出逢い編 世界の尖(とがり)を治すって素晴らしい
太陽の落ちた空は夕焼けで雲が真っ赤に染まっている。
大通の街路樹も紅葉しているかのように赤に染められ、大通りの先に見える海も真っ赤。
海月だった黒い砂が風で舞い上がり幻想的な大通りの真ん中で抱き合う俺達三人。
ーーーーーー 日向 海晴 ーーーーーー
。。。。。
暗い。。
どこやここ。。
俺は真っ暗な中にいる。。
体の感覚が全く無い、手も足も動かせない、視覚嗅覚触覚聴覚全て無い。
前の大波に飲まれた時とは全然違う。。
俺は、闇に侵食されてしまったんか?
ああ。
ボーーっとする。
意識もだんだん薄らいでいく。
意識まで黒い闇に侵食されてるんかな。。
やばいな。。
このまま気を失ったらどうなるんやろ。
。。。。
暗い。。
どう、したら。。
いいん、や。。。
。。。
「大丈夫だっちゃ。。?」
ヴェル。。
途端にヴェルが頭に浮かんで来た。
なんで?
「頑張るっちゃ。。」
心配そうに手を握るヴェル。
頑張るって何。
何か左胸が熱い。
どんどん何かが膨らんで来ている様な。。
「この世界を守るっちゃ。。。」
ヴェル。。
世界を守る。。。
なんやこの破裂しそうな力と気持ちは。。
みんなを守って助けないと。
そんな気持ちがどんどん溢れて来る。
なんなんやこの感覚。。
胸の中で何かが膨らんでいく。
その膨らんでいく何かが大きくなり過ぎて弾けてしまいそうや。。
すると目の前の真っ暗闇が霧が晴れる様に少しずつ晴れってきた。。
俺は目を凝らしてみる。。
すると、ぼんやりと辺りが見えてきた。。
誰かがいる。。
何人かいる、だれや?
はっきりと目の前の景色が見え始める。
目の前に翔陽が立ってた。
「翔陽。。?」
『じゃあそろそろ行こうぜ。』
翔陽がほんの少し悲しい顔をして、それから。
ニコッと最高の笑顔を作る。。
『海晴!お前なら出来るよ!』
え?どうなってるんや?
ヴェルが出てきて次は翔陽?
この翔陽少し大人びてない?
なんか違和感がある。
これは夢の中なんか?
『じゃあな。。。』
俺にハグをする翔陽。。
相変わらず力強い。。
俺から後ろへ一歩離れた翔陽は、ふわりと俺に背を向け吸い込まれるように離れて行く。
周りは足元まで星々が見える。
俺たちは今、宇宙にいる。。
あの海の中の世界とはまた違う。
きっとこれは本物の宇宙。
スーーッと離れて行く翔陽。。
『俺たちなら出来る!!』
『またな!!!』
そう叫んで翔陽は俺から背を向けて駆け出した。
絶対に世界を救うんや!
突然俺の胸に決意が降り降りてきた!
ッパ!!
途端に俺の胸の奥にあった何か弾けそうやった物がついに弾けた!
すると俺の身体から光が溢れ出し辺りは一気に光に照らされた。
胸の中で膨らんでいた物は光やったみたいや。
身体の中にいっぱいに溜まった黒い闇の様なものが、その弾けた光に掻き消されたのがわかった。。
その光は胸の奥からどんどん溢れ出して体の外まで漏れ出し強烈な光を放っている。
あぁ。
またや。。
なんで俺の頬に涙が流れてるんや。。?
涙が止まらへん。
心の中が悲しさと嬉しさでいっぱいや。
なんでこんなに俺は涙を流してるねん。。
そんな場合ちゃうのに。。
でも。。
よかった。。
ほんまに良かった!!
ゆっくりと。
涙でぼやけた視界が晴れて、辺りが見えて来た。。
意識を取り戻した俺は身体を起こす。
サラサラと崩れてる漆黒の海月。。
森のようやった海月達全部崩れていってる。
隣で翔陽とヴェルも体を起こしてる。
「翔陽。。だっちゃ。。。」
ヴェルが抜ける様な鼻声で翔陽の名前を呼んだ。。
俺は胸がぎゅーーっと締め付けれる様な感覚に襲われた。
毎日翔陽と会ってきたのに久しぶりに会ったような感覚。。
とめどなく涙が溢れ出して来る。。
翔陽の向こうのヴェルの頬にも涙が伝っていた。
きっとヴェルも俺と同じものを見て同じ感情を抱いているんやろうな。。
ガバ!!
俺とヴェルは隣にいる翔陽を同時に抱きしめた!
「なんだか分からないんだけどさ。俺!今日二人に会えて信じられないくらい嬉しいよ!!!!」
「なんでやろ俺もやわ!はははは!昨日も会ってたのになぁ!変な感じやわ!」
涙を流したことがばれない様にそっと涙を拭う。
「うちも、なんかね、心の底から嬉しいって気持ちが溢れてくるっちゃ!なんかずっとこの瞬間を待っていた気がするっちゃ」
「ヴェルさんそれ俺もなんだよな!」
「よかった。。」
漆黒の海月達が砂の様に崩れていく中で、俺の心の底からの安堵の声がポツリと溢れ落ちた。
少し落ち着いて辺りを見回す。
漆黒の海月やあの黒い蛇どこ行ったんやろ。。
翔陽もヴェルも辺りを見回してる。。
そこら立っていた海月達はもうほとんど崩れ去って、今までと同じ、元の大通りに戻ってきてた。
地震も止まっていつも通りの静かな大通り。
空は夕焼けで雲が真っ赤に染まっている。
街路樹も紅葉しているかのように赤に染められ、大通りの先に見える海も真っ赤。
海月だった黒い砂が風で舞い上がり幻想的な大通りの真ん中で抱き合う俺達三人。
なんか恥ずかしくなってきたわ。
何で俺あんなに嬉しくなってたんやろ?
スッと翔陽を抱きしめていた腕を離す俺。
「何でかな?うち翔陽を前から知ってるような夢見たっちゃ」
「俺も宇宙にいる夢を見たよ。海晴もヴェルさんもいた」
立ち上がる三人。
「あ、そういえば、こういう災害の後にある物を消すことでこの世界の崩壊を少しずつ食い止めていけるって、うち言われてたんだっちゃ」
「え?どう言うこと?」
「見たらわかるっちゃ。うちはそれを消すためにこの地球に来た様なものだっちゃ」
そう言うとヴェルは何かを探すように歩いて行った。
そして、一番大きな海月が消えて行く側へと歩いていった。
「あ。これだっちゃ。。」
そこには光の屈折なのか分からへんけど、何か景色が歪んでた。
ヴェルの前の空間が地面から尖ったり引っ込んだり陽炎や蜃気楼の様に奇怪しな光の屈折をしている。
「空間が歪んでるん。か。。?」
その歪みの向こうに見える黄昏の赤く染まった空や、見慣れた街や海が、グニャグニャと屈折してた。
「なんやこれ。。。」
俺と翔陽はトゲトゲと下から突き出す空間の歪みにゆっくり近づいて行く。
「これは。。これが空間の尖だっちゃ。」
「空間の尖って何だ?ヴェルさんこれの事知ってるのか?」
「うん、知ってるっちゃ。と言ってもこんな近くで見たのは初めてなんだけど。これが世界のバランスの崩壊の原因だっちゃ」
「これがあの海月を生み出して地震を起こしたのか?」
空間の尖に手を伸ばす翔陽。
「あ!翔陽!ダメだっちゃ!」
触ろうとした翔陽の手をヴェルが止めた。
「これは翔陽は触ったらダメだっちゃ」
「じゃあどうしたらいいだ?」
グイ!
ヴェルが俺の手を引っ張る。
「触ってみるっちゃ!」
「え?俺が?翔陽はあかんのになんで俺なん?」
「いいから触るっちゃ!」
「え?えーーー。。。わかった。」
俺はヴェルを信じて、心を決めて手を伸ばす。
グニャグニャしたその空間の尖とやらに手を伸ばして触った!
ッパ!
途端に俺の身体が一瞬光った光った!
その光は強烈でほんまに一瞬!
その強烈な光のせいで一瞬、俺達は視界を奪われた。
光が収まった次の瞬間にはグニャグニャしていた空間の尖りはもう無くなっていた。
「終わったんか?」
俺はなんとなく理解した。
これでもう大丈夫なんやろ。
「やっぱりだったちゃーー!!」
ヴェルが突然抱きついてきた!
「やっぱりってなんやねん!」
「えっとね。うちこの地球の崩壊を止めるために選ばれて来たって話たっちゃ?」
「うん、そう言ってた。」
「でね、それを決めたのはうちの星で一番信用されてる星占いなんだっちゃ!」
「うん」
「で、その星占いで、宇宙の崩壊を止める事が出来る人が地球にいて、その人と巡り会えるのがなんと、このうちってお告げされたっちゃ!
だからうちがうちの星の代表としてこの星に来たわけだちゃ。
さらにその占いによればね、うちが地球に着いて初めてに会った人が宇宙の崩壊を止める事ができる運命の人って告げられたんっだっちゃ!」
「なるほど。それで?」
「それでね、うちがこの星に来て一番初めに会ったのは、、、わかるっちゃ?」
ヴェルがグッと俺の方に視線を寄せた。
「あ。俺か?」
「だっちゃ!宇宙に崩壊を止めることの出来る運命の人!それが、海晴だったっちゃ!さっきの時空の尖りを消し去るのを見てうち、確信したんだっちゃ!」
。。。
言葉を失う俺と翔陽。
話が突調子過ぎるって。
そんなんアニメとか映画の話やん。。
「それに出会ってすぐ、うちを命をかけて助けてくれたっちゃ!うちにとっても、もう海晴は運命の人だっちゃ!」
「運命って。。?俺が世界を救うとかそんな事?」
「だっちゃ!デステニーってやつだっちゃ!」
「いやいやいやいや、出来るわけないやん。。」
「大丈夫だっちゃ!出来るっちゃ!」
「この宇宙が、地球が、崩壊する?それを止められるのが海晴?海晴にそんな運命が??」
翔陽も困惑気味や。。
「で、じゃあ俺は今から世界を救う為に一体何をしたらいいん?」
「んーーー。。」
首を傾げるヴェル。
「分からんちゃ!」
俺はガクッと肩を落とす。
「冷静に考えて、実際、海晴はさっきの空間のグニャグニャ?尖?を触って消せたんだからさ。そういう原因みたいなのを消し去る力があって、その原因を消し去っていく事で世界を救うとかそんな感じかなって思うんだけどな」
「翔陽!それだっちゃ!」
「うん。。でも。なんで俺にそんな力が。」
「それは考えても分からんっちゃ!一つ分かるのは!うちらは運命の糸で結ばれてるって事だっちゃ!」
「なんでやねん!」
「ははは!いいじゃんか!お似合いに見えてきたよ!」
「翔陽わかってるっちゃーーー!」
「だからなんでやねん!」
ウーウーウー!
ピーポーピーポー!
パトカーや救急車の音が聞こえて来た。
地震で出動して来たんや!
「これどうしよっか?」
「うーーん、どうするのがいいんだっちゃ?」
「さっきの状況説明なんて絶対出来ひんしなー、、話した所で警察の人達に信じて貰える訳ないわ、、知らんぷりして一旦俺ん家に戻ろっか?」
「それがいいっちゃ!」
「そうだな!あ、でもちょっと待って!事故の車だけ見てくる!」
「そうやな!何かなってたら嫌やしな!」
「海晴あっちの車見てくれ!」
「ああ!分かった!」
翔陽が指示しながら事故した車へ駆けて行く、車の元に着いたら、その車の中を覗き運転席のドアを開けて安否確認している。
俺ももう一台の車を見に行く。
うん俺の方は大丈夫そうや、気を失ってるだけやし。怪我もなさそう。。
海月の森に入る前に翔陽が助けてた人も気を失っているけど大丈夫そう。
「君たち!」
「え?」
「ちゃ?」
突然後ろから声をかけられて、俺達は驚いて後ろを振り向いた!
「君達かのう?さっき助けてくれたのは?」
あ、この人は、さっき海月の森の中に飛び込む前に倒れていた三国志に出て来そうな服の人、日本語しゃべってるやん、中国人じゃなくって日本人やったんか?
ってか顔は青年っぽいのに喋り方がなんかお爺さんくさい。
「あ。お兄さん目覚めたんですか?大丈夫ですか?」
翔陽がその青年に話しかけた。
「ああ。すまなかったのぅ。大丈夫、それより君たち凄いのぅ」
ウーーーウーーー!
パトカーがどんどん近づいてきて来ている。
「これは良くないのう!ここわしがはぐらしておくから、君たちは家に帰りなさい」
にっこりと細い目をしたイケメンの青年が笑う。
変わった服装をしているけどなんか好感が持てる。
「ここにどどまるより絶対帰った方が良いぞ、早く行くのだ」
「あ、、じゃあここはお願いします。」
俺と翔陽はペコリとその三国志の服の青年にお辞儀をした。
全ての車を確認して乗っていた人たちは気を失っているけど大丈夫、と翔陽と話して俺達は俺の部屋へと帰って来た。。
「ふぅーーーーーーーー。。さっきの海月から何から、また一体何やったんや。。」
一気に疲れが噴き出してきたわ。
ドサ。。
俺は部屋に帰って来るなりベットに倒れ込んだ。
ゴロンと仰向けに寝転がり、回るシーリングファンを見ながら少し考え込む。
「今日は朝から変な事ばっかりや。。」
窓の外はいつの間にかもう真っ暗で夜になってる。
窓から夜を見ると、あの夜の様な蛇を思い出す。
「あんな蛇も見た事ないし。。」
。。。
不思議や、世界を救う運命の人とか。。俺今も夢の中なんかな?
。。。
「何ぼーっとしてるっちゃ??」
ヴェルが覗き込んでくる!
体を起こす俺。
「ねーーートランプしよ!UNOでもいいちゃよ!うち一回やってみたいっちゃ!」
「え?切り替え早ない?さっきまであんな事あったのに。。。もうUNOって。。」
まぁでもヴェルは宇宙人だし地球の常識がないからしかたないか。。
「海晴早くやろうぜ!」
テーブルで翔陽がッシュッシュッシュっとUNOを切っている。
「お前も切り替えはや!!!」
「ん?」
翔陽がとぼけた表情をしている。
「いや今さっきあんな不思議なことがあったのにさ」
「俺もマジで訳分からないけどな、考えてもきっと全然意味解らないんだろうなと思ってさ、今度母さんに相談してみるよ」
ああ、翔陽の家は神社で昔から神様を祀り、除霊とか不思議な事を解決してきている家系なんやった。。
翔陽のお母さんは除霊師として日本ではとても有名らしい。。
やし、あんな不思議な事に慣れてるのか?
で、こんなに落ち着いてるんか?
「俺だけかい!こんな悩んでるのは!」
「だな!海晴!お前だけだよ!はははは!」
「あはは!そうだっちゃ!」
「はいはい。わかったわかった、もういいわ、はぁーー、なぁ翔陽今度お前ん家行った時に俺も相談していいかな?」
「もちろん全然いいぞ!それよりさ。俺はヴェルさんに会えてめちゃくちゃ嬉しいんだ!なんか知らないけど海晴と今ここに居れるのも嬉しい!だから!今日は!!」
「今日はなんだっちゃ?」
「ヴェルさんウェルカムパーティしよう!!!!!」
「いやっほーーーーーい!!うぇるかむぱーりーだっちゃー!うれしいちゃーーーーー!!」
ヴェル、、ウェルカムパーティーの意味分かってへんやろ。
ちらりとヴェルを見たらッニッコニコで飛び跳ねてた。
可愛い!
「いいやん!!」
ヴェル会えた事は心から嬉しいし!翔陽がここにいる事もマジで嬉しい!!!
やしパーティー!大賛成!!!!
「あ!じゃあ晩飯どうする?」
取り置いておこうと思った分もヴェルが綺麗さっぱり食べちゃったし。
「ふっふっふ!これを見ろ!」
翔陽はコンビニ袋を取り出した。
その中にはポテトチップスにポッキー、チョコレート、ビスケットにチータラ、柿ピー、お菓子とおつまみの数々!
「これは地球のお菓子だっちゃ??」
覗き込んだヴェルは目をキラキラさせてる、宝箱を見つけた子供みたいや。
「さーらーーーっに!」
鞄を開いてみせた。
鞄の中のは飲み物がいっぱい!!
「家にあった母さん飲み物のこっそりゲットしてきたぜ!今日は!何となくパーティーの予感してたんだよ!」
「いやいやいや!!!どんだけ勘が良いねん!いつもこんなん絶対持ってこんくせに!!最高やん!!」
「ふふ!俺の勘は外れないぜ!」
ドヤ顔の翔陽、まじ笑顔輝きすぎやから!
「やったーー!うちの初めての乾杯するっちゃーー!」
ヴェルもニコニコで早く飲みたそうや。
「じゃあトランプしながらお菓子パーティーやな!」
俺は立ち上がってコップとお皿を持って来る。
そして三人でテーブルに座ってお菓子広げて。
コップに飲み物を注いで。。
「かんぱーーーーーい!!」
「かんぱーーーーーい!!」
「かんぱーーーーーいだっちゃ!」
そして頑張った後のご褒美のような!
めちゃくちゃ楽しい夜やった!




