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9 学生

カーテンから漏れ出るひかりで目が覚めた。

「ん~。テツゥ…、。」

木漏れ日かと錯覚し、思わず近くにいるであろう少年の名前を呼ぶ。

「翔太、テツって誰だよ。早く起きないとご飯食べ損ねるぞ。」

「あ、あれ、兄さん。」

「おはよう。」

隣のベットで寝ていた兄が声をかける。

隆兄さんは僕よりも早起きだ。

そして。

「おきろー!!」

「うわっ、やめっ、寒いから!!」

朝から引くほどテンションが高い……


『おはようございます。6:30になりました、今朝のニュースです。本日未明、○○県○○市の山間で………』

よく通る女性アナウンサーが画面の中から向かいさきの無い笑顔を浮かべている。

それを横目に母さんが朝食を並べる机へ向かう。

父さんは既に椅子に座り、ニュースを眺めていた。

「おはよう母さん父さん。」

兄さんが制服のベルトを直しながら椅子に着く。

「ああ、おはよう二人とも。」

「隆、翔太、おはよう。お茶はいるの?」

「僕は、牛乳がいい。」

「あらそう。翔太は?」

「お茶でいいよ。」

兄さんの向かいの席に座ると母さんの運んできた飲み物をそれぞれが受け取り、朝食が始まる。

「母さん、海苔あるか。」

「ええ、隆、取って」

「うん。」

四人だがガヤガヤと騒がしい朝食だ。

「あら、翔太今日は学校行くの?」

「うん。今日ミニテストがあるんだ。」

「あらそう。」

久しぶりに制服に腕をとおしている僕に母は問いかける。

別に、いこうと思えばいくのだ。

いくのが面倒くさいからいかないだけで。

「今のうちに遊んどけよ。どうせ中学、高校は嫌でも行かなきゃ行けないし。」

「隆と違って翔太は勉強できるからな。」

「え~。俺だって勉強は苦手じゃないよ。翔太にだって俺が教えてるんだし。」

「ありがとうね隆。」

家族で唯一朝が苦手な僕は皆が朝からこんなに元気なのがあり得なかった。

「ごちそうさま。」

ご飯がお茶碗に半分ほど残った状態で手を合わせた。

「あら、もういいの?」

「残り食べていいのか?」

「うん。いいよ。」

食が細い僕に心配そうに声をかける母、そして僕の皿に残った焼き魚を狙っていた兄。

二人を見ないようにして部屋から出て行こうとする。

「待て、翔太。朝は無理しなくて良いが給食は少し頑張れ、」

「分かっているよ。父さん。」

給食は皆の話を聞かないようにそして話し掛けられないように常に口を動かしてものを胃袋に詰め込む作業を続ける。

だから、結局なにを食べているかも分からないまま時間が終わっている。

廊下に出ると洗面台で歯を磨いた。

鏡に映った小さな自分を見て、このちびと悪態をつく。

ほんとに意気地無しのちびだ。

ほんとはミニテストがあるから学校に行くんじゃない。

テツに会づらいから行くのだ。

自分より何倍も生きているのに見た目を自由自在に出来死ぬこともないそんなテツがほんの少し怖くなったから逃げるのだ。

「この意気地無し。」

僕が吐いた僕の本心はほんの少しだけ僕の心を傷つけた。



おはようおはようと、子供達の声が聞こえる。

自分より小さな子も大きな子も小走りで仲間の元に向かう。

昨日ぶりの再会に喜ぶ。

ハイタッチや決まり文句の昨日の○○見た~?を炸裂させている。

僕にはそんな奴はいない。

昨日のテレビなんて見てないし、昨日来てないのだから示し合わせて同じ時間同じテレビを見ることなど無い。

まあ、適当に答えるより、はなから聞かれない方が随分と楽で、話し掛けてくるような物好きがいないことは良いことだった。

ただ一人をのぞいて。

「お、美月、おはよう。久しぶりに学校来たのか。」

「……南先生。おはようございます。」

「おう、おはよう。」

体育教師の南泰斗誰にも分け隔て無く熱く接し、元気の良い小学生には人気の先生だ。

「今日のテストのためか?」

「いえ、暇だったので。」

「そうか。それでもよく来た。先生は嬉しいぞ。」

「はぁ…、」

そうですかとしか言いようがない。

別に先生のためにきてるわけでは無いわけで、100%自分のために来ているのであって、嬉しいとか言われても困る。

「それでは、今日も一日頑張れよ!」

「はい。」

熱い。

どこまでも熱い。こんなだったかこの先生は

外気温が既に熱いのだからやめて欲しい。

学校の昇降口、日陰に入る玄関は外よりいくぶん涼しくて僕は家を出てから久方ぶりの大きなため息をついた。

暇だからってくるんじゃなかった。


「神の香…か。久しぶりに来たと思ったら、とんでもないものに捕まってしまったな。」


おはようと、言う声があちらこちらで聞こえる。

僕は自分の席について教科書を確認していた。

久しぶりに来たから足りないものは無いか、授業はどこまで進んでいるのか。

「お、久しぶりだな。翔太。」

「阿部君。」

僕に何て見向きもしない人々の中で唯一声をかけてくれた人がいる。

阿部義人、家方近いためよく遊んでいたり、兄同士が仲良しだったりとなにかと縁多い人だ。

知的な黒縁眼鏡をかけ直し、にこっと笑った。

「なかなか来ないから心配してたぞ。」

「ごめん。でも、来ない方が楽しくて。」

「まあ、いいんじゃ無いか?僕だって学校来ても図書室にいることも多いし」

「そうなんだ。」

「ああ、」

「ところでさあ…」

「うん?」

「南先生ってあんなんだっけ?」



***

長くなりそうなので分けます。

なんだかんだ、書いてたら長くなることが多くて……。

道を歩きながらなんかに「あ、ああしたらいいかも!」などと考えていると、長くなるんです。

さて、では次の話で。

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