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こんなにも世界は素晴らしい!  作者: R0ssi
第一章 崩壊と運命
22/110

いにしえの巫女編 不幸の中から救ってもらうって素晴らしいです

 




 ーーーーーー?????ーーーーーー



 チチチチ。


 鳥の鳴き声がする。


 パチ。


 窓から光が差し込んでる。。


 いつも寝てた、いつもの掘建ほったて小屋。


 あれ?

 私は今までとっても怖い夢を見ていた。

 村が飢饉で飢えて、餓死寸前までになってしまう夢。


 

「起きたのかい?おはよう」

 母ちゃんが優しい笑顔で微笑んでる。

「母ちゃんおはよう、、、母ちゃん、私なんか悪い夢見てた。すく怖かったよーー」

 私は母親にくっつく。

「あらあら。怖い夢を見たんだね。可哀想に」

 母ちゃんがしゃがんで私の顔を覗き込んで頭を撫でてくれる。

 優しい綺麗な顔で、藍色の髪の毛がサラサラの私の自慢の母ちゃん。

 母ちゃんの側にいると私は安心出来る。

 安心感からか急に涙が溢れてきた。

 怖かった。

 本当に怖かったよ。

 涙が頬を伝って地面へと落ちた。

「もう怖くなんかないよ、母ちゃんがいるからね」

 母ちゃんがしゃがんで私を優しく抱きしめてくれる。

「うん」

「じゃあ朝ごはん食べよ、父ちゃんももうすぐ帰って来るからね」

 お母ちゃんはいつもにっこり笑ってくれる。


「帰ったぞーー!兎が罠にかかっとったわ!」

 父ちゃんが兎を肩から担いで玄関から入って来た。

 筋肉隆々で豪快に笑う、優しい大好きな父ちゃんも帰ってきた。

 狩人で野良仕事も大工仕事も出来るカッコいい父ちゃん。

「あんた凄いじゃない!今日の晩御飯はご馳走だね!」

「おう!お前の料理は最高だからのう。朝飯前なのにもう晩飯が楽しみだわい!ガッハッハッハッハ!」


「おかえり父ちゃん!」

 ヒョイ!

「おお起きてたか!珍しいのうこんな早く起きてるのは!お寝坊さんだからのう!可愛いのう!」

 父ちゃんが優しい笑顔で高い高いしてくれる。

 ハハハハハ!

「父ちゃんだーーーーーい好き!」

「わしも大好きだぞ!本当に可愛いのーーーーーう!」


 そして家族三人で朝ごはんを食べる。

 ご飯美味しい。

 本当に幸せ。 


 朝ご飯を食べたら家族で畑仕事に向かった。

 畑仕事は私もお手伝い。

 雑草を抜き取る。

 よいしょよいしょ。

 母ちゃんも横でやってる。


 畑で実る多種多様な野菜。

 隣には金色の稲穂が、実った米を重たそうに支えている。


「今年は野菜も米も良い出来じゃ!山にも鹿や兎がいっぱいおるし。今年の冬は快適に越せそうじゃの!」

 額の汗をぐいっと拭いながら父ちゃんはいい顔で笑った。

「殿様もお優しいし、あたし達は最高の所に住んでるね!」

 母ちゃんも嬉しそうだ。

 お昼ご飯はおにぎりと鮎の塩焼き。

 信じられないほど美味しいお魚。

 父ちゃん母ちゃんがいて美味しいご飯が食べられる。

 本当に本当に幸せ。

 お昼からは母ちゃんと山でキノコ狩り。

 色んなキノコを摘んでどのキノコが美味しくてどのキノコが食べてはいけないか教えてもらった。

 キノコ狩りも楽しくっていっぱい摘んだ。


 キノコ狩りの途中で見つけたアケビ。

 母ちゃんがお食べって。

 私はパクってアケビを食べた。

 あまーい!

 アケビも食べて幸せ。

 

 山から帰ってきたら父ちゃんが家の軒の下にいっぱいの薪を積み立ててた。 

 冬に向けていっぱいの薪を割ったんだと思う。

 父ちゃんの大きな身体に汗が光ってかっこよかった。


 お隣のお家のお友達の喜之助くんが遊びに来たから陽が落ちるまで遊んだ!

 遊ぶって楽しい!

 今日は家族ごっこだった。

 喜之助くんは私の旦那さん。

 かっこいいの。


 日が暮れたからお家に帰って晩御飯、家族全員で囲炉裏を囲んで、朝取れた兎とキノコのお鍋。

 ちょっと熱かったけど本当に美味しい!!

「美味しい!」

 って言ったら父ちゃんと母ちゃんが。

「可愛いなーー」って笑ってくれた!

 父ちゃんと母ちゃん大好き!!

  

 夜は父ちゃんと母ちゃんの間で寝て二人の手を握るの。

 皆ずっと一緒。

 

 幸せ。


 ずっとこの幸せが続いたら良いのに。。

 

 


 


 。。。。





  

 ダイジョウブダカラ

 

 ミンナ シアワセニ ナレルカラ

 

 ダカラ


 ココロツヨクモッテネ。


 

 なんだか不思議な優しい声が頭の中に聞こえて来た。




 夢かな。。?



 誰だったんだろ?? 


 

 ドドドドドドドドドドドド!

 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!

 ドドドドドドドドドドドド!

 馬の走る音がする。

 

 急な騒音で私は飛び起きた。


 馬一頭どころのひずめの音じゃない。

 相当な人数の。。


 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!

 

 窓から外を見ると、100人余りのお侍さんが馬で駆けて来ていた。

「ここで迎え撃つぞ!!」

 ザザっ!

 先頭のお侍さんが振り返って刀を抜いた。

 畑の砂埃が凄い。


 お隣の家の畑が馬に乗ったお侍さんに踏み荒らされている。


 ドドドドドドドドドドドド!


 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!

 パカラパカラパカラパカラ!


 後から別のお侍さんも追いかけて来た。

「行けーーーーい!」

「切り殺せーーーー!!」

 勢いを殺さず突っ込んでいく。


「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!」

「行けえぇえぇえぇぇえぇぇぇぇぇーーー!!」

「どおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉ!!!」


 突然村で斬り合いの戦争が始まった。

 キンキン!

 ウオーーー!!

 グア!!

 キンキンキン!

 そこら中で刀で交わる音と人が斬られる音。

 そして死んでいっちゃう、苦しい声が響いていた。。

 壮絶な殺し合い。

 怖い、怖いよ、父ちゃん母ちゃん。。


「や!やめて。。殺さ合いで。。」

 ザク!!

「ギャァァァァアアァァーーーーー!」

 聞いたことのある声が聞こえた。。

 近所の背の低い青年が今斬り伏せられた。

 戦いは村人まで巻き込み見境なく激しさの一途を辿る。


「コレはいかんのう、わしらも巻き込まれかねん。一旦山へ逃げるぞ。」

 ああ。。

 折角の田畑が踏み荒らされている。

 村の人達も巻き込まれて命を落としていく。


「なんで。。こんなひどい事をするの??なんで。。?」

 戦に巻き込まれ無いように、家の裏口から最小限の荷物を持って山へ避難する。。

 走れば走るほど恐ろしい音と声がだんだん遠ざかって行った。


 私達は家族で山へ逃げて河原で夜を越した。

 お外で寝るの寒いし痒い。。

 お家が恋しいよ。。

 

 山の中で食べ物を母ちゃんと探しに入って一時間。。

 母ちゃんと別れて山菜とキノコを摘んでいたら

 一人のお侍さんが倒れていた。。。

 煌びやかな着物を羽織り、

 真っ赤な血を流している。。

 折角の着物が血塗れで。。

 怖い。。

「う、、うぅ、、、」

 生きてる?

「だい、、じょうぶ、、?」

 思わずそのお侍さんに近寄っちゃった。。

「うぅうう。。」

 腕と背中に刀傷がある。。

 そっと持っていた竹筒に入ったお水をそっと飲ましてあげた。

 ゴクッゴクッゴクッ。

 必死にお侍さんはお水を飲んだ。

「ありがとう、お嬢さん、」

 苦しそうな表情からフッと笑顔を作った。

 ふぅふぅ。。

 でも苦しそうだ。。

 汗が滲んでいる。。

 そっと汗を拭いてあげた、左耳も刀で切られたのか傷ついている。。

「あ。いた!こんなところで何をしてるの。。。っは!!」

 母ちゃんが私を探して来てくれた。。

「お侍さんがお怪我、してるの、、」

「離れなさい。危ないわよ。。」

「このお侍さんは怖く無いよ。。優しく笑うもん。。」

 私は父ちゃんにもらった貝に入った傷薬を切れた耳にそっと塗ってあげた。

「んぐ。。」

 お侍さんは少し痛そうにしてからフッと笑った。

「お嬢ちゃんありがとう。。」

 そっと頭を撫でてくれた。

「最後に優しさに触れられてよかったよ。。」

 その様子を見て母ちゃんが動いた。

「あんた切り傷見せな!」

 母ちゃんがお侍さんの着物をそっと脱がせる。

「腕と背中だね!」

 家から避難するときに持って来た怪我したとき用の布の包みを開ける。

「水筒の水で血を落としてやんな!」

「うん!」

 私はお侍さんの血を水筒の水で流した。

「それから傷薬をいっぱい塗っておやり」

「うん!」

 母ちゃんは針と糸を繋いでいる。

「ちょっと痛いよ。これ咥えてな!」

「ああ。。すまない。。」

 そうすると、母ちゃんはお侍さんの刀傷を上手に縫い合わせていく。。

 30分もしないうちに傷口は縫い合わされ、血は止まった。

「ありがとう。ずいぶんと楽になった」

「まだだよ、このままだったら傷また開いちまうからね」

 母ちゃんと私の帯を使って胸回りと腕にギュッと帯を巻きつけた。

「これで傷は大丈夫だよ!後は菌が入ってない事を祈るばかりだね!」

「本当にすまない。。」

「あとあんたこれ着ていきな!」

 母ちゃんは突然着物を脱いだ。

「逃げなきゃならないんだろ?」

「ああ。」

「その代わりあんたの着物もらうよ!もう刀傷でボロボロだからいいだろ?そんでこの食いもんも持っていきな!」

 母ちゃんは服を入れ替え食べ物を渡すとお侍さんの着物を裏向きで来た。

 巻いてしまった帯はそばに生えていた蔓で巻く。

「本当に何から何まですまない」

「いいよいいよ、早く逃げな!」

「ああ。この恩はいつか必ず。」

「いいさ、期待はせずに待ってるよ。」

「ありがとう。お嬢さん、君のおかげで助かったよ。」

 お侍さんは私の頭を優しく撫でて去っていった。

 

 あとでその話を聞いた父ちゃんは驚いてから助けた私達を褒めてくれた!

 褒められて私はとっても嬉しかった。。

 

 そして山へ逃げ込んでから三日目の朝、父ちゃんが村の様子を見て来た。

「もう誰もおらんかったわい。家へ帰ろうかの」

「よかった、帰れるのね。。」

「しかし。。。村は凄惨な事になっとったわい。冬までにまた元に戻さんといかんのう。。。」

 神妙な面持ちの父ちゃんお顔を見るだけで子供の私にも村の惨劇が浮んだ。。。


 そして三人で村へ、家へ帰った。


 村は本当にひどい事になってた、田圃や畑が踏み荒らされ育ててた米や野菜はほとんどの物が枯れてしまっていた。

 多くのお侍さんの遺体が村中に転がっていて。

 そこら中に血も飛び散り。

 腐臭が村を包んでた、本当に凄惨な状態。

 家の中も荒らされてて、全ての食べ物や金品が持ち去られていた。

 もちろん遺体にある筈の刀や鎧も剥ぎ取られていた。

 どこから来たのか大量のからすがお侍さんも村の人達も見境なくついばんでた。

 もう元のどかな村は影も形もなかった。。

「きっと戦の後で山賊に荒らされたかのう。本当に酷いもんじゃのう。。」

 亡くなった近隣の人隊の遺体しゃがんで覗き込みながら父ちゃんがポツリと言った。

 こんな父の悲しそうな顔は初めて見た。

 母ちゃんは膝から崩れ落ちて茫然としていた。

 

 あ。。

 私は息を飲んだ。。

 隣の家の毎日遊んだ仲良しの男の子、喜之助くんが、、


 私の家の前で。。


 死んでる。。


 喜之助くん。。


 嘘でしょ。。?


 嘘。。


 嘘って言って。。


 喜之助くん。。




《何でこんなことに。村には関係ないのに。喜之助くんは関係無いのに》


《憎い。憎いよ。》


《お侍も山賊もこの世から死んでなくなればいい。。》


 何か頭の中に声が響いて来る。

 誰の声?

 私?

 私が考えてるの?

 違う!こんな事考えたくないのに。

 でもでも。。

 憎くないって言ったら嘘になっちゃう。。



 戦によって大幅に減ってしまった収穫。

 出来たであろう農作物。

 本当に大きな被害が出てしまった。

 それから、その分を補おうと農作物を必死に育て、半分以下になってしまった稲も大切に大切に育てた。

 冬に供えないと冬で私たちは。。

 父ちゃんも母ちゃんも必死で朝から夜まで働き続けて、食事も切り詰めた。

 本当にみんな疲労困憊で、この頃から少し家族に笑顔が減った。

 大好きな父ちゃん母ちゃんを笑わしたくって私もいっぱい頑張った。

 なんとか年貢と冬を越す為の食料を確保出来たって父ちゃんと母ちゃんの最近笑顔が戻ってきたかなと私は思っていた晩秋。


 これから冬いう時に。


 お役所の方が来て「立て札を立ててあるから確認せよ」と報告をしていった。

 そしてその報告はこの村の平穏を揺るがす大切な物だった。


 その内容は。

 お優しかった大名様が戦に敗れ大名様が変わった事と。

 その事による、年貢ねんぐの引き上げだった。

 そう表記されていた、年貢は異常な程の量で収穫物の7割という無謀な量の年貢だった。

 戦で食料が半分以下になった村にはとても払いきれない量。

「ありえねぇ!この村に飢え死にしろっていってる様なもんだぞ!」

 父ちゃんは凄い怒っていた。

 この日からいままで減らしていたご飯の量がもっと減った。


 稲穂を刈り取り秋が終わり、蓄えるものが全て収穫し終わった頃お役所の人が来た。

 村の者全員集まれとのことだったので。

 私も父ちゃんと母ちゃんと一緒に神社の広場へと行った。

「年貢をもらい受けに来たぞ」

 怖そうで偉そうなお役人さん。

「村を治める村長よ前にぃ!」

 年貢の量を確かめたお役さんは村長を前へと呼んだ。


 ズバン!


 前に歩を進める村長さん、お役にさんの前に来たその途端にお役人さんの刀が村長さんを居合切りで斬り伏せた。


 ドサ。。

「あああああァァァっあ、、ァァ、」

 村長さんは真っ赤な血を散らして倒れた。

 声も出せず無念の顔を浮かべて。。

 父ちゃんが私の顔を手で隠して見えない様にしたけど。

 私には見えていた。

「父ちゃん母ちゃん怖いよ」

 父ちゃんも母ちゃんも返事してくれなかった。。

「年貢の量が全く足りんではないか!この阿呆が!!」

 急にお役人さんの怒号が飛んできた。

 村の人気者の頑張り屋の青年が一歩にほと前に出た。

「しかしこれ以上持って行かれては冬が越せませぬ。どうかご容赦ゔぉ!」


 ズバン!


 話し出した村一番の頑張り屋の青年がまた斬り伏せられた。

 かなりの距離があったのに間合いが一瞬で詰められ腹を切り裂かれた。


「う、、う、、うわーーーーーー!!!!」


 斬られ膝をついた青年の腹から臓物はこぼれ落ちた。

 頑張り屋の青年は自分の内臓を手で拾おうと手を伸ばし手に取った。


「う、、嘘だろーーー!!助げでぐでーーーーーー!!!」


 臓物を抱えながら青年は悲痛な叫びを上げる。

 その声が広場に広がる。

「あんたーー!!!」

 青年の奥さんが背後から抱きつく。

 結婚したばかりの若夫婦で奥さんは子供を孕っていた。

「あんた。死なないで。あんたぁ!」

 しかしそれ以上青年は動く事はなかった。

 青年を中心に血の池がじわりじわりと広がっていく。。




 怖い。




 父ちゃんの手を掴む。


 父ちゃんが震えてる。

 父ちゃんの震えは恐怖では無く怒りだと私にはわかった。。


「この村の者どもここを動くなかれ。動くならばこの者の様に斬りふせる事やむなし!」

 集められたのは村の人達全員。

「年貢を探して参れ」

 役人の人達が家探しいに行く。


 家探しが行われ。

 役人達は大荷物を何台もの牛車に乗せて帰って行った。

 役人達が帰った後村の人達はほぼ全ての食料が持ち去られた後だった。


「ちくしょう!これは冬に飢死しろと言ってるようなもんだぞ!」

 ガン!

 お父ちゃんが家の柱を殴る。

 父ちゃん怖い。


 次の日父ちゃんと母ちゃんは山へ食料を取りに行くと言って家を出ていった。

 私もどこかに食べるものがないか村の周りを探した。

 雑草しかない。。。

 お腹すいた。。

 陽も落ちそうだから。

 休憩して帰ろうと木にもたれかかって座った。

 サワサワと風が吹いてる。

 何か匂いがする。

 あの戦争の後みたいな匂い。。

 人の死んだ匂い。。

 臭いを嗅いで、なんだろ、と気を張ると。

 後ろからギィギィと音がする事に気づいた。

 もたれかかった木の裏側を見てみると。



 女の人が。。



 首を吊ってた。。。。



 あの殺された青年の奥さんだった。。



 目が空いたまで、世界を呪っているよな顔。。



 怖い。。



 青空の中、風に揺れてる。


 

 風に揺れる女の人の脚の間から長い紐が垂れていた。

 

 その紐の先には、、


 今まさに生まれ落ちた赤子が。。


 地面の上でぶら下がる母親を見上げていた。。


 紐はへその緒。


 赤子はまだ母親と繋がったまま死んでいた。。

 

 私は怖くって。


 赤ちゃんに近づく事も出来ず、、虚無感の中、キーーーンとただただ青い空を睨みつけていた。


 この時から私の目には青空が青く見えなくなってしまった。。



 灰色の空を見上げる私の身体の奥底から声が聞こえてくる。





《何でこんなに毎日お腹を空かせなければいけないの?》


《何であの陽気な頑張り屋さんのお兄ちゃんが死ななければいけないの?》


《なんで奥さんまで死ななきゃいけないの?赤ちゃんまで。。》


《憎い憎い憎い!!!》


《新しい大名様なんてお役人さあなんてこの世からなくなればいい》



 違う!

 私はそんな事思ってない。

 憎いけど。

 無くなれなんて。

 そんな。

 でも無くなればこの村はきっとこんな事には。。。




 。。。。。。。。。。




 そして苦しい苦しい冬が明けた。


 村の人達は冬の間に大勢が餓死して半分になってた。


 父ちゃんも母ちゃんも痩せて元気が無かった。


 私もずーっとお腹が減ってお腹が減って。

 本当に辛かった。

 川の水をいっぱい飲んでお腹をふくらました。


《辛い。辛い。》


《憎い》


《憎い憎い》


 春になって田圃と畑を再生する為に村全体で頑張った。

 飢えで体が動かない。。

 それでも頑張るしかなかった。

 山の動物や植物で足りないながらも飢えを凌ぎ。

 村全体で生き延びた。

 自然のわらびあわを食し。

 夏になると野菜も育ち食に困らなくなり始めた。

 父ちゃん母ちゃんも少しだけ元気になってきた。

 苦しい時を乗り越えた、そう思え始めていた。

 そんな夏の終わり。。。


 突如村を大嵐が襲った。


 暴風の雨風が木々をなぎ倒し。


 豪雨により川が氾濫した。


 村中の田畑は腰まで水に浸かり濁流により、またしても農作物は全滅した。


 川沿いの五軒の家が流され五家族全員行方不明になった。

 村全体が悲しみに包まれた。


 

《憎い!なんで私たちばかりこんな目に!》


《何も悪い事なんてしてないのに》


《こんなのならこんな世界無くなればいい!!》



 違う。

 無くなってはいけないよ。

 私は皆んなが幸せになってほしい!!

 だから。

 私達は残って憎い今の現況を作った物がなくなれば。。

 ああ。違う。違うの。

 憎しみが溢れ出す。

 ダメ。

 みんなが幸せになるのが一番なのに。。


 台風の大嵐災害で食料を貯蓄出来て無いのにもかかららず。

 今年も晩秋に来たお役にん様に年貢をむしり取られ。

 そしてまた冬を迎えた。

 冬の真っ只中。

 家で会話をすることがほとんど無くなった。

 私も空腹と疲労で言葉が出なかった。


 寝る時だけはお父ちゃんとお母ちゃんにくっついて寝た。


 この冬さらに村の半分がが餓死した。


 そして。


 二家族が家同士の食料の奪い合いで死んだ。


 血みどろの家、食料の奪い合いの結果は凄惨なものだった。。



《憎い。》


《なんで優しい村の人が死ななければいけないの?》


《なんで飢えなければいけないの?》



 。。。。




 春を迎え、冬を乗り越えた人達でまた田畑を作り直し。


 今度は台風の被害もなく稲穂の実る秋を迎えた。


 黄金に輝く田圃。


 乗り越えた!

 やっと美味しいご飯が食べれる!

 冬も飢えなくていい!

 父ちゃんも母ちゃんも痩せ細った体で頑張って来た。

 私もドジで足を引っ張ったりもしたけど出来る限りを尽くして頑張った。


 そんな時。


「虫だーーー!」


「イナゴが襲ってきおったぞ!!」

「畑を守れーー!」


 急な声が外から聞こえてきた。

 父ちゃんと私は慌てて外に飛び出る。

 西の空が真っ黒になっていた。

 真っ黒な雲がある。

 その真っ黒な雲はイナゴだった。。

 イナゴはは村を覆った。

 何十万匹といるイナゴは。。。



 村の全てを食い尽くした。



 父ちゃんが食い尽くされた田んぼにへたり込んでいた。


「一日だぞ、たった一日で俺たちの何ヶ月もの食糧持って行きやがって。。」


 母ちゃんは家で放心状態。

 もうどうしたらいいか私には分からなかった。

 ただ分かるのは今年も飢えの冬が来るっということだった。




《憎い憎い憎い憎い》


《何でこんなに私達を苦しめるの》


《虫もこの世も全部無くなれ!!》



 本当に無くなった方が良いのかもしれない。

 こんな辛いだけの世界。。



 翌日私は村の状況が知りたくって村を少し歩いてみる事にした。

 最近は村人の心がすざみ治安が悪くなっているので無闇にうろついてはいけないとは思っていたけど。

 村が心配で。

 自然と足が歩き始めていた。

 そんなに家々は密集しておらず基本的には田畑を挟んで家があるといった感じ。

 百人以上いた村の人たちは相当な人数が減っている。

 みんなどっか行ったんじゃない。

 死んだ。。

 歩いていると昔一番仲良くしていた冗談好きのおっちゃんの家からドタドタと物音が聞こえる。

 気になって見にいった。


 そっと格子のはまった窓から家を覗く。


 家の中で昔は陽気でいつも冗談を言っていたおっちゃんが。


 血まみれで。

 這いずっていた。。。

 背中には草刈り用の鎌が刺さっている。

 私は息を飲んだ。。

 その先の調理場には二軒隣のいつも暗い表情をしている人が、何かを食べているのかゴソゴソと棚を漁っていた。。


 家は血まみれで奥さんがもう生き絶えているのか、仰向けで、胸と口から血が流れ出ていた。

 体から湧き水が生まれ、床を血がスススと一本の線を流れ描いていっていた。

 赤ちゃんも壁に叩きつけられたのか壁の淵に形を半分しか残していない状態で真っ赤に染まっていた。


 言葉が出てこなほど恐ろしい光景。。。


 陽気なおっちゃんは何かを食べてる暗い人に気づかれずに這いずり、お兄ちゃんの真後ろまで来た。


 腕を後ろに回し自分に刺さってる背中の鎌を引き抜き。


「死ねぇええい!!」


 大声と共に鎌を振り下ろした。


 暗い男は声で気づき回避しようとした。が。間に合わずに右脇腹をザックリ切られた。

「うおおおお!!この野郎!!!!」

 もう力無い陽気なおっちゃんから鎌を奪い返し。


 ザクザクザクザクザクザクザクザクザク。。


 陽気なおっちゃんを何十回も刺した。

 もう動かなくなってるのにさらに何十回と刺した。

 暗い男の顔が血で真っ赤に染まっている。

 また陽気なおっちゃんから流れ出た血が小さな川を作った。


 暗い男は右脇腹を抑え食料を持って扉から逃げ出した。


 私はこっそりバレないように追いかけた。


 暗い男は歩くペースがどんどん落ちていく。


 歩いた足跡には 大量の血をこぼしていた。。

 男は500mもしないうちに歩けなくなって膝をついてしまった。

 恐る恐る近づたら彼はうつ伏せて動かなくなってた。


 私はどうする事もできず。

 悪い夢を見た様な気持ちで家へと帰った。


 これでまた一家族と一人の命が村から無くなってしまった。


 そして、イナゴに喰われなかった、家に中に貯蓄していた夏の収穫物は。

 年貢のお役人の取り立てでまた全部持って行かれた。


 全く食べ物がない。。。


 私はお腹が空いて空いてどうしようもなくって。

 毎日の様に草の根っこを食べてた。

 今日食べた根っこに毒があったんだと思う。

 お腹が痛い。。 

「父ちゃん母ちゃっんお腹が痛いよ。。」

「こんな時に。」

 母ちゃんが少し睨んだ様に見えた。

 いつもの優しい母ちゃんじゃない。


「大丈夫だ街で薬買ってきてやるからな。。」

 父ちゃんのお陰で私は助かった。

 でも物々交換で出した冬を越す為の兎のお肉が無くなっちゃった。

 私のせいで。


 迎えた冬の間、食料をさらに増やすことができず。

 三家族が飢えの苦しさから逃れるため一家心中をした。


 村の人数がどんどん減って行く。。


 そしてまた。


 飢えをしのごうと私は草原の球根を掘り返して食べたら毒に当たった。。

「父ちゃん。母ちゃん。」

 わたは歩くこともできず、痺れる体を引きずって帰った。 

 玄関の扉の前で動けずに倒れる私を母ちゃんは見つけ。


「また!何やってんの!あんなに草は食べたらダメだっていったのに!!!」

 罵倒する。。


 バッチンバッチン!!

 そして母が私に手をあげた。

 頬っぺたが痛い。

 怖い。。。

 あの優しかった母ちゃんが。

 バッチン!

 逃げたい!

「やめてよ。母ちゃん。。」

 バッチン!

 母ちゃんは関係なく私を叩く。

 バッチン!

 逃げたい。

 でも体が痺れて逃げれない。

 バッチン!!

 私は毒と痛みで気を失っなってしまった。。


 毒は父ちゃんがまた薬を買ってきてくれて私は助かった。

 でもそれから母ちゃんが変わった。

 私を嫌いになったみたい。

 父ちゃんがいない時に目が合うと叩かれる。。


 あんなに優しかった母ちゃんが怖い。

「あんたなんて生まれてこなければよかった」

 不意に母ちゃんに言われたこの言葉で私の心は生きるという事から折れそうになった。

 グッと下唇を噛み締め私はそれでも少しでも母ちゃん父ちゃんを幸せにしたいんだ。

 そう心で叫びグッと堪えた。


《母ちゃんもいなくなればこんな痛い思いしないのに》


《憎い憎い何でこんなに》


《辛い思いを》


《この世から母ちゃんも無くなればいい!》


 違う!

 母ちゃんはダメ!

 私の大切な母ちゃんだもん。

 こんな痛い事されても。


 。。。。




 その日以降母ちゃんは田畑の作業も手伝ってくれなくなった。


 今年こそなんとか食料を。。


 村のみんなはもう痩せ細って生気がない。


 頑張って頑張って頑張ってギリギリで秋の収穫も終わり。

 今年はちゃんと年貢を払い少ないけど今迄より蓄えができたそんな時。


 父ちゃんが山へ狩りへ いってる時に山賊が村を襲ってきた。


 私も山の麓で食べれる物を探して家を出ていた。


 村の方向から煙が見る!

 私は慌てて家へ駆け帰った!!

 家の前で広がる騒然な光景に足が止まった。。

 私達の家が燃えてる。

 いや私達の家だけじゃ無い。

 何軒も何件も燃えてる。。。

 燃える家の前に私達が貯蓄をした食料を、纏めてドアの所に置いてある。


 そして玄関の外で山賊が。。

 三人で囲って何かしている。。

 

 怖い。。

 私はゆっくり近づいた。


 あれは。。


 母ちゃんがは服を毟り取られ。

 二人に押さえつけられてる。。


 山賊が母ちゃんを犯してる。。

 地獄の様な世界になってに三年、私も少しは大きくなって。

 母ちゃんが何されているのか分かる年になった。


 立ち止まってしまっていた脚の力がさらに抜け、膝からカクンと落ちて座ってしまった。

 もう泣き出してしまいたい。

 涙で霞んで前が見えない。

 力が入らない。。

 でもでも泣いてる場合じゃない!

 絶対母ちゃんを助けないと。


 私は側に落ちてた棒を持って山賊に向かって走った。


「母ちゃんに悪いことするなーーーー!」


「なんだ?ガキが?」

 ヒョイ!

 ドコン!

 順番待ちしていた山賊に一撃を避けられ、さらに蹴り飛ばされた。

「ガハッ!!ゴボッ!!」

 口の中から胃液がこぼれ落ちた。

 食べ物が全く入ってないのに。。

 吐くことは出来るんだ、、痛い苦しい。。

「ゲヘヘヘヘガキかと思ったけどよく見りゃ良い女じゃねーか!」

 もう一人も寄ってくる。

「おーおー。こいつは上玉だな!痩せてるが良い体じゃねーか!」

「おい!押さえとけ!」

「おう!」

 バサッ!

 着物を剥がされる。

「暴れんじゃねーぞ!痛い思いしたくなけりゃーな。」

 刀をお腹に向けられる。。

 抑えられて刀も見せつけられて。

 力と恐怖で身動きが取れない。。

「胸もそれなりにあるじゃねーか。」

 小春は胸を揉まれる。

「なんか声出してみろよお嬢ちゃん。」

 ベローー。

 頬っぺたを舐められた。。

 気持ち悪い。。。。

 でも恐怖で体が動かない。

「ゲヘヘヘ!気持ちよくしたげるからなーー」

 下衆な笑みを浮かべながら脚を広げられる。

「お初めてか?」

「ゲヒャヒャヒャ。良いじゃねーか!」

「いくぜぇーーー。」


 嫌だ。やめてよ。。。


 ズバン。


「え?」


「大丈夫か!!」

 ゴロン。。

 私を犯そうとした山賊の首が剥き出しにされた私のお腹の上にに落ちた。

 赤い血が噴水の様に吹き出した。

 私は血で真っ赤に染まった。

「父ちゃん。。」

「逃げてろ!」

 父ちゃんの目は怒りに染まっており私ですら恐怖を覚えてしまうほどだ。


「テメー!」


 ズバン!


「ちく。。しょ。う。。。。」

もう一人の山賊は左肩から鎖骨を切り裂き胸まで斧で切り裂かれた。


「テメー!!!なにやってやがんだ!!クソーーーー!!せめて。。女を殺す!」

 切り裂かれた山賊は最後の力で私に向かって刀を振り下ろした!

 

 私、死ぬのかな?


 ザクン!

「父ちゃん!!」

 私を庇おうとして父ちゃんの右腕に刀が刺さってる。


 ズバン!バシュ!

 斧を左手に持ち替え瀕死の山賊の首を切り落とした。

 また山賊の血を私は被った。。

 

 母ちゃんを犯してた山賊がこっちに走り切りかかってき来ていた。

 山賊は父ちゃんより近かった私を先に斬ろうとしたのだが。

 父ちゃんがそれに気づき斧で刀を叩き落とした!

 そのすぐ後父ちゃんは刀を叩きつけられ膝まづいた最後の山賊も斬り殺した。


 父ちゃんは私を守るために三人の盗賊を倒してくれた。

 私達はその後また山へ逃げた。

 父ちゃんが母ちゃんを背負って、私の手を引いて。。


 なんとかまた生き延びた。。


 でも代償に父ちゃんの右腕の傷は深く筋肉まで切断されていたようで。

 父ちゃんは右腕が使えなくなってしまった。

 家に帰って来ても。

 片手が使えないせいで、狩りも畑仕事もできず。

 傷を癒すために家にずっといる父ちゃん。。。

 父ちゃんもなんだか少しずつ奇怪おかしくなっていった。

 うんん。。狂っていったって言葉の方が正しいと思う。


 時々「うおーーーーーーーーーー!!」と叫び声をあげ。

 いつもブツブツ床を見ながら独り言をずっと言う様になってしまった父ちゃん。

 何かを呪っているよな事を言う。

 心配して声をかけるとあんなに優しかった父ちゃんは私に暴力を振るう様になった。

 母ちゃんの私への暴力が無くならず。

 それで泣いていたら。

 父ちゃんに家から放り出される様になってしまった。

「ごめんなさい。五月蝿くてごめんなさい。開けて、お願い中に入れて。。」

 ドアの前で泣いていたら父ちゃんがドアを開けて私を蹴り飛ばす。

 静かにしていたら家に入れてくれた。


 家に入るまで三日かかった。


 家も山賊のせいで半分焼け焦げ。

 中も外もほとんどもう同じだった。


 狂った父ちゃんと母ちゃん。。。


 私は家にいる事が怖くて。


 怖くって。


 あんなに優しくて大好きだったお父ちゃんとお母ちゃんが怖いなんて。。。


 なんでこんな事に。


 父ちゃん母ちゃんそして村の人達がどうしたら元の笑顔になれるのか。

 毎日食料を探しながら考える日々だった。


 でもどれほど探してもその日の食料もままならず。

 貯蓄など全くできなかった。


 そうしてまた冬が来てしまった。


 冬の為の蓄えもろくにないまま。。


「ダメだ。今年はもう冬は乗り切れない」

 父ちゃんがボソッと発した言葉は耳から離れなかった。




《何で何で何で何で何で何で何で何で!!!》


《こんなに不幸にならなければいけないんの!!!!》


《こんな世界!》


《滅びて無くなればいい!!!》


《山賊は死ね!》


《全部死んで無くなれ!!!》


 ああ。


 本当にこんな世界無くなればいい。


 この世界に幸せになんてなれないんだ。


 生きてる意味なんてない。


 この世界。


 全部壊れてしまえば!!





 。。。。





『小春!』


 フッと翔陽君の顔と声がよぎった。


『絶対に幸せにしてやる!』





 あれ?


 これはいつの記憶?



 ファッ。。



 。。。。



 何か纏わりついていた心の闇が少し霧散した様に感じた。






 父ちゃんの「もう冬は越せない」って発言から翌日。


 村長様から広場に集まる様にと御達しがあったので。

 広場へと行った。


 村長様の御達しの内容は⦅このままでは村は滅びてしまう。 不幸の輪廻から脱するために。神に供物を供え村を救ってもらおう⦆と言う事だった。


 神への供物とは人身御供の事で。

 若い村の娘を神に差し出すのだ。


 もう村には二人しか若い娘はいない。

 私ともう一人の女の子が前に呼び出され、村を救う大切な使命に名乗り出る気はないかと問い掛けられた。


 私の闇はあの優しい声で晴れた。

 私が皆んなを幸せにしたい。


「私やります。」

 私は大きくも小さくもない声で答えた。


「おお」


 村の人々から声が漏れた。

 そこからはトントン拍子に巫女となる準備期間ので一週間が過ぎた。

 神社で寝泊りをし。

 贅沢ではないがそれなりに美味しいご飯を食べ、村の人に感謝の言葉を述べられ、いつもとは違う巫女の綺麗な服を着て生活し、毎日身体を清める為にお風呂にも入った。

 本来ならとても幸せな時間の筈なのに私の気持ちは重い、重い重い曇天の様だった。

 どうやったらみんなを幸せにできる?

 そんな力私にあるの?

 答えのない問いがグルグルと頭を巡った。


 そして村の皆んなは謝意を述べに来るのに。

 父ちゃんと母ちゃんが会いに来てくれない。

 さらに私の気持ちが沈んでいく。


 奉納日当日私は滝の上へと向かい、滝の上で村のみんなに囲まれた。

 それぞれ最後の感謝の言葉を伝えてくれた。


 父ちゃんと母ちゃんはやっぱりきてくれてない。


 今までの父ちゃんと母ちゃんに愛されて一緒に笑い、贅沢ではないが頑張って生き抜いた幼い頃の思い出がめぐり。


 スーーーっと私の頰に涙が伝った。


 私が身を投げてそれで。


 父ちゃん。母ちゃん。村のみんなが全員幸せになればいい!!


 神様。


 みんなを幸せにして下さい。


 そう願って。


 私は滝から身を投げた。


 滝の水飛沫を感じながら落下していく。





 。。。





 。。。





 あれ?


 いつまでたっても滝壺に落ちない。

 目を開けると周りは青い世界だった。。

 周りには水飛沫が無数にふわふわと浮いている。


 私。


 死んだのかな。

 私の人生は絶望しかなかった。。。

 何のために私は生まれて来たのだろう。

 私の人生に意味なんて無かったのかもしれない。


 このまま消えてしまおう。。


 消えて何も考えられない様に。


 何も感じなくていい様に。






 。。。。






「絶対!絶対絶対今までの分幸せにしてやる!!」





 また翔陽君の言葉が頭を過る。




 あ。




 私。




 何でこんな過去を。。




 翔陽君の声を聞くと私の闇が晴れる。




 私も皆んなを!

 翔陽君を幸せにしたい!!


 急に目の前の景色が広がった。


 オレンジに染まる河原。


 そこで見た事もない大きな蜥蜴と戦う翔陽君。あと海晴君とヴェルちゃんもいる。


 まさに今ヴェルちゃんが恐竜の大きな口に噛まれそうになって、それを翔陽が身を呈して助けている。


 翔陽が食べられちゃう!!!!


「翔陽ぉぉぉーーーーーー!!!!!!!!!」

 海晴君の声が聞こえる。


 私がみんなを河原まで誘導した?

 ぼんやりと何をしたか記憶がある。

 きっと夢を見させられて自由を奪われていた。

 その間に私。

 操られていたんだ。。




 また私のせいだ。




 私も助けたい。




 あの人達を!




 でも私は何も出来ない。





 ずっとずっと私はその場の流れに身を委ねるだけ。





 流されて行くだけ。






 何も変えることはできない。。






 今までずっとそうだった。。




 また。





 何もできない。





 助けたいのに。





 助ける力があれば。。。。






 。。。







 チカラガホシイノ?




 声が聞こえる。

 目の前の景色は一変して真っ暗な水滴の浮いた空間へ戻っていた。




 タスケルチカラガホシイノ?




 欲しい!




 チカラデアナタハナニガシタイノ?




 みんなを助けて救って幸せな世界を作りたい。。

 誰も悲しまなくていい。

 幸せな世界を。




 作りたい。。





 。。。。






 イイデショウ、アナタニチカラヲアズケマショウ。





 急に周りの水滴がピキピキっと凍り始めた。

 何??

 そしてその氷った水滴はっパン!っと弾けた!

 氷の欠片が霧散し薄い水色の世界に私は包まれた。

 水色にキラキラ光る世界。

 その世界は私の目の前に外側からだんだんと収縮して行く。

 やがて全て収縮して、私の目の前に輝く青白い珠。

 冷気の煙が出てる。


 氷の珠。


 そーーー。

 私は氷の珠に手を伸ばした。


 ふわ。。


 私は優しく両手でその氷の珠を掴んだ。



 バッ!



 その瞬間世界が戻った。



 目の前の翔陽君がヴェルちゃんを押しのけて。 

 恐竜の大口に噛み千切られそうになってる!


 翔陽君!!!!


 絶対ダメ!!


 私は今日!

 翔陽君に助けられた!

 まだ私、翔陽君にありがとうって言ってない!

 翔陽君は私を幸せにするって言ってくれた!

 私も翔陽君を幸せにしたい!!!

 

 私は。。。


 皆んなを幸せにする為にまた帰って来たんだもん。。


 なのに!!

 

 ここで翔陽君が死んだら。。


 絶対ダメ!!!!

 



 ドン!!



 私は飛び寄って翔陽君をさらに押しのけた!



 バクン!!!


「あ。。」

 私は翔陽を押し退けて恐竜に噛みつれてしまったのだった。。。



「こ!!小春ーーーー!!!!」



 翔陽君の声が空に響き渡った。。



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