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第五話 実食、そしてお約束

寝落ちしてました。

遅れてしまいすみません。

それではどうぞ。

「第十班、戦闘準備!」


  合図と共にピリッとした空気が流れる。


「智之は『ルマージュウルフ』を引き付けながらこっちに来い!」


「あいよ!」


「大海は右、道也は左に展開して待機!」


「承知した」


「了解」


  悠紀の指示で二人が素早く左右に広がる。


「一樹は下がって支援!」


「うん!」


「健志は前に出てくれ!」


「ああ」


「大海! 道也! 俺に合わせろ! 攻撃は当てるな! 威嚇に留めろ! 奴らは仲間意識が強い。余計な恨みは買いたくない」


  大海と道也が頷く。


「三」


  大海と道也は銃を、悠紀は杖を構える。


「二」


  走って来た智之が健志の頭上を飛び越える。


「一」

 

  先頭のルマージュウルフが健志に迫りーー


「零!」


「バウッ!?」


  突如、地面から現れた土壁に阻まれた。

  一番槍が勢いを削がれたことにより群れ全体がたたらを踏む。

  更に両側から氷と雷が降り注ぐ。

  群れに動揺が走る。

  しかし、彼らの判断は早かった。

  最も後ろにいた一匹が一声吠えるとそれを合図に全員が逃げて行く。

  悠紀達は追撃せず、それを見送った。


「相手に恵まれたな」


  大海が呟く。


「そうだね」


『ルマージュウルフ』

  群れで行動する狼の魔物である。

  弱い魔物や死体など自身が確実に仕留められる獲物を狙う傾向がある。

  そのため、少しでもリスクがあるなら即撤退する。

  討伐するのは厄介だが追い払うだけなら難しくない相手だ。


「ったく……、これっきりにしてくれよ、智之」


「ごめんごめん。それよりさ、これ! すごいっしょ!!」


  智之が見せて来たものに悠紀達は顔をしかめた。


「何だこれ?」


「キノコっしょ!」


  智之の言うとおり形は確かにキノコだった。

  異様なのはその色。

  ドブに油を落としたように黒色の中に所々虹色が見える。

  そしてそれらの模様が流動するように蠢く。


「私の目には危ないものにしか見えないが……」


「いや! こういうのが案外美味いんだって! お決まりっしょ!」


  いざ食べたらヤバいというのもまたお決まりだと彼はいつ気づくのか。


「いや、でもな……」


  「そこまで言うなら白黒つけるっしょ! 一樹っ! 」


「なに?」


「このキノコに毒があるか調べて!」


「調べるまでもない気がするけど……」


「いいから!」


「わかったよ」


  仕方なくといった風に一樹がキノコ?に右手をかざす。


「ポイズンソナー!」


  一樹が唱えると手から放たれた白い光がキノコを包み込む。

  そして、目を閉じ意識を集中させていく。


「え? うそでしょ?」


  一樹が驚きの声を上げる。


「これ……無毒だ……」


  智之以外全員が『あり得ない』という表情を浮かべる一方で智之は胸を張った。


「ほら! だから言ったっしょ! んじゃ、いっただきまーす!」


「智之やめーー」


  勢いよくキノコにかぶりつき……


「くぁwせdrftgyふじこlp」


  白目を剥いて倒れた。


「智之!?」


  一樹が智之に駆け寄る。


「はぁ……、俺達も休憩にするか」


「呑気か! 智之倒れてるんだけど!」


「落ち着くのだ一樹。道也を見習え。あいつはもう寝る体勢に入っている」


「それもう落ち着くとかって次元じゃないよね! ていうか智之泡吹き始めたんだけど!?」


「毒じゃないならその内目を覚ますだろう。自分もそれまでは休むのがいいと思う」


「確かにそうだけど……」


  一樹は渋々といった様子で頷いたが、やはり心配なようで智之に回復や解毒の魔法を掛けている。


「悠紀、そろそろ日も落ちる頃だ。ここらで今日は終わりにしないか?」


  大海が悠紀に提案した。


「そうだな。近くに魔物もいないし。一樹、結界頼む」


「あ、うん」


  智之についていた一樹が頷く。

 

「『プロテクションフィールド』」


  一樹が唱えると辺り一帯を白い光が半球状に包み混んだ。

  直径にして200メートル。

  巨大な結界の完成である。


「これで魔物は入って来られないよ」


「よし。大海と健志は木を集めてくれ」


「任せろ」


「わかった」


  大海が結界内の木を斬り倒し、それを健志が1ヶ所に集めていく。

  そして、木々が山と積まれた頃、悠紀が二人に声をかけた。


「もういいぞ。したら少し離れてくれ」


  悠紀が集めた木々に杖を向ける。


「『クリエイション』」


  声と共に木々が形を変えていく。

  変化が落ち着いた頃、そこには1つの小屋が出来上がっていた。


「何度見ても便利なものだな。土魔法は」


  大海がそう呟く。

 

「威力に欠けるけど、確かに色々と器用なことはできるな」


  物質の構造に直接干渉できるのが土属性の特徴だ。

  土に限らず固体ならば何でも干渉できる。

  しかし、直接的な攻撃力に関して他の属性に一歩劣る。

 

「ベッドは?」


「うおっ!」


  寝ていたはずの道也がぬっと顔を出す。


「いきなりおどかすなって……」


  「縦197センチ横102センチ高さ37センチ設置場所は日の当たらない壁際」


「会話しろよ! ったく……いいけどマットレスとかは用意できないぞ」


「布団持ってきてるからそれを上に敷く」


「そのデカイリュックの中身布団かよ!睡眠に対するモチベ高過ぎだろ! 」


  悠紀はため息を吐きつも杖をかざしてベッドを作る。


「んあ……。何か小屋がある……」


  気を失っていた智之がのっそりと起き上がった。


「智之っ! 大丈夫!?」


  一樹が心配した様子で智之に尋ねる。


「あれ? 一樹どうしたん?」


「どうしたもこうしたもないって! 智之、あのキノコ食べた瞬間ぶっ倒れたんだよ!」


「え? マジで?」


「ああ、一樹の言うとおりだ」


  大海が答える。

  見れば他の面々も智之のもとへ集まっていた。


「そういえば、何かこう……生物の本能的にヤバい味がしてそっから記憶がないっしょ……」


「生物的にヤバい味ってどんな味なのさ……」


「想像を絶するくらい不味かったっしょ」


「倒れるくらい不味いとかやばすぎだろ……」


「下手な毒キノコより質が悪いな」


  そう言って健志は足元に落ちた食べかけのキノコを拾い上げ、遠くへと放り投げた。


「ねえ。それはともかく泊まる準備もできたんだし飯食って早く寝よう」


「どんだけ寝るんだよ! まあ、とりあえず中入るか」


  呆れ半分の悠紀に続き第十班は小屋の中へと入っていった。



読んで頂きありがとうございます。

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