表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんなにも世界は素晴らしい!  作者: R0ssi
第一章 崩壊と運命
21/110

いにしえの巫女編 君を幸せにしたいって気持ちって素晴らしい



 太陽と空がオレンジに染まってる。

 

 砂利の河原の真ん中を優しく綺麗な川が流れてる。


 その川も夕陽の光でオレンジ色に染まり朱色の水が流れてる。



 ーーーーーー 謎の男 ーーーーーー


 キッッッッショッ!キショッ!キショッ!!


 なんやこの結末。


 くだらんなんて物やないわ!


 こんな結末キショいだけや。


 あの女、幽霊なっとるくらいやからもっと憎悪を持っとるかと思って放ったのに。


 全然憎悪ないやないか。


 ほんまにつまらん結果やわ。


 期待外れもえーとこや。


 あーあー。。植え付けるしかないなぁ。。。


 憎悪を育てる種を。


 それであそこに連れて行ったら。。


 ックックックック!


 それ絶対おもろいことなるわ!


 ククククッ


 あーーーはっはっはっーーー!!


 あかん!想像したら笑ってまうわ!


 よしやろか!


 ボワん。。


 手の周りに黒い霧が立ち込める。


 ほら行け。


 憎悪の種。


 ススススっと腕から長い魚が出てきて、岩岩の間を這う様に飛んで行った。




 ーーーーーー 日向 海晴 ーーーーーー


 グスッ。


 グスッ。。


 翔陽が小春ちゃんの背中をさすってあげている。

 ゆっくりと涙目の小春ちゃんが顔を上げた。


「みんな。。ありがとう。。」

「こちらこそありがとうだっちゃ!」

「小春ちゃんこれからいっぱい楽しいことして!いっぱい幸せ感じていこうな!」

「うん!ありがとう!」

「いつでも俺達に頼ってくれたら良いんだからな。俺は小春の事を聞けて良かったよ。。」

「翔陽君。。本当にありがとう。。」

 ゆっくり小春ちゃんが立ち上がった。

「私皆んなとて会えて良かった!」

「俺達もやで!」

「だっちゃ!!」

 小春の前に背を向けた立って両手を広げる翔陽。

 絶景を背景にニコッと笑った。

「今!小春の目の前にある世界はここなんだ!だから!ここで最高の時間を過ごしていこう!俺達が小春が幸せだなって思える様にするからさ!」

 風が吹き俺達の間を吹き抜けていった。

 小春ちゃんの目の前は翔陽、その向こう側にはキラキラと輝く雄大な海、風で揺らされる新緑、そして太陽が元気出せよと伝えてるように見える。

 その景色が目に飛び込んで来て小春ちゃんは元気に一歩踏み出して広げた翔陽の横に立った!

 山の天辺から見える広大な景色を眺める!

 俺とヴェルも横に立った。

 雄大な地球が小春ちゃんに俺達にどんどんと元気をくれる!

「本当に綺麗な景色!!」

 一歩前に出て振り返る小春ちゃん、ニコッと俺達に最高の笑顔を見せてくれた。

 可愛いな。。

 翔陽も笑顔でめちゃくちゃ嬉しそうだ!!

 小春ちゃんも」俺達に元気をくれた。

 美少女と絶景!最高やな!

「うん!ありがとう!私!皆んなが大好きになれそう!」

「うちもだっちゃ!!小春大好きだっちゃ!!うちの初めての女友達だっちゃ!!」

「それめちゃくちゃ嬉しいわーー俺たちはもう小春ちゃんが大好きやけどなーー!!な!翔陽!!」

「当たり前だろ!小春が大好きだよ!」

 ニコニコの止まらない翔陽。

 ありがとう!私も大好き!!」


 幸せな空気に包まれる光波山の山頂。


「じゃあ一旦山降りよっか!母さんの言ってた違和感ってやつ今のところ感じないしな!」

「そうするっちゃ!今日はみんなで晩ご飯食べるっちゃ!」

「おーー良いな!たこ焼きしようや!」

「たこ焼きって何だっちゃ?」

「たこ焼きですか?」

 不思議そうな顔をする二人。

「食べたら分かるから!めちゃくちゃ美味いから!」

「たこ焼き良いな!!やろうぜ!」

「やっほーーーーー!!ワクワクするっちゃーーー!!早く降りるっちゃ!!」


 下山しようとみんな大岩の降りれる道へ歩を進める。

 

 すると突然!!


 ブワァン。。


「あ!」

 ん?後ろを歩いてる小春ちゃんからなんか声が。。

「小春!」

 翔陽が叫んだ!

 俺も後ろを振り返った!

「なんや!!」

 小春ちゃんに長いめちゃくちゃ大きい魚みたいなのが巻き付いてる!

 真っ黒の長い魚や。。

 小春の頭上から、黒い魚の頭の部分が襲いかかった!

「小春!」

 翔陽が叫ぶか否やのタイミングで小春は大きい黒い魚に食べられた!

 黒い魚は不思議なことに小春ちゃんを口から飲み込みそのまあ下の大岩へとすり抜けていった。

 ズゾゾゾゾゾゾゾッと小春ちゃんに巻きついた体の部分も大岩の中に入っていく。

「小春ーーーー!」

「小春ちゃーーーん!!」

 俺達の声が響いた!


 そして黒い魚は尻尾まで大岩の中に入っていった。。

 大岩の上に小春ちゃんは。。


 膝をついて倒れ込んでる。

「小春!大丈夫か??」

 小春ちゃんが立ち上がった。。

「よかった、なんやったんや今の?」

「よかったっちゃ」


 でもなんか奇怪おかしい。

 小春ちゃんのの周りだけ日陰になってる様に見える、テレビの砂嵐の中にいる様な、影の中にいる様な、その黒い霧の形は楕円形になってる。

 まるで小春ちゃんが闇の卵の中にいる様だ。


「え?これなに?」

 小春ちゃんが慌てて振り払おうと手を振り回す。

 でも払っても払っても黒い霧は離れへん。

 それどころか黒い霧の卵が小さくなってきた、小春ちゃんに霧が吸い込まれ入り込んでいってる様に見える!

「うあぁぁぁああ。。。。」

 小春が膝をつき苦しそうにもがいた。

「小春!」

 翔陽が小春の黒い霧を払おうと必死に手を振る。

 でも手が黒い霧を手が通り過ぎるだけで霧を振り払えてない。


 ックックック!

 笑い声?

 ガサ!ガサガサガサガサ!

 突然誰かが逃げて行く様な音がした!

「誰だっちゃ!!」

 ヴェルが振り向く。

 辺りを注視する俺とヴェル。


 そうこうしてるうちに黒い霧はほんの数秒で、全部小春の中に吸い込まれてしまった。

 黒い霧が無くなると共に動かなくしまった小春。

 急に顔の影が濃くなった様に見える。


「小春。。?」

 翔陽が心配そうに近づく。


 ブツブツブツブツブシネツブツブツブツブツブツ

 ブツブツブツブツブツブツブツシネブツブツブツ

 ブツブツブツブツブツシネブツブツブツブツブツ

 ブツブツシネブツブツブツブツブツブツブツブツ

 ブツブツブツブツブツシネブツブツブツブツブツ

 ブツシネブツブツブツブツブツブツブツブツブツ


 途端に小春がブツブツ話しだした。


 真っ白な雪原の様な肌が、黒が混じって灰色となっていく。

 目の生気も抜け目の周りに酷いクマが浮き上がってきている。

 小春ちゃんがしゃがみこんだ。

 ずっとブツブツブツブツ最早何かわからない言葉を羅列している。

 

 覗き込むことが怖くて出来ひんくらいの豹変。。

「小春!大丈夫か?」

 肩を抱き起こそうと翔陽が手を伸ばした。


 スカッ。

 翔陽の手は小春をすり抜けた。

「え。。?」

 すっと小春ちゃんが立ち上がった。

 小春ちゃんの顔を見た俺達三人は息を呑んだ。

 それは言葉に出来ない様な恐ろしい顔。

 あんなに優しい笑顔をしていた小春ちゃんは、、何か恐ろしい物に取り憑かれたよに豹変してしまった。。

 周りでオタオタする俺達を気にすることはなく、小春ちゃんはゆっくり歩いて大岩から降りて行く。

 驚きを隠せない俺達は、歩いていく小春を追いかけれずのその場で呆然と立ちつくしてしまった。

 

 

「うち聞こえてたっちゃ。小春ずっと同じ言葉を言ってたっちゃ。」

「何て言ってたんだ?ヴェルさん」

「うん。」


「なんでこんなに辛い思いを」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「なんでこんなに辛い思いを」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「なんでこんなに辛い思いを」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「なんでこんなに辛い思いを」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」



「ってずっと言ってたっちゃ。」


 。。。



 みんな急変した小春ちゃんの状態と今の状況を信じられず。

 言葉が出てこなくて、動けへん。

 これからどうしたら良いんだ?

 小春ちゃんを追いかける?小春ちゃんをここで待つ?まずは下山?時間も今は三時半を回ってる、下山の時間を考えるとあんまり時間の猶予がない。

「クソっ!なんで急に、こんな事に。。」

「解らへん。でも小春ちゃんを追いかけよう!」

「そうだっちゃ!!追いかけるっちゃ!あ、でも気を付けないと、さっき岩の下に誰かいたっちゃ。きっとそいつのせいで小春が変な事になったんだっちゃ。」

「母さんも光波山に何か違和感があるて言ってたしな、もしかしてそれのせいか。。な。。。」

「翔陽!小春ちゃんを絶対助けようや!」

「自分の村の人達のために命をかけてその後も。何百年も人の幸せを祈ってきた人が、あんな事になる訳ないっちゃ!何かされたっちゃ!あの黒いやつのせいだっちゃ!!」

「そうだ!そうだな!絶対助けようぜ!」

「よし急ごう!!」

 俺達は三人で小春を探しながら下山して行く。

 光波山の中腹くらいまで降りてきた、ここから光波神社の方へ行くか、川の方に行くか分かれ道になってる。

 小春ちゃんはいない。

 俺達はどっちにいったら良いんや?

 どうするのが一番良いんや?

「くそ!小春。。」

「どこにいるんや!」

「小春どこだっちゃーーー!!!」

「海晴今何時だ?」

 俺は携帯をだして時間を確認する、四時三十五分。

「四時三十五分!もう一時間もしないうちに暗くなってしまな」

「そうか。。もうすぐ暗くなるし。今日は一回戻って明日朝また改めてたんさっ。。。」

 話していた翔陽が急に言葉を失った。

 俺とヴェルは翔陽の目線を追いかける。

 

 そこには。

 

 小春ちゃんがいる。

 木の陰から、顔と右手を覗かして。

 こっちに手招きしてる。

 顔色は戻っていて少し微笑んだ様な顔でこっちを見ている。

 こっちにおいでと言ってるのが、見てるだけで分かった。

 でも明らかにあの可愛い小春ちゃんじゃ無い。。

 逆に怖い。。

 手招きする小春ちゃんの笑顔を見て寒気に襲われる俺とヴェル。

 なんか寒い?

 小春ちゃんの息もなぜか冬みたいに白くなってる。

「小春!」

 翔陽が慌てて小春ちゃんに駆け出して行く!

 山道で、思うように近づけてない。

 俺とヴェルも慌ててついて行く。

 翔陽は冷静な判断力を失ってる!

 小春ちゃんまでもう少しの所まで来た!

 すると小春ちゃんが手招きをやめて川の方へ向かう道を歩き出した。


 ん?歩いている?俺は違和感を覚えた。

 小春ちゃんは普通にコンクリートの道の上を歩いてる様にスムーズに歩いて行く。

 こんな山道であんな歩き方ができる訳ないって。

 身体も少し青白く発光しているし。。。

「小春!」

 慌てて翔陽がさらに追いかけて行く。

 絶対翔陽は我を忘れてる!

「おい待て翔陽!」

 それでも追いかけようとする翔陽の肩を掴んだ。

「待てって翔陽!小春ちゃん絶対今おかしいから!!」

 翔陽が足を止める。

「分かってる!でも!追いかけるしかないだろ!」

「冷静になれって!追いかけるで!もちろん俺も追いかける!!でも!追いかけてそれでどうするねん!どうやって小春ちゃんを元に戻すんや?俺も絶対小春ちゃん助けたい!けどまず!どうするか考えて動かないと助けられへんやろ!」


 。。。

 

「ああ。。。そうだよな。すまない。」

「うちも絶対助けたいっちゃ!絶対あの変な黒い魚みたいなやつのせいだっちゃ!きっと小春は操らられてるだけだっちゃ!」

「だよな。。どうやって助けるか。か。。」

 翔陽が俯く。。

「なぁ翔陽、ヴェル、こんなんどうやろ?小春ちゃんを追いかけて捕まえてさ、それから光波神社の結界の中に連れて行くねん。今まで小春ちゃんには邪気が無いから結界の中にいれたんやんな?もし小春ちゃんを結界の中に連れて行くと、あの黒い霧は入れなくって、邪気のない小春ちゃんだけが入れて、それでなんか悪い物と分離しないかな?」

「そうだな。たしかに。そんなことした事ないけど、それは可能性あるな、それがダメでも母さんに見て貰えば、、、」

 目線を上げると小春がまた前で手招きしている。

 怖い。。

 明らかに山を登る時の小春ちゃんじゃない。。

「それダーリン天才だっちゃ!それやるしかないっちゃ。追いついて小春を捕まえて連れて行くっちゃ!絶対うちの初めての女友達を助けるっちゃ!!」

「行こう!」

 くだりの山道なのにも関わらずもの凄いスピードで翔陽が走り出した。

 

 翔陽の本気の全力ダッシュや!!

 俺もヴェルも翔陽に続いて追いかける!

 小春ちゃんも翔陽が近づいてきたら背を向けて歩き始めた。

 え?速ない?

 小春ちゃん速すぎるやろ、歩いてるのにめっちゃ早い。

 俺達は山道を全速力で走ってる。

 翔陽なんて枝や葉に当たっても全く気にしないで全速力!

 体で目の前に次々現れる枝をへし折りながら走ってる。

 周りも見ずに小春へ向けて一直線!

 そんな全力疾走やのにも関わらず、翔陽は小春に追いつけへん。

 追い付つくどころか、ジワリジワリと離されてる。。

 

 はぁはぁはぁ。。

 息が切れる、山を下るだけやのになんでこんなにしんどいんや。。

 太腿がはち切れんばかりに膨らんでる気がする。

 筋肉が乳酸でパンパンや。

 筋肉を休ましたい。。  

 ちょっと休憩、、、なんて言ってられへんし!

 俺は必死に棒の様な足を動かす。

 けど追いつく事が出来ひん!!

 追いつくどころか翔陽ともだんだん距離が離れてきた。

 どんだけ速いねん。。


 ッザ!

 翔陽が木に隠れた!

 くそ!待って!!


 。。。


 あかん。

 見失った。。

 翔陽、何処に??

 

 俺は辺りを見渡す。


 いた!

 翔陽!!

 翔陽に駆け寄っていく。


 少し翔陽の様子が奇怪おかしい。

 翔陽は慌てた様子で、首を右へ左へキョロキョロしている。

 小春ちゃんを見失ったみたいや。。。


 あ。

 あそこ。


 俺の目に小春ちゃんが飛び込んで来た。

 小春は木の影で頭を出してゆっくりと手招きしている。

「翔陽、あそこ。。」

 俺は翔陽に追いつくと小春ちゃんに向けて指をさした。

「あ!行こう!」

 翔陽がまた駆け出した!

「ダーリン大丈夫だっちゃ?」

「大丈夫!」

 俺とヴェルは改めて翔陽と小春ちゃんを追い掛ける!

 ヴェルは飛んで追いかけてるから登りの時よりかなり楽そうや、息も切れてない。 

 よし!頑張って小春ちゃんを捕まえて光波神社に!

 

 ダダダダダダダダ!

 俺達は全力で小春ちゃんを追いかける!


 ダダダダダダダダ!


 ダダダダダダダダ!


 くそ、小春ちゃん。。

 めっちゃ速い。。

 

 なんやろ山の登りよりも降りの方が足が辛いねんけど。。。

 ここで見失ったら小春ちゃんは。。

「くそ。がんばれ俺!!」

 必死に自分を鼓舞して走り追いかける!

 全力で追いかける三人。

 走っても走っても全く小春ちゃんには追い付かへん。。


 距離が離れると小春ちゃんは木の影で俺達を待って、手招きをする。

 そして俺達が近づいたらまた逃げる。

 それを繰り返す小春ちゃん。。

 もう何度これを繰り返したやろ。

 山を登ったりもしたし下る方向もぐちゃぐちゃやった、山道からはもうだいぶ前に外れてる。

 今どこを走っているのかもう全く分からへん。

 またも登りの時みたいに、足が乳酸でパンパンになってる。

 翔陽も両膝に手をついてはぁはぁと大きく息切れしてる。

 あーーー、喉が渇いた。

 どれだけ走ったんやろ。

 ふと空を見上げると太陽が相当傾いてる

 太陽が赤く染まってきてる。

 時間がない。

 登って走って下って、体力はもう限界に近い。


 はぁはぁはぁはぁ。。

 俺達はいつの間にか止まって休憩してた。

 俺達が止まってると小春ちゃんは逃げていかへんって分かったし。

「海晴大丈夫か?」

「ああ、でもギリやわ」

「だよな、俺もだ」

「小春ちゃんどこにいくんやろ?」

「分からないな、とにかく捕まえないとな、暗くなってきてる」

「そうやな」

 俺達は手招きする小春ちゃんに向かって顔を上げた。

 すると近づいても無いのに、途端にさっと小春ちゃんが動き出した!

 いつもは近づいたら逃げてたのになぜか今回は違う。

 小春ちゃんが先に動いた。

「小春!」

 翔陽がダッと駆け出した!

 俺とヴェルも続く!

 違和感を感じながら、慌てて三人とも追いかける。


 ダダダダダッダダダダダダダ!!!

 バサバサバサバサ!

 木々をかき分けて翔陽が駆ける!


 ダダダダダッダダダダダダダダダ!!

 バババサ、バキバサ、バサバサ!!


 はぁはぁはぁ。

 どれぐらい走ったかもう分からへん。

 もうだあかんと心が折れそうになったその時!

 バサッ!!!

 突然目の前が一気に開けた!

 川や!河原に出た!!

 太陽と空がオレンジに染まってる。

 砂利の河原の真ん中を優しく綺麗な川が流れてる。

 その川も夕陽の光でオレンジ色に染まり朱色の水が流れてる、最近雨が少なかったからか流れる水の量は少ない。

 パシャパシャと歩いて渡れそうや。。

 

 小春ちゃんがその川の上で沈むこともなく立ってる。


 はぁはぁ。。


 翔陽がゆっくり近寄って行く。

 ポタリポタリと汗が顎から滴る。

 走ってる時に枝や葉で翔陽は怪我だらけや、両腕は傷だらけで血が指先から滴る程血が流れている。

 ズボンは破れて泥までこびりついてボロボロになってる、血の滲んでる場所もあるやんか。

 グイッ!

 滴るあごの汗を右腕で拭う翔陽。

 血が出てることに気づいてないんやろう。

 翔陽の顎から頬っぺたにかけて血で赤く染まった。

 一歩一歩翔陽が小春ちゃんに近づいて行く。


 すると小春ちゃんが手招きをやめて下を見始めた。

 翔陽がもう少しで小春ちゃんを掴める距離まで近付こうとしている。

 さっきまではこの距離まで近づく事はできひんかった。


 翔陽が小春ちゃんに手を伸ばした。


 手が届く!


 すっ。。

 小春ちゃんに手が届く直前で小春が消えた。。


「な。に。。小春。。」

 ガクッ。

 翔陽が膝から崩れ落ちて、正座のような姿勢になった。


 座り込んだ翔陽の目線の先に手の平にちょうど乗るくらいの平べったい石がある。

 ちょうど小春が立って眺めた所だ。


 なんか黒いもやが見える。

 奇怪おかしい!

 その石、、絶対ただの石じゃない。

 小春に吸い込まれる様に入っていったあの黒い霧が様な物が石を覆っている。

 翔陽が正座の様な姿勢からそっと両手で石を拾う。

 じーーーっと。

 その石を両手の平に乗せて眺める翔陽。

 小春が石になってしまったとでも考えてるんか?

 ぼーっとして動かへん。

 

 ズン。。グラグラ。。


 ズン。。グラグラ。。


 途端に普通じゃ考えられへん音が聞こえてきた。。


 ズン。ズン。バキバキバキ。


 ズン。ズン。バキバキ。。


 足音?

 さらに木々を折る音が聞こえる。

 

 ズン。ズン。バキバキ。。


 どんどん足音が近づいてくる。


 ズンズンってそんな足音、映画でしか聞いたことない。

 あのジュラシックパークとかキングゴングとかで地面の揺れるあれ。。。

 コップの中の水が漣立(さざなみだ)つやつ。。。

 こういう足音ってほんまにでっかい動物とかが来た時になるやつちゃうん?


 光波山の違和感って、これ?


 ズン、ズン、バキバキバキ!


 来てる何か確実にこっちに近づいてる。。

 

 フゥーーーーー、、フゥーーーーーー。。

 大きな息遣いまで聞こえて来た。


 グルルルウルルルル。。。


「何かいる!!」

「ダーリン気を付けるっちゃ!!」

 俺とヴェルは同じ場所でくっついて警戒する。。




 途端に静けさが押し寄せて来た。



 さっきまでとは打って変わって。

 川の流れる音と風が木々を撫でる音しか聞こえてこない。




 。。。。





 なんで?



「あれ?いなくなったっちゃ?」

 ヴェルが構えてた体制を止めた。


 その途端!


 バキバキバキ!!!!

 木々の間から枝を折って巨大な何かが飛び出した!

 あれは!!!??

 自分の目を疑った!!


 ズンッ!ズンッ!ズンズンズン!!!


 それはものすごい速さで走り近寄って来る!


 陽もだいぶ暮れて、辺りはかなり暗くなってきてる。

 あと半刻もしないで夜になりそうや。


 翔陽も立ち上がって警戒していたはずやけど、突然の事がいくつも起こり過ぎて整理出来ていないっぽい。

 放心していて全く反応出来てない!!


 大きな口を開けてその大きな生き物は翔陽に噛みつこうとしてる。


 やばい!

「翔陽!!!」

 俺は横から翔陽に飛びついて押し倒した!

 ゴロゴロゴロ!

 二人で河原を転がる。


 ギリギリやった!

 靴に鋭い牙がかすった!

「翔陽!しっかりしろ!!何してんねん!死ぬぞ!死んだら小春ちゃん助けられへんねんぞ!」

 翔陽の頬っぺたをパチンと叩く!

「あ、、」

 翔陽の焦点の定まってなかった目が動いた。瞳孔が収縮し翔陽が俺を見てるのがはっきり分かった!


 ゴォァアァァァァァァァァ!!


 な。


 見上げると上から人が丸まま飲み込めるんじゃないかという大きな口が俺達を襲って来ていた!

 歯がヤバイ!のこぎりのような歯が並んでいる。こんなのに噛まれたら人間の腕なんて簡単に喰い千切る!


 あかん!もう目の前まで迫っている。

 視野の殆どが大きく開けられた口や!!


 くそ、これは間に合わないやつやか。。。。


 ドン!!!

 俺は翔陽を慌てて横に押した。


 河原の上を転がる翔陽。


「海晴!」

 翔陽が起き上がりながらこっちを見てる。




 なんか翔陽が叫んでた。。




 時間がスローに感じる。。




 恐竜の恐ろしい大口が今にも俺を噛み千切りそうや。




 くっそ。。


 まだまだやりたい事いっぱいあったのに。。




 そうやな。。

 

 これで俺も幽霊になったらそのまま小春ちゃんを探してあげよっか。



 ははは、、、


 何を考えてるんや俺は。。。



 もう目の前に迫る大口の前で俺は動けへんかった。。




 。。。




 ッドーーーーン!!


 バリバリバリ!!!!


「ダーーーーーーーーリン!!!!!」


 ギャウゥゥゥゥゥーーーーー!


 バッシャン!


 襲ってきていた動物は突然、頭上から降って来た雷に打たれた!


 巨大な動物は雷で反り返り、その場で空へ向け大声をあげた。

 俺に食いつくことはなく、すぐ隣に流れている川にバチャンと倒れこんだ。。



 俺もすぐには状況判断出来なかった。。


 あれ。

 俺生きてる。。。??



 

 。。。



 苦しい!


 っはーーーーー!!!



 息をする事も忘れてた。。。



 はぁはぁはぁはぁ。。



 あっぶね!!!!


 生きてる!!


 セーーーーーフ!!


「ダーリン何やってるっちゃ!早く逃げるっちゃ!」

「海晴!!」

 翔陽が腕を引っ張る。


「おう!」


 雷で感電した為か、川に倒れて大きな動物は痙攣している。


 その間に俺と翔陽はその場を離れ距離を取る!

 ヴェルも俺達の側に降り立って来た。


 ザバァ!

 大きな動物が川の中起き上がる!

 

 クゥーーー。。

 さっきの電撃を警戒してるっぽい、攻撃的な目でこっちの様子を見てる。


 今初めてちゃんと動物の姿を落ち着いて見た。

「なんやねん、こいつ、、恐竜??」


 赤茶色で、前足が無い、後ろ足の二本足で立ってる。

 体には毛がない、鱗?違うか?なんか凄い動体がゴツゴツしてる。

 わにとか蜥蜴とかげそういった動物の皮膚に似ている。

 頭には二本の角が背後へと向かって生えてて、その角の下の窪んだところに鋭い目、俺達を睨みつける目が信じられへんほど攻撃的や。

 口には肉を食いちぎる為にあるであろう鋸のような歯が並んでいる、見れば見るほど、恐ろしい。。。

 あの鋸の様な歯は絶対肉食だ。。

 噛まれたら100%喰い千切られる。。

 その恐竜みたいな生き物の動体は、翼を折りたたんでいるのか骨骨しい。

 翼があるとかどんな生き物やねん!!

 っていうか。。

 と、飛べるんかなあいつ。。

 ちょっと飛んで欲しい、しかも俺を背中に乗せて。。

 この生物は空想上のドラゴンなんか、それとも古代地球の支配していた恐竜なんか、それとも突然変異をした蜥蜴?

 どっかの施設から逃げ出した実験動物?

 可能性は色々あるけど。


 全然解らへん。。

 

 でも。

 こんな生物、今までの地球では絶対いなかったはずやろ。

 一体この恐竜らしき動物はどこから来たんや。


「すげーー!恐竜や。。こんな奴いるんや!」

「地球の生き物って怖いっちゃね。。」

「ヴェルさんこんな奴、地球にはいないよ、、いたとして、古代の恐竜とか。。」

「恐竜!ドラえもんのアニメで見たっちゃ!」

 

 グルルルル。。。


 恐竜の足に力が入って姿勢が少し低くなった!


「気を付けろ!来るぞ!」

「分かってる!」

  

 三人とも斜に構える。

 恐竜も臨戦態勢や。

 しかし襲ってきたらどうしたら良いんやろ?

 避けて逃げる?

 だったらもう構えず逃げたら良いんじゃないのか?

 どうしたら良いんや。。?

「このまま来るのを待ってはダメだ。。」

 翔陽は言葉と共に掌にポッと小さな炎の珠を出した。

「ヴェルさんさっきと同じ電撃出来る?」

 翔陽がヴェルに声を掛ける!

 それと同時にヴェルがフワッと浮いた!

「いけるっちゃ!!」

 ヴェルの手にもパリパリと黄色く光る雷の珠がある。


 二人ともあの巨大烏賊と戦って出せた珠を自然と出している。。

 なんでそんな人間離れした力を当たり前の様に??

 くそ、俺も出来たはずなのに。。

 出せるか試してみるか。。

 出そうと思った最中に。

「海晴!電撃が当たったら絶対あいつは怯む!その時に俺達は総攻撃やろう!」

「おっけ!で!あいつの足狙って倒そや!で倒したら思いっきり逃げよ!!」

「分かった!」

「分かったっちゃ!いくっちゃよ!!」

 ヴェルが空中から雷の珠を思いっきりっ恐竜に投げた!

 パリパリと小さな音を立てる黄色い雷の珠は球体から恐竜に向かうにつれて、どんどん形状が変わって途中で完全に雷に変わった!

 細い雷が恐竜に物凄い速さで向かって行く!


 バリバリバリ!

 当たった!!


 ギャウゥゥウウウゥゥゥ!

 一瞬電撃で恐竜がよろめいて痺れた。

 俺を助けた一撃目よりも恐竜へのダメージが少なそうや。

 俺と翔陽は思いっきり地面を蹴って恐竜に駆け寄って行く!

 翔陽は火の珠を手の平の上に浮かべて駆けてる!

 俺も光の珠出せるんか。。。?

 皆んな簡単そうに出してるけど、アレってどうやって出すん?

 光の珠を出したいけど出す方法が分からへん。


 あかん!

 そんな事考えてたらもう恐竜が目の前やんか!

 光の珠は無しでやるしかない!!

 翔陽は山の中で走って怪我しているんか少し俺の方が走るのが速い!

 俺は思いっきり恐竜の足元にスライディングで飛び込む!

 そして!

 思いっきり恐竜の脚を蹴った!!

 これで倒す事が出来たらその後翔陽が火の珠で攻撃してくれる!!


 ダン!!!!

 思いっきり恐竜の脚を蹴った!

「な、、?」

 思いっきり蹴ったのに。

 恐竜はピクリともしなかった。

「痛っって!!」

 逆に蹴った足が痛い!

 ぐいっと恐竜は首を捻って俺に噛みつきに来た!

「海晴!」

 ドン!!!

 翔陽が恐竜の捻られた首へ思いっきり手の平の上の火の珠と共に掌打!

 火の珠を叩き込んだ!

 ボゥっと燃える恐竜の首!

 ギァウ!!!!

 背後に一歩二歩とよろめいて、首をブンブンと振って炎に驚いた様子を見せる恐竜!

「海晴!大丈夫か!離れるぞ!」

「大丈夫や!分かった!」

 起き上がりながら答える!

 俺達は全速力で恐竜から距離を取った!


 フシューーー!!

 恐竜は大きく息を吐いた。

 そして俺達を睨みつける。


 ヒューー。。。

 俺達が距離を取って振り返った所にヴェルが降りてきた。

 ヴェルの手の平の上にはまた雷の珠がある!

 それをすかさず様子を伺う恐竜に投げた!

 恐竜はその小さな雷を避けようと横っ飛び!

 恐竜の顔の横をすり抜ける小さな雷!

 しかし雷を避け切ることは出来ず、恐竜の左の胴体に刺さった!!

 ギェ、ェェェェェェ!!

 痺れる恐竜。


 火の珠をまた手の平の上に作り出している翔陽。

 俺も光の珠を出したい。。

 試しに手の平を上に向けて思いっきり手に力を入れてみる。

「うおおぉ!でろ!!」 

 

 。。。

  


 しかし光の珠は出ーへん。

 出せる気がせんわー。

 ほんまに出せる意味が分からへん。。


 ギャァァァァァァァアアァァ!!!!

 突然大声で恐竜が叫んだ!!

 恐竜が怒った!

 間違いない!

 三人に向けて雷に怒った恐竜が大口を開けて思いっきり突撃して来る!

 ドン!ドン!ドン!ドン!!

 凄い剣幕と勢いだ!

 のこぎりの様な歯が立ち並ぶ大口が三人に迫る!

「よけろ!」

 叫ぶ翔陽!

 ヴェルは上へ。

 俺は左へ。

 翔陽は右へ。

 それぞれ違う方向へ避ける!


 ガチン!

 恐竜の大口は空気を噛みちぎった。

「怖!!!!!」

 恐竜の噛もうとする迫力が半端じゃない!

 ヒュッ!

 噛み千切りから突然恐竜が反転!突進から左足を軸に俺のいる左側に尻尾を振ってきた!

 速い!

 サッ!

 ッビュン!!

 俺はしゃがんで襲い来る尻尾を避けた!

 あぶな!!!

 ほんまににギリギリやった!

 恐竜尻尾は髪の毛にかすった。。

 かすって切れた髪の毛が宙に舞う!

 尻尾を振った事で頭が翔陽の方に向いてる!

 恐竜は俺の方へ尻尾を振りながらも同じタイミングで翔陽へ噛みつきにいってた!

 なんて理に適った攻撃、、多数の相手と戦い慣れてそうな動きやった。

「うお!!」

 バクッ!!

 翔陽は一歩下がってギリギリで噛みつき攻撃を回避した!

「俺も総合格闘技じゃ前線負けなしな、ん、だ!よ!!!」

 ダン!!

 空を噛み遠心力で通り過ぎて行く恐竜の頭をめがけて翔陽が火の珠のある手で掌打!

 ボワァァ!

 掌打が当たった恐竜の顔面から炎が上がった。

 ギャウゥーーーー!

 ブンブンブン!

 恐竜が首を左右に振って炎を消そうとしいてる。

 バリバリ!

 そこ上空からヴェルの電撃の追撃!

 ガァア!!

 顔面に火のついたまま恐竜の身体が痙攣する。

 俺も光の珠を出したいけど出しか方が分からへん!

 何か俺も出来る事はないんか?

 そう思った時に俺もう痙攣している恐竜に向かって走り出していた!

 さっきはただ蹴っただけや、なら今度は!

 これでどうや!!

 猛スピードで恐竜の腹の下に滑り込んで、思いっきり恐竜の左足を蹴った!

 グラ、、バタン!

 恐竜は倒れた!

 上手いこといった!!

 恐竜の膝であろう関節を後ろから思いっきり蹴った!

 その結果、恐竜は、膝カックンのようになって倒れた!

「よっしゃ!上手いこといった!!」

「海晴ナイス!!」

 隙を見逃さず恐竜に飛び込む翔陽!

 さらに顔面に翔陽が火の珠を叩き込む!

 さっきの攻撃に続いて恐竜の頭部が炎に包まれる。

「くらえっちゃ!!!」

 ヴェルがまた電流をお見舞いした!

 倒れてる恐竜が悶えている。

 俺は白い柔らかそうな恐竜のお腹を何度も蹴りつける!!

 翔陽も何度か火の珠を恐竜に叩き込んだ!

 何箇所か恐竜から炎が上がってる。


 ガァアァァァァァアッァァァ!!

 恐竜が突然暴れ、倒れながらも尻尾を振り回した!

 明らかに立ち上がろうとしてる。

 俺たち三人は恐竜から一旦距離を取った!


 攻めた!!!!


 全力だった!

 

 今各々が出来るであろう最大の攻撃をした。

 これならそれなりのダメージが入ったやろ!!

 

 尻尾の遠心力を使って華麗に起き上がる恐竜!

 立ち上がった時に恐竜の炎が収まった。


 ギャァァァァアアアアァァァァァォォォォオオオオオ!!!!


 耳を塞ぎたくなる程のとてつも無く大きな咆哮!!


 怒ってる!

 そら怒るよな。

 ダメージは入っているのか?

 恐竜の炎のついてた顔面。。

 何もなってない。。。

 あわよくば炎で目が焼けて失明していれば何て考えていたけど。。

 

 。。。


 うん。。


 恐竜の目は全く問題なさそう。。。

 その目でめっちゃこっち見てる!!

 ってか皮膚に焦げた後すらない。!

 初め見た時の恐竜の顔のままや。

 実は俺の蹴りの感覚も、鱗のない腹を蹴ったけど、思ってたより皮膚が硬くて、ダメージを与えたって実感が全く感じられへんかった。

 これでもし電撃も痺れさせるしか効果が無かったら。

 攻め手がない。


 。。。


 ドシンドシン!!

 ガオォォォォオオオオ!

「っちゃ!!」

 恐竜がヴェルに突撃し食いかかる。ヒラリと上へ飛んでかわすヴェル。

「しつこいっちゃ!!!」

 さらに上からカウンターで雷の珠を投げる!!

 小さな雷に変化した珠はしっかりと恐竜に刺さった!


 バリバリバリ!


 ギャウゥゥゥ!!


 痺れて動きが止まる。。

 すかさず翔陽が炎の掌打を腹へ!

 ブワッ!

 腹から炎が上がる。


 俺は膝をまた蹴って倒そうかと思ったけど。

 俺の前で今にも翔陽が腹に攻撃しようとしているから。

 俺は上段蹴りで痺れてる恐竜の首に思いっきり叩き込む!


 首が蹴りの勢いで折れ曲がって恐竜が横に転がる。

 首がやられているからか。。

 キュウゥと恐竜は元気の無い声で鳴く。。。  


 ってのが俺のイメージだった!

 ところが現実は。

 全く手応えがない。

 っていうか逆に蹴った足の方が痛い。

 近くで恐竜の顔を見たけど。。

 翔陽の炎の燃えた部分は全く何ともなってない。


「クソッ!」

 翔陽も手応を感じてないみたいや。


 恐竜が空中のヴェルに大口で食いかかった!

 あの雷が嫌なんか。

「ヴェル!」

「ヴェルさん!」


 ガチン!

 寸前のところでヴェルは空中で宙返りして避けた。

 華麗や。。

 ヴェルに向かって突進した恐竜、その流れで尻尾を左にいる翔陽に振った!

 一瞬ヴェルを気にしてしまったために、翔陽の動きが一歩遅れた。

 なんて流動的で見事な攻撃。

 一匹対三人なのに。。

 多数との戦いに絶対慣れてる。。


 一歩遅れた翔陽は襲い来る恐竜の尻尾の前で体が硬直している。

「翔陽!」

 あかん!避けられへん!


 バンッ!!


 翔陽が尻尾に思いっきり吹き飛ばされた。

 ゴロ!ゴロゴロゴロ。。

 ニ、三回転後ろに飛ばされる!

 車で事故をしたのと同じや。。

 物凄い勢いで翔陽は飛ばされていた。

 俺が見た時、体が硬直して動けていなかったけど、尻尾が当たる直前に、翔陽は腕を上げてガードした様に見えた!

 そこはさすが、小学校から総合格闘技をしてきただけはある!

 考える前に体が動いた、反射なんやろう。。

「うう!」

 飛ばされて仰向きに倒れている翔陽。。

「おい!翔陽!!大丈夫か????」

「ぐ。。。」

 仰向けの翔陽の右手が動いた。

 左手で頭を抑える。

 ゆっくりと体を起こす翔陽。

 ドシン!

 恐竜がトドメを刺そうと翔陽の方へと走り出した!

 バリバリバリ!!

「翔陽早く立つっちゃ!」

 ヴェルが雷で恐竜の動きを止めた!

 

 頭を抑える手の下からツーーーーと赤い血液が左頬を流れた。

 河原の石で頭でもぶつけたんか。

 なかなか翔陽は立ち上がれへん。


 ドシンドシン!

 また周りには目をくれず翔陽に向かったて駆け出した恐竜。

 だんだん雷で痺れる時間が短くなってる。。

 ドシンドシン!!

 恐竜が吹き飛ばされた翔陽に追い討ちに向かう!

「翔陽!!」

 俺は叫びながら思いっきり地面を蹴った!

 恐竜と俺の距離だと俺の方が翔陽に近い!

 河原で全力のダッシュ!

 

 翔陽を巡って河原を走る俺と恐竜。

 あかん!恐竜の方が走るのが速い!!

「クッソ!」

 あかんと思った瞬間俺の身体は動いていた。

 走っている勢いで思いっきり恐竜の横顔に飛びかかった!

 飛び込んでの上段蹴り!!

 バチン!!

 見事に俺の蹴りは恐竜の顔面を捉えた!!

 グラ。。

 少しばかりだが恐竜の顔が、俺の飛び蹴りの勢いで横に飛ばされる。

 恐竜の体も同様に顔の向いた方向へドシドシと二歩ほどふらついた。

 俺は飛び蹴りの後、翔陽のそばに落ちた。

「翔陽大丈夫か!?」

 俺は慌てて翔陽に近づく。

 ザザザ!

 翔陽の背中側に入って脇の下から抱き抱えた。

 俺は早くいくぞ!と言わんばかりに引っ張る!

 重い!

 翔陽に反応が無い。。

「うわ!!」

 ガラガラ。。

 ドサ。。

 足場の悪い河原では簡単には引っ張り起こせず。

 俺も体勢を崩してしまった!

 後ろ向きに引っ張ろうとして足を滑らせてしまったから、翔陽が俺の両足の上に乗ってしまった。

 そんな俺たちを見て恐竜は、目を光らせる!

 大口を開けて俺達二人を纏めて噛み千切ろうと凄い勢いで迫ってる。

「くそ。。」

 今この状況では翔陽だけでもなんとかという訳にもいかへん。

 ヴェル!と思った瞬間!


 バリバリバリ!


 ギャウ!!!


 一瞬恐竜は感電!

 走ってた恐竜はズドン、ザザザザザザザザっと前のめりに倒れて滑った。

「ヴェル!ナイス!!!」

 ザザザザ!

「わわわわ!ちょっと待って!止まれ止まれ!」

 恐竜が俺の方へと滑ってくるーー!!

 ッガ!!

 俺は滑って来る恐竜を両足で止めた!

「こわ!」

 恐竜は痙攣してる。

 危険な恐竜の口が目の前にある!

 俺の靴に触れてる!

「やばいやばい!」


 俺は翔陽を抱えたまま立ち上がってあわてて距離をとった!


 グルルルルルルル。

 恐竜はゆっくり立ち上がって空に浮いてるヴェルを睨みつけた!

 標的を翔陽からヴェルに変たっぽい!!


「ダーリン翔陽逃げるっちゃ!!」


 バクン!ブンッ!

 ラムを噛もうとした大口は宙を噛みちぎり、尻尾はくうを切り裂いた!

 バクンブン!バクンブン!バクン!

 尻尾を振り、噛み付き尻尾を振り回転しながらヴェルへと連続で攻撃している!

 しかし恐竜の攻撃は空を裂きくだけ、ヴェルは華麗に空中を自由に舞い、尻尾攻撃を見事に回避している。

 全ての攻撃をギリギリでかわしている。

 あのギリギリの回避。

 かなり恐ろしいはずや。

 恐竜の攻撃を避ける度にヴェルが光ってる、華麗でかっこいい!

 カッコいいけど。。

 きっとアレはギリギリで避けてるゆえの冷や汗。

 上空に飛んで逃げたらいいのにヴェルは恐竜の攻撃の届くギリギリの所で飛んでる。

 今のヴェルは恐竜の連続攻撃で雷の珠を創る隙もなく逃げるのみになってる。。

 あの連続での回避、どれだけヴェルは集中してるんやろ。

 集中力を維持するには体力がいる、どんどんヴェルは今疲弊していってるはずや、、、

 山登りでも相当疲れているやろうし。

 俺達を恐竜から遠ざけるためにヴェルは今必死に頑張ってる。

 あんな恐ろしい攻撃を前にして堂々と戦ってる!

 俺もその意気に応えんと!

「立てるか翔陽?」

 翔陽に声を掛ける。

 左頭から血が流れ出ていってる、よく見たら全身傷だらけや。。

 俺の声に対する反応が無い。。

「おい翔陽!」

 パチっと翔陽の目が開いた。

 スッと翔陽が立ち上がった。

「翔陽大丈夫か?」

 翔陽から返事が無い、もはや俺の声というか存在自体すら気に留まっていないみたいや。

 鋭い目つきで恐竜を睨みつけてる!


「はーーーーはっはっはっはっは!」

 突如として翔陽が笑い出した!

 目つきが鋭くなって雰囲気が今までの優しい翔陽と全然違う!!

 掌に火の珠を創り出す翔陽、火の珠が映っているのか翔陽の眼の色が赤い!

燃えてるみたいや!

 ペロリと左頬の血を手で取って舐める。

 ニヤリと笑う翔陽!

「はぁぁぁぁああぁぁーーーーーーーーーー!!!!」

 声と共に前屈みになると手の内側赤くなっていく!

 その掌の上ある火の珠がだんだん大きくなってきた。

 今まではめちゃくちゃ小さいサイズだった火の珠が少し大きくなった!

 ふと翔陽が自分の左手の掌に浮いてる火の珠を見た!

 表情はニヤリと不敵な笑みを浮かべている。

 そして反対の手を見るとその手で拳を作る。

「はっ!」

 左手を力の入ったまま手をバッと広げる!

 と、掌の上にもう一つ小さいサイズの火の珠が出来た。

「マジックか。。」

 火の珠は翔陽の手の中で燃えている。

「う“あぁあーーー!」

 翔陽が力むとさらに左手の火の珠が育っていって、またどんどん大きくなっていく!


 恐竜は何かしている翔陽がヴェルよりも気になったのか、ヴェルへの攻撃を一旦止めてこっちに振り向いた!


 ニヤリと翔陽が笑う。

「いくぜ!」

 翔陽が恐竜に向けて走り出した!!

 そんな攻撃なんとも無いわ!迎え撃ち潰してくれる!

 と言わんばかりの恐竜も翔陽に呼応して走り出た!

 物凄い勢いで走っていく翔陽、いつもの走り方がいつもと違う!

 まるで忍者の様に駆ける翔陽!


 駆け寄る翔陽と恐竜との距離が詰まっていく。


「うおぉぉぉおおおお!!」


 ガァァァァァアアァァ!!


 二人が交差する!


 恐竜の攻撃はやはり大口での噛みつき!

 それを翔陽は見切ってた!

 噛みつきを見事に避けて、そのまま体を縦にして恐竜の左側をすり抜ける!

 すり抜け越しに左手の火の珠を思いっきり恐竜の顔面へと叩きつけた!!!

 ボゥっとまたも恐竜の右目が燃え上がる!

 そして翔陽は右足左足と華麗にステップを踏んでスピードを殺す。

 スピードを殺して溜まった力を翔陽は上に爆発させる様に上へと伸び上がった!

 そのまま右手の大きな火の玉を恐竜の首へと下から思いっきり突き上げた!!


 火の珠も一緒に恐竜の首へと刺さる!


 ドガァァァーーーーーン!

 火の珠が爆発した!

 直径3m位の大きな爆発が起きてる!


 さっきと違う!

 さっきまで燃えてたやん!

 なんで?

 急に爆発したん????


 ガァァ。。

 爆発の勢いで恐竜の首は跳ねあげられ、恐竜の巨体がよろける!

 ッザっと倒れることはなく恐竜は踏み止まった。

 ッキっと翔陽のを睨みつけた。

 

「はぁぁぁぁああぁぁぁ!!!」

 

 攻撃の後すぐに両手に火の珠を創り、さらにその火の珠を大きくしながら戻って来る恐竜の首を待ち構えている翔陽!

「こいつはもっとデカいぜ!!」

 パン!!

 顔の前で手を叩き二つ創った火の珠を合わせた!


 すると翔陽の手の上には二つの火の珠を合わせたさらに大きな火の珠ができた!

 それを見て慌てて噛みつきにきた恐竜の顔に向かってオオラァァァ!っと右手の火の珠を叩きつけた!!!


 ドッガアアァァァァァアアアーーーーーーーンン!!!

 直径5mはあろうかと言う大爆発が起きた!

 恐竜は頭からぶっ飛ばされて爆炎の中横に一回転!


 ボフンと煙から飛び出してきて、滑り、倒れた!


「よしゃぁあーーーーーーーー!!」

 翔陽が咆哮をあげた!

 翔陽の奴めちゃくちゃすげぇーーーー!

 漫画のヒーローみたいや!!!


「翔陽すごいっちゃ!」

 ヴェルが翔陽の方へ飛び寄っていく!


 グァ!!


 倒れてたはずの恐竜が突然ヴェルに噛みかかった!

「あ。。。」

 突然のヴェルが動けてない!


「ヴェル!!」

「ヴェルさん!!!!」


 やばい!!


 ドン!!


「あ。。」


 ヴェルが翔陽に押し退けられた!

 押しのけた翔陽の目の前に恐竜の大口が迫ってる!!


 食い付き方さっきまでの上下からじゃなくって今回は顔を横にして左右から翔陽に食いかかってる!



 これは。。



 マジであかん。。。



 バグン!!


「あ。。。」


「翔陽ぉぉぉーーーーーー!!!!!!!!!」



 俺の声が黄昏の空に響き渡った。。。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ