与えることは考えなくていい」


 二人が頷く。


「智之は隠れながら隙を突いて攻撃。ただし一撃離脱を徹底しろ」


「わかったっしょ!」


「っし! 秀明学園二年第十班っ! 状況開始!」


「「「「「おう!!!!!」」」」」



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