力の目覚め編 真っ赤な夕陽って素晴らしい
幸せでさらに懐かしいような感覚。
涙が一筋頬を流れた。
今が夕陽の時間でよかった。
ーーーーーー 日向 海晴 ーーーーーー
西向きの大きな窓から夕陽が差し込んでる。
部屋が淡いオレンジ色に染まって、いつもとまた違う雰囲気がいい感じ。
いつもは白い普通の壁紙も、この時だけは夕陽の光を吸い込んで淡いオレンジ色になる。
日が暮れる時間だけ、いつもと違う顔を見せてくれる、この部屋が俺はめちゃくちゃ好きや。
ドタドタドタ!
「うおーーー!疲れた」
「疲れたっちゃーー!」
ヴェルと翔陽は俺の大好きな部屋にあつかましく上がり込んで行く。
ボフン!
ポスン!
その厚かましい二人は同時にベットに倒れこんだ!
「なんで俺のベッドに倒れこんでるねん!」
「うお!この布団フカフカだな!」
「もふもふで気持ちいいっちゃーー。」
ゴロゴロするヴェルと翔陽。
「うおーー!寝ながら空を見えるベッドっていいなーー!」
寝転びながら夕焼けの空を眺める二人。
人のベッドで勝手な事を。。
俺達は黒い巨大烏賊を倒して、大渦の起きた海を正常な状態に戻して今部屋に帰ってきた。
「はぁーーーーー。。。」
海で太陽の光と潮水をいっぱい受けて喉がカラカラや。
なんか変なプレシャーもいっぱいかけられたしな。。
淡い朱色に染まった部屋を通り抜け俺は冷蔵庫から麦茶を取り出す。
透明なコップを三つ一緒に持ってテーブルに置いた。
俺は夕陽が見える椅子に座ってコップにお茶を注ぐ。
コポコポコポ。。。
注がれていく麦茶が、夕陽の光を吸い込んで赤く輝いている。
まるでローズティーかロゼワインを注いでいるみたいで、お茶やのに綺麗や。
自然がいつもの日常をふっと少しだけ変える。
その少しに気づいた時。
俺は幸せな気持ちになれる。
なんか得した気持ちよな。
幸せって作るものじゃなくって、気づくことやっていうしな。
冷たくてコップが汗をかいてる、その一粒一粒が夕陽の光を受けてキラキラ輝く。
めっちゃ綺麗なんやけど、喉がカラカラの俺はしっかり冷えてる麦茶を俺は口に流し込む!
ゴクゴク。。
口から冷たい麦茶が喉を通過していく。。
「あーーー。うまぁーー。。」
体に冷たい水分が染み込んでいくのを感じながら幸せに浸る。
ただの麦茶やのにな。。
めっちゃ美味いわー。。
窓から見える海と夕陽、そしてこのオレンジ色の世界と乾いた体に染み込む、この感じ。
普通のお茶が何倍も美味しく感じる!
すぅーーー。。
はぁーーーーー。。
やっと一息。
今日も朝から本当に大変やった。
サーフィンして。
インタビューされて。
渦巻きが巻き起こって。
巨大な黒烏賊に襲われて。
警察に囲まれて。
ヴェルの父ちゃんが現れて。
無理矢理婚約とか婿とか決められて。
ほーーーーっんまに濃い一日やった!
帰る時にテレビのクルーの人とか警察のおっさん達が俺達の住所などそう言った物は公にしない、誰かが探しても分からないように住所など個人情報を機密にすると約束をしてくれた。
なんか警察のあのおっさんはなかなか地位のある人やったみたい。
その事に関しては本当に良かった。
ここに人が押し寄せてきても面倒臭いし。
このお気に入りの家に住めなくなるの嫌やし。。
俺はぼーーっと今日の事を振り返りながら、椅子の背凭れに深く体重を預けて夕焼けの空を眺める。
「ダーリン!今日楽しかったっちゃねーーー!」
ひゅいーっとヴェルが飛び寄って来た。
「お、ヴェル、お茶飲むか?」
「ありがとうだっちゃ!うち喉からからだったっちゃ!」
ゴクゴクゴク!
ゴクゴクっといい音で喉を鳴らしお茶を飲むヴェル。
「ぷはーー!美味いっちゃーー!!」
ほんまにヴェルは何で何時もこんな元気なんや??
俺はなかなか疲れてるのにな。
ほんまにめっちゃ宇宙人やなーっとか思って夕陽をバックに無邪気なヴェルを見てた。
ぼーっとヴェルを眺めてたら何かがポケットにある事に気づいた。
「なんやろ?」
俺はポケットに手を入れた。
コツンんと指に何かが当たる。
ああ、そういえばいつのまにかコレ、戦ってる時にいつの間にか手の中あったんや、邪魔やしポケットに入れといたの忘れてた。。
「なんやろこれ?」
三角の白いシーグラスとさらに三角の透明のシーグラス二枚ががくっついた様な物。
透明のシーグラスの方が少しばかり大きい。
変な形やな。
ぼんやり白いほうが光を帯びてる様に見える
その二枚くっついたシーグラスを夕陽にかざして見て見る。
すると透明のグラスの方が中に何かある。
絵の様な物?傷??
白いグラスの中に太陽のマーク様な物が見える。
シーグラスの外側じゃなくって中に模様が入ってる。
「なんなんやこれ?」
夕陽に掲げて二枚繋がったシーグラスを見つめていると。。
「あ!ダーリンもそれ持ってたっちゃ?」
ヴェルも胸の谷間から同じ様な物を出してきた。
どこから出してんねん。。。
「ん?何の話だ??」
翔陽もベットからゴロンと立ち上がった。
「あ、うちおっきな烏賊と戦ってる時にいつの間にかこの石を持ってたんだっちゃ、で、ダーリンも同じの持ってたんだっちゃね」
「それ俺もあるよ、これだろ?」
眠たそうにしていた翔陽もごそごそとポケットを漁り何か掴み出した。
そして俺達にシーグラス様な石を見せてくる。
「あ、それやんか、翔陽も持ってたんか」
「ああ、俺もいつの間にか握っててよ」
翔陽も立ち上がってこっちへ来る。
こっちに来た翔陽にお茶を注いで差し出した。
「お!サンキュー!」
翔陽がお茶を飲んでる間に俺は翔陽とヴェルのシーグラスの様な石を見比べて見る。
ほとんど俺のと同じ、少しだけ違うのは、色のあるシーグラスの奥の柄が俺のとは少し違う様に見える。
俺はそっと、二つくっついたシーグラスの様な石を太陽にかざした。
すると光がシーグラスに差し込んでシーグラスの中の模様がはっきり見えた。
ヴェルのは雷、翔陽のは炎のような模様が入ってる。
そしてヴェルの石は片側が黄色で、俺のやつと似てる。
翔陽のシーグラスは片側が赤い。
「ふぁぁーー。。あーー。眠てえーー」
そう言うと翔陽はふらっと立ってまたベットに向かった。
ベットに倒れ込む翔陽。
ぐぬ、俺のベットやのに!
まぁいいか。
俺は改めて不思議なシーグラスみたいな石に向き直った。
形はどれも全く同じ、うーーん偶然にしては出来すぎてるよな。。。
しかも、拾ったタイミングも場所も俺達は覚えてない、気付かないうちに手に持ってた。
俺達全員!
そんなことある?
「んーーーーー。」
俺は運命とかそう言った類の物は起こった後の後付けやと思ってるんやけど。。。
三人同じタイミングで同じような不思議な石。
偶然?
ほんまに偶然??
んーー。。
偶然じゃないよなー。。
「ほんまに運命なんかなぁ。。」
俺は自分の拾ったシーグラスの様な石をもう一度夕焼けの中の太陽に翳す。
シーグラスの様な石の中をオレンジの夕陽の光が通り抜ける。
そのシーグラスの様な石の中の太陽のマークに本当の太陽の光が差し込んで輝いてる。
すごい、、シーグラスの中の太陽が本物の太陽の様に輝いてるみたいや。
綺麗や。。
ぼーっと俺は空を眺めながらまた今日の出来事を思い出して、ほんまに俺にこの世界を守る運命があるのか、考えてた。。
「運命なぁ。。」
すると。
「ダーリン?運命だっちゃ?」
俺の呟きをヴェルに聞かれてた。
「うちとダーリンの事だっちゃ?」
「はは、なんでやねん、まぁでも、もし、、、俺達が世界を救いでもしたら、この出会いは運命の出会いになるんやろな。。」
「そうだっちゃ!うちらは運命の出会いをしたんだっちゃ!」
「ははは、ヴェル俺の言った意味わかってる?」
「分かってるっちゃ!うちらはいつの間にか手の平の中にあって、いつの間にかくっついてる不思議な石みたい、って事だっちゃ?」
「おーー、そうやなぁ!ほんまに分かってるんか、分かってへんのか分からんわ、ははっははは!」
「綺麗だっちゃね、この石。」
ヴェルもシーグラスの様な石を太陽に向かって掲げて、片目で覗いてる。
夕陽もシーグラスの様な石も綺麗なんやけど。
一番綺麗なんはヴェルやわ。
夕陽に照らされてキラキラ輝くヴェル。
。。。
ヴェルの笑顔を見てたら時間を忘れてしまう。
「うちこの不思議なシーグラス!ブレスレットにするっちゃ!」
ニコッとヴェルは俺を見て笑った。
後ろからの夕陽の光もあって笑顔が輝いて見えた。
「お、おお!いいやん。。」
思わず目を逸らしてしまった。
可愛すぎるって。
逸らした目線の先には翔陽。
「くかーーー!くかーーー。。」
翔陽はいつのまにかベッドで寝てしまってる。
そこ俺のベットやのに。
はーー。。
俺も疲れてるのに。。
眠気を翔陽にうつされたわ。
ねむたーー。。
でも、その前に確認したいことがもう一つ!
「ヴェル、ヴェルの星のさ、星占いの内容を教えてや、ヴェルの父ちゃんもめっちゃ占い信じてるみたいやったけど」
「星占いだっちゃ?わかったっちゃ。今うちの星バランスを崩して崩壊しそうなんだっちゃ」
「うん」
「でね、うちの星の研究者さん達がこの地球がバランス崩壊の元凶って事を突き止めたっちゃ」
「そうなんや」
「地球をなんとかしないと宇宙の星がみんな壊れちゃうってなった時、どうしたらいいっちゃ?誰もどうしたらいいか、その答えをわかる人がいなかったんだっちゃ、誰かが適当にここに来てもどうしようもないっちゃ」
「そうやんな、で?」
「うん、でね、どうしようってなった時、うちの星で一番信用されてて、大切な時しか使わない星占いって占いがあるんだっちゃ、その星占いでどうするべきかをね占ったっちゃ」
「うん、うん。」
「そ、で、うちが地球に行かないと崩壊するって星占いの結果がでたっちゃ」
「なるほど」
「地球に行くって言ってもね地球もも狭くないっちゃ」
「せやなぁ」
「うちの星のから出発して、地球の向かう先なんだけど、ダーリン!」
「ん?」
「うちがどこに行くと良いってって占いで出たと思うっちゃ?」
「お!それは簡単やんか!ここやろ?七海市大浜町!」
「ふふ!違うっちゃ!」
「え?まじで???」
「うん!その占いの結果はね!どこでもいいんだって!」
「嘘やろ?適当なん??」
「そうだっちゃ!でね、地球にこの世界を救ってくれる人がいて、うちが地球に来たら自然とその人に引き寄せられてるって」
「へーー。。」
ヴェルがふわりと浮き上がりこっちに顔を寄せてくる。
「お互いが引き寄せあって自然と出会う運命にあるって」
「そ、そうなんか。。」
「それって、すっごいロマンティックだっちゃ!でしょ?でね!すっごい時間かかってやっと地球に着いたら、うちすっかりUFOの操縦の仕方を忘れてて、着陸失敗しちゃって、墜落の衝撃でうちは宇宙船から放り出されて気を失ってしまったちゃ。ほんとーにうちはあの時死んだかと思ったっちゃ。」
「うん」
「でね、その宇宙船の着陸失敗から、うちが気がついたらダーリンがうちの目の前にいたっちゃ。」
「ああ、ビーチで起きた時か。。」
「だっちゃ、それでね、ダーリンはうちにキスしてくれてて、もう、この人だっちゃ!この人が運命の人だって確信したんだっちゃ!」
「いや、だからあれは、人口こきゅ」
ちゅ。
「え?」
ヴェルが俺のほっぺにキスをした。
俺は驚いて体が固まってしまった。。
「ダーリン、うちはね、人工呼吸でもなんでもいいんだっちゃ。ダーリンが消えかけたうちの命を、必死に救ってくれたんだって目を覚ました時に、すぐ分かったっちゃ、ダーリンがいなかったらうちは死んでたんだって、、だからねダーリン。」
「ありがと。。」
ヴェルが後ろから抱きしめてきてくれた。
「うち。。。」
「ダーリンの事が。。」
ちゅ。
ヴェルが俺のほっぺにもう一度キスしてくれた。
心が何か満たされていくのが分かった。
奥底から暖かい何かが溢れてきた。
なんやろ。
幸せでさらに懐かしいような感覚。
涙が一筋頬を流れた。
今が夕陽の時間でよかった。
俺の真っ赤になった顔、夕陽の明かりに溶け込んで、きっとバレへんやろ。
ヴェルは俺から手を離すと俺の横に立った。
そしてヴェルは今にも水平線に沈みそうな真っ赤な夕陽をじっと眺めた。
。。。
真っ赤な光の中ヴェルは俺の顔を覗き込んでくる。
「ヴェル?」
「うち。。アニメのラムちゃんみたいに何があってもずっとダーリンの事大好きでいたいっちゃ。」
「ん。。。」
「ヴェル」
「ダーリン。。」
真っ赤に染まった太陽がゆっくりと海へと沈んでいく。
「今が夕焼けの時間で良かったちゃ、今のうちの顔真っ赤だと思うっちゃ。」
ニコッとヴェルがこっちを向いて笑った。
「はは!俺もやわ。。」
俺はそっとヴェルの手を握った。
ヴェルも俺の手を優しく握り返してくる。
真っ赤な黄昏の時間がゆっくりと流れていった。。。