第1話「うちゅうひこうしのうた」
「わぁっ! また負けたー!!!!」
「おまえ男のくせに弱いのぅ?」
「なにー!? 待ってろよーオイラ絶対に……」
………………
…………
……
…………っ、くぁ、なんだ3秒も寝てたのか?
またアイツの夢見ちまった……か。オイラちゃんの敗北の歴史ってーヤツ。
マジで森の中以外は澄んだ空気してんな和歌市は。
第四の壁もビシバシキてるわw
しゃあねぇのか? しゃあねぇんだな。
じゃーオイラちゃんも合宿に向けて、意志を固めるか……。
はじまりはおぼろげでも――……、
………………
…………
……
あれはオイラが生まれる5億年くらい前、
人類よりも進化したマキナドールたちの革命で、
暦すら書き換えられたんだと。
人類の上層部の噂では、この地球の誕生は、
少なくとも京は越えてたらしい。
オイラはそんな事聞かされてもイマイチピンとこねー。
はじまりは何も無かった。
今は感じられるくらい小さくなったけれど、
はじまりがはじまりのまま動く事は無かった。
だが、ある日気付くと景色が変わっていた。
今は拙くとも言語が操れるので、こんな説明ができるが、
その頃はその変化を理解するのに永遠に近いくらいの時を要した。
「こんにちは、人間さん、わしは神依女じゃ。
判るかのぅ。おーい」
う……、うるさい! って……「うるさい」って何だ?!
「何だ」って何だ? おかしいおかしおかおか…………。
何だなんか込み上げてくる……。
目の前にある脅威を排除せよ!!!!
殺せっっっ!!!!
「グルガァァッ!!!!」
と。
「かはは♪ 寝ぼけとるんじゃなぁ♪ 過度な暴力はいかんぞ♪」
途端に意識が感化され弾けた。こいつはオイラよりも強い!
本能が告げる。
それにオイラが振るった暴力というものを、微動だにせず、包まれた……。
「かは♪ ようやくお目覚めのようじゃのぅ。
よく来た、この【孤児院】へ。
わしを視覚できるか?」
視覚?!
あ……、嗚呼、何も見えないのはオイラが目を閉じているからか……。
瞳よ、開け――……、
「ぅ……、うん……、お――、おお……」
なんだおまえは……? なんだその顔は……!?
なんで、今殺そうとしたオイラの前で、そんな顔ができるっ!!!!
咄嗟に覚えてしまった。美しいをいくら重ねても足りない、と。
刻まれた。
オイラは絶対にこいつに勝てない……!
その事実がオイラの破壊衝動を激しく揺さぶる、
だが、それ以上に、オイラはこいつに仕えたいと望む想いが凌駕した。
全身全霊で抗うぞっ!!!!
「……、おまえの名前をオイラに教えろ」
「礼儀はなっとらんが、おまえを目覚めさせたのは孤児院じゃからな。
わしはDRまたの名を金剛石のノヂシャじゃ。
おまえも名乗ってくれてもいいじゃろう? 人間さん?」
「ディアル……、言っておく」
「なんでもよいぞ♪」
「オイラに名など必要ない! そして、オイラは、」
遠い記憶、あれが最初で最後……、オイラの精一杯の意地っ!!!!
「おまえを倒して、オイラの嫁にするっっっ!!!!」
………………
…………
……
「そりゃちーと長いぞー?」
「うるさい! もー決めた事だ!!!!」
「うるさいのはおまえじゃ。……なら……」
………………
…………
……
やれやれ、やだねー厨二病は、オイラも若気の至りだぜ。
だがな――……、あの言葉に、
オイラはこの数万という歳月の中で、
一点の迷いも曇りもなく、おまえを捉え続けて来たぞ。
それが叶うなら、
永遠だって、永久だって、生きてやらぁ。
げんじつもゆめも
ぼくらにとってはとうかなもの
はじまりとおわり
歌 坂本真綾 作詞 一倉宏 作曲・編曲 菅野よう子